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「東大に入るより恋人をつくる方が難しい」名門校でも問題になっているコミュ力不足の男の子の特徴

プレジデントオンライン / 2023年4月21日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pablo Rodrigo Sanchez Remorini

子供のコミュニケーション能力を育むために、親にできることは何か。明治大学文学部教授の諸富祥彦さんは「親は『何を話すか』ではなく『どう聴くか』が大切だ。子供は『ちゃんと聴いてもらえた』という経験が自信となり、自然と話し上手・聴き上手になる」という――。

※本稿は、諸富祥彦『男の子の育て方「結婚力」「学力」「仕事力」を育てる60のこと』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■コミュ力には失敗を重ねながらも説得を試みる勇気が必要

「東大に入るより、恋人を作るほうが難しそうな子がいますね。コミュニケーション能力に問題があるんです」

これは、東大合格者上位10校に入る名門私立男子中学・高等学校の校長先生の言葉です。エリート養成校といわれる学校でも、最近の男の子のコミュニケーション能力の低さが大きな問題になっています。

実際、私が教えている大学でも、授業中、質問しても黙って下を向いたまま「わかりません」とも言えない男子学生がいます。こちらがしびれを切らして別の学生に質問するまで、黙って下を向き続けるのです。

コミュニケーション能力は、就職や結婚を考える時期になったからといって、一朝一夕に身につくものではありません。子どものころからの積み重ねがモノをいいます。

仕事をするにも、女性を口説くにも、一筋縄ではいかない相手にあの手この手を使ってこちらの意図を伝え、失敗を重ねながらも説得を試みる勇気が必要です。

親御さんにできるのは、お子さんが他者とのコミュニケーションをおこなっていく機会をつくっていくことです。

■「話をしっかり聴いてくれる親」が会話能力を伸ばす

男の子は、言葉を司る左脳が女の子よりゆっくり発達します。多少言葉が遅くても、焦らずゆっくり見守ってあげましょう。

けれども成長を待つ以外にも、親にできることはいくつもあります。

それは、「親は自分の話をていねいに、いつも聴いてくれるんだ」とお子さんが思えるコミュニケーションを、お子さんとの間でおこなっていくことです。

コミュニケーション能力が育っていくためには、集団の中に入り、ときには傷つくことはあっても人と一緒に仕事をしていける。問題が起きても好きな女性と何とか乗り越えていける。そんなふうに人と関わることを面倒がらずに続けていく必要があります。

親御さんにできるのはそのための土台づくり。

「コミュニケーションは楽しい」
「人と話をすることって楽しい」

そんな感情の土台を、お子さんの心の中にしっかりとはぐくんでいってあげましょう。

アジアの母と息子は自宅でソファで会話をしている
写真=iStock.com/imtmphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imtmphoto

でも実際は、コミュニケーションの土台をつくるどころか、コミュニケーションぎらいな子に育てていくような会話のほうがひんぱんになされているのではないでしょうか。

■男の子のわかりにくい話を責め立てていないか

お母さんと男の子の間のよくある会話をみてみましょう。

「今日、学校どうだった?」
「んー」
「どうだったのよ?」
「……おもしろかった」
「何が?」
「何がって……忘れた」
「忘れた!? そんなことあるわけないでしょ!」
「だって……」
「もうっ、いつもはっきりしないんだから。もっとはっきり言いなさい!!」

どうですか? このような会話、男の子をもつお母さんなら、何度も経験があるのではないでしょうか。

男の子の話は、とにかくわかりにくい。だからといって、このような会話で責め立ててしまうと、子どもは話す気力を失ってしまいます。お母さんの何気ない口ぐせが、男の子を「会話恐怖症」にしていることがあるのです。

次のようなことを、息子さんにしてしまっていませんか?

・「それで?」「だから?」と質問攻めにする
・はっきりしない説明にたまりかねて、「それって、こういうことなんでしょ」と先に結論を言ってしまう
・「はっきり言いなさいよ」「それで、何が言いたいの?」と追いつめる

「幼稚園や学校での様子が知りたい」「息子と楽しくおしゃべりしたい」と思うお母さんの気持ちはわかります。

でも、もともと話すのが苦手なのに、追い討ちをかけるように質問攻めにするのは、ニンジンが食べられない子の口に、無理やりニンジンを押し込むようなもの。

お子さんはお子さんなりに一生懸命話そうとしているのに、文句を言われてしまっては、話す気力も失せてしまいます。お子さんを追いつめる言葉が口ぐせになっていないか、振り返ってみてください。

■会話の主役は子供。「教えたい気持ち」は脇に置く

家事で忙しいからと、お子さんの話をてきとうに聞き流してしまっていることはありませんか?

「練習がキツい? そんな泣き言を言うならやめちゃいなさい。お母さんはテニス部だったけど、けっこうつらい練習にも耐えてがんばったのよ」などと、自分の気持ちばかり先走ってしまうお母さんも少なくありません。

男の子のコミュニケーション力を育てるうえで大切なのは、親御さんが「何を話すか」ではなく「どう聴くか」です。

「ちゃんと聴いてもらえた」という経験が自信となるため、話すのをおっくうがらない子どもになり、自然と話し上手になっていくのです。

また、親御さんからきちんと話を聴いてもらえた男の子は聴き上手になっていきます。話を聴いてもらえるのがうれしいことだと、自分の経験から知っているからです。

●子どもより多く話さない

お子さんに「学校どうだった?」「お友だちと何して遊んだ?」と聞くのは、とてもいいことです。でも、多くの親御さんはそのあとがいけません。お子さんの返事が期待通りでないと、つい説教してしまいます。

肝心なのは、お子さんの話に対して、どう返していくか。あくまで会話の主役は子どもであると肝に銘じて、「教えたい気持ち」は脇に置いておきましょう。

■子供のくやしい気持ちを一緒に感じて言葉にする

●子どもが話しかけてきたら、その場ですぐ聴く

親が「いま忙しいからあとで聴くね」という姿勢では、子どもの話したい気持ちは失せてしまいます。

「今日、こんなことがあった」的な話は、「へー、そんなことがあったんだー」と家事などをしながらその場で聴いてあげましょう。ただし、大事な話のときは手を止めて聴くことに専念します。

ここでてきとうに聞き流してしまうと、「せっかく大事なことを話しても親は聴いてくれない」とあきらめモードが身についてしまいます。

ソファに座っている悲しい少年
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

●お子さんの言葉をていねいに「伝え返す」

お子さんが話した言葉をていねいに「伝え返す」のは、「リフレクション」と言って、代表的な心理カウンセリングの技法の1つです。どんな気持ちで話しているのかとらえて、「○○○だったのかな?」と伝え返していくことで、お子さんは「自分のことをわかってもらえた」と感じて、信頼感を築いていくことができます。

そんなこと、簡単だと思えるかもしれません。けれどもこれがやってみるとけっこう難しい。しかしこれを積み重ねていかないと、「良くわかってもらえた」と感じてもらうことはできません。

たとえば、「今日のサッカー、全然シュートが入らなかったんだ……」とお子さんがくやしそうに口にしたとしましょう。あなたはなんと答えますか?

「がんばらなきゃうまくなるわけないわよ。とにかく、練習しなさい、練習を。中途半端にやるならやめたほうがマシよ」

などと言ってしまっていませんか?

お子さんは、この母親にはわかってもらえないという絶望に近い気持ちを抱いて、心を閉ざしてしまうでしょう。

練習しなければならないことは、誰よりもお子さん自身がわかっていること。それでも、落ち込んだ気持ちをお母さんにわかってほしくて言っているのです。

こういうときは、

「そうなんだ、全然シュートが入らなかったんだ。くやしいね……」

とお子さんのくやしい気持ちをいっしょに感じて、それを言葉にしてあげましょう。お子さんは、「お母さんは、わかってくれる」と感じて、心を開き始めるでしょう。

■あいづちを声に出し、聴いている感を出す

●うなずく

お子さんの話を聴きながら、ていねいにうなずいてあげましょう。うなずきは、「ちゃんとあなたの話を聴いていますよ」というサインです。お子さんがつらかった体験など、大切なことを話してくれているときは、目を見ながらしっかりうなずいてあげましょう。

諸富祥彦『男の子の育て方 「結婚力」「学力」「仕事力」を育てる60のこと』(PHP研究所)
諸富祥彦『男の子の育て方「結婚力」「学力」「仕事力」を育てる60のこと』(PHP研究所)

ささいなようですが、うなずき1つで、もっと話したくなったり、それ以上話す気力が失せたりするものなのです。

うなずきにはお子さんを受け入れる「温かさ」を感じさせる力があります。お母さんとお父さんが熱心にうなずいて聴いてくれていると、お子さんは、自分のすべてが温かく迎え入れられたような気持ちになっていくのです。

●あいづちを声に出す

「うん、うん」「そうなんだ」と、あいづちを声に出してあげると、お子さんは「ちゃんと聴いてもらえている」と感じることができます。「うんうん」「あーそうなんだ」とあいづちをうつことで、お子さんに「あなたの話を聴いていますよ」という姿勢を伝えていきしょう。

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諸富 祥彦(もろとみ・よしひこ)
明治大学文学部教授
1963年福岡県生まれ。教育学博士。臨床心理士。公認心理師。教育カウンセラー。「すべての子どもはこの世に生まれてきた意味がある」というメッセージをベースに、30年以上、さまざまな子育ての悩みを抱える親に、具体的な解決法をアドバイスしている。教育・心理関係の著書が100冊を超える。

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(明治大学文学部教授 諸富 祥彦)

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