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「結婚しろと急かされて結婚する人はいない」成人した子どもに親が言ってはいけない"2つのNGワード"

プレジデントオンライン / 2023年4月26日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

成人した子どもと親の関係はどうあるべきか。脳科学者の黒川伊保子さんは「親が言ってはいけない禁句が『結婚』と『出産』だ。心が動かないと行動しない若者たちにとって、親が言えば言うほど逆効果になる」という――。

※本稿は、黒川伊保子『60歳のトリセツ』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■成人した子どもの生き方を肯定しよう

子どもは、いくつになっても、母の表情とことばに、思いのほか深い影響を受ける。起業しようとしたとき、二人の母が「大丈夫なの? そんなことして」と眉をひそめたら、私は起業しなかったと思う。

結局、子どもは、親の「度量」を超えられないのである。親が感じた心配をそのまま口にしていたら、子どもは、きっと本人が願ったより小さな世界で生きていくことになる。特に、成人した子を持つ60代の親の役割は、思いついた心配を、思いつくままに口にすることじゃなく、子どもの生き方を肯定してやることに尽きると思う。

理由は二つある。

そもそも、成人した子が、親の言うことで生き方を変えたりなんかしないってこと。

もう一つは、60代の脳は「先のリスクに誰よりも気づく脳」の持ち主で、30代の脳には失敗が必要不可欠だからだ。“60代が子どもの心配をしすぎると、子どもの人生がしょぼくなる法則”があるのである。

■「結婚」と「出産」は禁句である

成人した子が、親の言うことで生き方を変えたりなんかしないってこと、そんなの脳科学で証明しなくたって、勘でわかるはず。そもそも、親の言うことで生き方を変える30代とかがいたら、逆に心配じゃない? そんなに主体性がなくて、どうするの! って感じだ。

というわけで、とやかく言ったって甲斐がない。甲斐がないなら、わざわざ嫌な思いなんかさせずに、気持ちよく応援してやれば、親子仲がよくなって、そのほうが得である。

特に「結婚」と「出産」に関しては、親がうるさく言うと、かえって仇になる。

■親が言えば言うほど、子どもには逆効果

親に結婚しろと言われて結婚する、あるいは、子どもを産めと言われて産む子なんて、21世紀には一人もいない。「早く結婚しなきゃ、なかなか結婚できなくなる」「子どもを産むなら、若いうちのほうが楽」は実際この世の真実だけど、21世紀の若者たちは「心を動かされないと結婚しない」し、親に言われると、いっそう心が動きにくくなるからだ。

心と感情の概念
写真=iStock.com/TanyaJoy
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TanyaJoy

人間は「義務」や「目標達成」で何かをするとき、脳の中では、問題解決型の回路が起動する。この回路は、「感じる能力=心の動きをいったん止めて、目標達成のために戦略を遂行する回路」である。義務で何かを遂行するときは、誰でも、この回路が立ち上がる。

つまりね、そろそろ年だし、結婚しなきゃならない――そんなふうに婚活を始めたら、感じる回路は止まってしまうのだ。旅先で偶然出逢ったら恋に落ちるような相手でも、婚活アドバイザーに「この人、条件いいですよ。なかなかイケメンですし」なんて勧められたらぴんと来ないなんてこと、ざらにある。

■「いつまでも独身のほうがいいわぁ」

ましてや、親にやいのやいの言われた挙句の婚活にロマンスがあるわけがない。親が言えば言うほど、逆効果ってわけ。

「あなたがいつまでも独身で、私と一緒に旅行に行ったりしてくれたら、そのほうがいいわぁ」くらいでいたほうが、「え。お母さんと二人で一緒に年老いていくの? 『お母さんと一緒』ならぬ『お母さんと一生』じゃん」とちょっと気後れして、新しい人生を始める気になるかもしれない(微笑)。

自分の若いときの気持ちを考えてみればいい。周りが「いい人」を連呼する異性に何も感じず、「あの人は危険だからダメ」なんて言われた相手に胸がきゅんとするなんて体験、誰にもあると思う。

子どもに、結婚してほしかったら、その二文字を、親が口にしないことである。

■「子どもを持って一人前」なんてナンセンス

それと、根本的に、「人間は結婚して一人前」「子どもを持って一人前」という考え方そのものを止めてしまわない?

明るい部屋で赤ちゃんの手を握る母親の手
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

地球の人口は80億に迫っている。私の大学時代(1980年ごろ)、地球の人口は40億ほどで、この40年で倍に膨れ上がったことになる。

かつて、ある科学者が「地球上のすべての資源をどんなに効率よく回しても、この地球に住める人類は80億まで」と言っており、他の惑星の利用も今や、人類は真剣に考えなきゃならなくなっているのである。とはいえ、他の惑星利用が実現するより先に、地球80億人時代がやってくる。

人類が、この地球という閉じた系で暮らしていくには、ある程度人生を謳歌した者たちが「定年退職」のように「定年寿命」で地球を卒業していくか、おだやかに人が減じていくかしかないのである。

まるでそのことを知っているかのように、出生率の低下が起こっている。2000年代に入ってから、男性たちの生殖ホルモンの分泌低下が指摘されるようになり、草食男子も増えているのだ。これも、自然の大きな流れなのかもしれない。

こんな時代に、「子どもを持つことが人生のマスト」と考えるのは、どうなんだろう。産みたい人は産んで、そうでない人は、人生資源を思う存分自分のために使って、地球を楽しんで生ききればいい。

■祖父母は孫の人生の最高の「観客」でいい

私は、昨年、初孫をかいなに抱いたとき、「ようこそ、地球へ」と挨拶した。なんと、わが家の王子さまは、本当にあのサン=テグジュペリの『星の王子さま』の挿絵の王子さまにそっくりだったので(まぁたいていの赤ちゃんが似てるとは思うけど)。

彼がどのような人生を送ろうと、私は、彼の最高の「観客」でいるつもり。どのようなシーンにも、彼を信じて、拍手を送り続けるつもり。

そして、それこそが、祖父母の役目じゃないのかなぁと思う。

■祖父母の心配に、新米ママはイラっとする

孫の心配をする祖父母にイラっとするという、新米ママは多い。

“はじめに”にも書いたけど、「○○さんちの孫、10カ月なのにもう歩いてるのよ。最近の子は早いわね……ってか、この子、もうすぐ一歳なのに大丈夫なの?」なんて、娘や嫁に言ったりするのは、天下の御法度である。こんなこと、母親のほうがずっと心配してるはず。小さな発疹一つできても、大きな病気じゃないかと案じるのが、母心なんだから。

ここで年寄りが言うべきセリフは「大丈夫、大丈夫」しかない。もしも、実際に、足の様子などで、おかしいなと思うことがあったら、冷静にそれを告げて、急ぎ医者に見せる算段につなげるべきだ。

■「気づいても口にしない」が必須マナー

黒川伊保子『60歳のトリセツ』(扶桑社)
黒川伊保子『60歳のトリセツ』(扶桑社)

根拠も解決策もないのに「大丈夫なの~」と言うのは、自分が安心したいだけ。それは、しちゃダメでしょ。そもそも、こういうことを言う人は、早く歩き出したら歩き出したで、「ハイハイを十分にしないと腕の力の弱い子になるって言うけど、大丈夫なの?」とか言いだすのである。

なんにでも心配を見出し、それを垂れ流すように言う人。親戚や、ときには友人にもいるでしょう? 本人は、相手を案じて言ってるつもりなんだろうけど、相手の不安を増幅させるだけで、なんの甲斐もない。

実は、60代でこれやっちゃう人、多いのである。60代は、気づきの天才だからだ。気づいた不安や不満のすべてを口に出していたら、人を不快にさせ、不安にさせてしまう。気づいたことのいくばくかを、相手をおもんぱかって、口にしない配慮。特に、子どもや孫に対するそれ。これは、60代に必須のマナーである。

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黒川 伊保子(くろかわ・いほこ)
脳科学・AI研究者
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。近著に『共感障害』(新潮社)、『人間のトリセツ~人工知能への手紙』(ちくま新書)、『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社)など多数。

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(脳科学・AI研究者 黒川 伊保子)

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