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血圧200を下げる薄味食より高タンパク食を…和田秀樹が「70代は健康診断なんて受けなくていい」と断言する理由

プレジデントオンライン / 2023年4月24日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yulia Gusterina

健康診断の数値はどこまで気にするべきか。医師の和田秀樹さんは「血圧・血糖値・コレステロール値を下げても、日本においてそれが長寿につながったという研究データはない。薬を飲んだり、薄味のご飯を食べて血圧下げるより、しっかりと高タンパクの食事をとって血管を太く丈夫にするほうがよほど理にかなっている」という――。

※本稿は、和田秀樹『70歳からは大学病院に行ってはいけない』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

■高齢になるほど治療は「引き算」で考える

第1弾では、大学病院の臓器別診療の弊害として、臓器ごとの数値データに基づいてバラバラに治療をしようとするために、薬の量が膨大に増えていくということを指摘しましたが、高齢になってきたら飲む薬の量は見直すべきです。

治療はできるだけ引き算で考えましょう。若い頃には代謝できていた薬でも、高齢になって腎臓や肝臓の機能が低下してくると、薬の成分を取り込み排出する機能も低下していきます。大量の薬を飲みすぎて、かえって体を壊しては何にもなりません。

そもそも、血圧を下げるとか血糖値を下げるという薬によって数値が下がったとしても、それが長寿につながるのかというと、日本においてそうした研究データはまったくありません。

正常値というのは全世代の平均値であって、その値であれば健康に長生きできるという数値ではないと第2弾で述べました。ところが、いまだに日本の多くの医者は正常値主義にとらわれています。

さらに、血圧や血糖値、コレステロール値、赤血球の数など、病気との因果関係が認められているものはありますが、それにしても、どれくらいをその人の「正常値」とすべきかは、判断が微妙な部分でもあります。

全世代の平均値を高齢者に当てはめるのはそもそも無理があるということに加えて、全体的に高齢者は高めのほうがよい、という場合も少なくないからです。

■丈夫な血管ならば血圧200でも破れない

たとえば、血圧であれば140mmHgを超えると「高血圧」と言われますが、この基準値もきわめて曖昧です。

たしかに、かつては血圧150mmHgくらいでも血管が破れることがありました。しかし、それは昭和30〜40年頃の話です。つまり、戦後間もなく、まだ日本人の栄養状態がきわめて悪かった頃です。栄養状態が悪く、血管も脆くて、少し血圧が上がっただけで破れてしまう人も多くいました。

今は当時と比べて栄養状態もはるかによく、血管も丈夫になりました。その結果、動脈瘤でもない限り、血圧が200mmHgでも血管が破れることはほとんどありません。

日本人の死因トップであった脳卒中が減ったのも、みなさん減塩運動や降圧剤のおかげのように思っていますが、そんなことはありません。かつては150mmHgで破れていた血管が、栄養状態がよくなって200mmHgを超えても破れることがなくなっただけのこと。

つまり、薬を飲んだり、薄味のご飯を食べて血圧下げましょう、というよりも、しっかりと高タンパクの食事をとって血管を太く丈夫にしましょう、というほうがよほど理にかなっているのです。

■80歳を超えて動脈硬化になっていない人はいない

血圧と並んで、数値が高すぎるといって薬を処方されることが多いのが、血糖値とコレステロール値でしょう。そもそも、なぜこれらが高いと健康上問題だとされるのでしょうか。

これは、血圧や血糖値、コレステロール値が高いと動脈硬化を起こしやすくなると考えられているためです。血圧やコレステロール値が高いと、血管に慢性的な炎症が生じてしまい、血管壁が厚くなったり硬くなったりするリスクが高まります。血管の壁が厚くなり硬くなることを、文字どおり動脈硬化といいます。

動脈硬化を起こしている血管のイメージ
写真=iStock.com/jamesbenet
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/jamesbenet

動脈硬化を起こし、柔軟性を失い狭くなった血管に、過剰な脂質でドロドロになった血液が流れていくと、当然ながら詰まりやすくなります。詰まりが心臓に血液を送るための冠動脈で起きれば心筋梗塞ということになり、脳の動脈で起きれば脳梗塞ということになります。

つまり、血圧や血糖値、コレステロール値を下げることで、こうした梗塞につながるような動脈硬化を防ごうということなのです。とはいえ、いかに動脈硬化を防ごうとしても、加齢には勝てません。年を取るにつれて筋肉が減っていくように、血管は柔軟性を失い硬く狭くなっていってしまうのです。

実際、先述の浴風会病院で、ご高齢の方のご遺体を年間100例程度、剖検した際に、80歳を超えて動脈硬化になっていなかった人はいませんでした。高齢になれば、いくらコレステロール値や血圧を下げたところで動脈硬化を防ぐことは不可能です。

■動脈硬化になったら血圧は高めがよい

むしろ、動脈硬化が進んだ人の場合、血圧や血糖値を下げる治療は逆効果です。

ただでさえ壁が分厚くなり硬くなり、狭くなっている血管内の血圧を下げて血流を弱くするというのですから、血流は滞りがちになってしまうでしょう。その結果、血液内の酸素や栄養成分が全身の細胞に十分に行き渡らなくなります。

血糖値や血圧を下げる薬を飲むと、なんだかぼーっとしてしまう、集中力ややる気が出なくなる、という人が少なくありませんが、当然の副作用といえるでしょう。血流が滞りがちになると、真っ先にダメージを受けるのが脳です。

酸素や糖分が脳に届かなくなるので、低酸素、低血糖の状態になります。血圧や血糖値を下げて動脈硬化を防ぐどころか、かえって意識の混濁などを招きかねないということです。当然、認知症などのリスクも高めることになります。

動脈硬化になっていない若い人であれば、動脈硬化を予防するために血糖値や血圧を低めにコントロールすることは健康促進のために有効でしょうが、ほぼすべての人が動脈硬化を起こしているような高齢者の場合は、血圧や血糖値を高めにコントロールしたほうが、健康は保たれるはずだと私は考えています。

■コレステロールで免疫機能をアップ

血圧、血糖値と並んで、高いと槍玉にあげられやすいのがコレステロール値です。しかし、コレステロール値をむやみに下げることは禁物です。なぜなら、コレステロールは免疫細胞の材料となることから、これをやたらと下げてしまうと免疫機能の低下につながりかねないのです。

むしろ、高めのコレステロールのほうが、がんで死ぬ人が少ないという調査データもあるほどです。

コレステロールは免疫細胞の材料となるだけでなく、男性ホルモンの材料にもなっています。コレステロールを減少させることは男性ホルモンの減少につながります。男性ホルモンが減ると、筋力が低下するほか元気や意欲も低下します。

高めのコレステロールのほうが免疫機能もアップし、男性ホルモンも活性化される。にもかかわらず、なぜ高めのコレステロール値が目の敵にされてしまうのでしょうか。

それは、アメリカの治療方針をそのまま日本に当てはめているからです。

たしかに、アメリカ人の死因の第1位は心疾患です。そのため、血圧や血糖値、コレステロール値を下げることが動脈硬化による心筋梗塞の予防となり、長生きにつながる人が大勢いると言えるのです。

■よく食べ、よく動き、男性ホルモンを活性化させる

一方で日本の場合、死因の第1位はがんです。がんを予防するには、栄養や酸素を全身に十分に行き渡らせ、免疫機能を高めておくことが大切です。

それなのに、アメリカのマネをしてコレステロールや血圧を下げるようなことをしていたら、がんを発症する人を増やすことにつながりかねません。アメリカが成功しているからといって、やみくもに同じ治療基準を取り入れるべきではないのです。

つまり、血圧や血糖値、コレステロール値を下げることで、動脈硬化のリスクは下げられることがあるでしょう。しかし、高齢になれば、どんなに気をつけても動脈硬化は避けられません。そうであれば、免疫力を低下させたり、脳にダメージを与えかねないような数値を下げる治療が、高齢者にとってふさわしいものかどうか、よく考えてみてください。

数値が多少高めでも気にしない。自分の免疫力アップのために、よく食べ、よく動き、男性ホルモンが活性化するようなエネルギッシュな日々を送る。

そのほうがよほど、医者いらずの生活に近づけるだろうと思っています。

■健康診断は受けなくてもいい

なぜ、私たちがこれほどまでに正常値にこだわってしまうのか。これには、毎年毎年、せっせと受けさせられている健康診断による影響が非常に大きいと感じています。

とくに今の高齢者世代は、健診が広く一般的になった時代の先駆けでもあり、健診をとてもありがたがって熱心に受けようとします。もはや「信仰」と言ってもいいのではないかというほどです。

しかし、年を重ねてきたら、実は健診を受ける意味はほとんどないと私は思っています。むしろ害のほうが大きいのではないかとさえ言えるほどです。

胃カメラ検査を受けている男性
写真=iStock.com/urbazon
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/urbazon

もちろん、私は健康診断が誰にとっても不要なものだとは言いません。50代くらいまでの人たちにとっては、健診は非常に意味のあるものでしょう。

血管の柔軟性もまだ保たれているわけですから、きちんとした食生活を送り、適度な運動をすることなどで、適切な血圧や血糖値をキープして動脈硬化の予防につなげる。これは大いに意味のあることです。

しかし一方で、高齢の人たちにとって、健康診断で示されている基準値に縛られることは、意味がないどころか、時に健康を損なうリスクを高めかねないということです。

第一、健康診断なるものが長寿に役立つのであれば、なぜ、健康診断をせっせと受けてきた男性と、女性との平均寿命の差が広がり続けてきたのでしょう。

今の年配世代の方たちは、男性は会社員、女性は専業主婦やパートが多かった時代で、総じて男性のほうが健康診断をきっちり受け続けてきた人が多くいます。女性のほうは、専業主婦やパートなどが多く、あまり健康診断は受けていません、という人が少なくありません。

■いま元気なら「自分は健康」と考えてよい

ところが、1950年代にはせいぜい3歳くらいだった男女の平均寿命の差がどんどん開いて、今や7歳もの差が生まれてしまっているわけです。健康診断が長寿に役立つのであれば、せっせと健診を受けていた男性の寿命が伸びているはずなのに。不思議なことです。

健康診断では、「A」とか「D」といった判定が基準値に基づいてくだされます。繰り返しになりますが、数値というのは個体差があり、同じ数値でも「この数値でも元気な人」もいれば「この数値だと不調になる人」がいるのです。

そして、高齢者の場合、数値が基準値を超えていようと低かろうと、今現在、元気なのであれば、その事実をもってして「自分は健康である」と考えてよいのです。

ところが、ちょっとでも基準値を超えていると、やれ血糖値を下げる薬だの血圧を下げる薬だのコレステロール値を下げる薬だのを処方してもらわないと心配で仕方がなくなる。

その結果、動脈硬化で血流が悪いところに、血圧や血糖値を下げる薬を飲むものだから、血流はますます悪くなり、四六時中頭はぼんやりしてきて、やる気もわかず、なんとなく抑うつ状態になってきてしまう。あるいは認知機能までどんどん低下してしまう。

これでは、何のための健診なのかわかりません。

■健診より3年に一度の心臓ドックのすすめ

本当に心筋梗塞や脳梗塞を予防したいと考えるのでしたら、健康診断などではなく心臓ドックや脳ドックを受けることをお勧めします。

心臓ドックを3年に一度ほど受ければ、心筋梗塞のリスクを早期に発見することができるでしょう。心臓に血液を送り込むための冠動脈のどこかで、動脈硬化を起こして血管が狭くなっている部分があるかどうかをチェックできるからです。

CT画像によって実際に冠動脈を直接確認できますから、血液検査などの基準値で判断するよりもはるかに正確に冠動脈の状態を把握できます。

というのも、たとえコレステロール値が正常値であったとしても、心筋梗塞になることはあるからです。逆に、コレステロール値が高すぎても冠動脈が非常にきれいだという人もいます。つまり、血液検査のデータというのは、それくらいあてにならないものだということなわけですが。

さらに言うと、解離性大動脈瘤などを早期に発見することもできますから、CT画像によって冠動脈の状態がリアルにみられるということの意味は非常に大きいのです。これらの問題を発見できたならば、バルーンやステントを使って血管を拡張させればいいのです。

実は日本は、この血管拡張の技術が非常に優れていることで世界的に有名です。海外の要人が日本にわざわざこの血管拡張治療を受けにくるほどなのです。

ですから、なんら長寿の根拠にならない基準値に振り回されるだけの健診を受けるくらいであれば、きちんとした心臓ドックを3年に一度ほど受けるようにしてください。がんなどに比べれば、こちらのほうが高い予防効果が期待できます。

しかも、ある程度治せるものだと言えるので、数年に一度、心臓ドックに費用をかけるというのは、無駄な健診に毎年足を運ぶよりもよほど費用対効果が高いでしょう。

和田秀樹『70歳からは大学病院に行ってはいけない』(宝島社新書)
和田秀樹『70歳からは大学病院に行ってはいけない』(宝島社新書)

ちなみに、心臓ドックは基本的に保険適用がなく全額自己負担です。受ける検査項目によって費用に差があります。また、自分が加入している健康保険団体から助成金が出る可能性もありますので確認してみてください。

脳ドックも動脈瘤を早期に発見できるので、くも膜下出血を予防するうえでは効果的でしょう。脳の血管をMRIで見ることができるというのが大きなポイントで、閉塞(へいそく)や狭窄(きょうさく)があった場合、動脈瘤の破裂を防ぐさまざまな手段で、くも膜下出血などを予防できることは少なくありません。

ちなみに、脳ドックで認知症の早期発見ができるのではないかという期待をされることがありますが、認知症は早期発見してもろくな治療がないうえ、発症前の認知症をきちんと予見できる検査は今のところないので、そのためのものではないとご理解ください。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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