部下との1on1は会議室で向き合ってやったらアウト…グーグルの上司が部下にキャリアの話を振る"意外な場所"
プレジデントオンライン / 2023年4月21日 18時15分
※本稿は、ピョートル・フェリクス・グジバチ『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■「1on1」ミーティングは雑談だけで事足りる
日本企業の「1on1」ミーティングは、あらかじめ時間と場所を設定して、マネジャーとメンバーが「かしこまって」向き合うケースがほとんどです。
お互いが緊張した状態で手探りの会話をしていますから、このままの状態で続けていても、いつまで経っても成果は上がらないように思います。
僕の会社では、あえて「1on1」の機会を設けず、日常の雑談の中で、社員の「どうなりたい?」、「どうしたい?」という気持ちを聞くようにしています。
一緒にランチに行ったり、移動中の車内であったり、ちょっとした空き時間があれば、それを利用して雑談をします。
フォーマルな「1on1」であれば、メンバーはマネジャーが求めていると思われる模範解答を準備して、無難にその場を乗り切ることを考えますが、日常的な雑談であれば、そこまで難しく構える必要はなくなります。
一度の雑談ですべてを完結させようとするのではなく、時間や場所、タイミングを変えて、様々なアングルから何度も繰り返し話を聞くことで、ようやく本音らしきものにたどり着くことができるのです。
■「キャリア・カンバセーション」も雑談で対応できる
「1on1」だけでなく、「キャリア・カンバセーション」も、雑談によって柔軟なスタイルで実施することができます。
キャリア・カンバセーションとは、マネジャーとメンバーが「仕事観」や「期待値」などを共有して、お互いの理解を深め合いながら、キャリアへの意識を育んでいくことです。
海外の企業や外資系企業では一般的ですが、日本でも大手企業だけでなく、社員を資産と考えて大事にしている中小企業でも実施する会社が増えています。
キャリア・カンバセーションの主なテーマは、次のようなものです。
・現在、何に興味や関心を持っているか?
・短期と長期の将来についての希望
・現在の目標や実現可能なキャリアの選択
・目標を達成するための準備や具体的なアクションの構想
相手が「どう考えているか?」を知りたいと思っても、「さぁ、今日はあなたの将来の話をしましょう」とフォーマルな形で1回だけ聞いたのでは、相手が身構えてしまいますから、必ずしも本心が聞けるとは限りません。
具体的なプランやアイデアがなくて、その場しのぎの答えを探し出す可能性があったり、今は時間的にも気持ち的にも余裕がないとか、場合によっては「今はその話をしたくない」など、様々な事情もあります。
メンバーのキャリアは、お互いにとって大事なテーマですから、何度も繰り返して話し合う必要があるのです。
雑談の折に軽くテーマを振っておいて、次の機会に改めて聞くようにすれば、相手が考える時間を作ることができます。
しっかりとテーマと向き合うことで、本人が自覚していないようなことに気づくチャンスも生まれます。
この他にも、マネジャーが日ごろから雑談を心がけていれば、社内の情報収集やメンバーのモチベーションの向上、コーチングなども可能になります。
どこの企業でも、マネジャーは忙しくて時間がないはずですから、雑談を有効に活用すれば、一石二鳥どころか、一石五鳥くらいの効果が感じられると思います。
■明確な目的を持って、日常的に雑談をする習慣を作る
「上司が関心を持って、自分に目を向けてくれている」と気づくことは、非常に心強い反面、あまりにもそれが露骨な場合は、逆に不信感につながる危険性があります。
「この人は、何のためにそんなことを聞くのか?」
「それを聞いてどうするつもりなのか?」
こんな猜疑心を持たれないためには、その雑談の意味合いとか、目的を明確に持ちながら、適切なタイミングを見計らって、適切な言葉を選ぶしかありません。
少し乱暴な表現をするならば、部下のコンディションを把握して生産性をアップさせるためには、多少のリスクは覚悟する必要があります。
なぜ日本人が雑談で天気の話をするのかといえば、お互いに共通する話題であるだけでなく、リスクが低いからです。
![天気の変化](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/2/1200wm/img_c24694007c841a5e67ee126303b74174393156.jpg)
「今日は暑いですね」と言われて怒り出すような人はいませんが、相手の本音を聞き出すこともないのです。
雑談を通じて相手の考えを知ったり、本音を引き出すためには、リスク回避ばかりを計算していたのでは一歩も前に進むことができなくなります。
大事なのは、「興味本位や面白半分で質問しているのではない」と態度やフォローの言葉でハッキリと示すことがひとつ。
もうひとつは、日常的に雑談を心がけて、不信感を持たれないように相手を慣れさせることです。
日常的に雑談をする習慣を作っていけば、少し踏み込んだ質問も気兼ねなくすることができるようになります。
■マネジャーはもっと自分の「弱み」を開示していい
僕がこれまで接してきた優秀なマネジャーには、ひとつの共通する特徴があります。
仕事ができる人ほど、「腰が低い」ということです。
これは経営トップにも共通しますが、海外でも日本でも、優秀なリーダーほど尊大な態度を取ることはなく、常に謙虚な姿勢で相手と向き合っています。
相手を見下すような不遜な態度のリーダーは、一時的には成功することがあっても、それが長続きすることはありません。
リーダーに資質があるとすれば、それは発想力とか行動力ではなく、常に謙虚な姿勢を貫ける人間的な強さにあるように思います。
僕はマネジャーもメンバーに「弱み」を見せていいと考えています。
マネジャー自身が何でも話せるような環境を作らなければ、職場の心理的安全性を高めることは難しくなります。
何かミスをしてしまったら、「ごめん、失敗した」と正直に伝えることが大切です。
それを隠蔽(いんぺい)しようと画策したり、誰かに責任をなすりつけるような行為は、メンバーの不信感を増幅させるだけです。
![ピョートル・フェリクス・グジバチ『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』(クロスメディア・パブリッシング)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/b/1200wm/img_fbd65596d4598139d1d44adb0da7b2a8275087.jpg)
困っているならば、「悪いけど、助けてほしい。今度、メシをごちそうするから」と素直に頼めばいいと思います。
間違っても、「これを明日の朝までにやっておいてくれ」と言い残して、自分だけさっさと帰宅するような行為は慎むべきです。
そんなことで、上司の「威厳」が保てることは、100%ないのです。
マネジャーが自分の弱みを積極的に開示できるチームは、自然と風通しが良くなり、何でも話し合える環境が生まれます。
マネジャーの心がけひとつで、チームはどのようにでも変わるのです。
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プロノイア・グループ代表
TimeLeap取締役。連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。ポーランド出身。モルガン・スタンレーを経て、グーグルでアジアパシフィックにおける人材育成と組織改革、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。『ニューエリート』(大和書房)ほか、『0秒リーダーシップ』(すばる舎)、『PLAYWORK』(PHP研究所)など著書多数。
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(プロノイア・グループ代表 ピョートル・フェリクス・グジバチ)
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