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天下の「TENGA」に戦わずして勝つ…21歳女子大生が立ち上げた男性向け「オナホメーカー」が後発でも売れたワケ

プレジデントオンライン / 2023年4月27日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tevarak

ビジネスで競合に勝つための方法は何か。起業家の神山理子さんは「定番ブランドがあっても、参入していないセグメント領域を見つけて参入できるかどうか見極めることが大切だ。私がオナホD2Cを始めた21歳当時、オナホブランド『TENGA』は使い捨てタイプで知名度が高かったものの、何度も洗えるタイプに定番ブランドは存在していなかった」という――。

※本稿は、神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■「狂った熱量」は事業を伸ばす上で強い武器になる

他社が参入しづらい領域を選ぶことも大切ですが、このときに参入障壁になる要素としては「自分の強みが活かせる」や「他社がコンプライアンス的に参入できない」などが挙げられます。

私がやっていた音楽メディアの場合、私が元々音楽をずっとやってきていることに加え、収益化をしていて、音楽に対しての知見や熱量が人よりもかなり多いという強みがありました。

「自分の得意分野である」というのは、新規参入の際に考慮してよい条件です。

「人よりもめちゃくちゃ好き」という狂った熱量は、事業を伸ばす上で想像以上に強い武器になります。

ここで重要なのは人よりも“めちゃくちゃ”好きということです。

「人並みに好き」程度では強みにならず、人がついていけないくらい狂ったように好きで初めて、競合と戦える武器になります。

オナホ市場の場合、当時はWebマーケティングで圧勝しているオナホメーカーがまだ存在していませんでした(最近ではWebマーケティング発のD2Cブランドが増えていますが、オナホ市場ではWebマーケティング発のD2Cブランドはまだ存在していなかったのです)。

昔ながらの老舗メーカーが多く、「Webでも販売はしているものの、主な販路は小売店」という販売会社がほとんどでした。

つまり、私が得意なWebマーケティングが強みになるということです。

さらにアダルトグッズだと、「上場企業」や「上場を視野に入れている企業」が参入できないという「他社がコンプライアンス的に参入できない」という障壁もあります。

そのため、市場規模が大きいにもかかわらず、競合数が少ないのです。

■事業が拡大したときのための備え

事業が伸び始めると、参入障壁を突破してくる(模倣する)企業が現れるため、事業考案段階でそのリスクヘッジも同時に考える必要があります。

ベンチャー企業が市場開拓をし終わったタイミングで、大手が参入して資本力で殴られて全滅なんてこともあります。

しかしアダルト領域においては、「上場企業」または「上場を視野に入れている企業」はそもそも競合対象外になるため、後発の競合にシェアを奪われる可能性は通常の商品よりも低いのです。

「他社にはない自分の強みがある」「他社がコンプライアンス的に参入できない」などの参入障壁は、競合対策として重要な視点になります。

オペレーションコストを少しでも減らすため、製造過程が単純で、製造難易度が低い領域だとさらに参入しやすいでしょう。

オナホの製造方法は「金型に素材を流し込んで固める」というとてもわかりやすい方法です。

精密機械や消費期限のある食品とは異なり、製造から発送までのオペレーションが組みやすいのです。

■勝敗を分ける納品スピードが出せる商品か

また製造しやすい商品だと、納品スピードも早い傾向にあります。

最短で商品を発売したり、商品改良のサイクルを早めたりできるため、PDCAが回しやすく、Webマーケティングとの相性も良いです。

特に流行に左右されやすい商品は、発売までのスピードが勝敗を分けます。

「企画段階では絶対イケる市場だったのに、開発に時間がかかって発売する頃には流行が終わっていた」なんてことを避けるために、納品スピードは必ず確認するべきです。

タブレット端末で在庫確認をする女性
写真=iStock.com/1shot Production
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/1shot Production

また「商売の基本は、安い値段で仕入れて高く売る」と言われているくらい、高価格で売り出しやすいかどうかは重要です。

より厳密に言うならば、「高い値段で売っていても違和感がない」ということです。

日用品などの顧客にとって価格相場がある程度決まっている商品は、よほど高級路線のブランディングが上手くない限り、価格競争に巻き込まれやすいです。

例えば、1ロール1000円のトイレットペーパーを売るのは、「トイレットペーパーの相場はせいぜい1ロール20円〜50円程度だろう」とわかっている顧客にとって「高い」と感じやすく、購入へのハードルが上がります。

ところがオナホ市場は、一般的な価格のイメージがつかみにくいため高価格帯で売り出しやすいのです。

実際に、オナホの相場は3000円前後ですが、自社商品は5000円台で販売しています。

■販売チャンネル選びで失敗しないチェックポイント

商品企画時点から、販売チャネルもあらかじめ考えておく必要があります。

販売チャネルによって、商品名やパッケージデザインの設計が変わるからです。

私は、自社サイトを開設せず、販売チャネルをAmazonのみに絞っていました。

なぜなら、Amazon自体の会員数と信頼性が高いため、購入率が上がるからです。

また当然ですが、顧客はすでにアカウント登録をしているため、購入フローに「会員登録」や「住所入力」などの離脱率の高い工程が存在せず、購入率が高くなります。

「公式サイトで買うのはめんどくさい」と、多少割高になったとしても自社ECではなくAmazonで購入する人もいるくらいです。

加えて、プライム会員だと「公式サイトで購入するより早く届きそう」と、さらにAmazon利用率が上がります。

また、アダルト商品は公式サイトで購入するハードルが高いジャンルでもあります。

「アダルトサイトに会員登録すると、架空請求などのスパムにあうかもしれない」というイメージが強く、購入検討者は購入サイト選びにより慎重になります。

少しでも「このサイトは怪しい」と思われてしまうと、購入されなくなる可能性が高くなるジャンルです。

独自の公式サイトではなく、顧客が普段利用しているAmazonでの購入機会を用意することによって「情報を抜き取られなそう」と安心して購入してもらいやすくなります。

さらにフルフィメント by Amazon(商品の配送をAmazonに委託できるようになるサービス)を利用することで、梱包・発送のオペレーションを行う必要がなくなります。

その分、Amazon販売手数料はかかりますが、オナホの場合は、購入率の高さやオペレーションコストを踏まえても、採算が合います。

矢印に向かって全力疾走する人
写真=iStock.com/erhui1979
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/erhui1979

「楽天市場やYahoo!ショッピングはダメなの?」と疑問に思う方がいるでしょう。

実は楽天市場やYahoo!ショッピングはオナホールの出品が規約違反なんですよ。

思わぬ落とし穴なので、販売チャネルを選定する際には、規約を必ず確認しましょう。

■天下のTENGAに戦わずして勝つ方法

まだその領域で、定番ブランドが存在していないというのも、領域選定においては重要です。

定番ブランドがあると、コンセプトの良さは関係なく、顧客が何も考えずにそのブランドを購入するからです。

オナホというと「TENGA」をイメージする人が多いでしょう。

「TENGA」のブランディング力は強く、オナホブランドとしての知名度が強そうですよね。

しかしTENGAのメイン商品は「使い捨てオナホ」です。

「1回使ったら、そのまま蓋を閉めて捨てられる」という手軽さが反響を呼び、「ちょっとオナホに興味がある」というオナニーライトユーザーや、「手軽な面白いプレゼント」として男子高校生に人気があります。

それに対して、オナホ市場全体では実は「使い捨てオナホ」よりも「洗って何度も繰り返し使うオナホ」のシェアのほうが断然多いことがわかりました。

オナホヘビーユーザーにとっては、使い捨てオナホのTENGAはコスパが悪く、「洗って何度も繰り返し使うオナホ」を選ぶのです。

「洗って何度も繰り返し使うオナホ」をいくつかストックして、その日の気分によって使い分けるのが彼らの定番の使い方です。

そして、「使い捨てオナホといえば“TENGA”」と言われるほどTENGAの知名度は高いものの、「洗って何度も繰り返し使うオナホといえばこれ」と言われるほどの定番ブランドはまだ存在していないことがわかりました。

神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)
神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)

私が得意なWebマーケティングを武器とする既存メーカーがなく、コンプライアンス的に参入できる企業も少ない。

製造難易度が比較的低く、まだ定番ブランドが参入していないという点で、オナホ市場は私にとって参入しやすい領域だったのです。

私はエロが苦手だったし、性別的にオナホユーザーにもなり得ないため、「人よりもめちゃくちゃ好き」という強みの部分は論外でしたが、他の部分で十分なチャンスがあると考えました。

領域選定は全ての要件を満たしている必要はなく、あくまで目安として考えていけばいいでしょう。

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神山 理子(かみやま・りこ)
起業家
愛称はリコピン。1997年生まれ。明治大学商学部卒。20歳の時にインターン先で音楽メディアの運営責任者となり、業界No.1までグロースして売却。その後シンガポールにて新規事業を立ち上げ、同事業の法人化を経て、オナホD2Cの会社を創業。自ら開発したオナホをAmazonランキング4位にまで育てるも過労のため退任。休暇3日目に新しい事業アイデアが閃き、休みもそこそこに自身2社目となる(株)ひだねを立ち上げる。創業1年で同社を売却し、次の事業に向けて準備中。消費者のインサイトを掘って、コンセプトをつくることが得意。たまにマグロ漁船員。1児の母でもある。

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(起業家 神山 理子)

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