体重を落としても「ぽっこりお腹」は直らない…ダイエットの効果を実感できない人が根本的に誤解していること
プレジデントオンライン / 2023年4月30日 12時15分
※本稿は、犬飼奈穂『背中をゆるめると健康になる』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■体重をキープしたまま、スリムな体型になれる
「食べたいけどやせたい」「やせたいけど食べたい」。もしこんな堂々巡りに陥っていたら、「体重を落とさなければいけない」という考えを、一度手放してみてはどうでしょうか。
なぜならば、やせるということは、必ずしも体重を落とすということではないからです。
私はウォーキングスタジオを主宰し、これまで6000人以上の生徒さんに直接指導してきましたが、体重はキープしたまま「スリムになった」生徒さんをたくさん見てきました。特別な食事制限をしなくても、背中の筋肉をゆるめるだけで人はやせることができるのです。
ここで言う「スリムになる」というのは、単純に「体重が減る」ということではありません。洋服がサイズダウンする、お腹が引っ込む、スタイルが良くなるなど、「見た目が変わる」ことを指します。
外見のコンプレックスが原因でダイエットを心掛けている方は、「背中の筋肉をゆるめてスリムになる」という考え方をぜひ参考にして頂きたいと思います。
■体の「重心」が下がると太って見える
なぜ背中をゆるめると、やせることができるのでしょうか?
そのカギは、体の「重心」にあります。
ほとんどの人は筋肉が固くなると同時に、体の重心が下がってしまいます。重心が下がると、それだけで体がワンサイズ大きく見えてしまいます。重心が下がると、顔は大きく見え、お腹はつき出て、お尻はたるんで大きくなります。太ももも外側に張り出すので太くなります。
さらに、背中は丸く、肩は内に巻くので、肩は広がり、二の腕は太くなります。デメリットだらけですね。
人はただでさえ重力の影響を受けるので、常に体を上から押されている状態にあります。この状態で背中の筋肉が固くなると、筋肉は弾力性やしなやかさを失い、縮まってしまいます。
収縮したまま固くなってしまうと伸ばせなくなるので、重力に負けて体の重心はどんどん下がっていきます。
■重心を上げれば腹はひっこむ
重心が下がると、どうなるのでしょうか。
まず、肋骨と骨盤の間のすきまが狭くなります。行き場を失ったお腹のお肉は前に突き出るしかなくなり、内臓も押しつぶされて前に出てしまいます。だから体重が増えたわけではないのに、お腹がぽっこり出てしまうのです。
もし、「体重の調整をしてもお腹だけは引っ込まない」という方がいたら、体の重心に目を向けてみてください。逆に、重心を上げて肋骨と骨盤の間を広げると、体重を減らさなくても、自然に腹筋が使えて骨盤が立ちやすくなり、お腹はへこみます。
ここで気をつけて頂きたいのは、「重心を上げる」と言っても、がんばって引っ張り上げる必要はないということです。がんばって体に力を入れるのは絶対にやめてください。
肩甲骨をグッと寄せて、ピンと胸を張った姿勢は、いかにもグーっと体が上にあがっているようなイメージかもしれませんが、実は逆です。
■胸を張るのは逆効果
胸を張ってしまうと、その反動で腰は大きく反ってしまいます。体に力を込めないとバランスが取れなくなり、筋肉に必要以上の負荷がかかってしまいます。筋肉に余計な負荷がかかると、筋肉の動きが制限され、重心を上げるのとは逆の作用が働いてしまいます。
内臓は上から下へと押されてしまい、機能が低下します。「胸腔(きょうくう)」という、肋骨や横隔膜などで囲まれた空間に左右の肺がおさまっていますが、この胸腔がつぶれてうまく広がらなくなってしまいため、呼吸も浅くなってしまいます。
胸を張ってがんばる姿勢は、体に良いことは一つもありません。疲れて、体に負担をかけて、スタイルも悪くなってしまう残念な姿勢です。
体の重心を上げるための近道は、固くなってしまった背中の筋肉をゆるめることです。筋肉をゆるめて骨や内臓を本来のポジションに戻すことが大切です。背中がゆるんで骨が正しいポジションに戻ると、自然と重心も上がるからです。これだけで見た目がガラリと変わります。
老化や肥満のせいだとあきらめないでください。ただ重心が正しい位置に戻るだけで、二の腕や太ももは細くなり、お尻は小さくなります。私が主宰するウォーキングスタジオでも、たった3カ月でパンツがワンサイズダウンした生徒さんがたくさんいます。
■筋肉をゆるめて、体の重心を上げる方法
ここで、下がってしまった体の重心を、たった10秒で上げることができる「腕上げウォーク」を紹介します。この「腕上げウォーク」は、強引に重心を引き上げるのではなく、固くなってしまった脇腹の筋肉をゆるめながら、自然に重心を上げることができます。
1 両手の人さし指と親指を立てた状態にします。
2 手の形をそのままにして、腕を下ろし、右脚を前に出します。
3 左手を天井に向けて引き上げ、そのまま3秒キープします。
4 反対側の左脚を前に出し、右手を天井に向けて引き上げ、そのまま3秒キープします。
手を上げるときは、肩甲骨の下からぐっと引き上げるようなイメージで行いましょう。
体が横に傾いていたり、お腹が前に出ていたりすることがないように気をつけ、脚~骨盤~上半身をまっすぐな状態で行うようにしましょう。3と4を繰り返しながら何歩か歩くと、より効果的です。
全身の血流が良くなり、とても心地のよさを実感できるストレッチです。テレビやスマホ、デスクワーク等で座りっぱなしのときは、お部屋のなかでぜひ「腕上げウォーク」を行ってみてください。
■筋肉は使わないと固くなり、前に引っ張られて住まう
重心が下がるのと同時に、体の見た目を大きく左右してしまうのが「筋肉が前に寄ってしまうこと」です。
本来、体の筋肉は後ろの集まっていることが理想的なのです。でも、背中の筋肉を使っていないと、筋肉は固くなって収縮しながら、体の前側にどんどん引っ張られてしまいます。
猫背や巻き肩は、典型的に背中の筋肉が前に集まってしまった状態です。腕は内側にねじれて、肩が内側に巻き込まれ、背中の筋肉は前のほうに引っ張られています。首から肩、背中にかけて筋肉が前のほうに引っ張られて、突っ張っているような状態です。
背中が固くなると、このように上半身も下半身も筋肉が内側に巻き込まれて、「前に前に」引っ張られるようになり、筋肉が前に広がり、ただそれだけで太ったように見えてしまいます。猫背で巻き肩になると、肩が広がって二の腕は太く見えます。
下半身も同様です。背中の筋肉が固くなると、連動してお尻や太ももの筋肉も前に引っ張られます。本来、お尻の中心に筋肉が寄っている状態が自然なのですが、前に引っ張られてしまうと、筋肉はつぶれて横に広がります。お尻はたれて、大きく見えます。
■「背中の筋肉はゆるめて、後ろに集める」がベスト
ラクに動けて、なおかつ崩れた体形を元に戻すためには、背中をゆるめると同時に、「背中に筋肉を集める」ことがとても大切です。「背中に筋肉を集める」というのは、骨に引っ張られて前のほうに寄ってしまった筋肉を、後ろに戻すということです。本来、筋肉は後ろに集まっているのが自然な状態です。
「最近、体がスムーズに動かしづらいな」と感じたことはありませんか? もしかしたら、歳のせいではなく、筋肉が前に寄ってしまっていることが原因かもしれません。
筋肉が前に寄って固くなると、体を動かすときのブレーキになってしまうからです。体が動かしづらくなるので、腕の可動域は狭くなりますし、歩くときに太ももが前に出づらくなります。体の後ろにしっかりと筋肉が集まっていると、このブレーキが外れて、とても自然体でラクに動けるようになります。
筋肉が後ろに集まると、ほっそりとしてスリムに見えます。『背中をゆるめると健康になる』で紹介している10秒ほぐしは、すべて、内側・前方に寄ってしまった筋肉や骨格を、外側・後方に戻してくれる動きです。骨格を整えたり、筋肉をゆるめたりします。
背中の筋肉はゆるめて、後ろに集める。このことを意識しながら、実践してみてください。
■無理してゆるめようとしてはいけない
背中の筋肉をゆるめるとさまざまなメリットがありますが、わざわざストレッチをしなくても、背中をゆるめることができます。それは、日常生活でついついやってしまいがちな習慣を見直すことです。次のようなことに心当たりはありませんか?
・やらなければいけないことを常に考えている
・歯を食いしばるくせがある
・座りっぱなしでパソコンやスマホンを操作している
・胸を張って歩く
・下腹に力を入れてお腹を引っ込める
・痛みに耐えながらストレッチをする
・自分にも他人にも厳しい目を向ける
このどれもが、筋肉を固くしてしまう習慣です。がんばる人は、筋肉が固くなっていることが多いのです。逆に、これらのことを意識的に避けるだけでも筋肉をゆるめることにつながります。
力を入れず、リラックスした状態でいることが大切なのです。無理してがんばることが良いことではありません。むしろ、がんばらないほうがいいのです。真面目にがんばる癖がついている人ほど、日常のちょっとした習慣を意識してみてください。
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ウォーキングコンサルタント
歩き方コーチ。「ORO(オーロ)ウォーキングスタジオ」代表。「オーラをまとう歩き方レッスン」主宰。愛媛県松山市出身。「正しい歩き方」ではなく、「心地よい歩き方」を探求し、これまでに述べ6000人以上に指導し、肩こり・腰痛、猫背、坐骨神経痛など、体が抱える数々の悩みを改善してきた。開催する講座やセミナーは1000回を超える。
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(ウォーキングコンサルタント 犬飼 奈穂)
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