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半年でTOEIC600点→900点に…45歳で英語をマスターした私が教える「単語学習アプリ」のズルい使い方

プレジデントオンライン / 2023年4月29日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NicoElNino

英語の語彙を増やすにはどうすればいいのか。デジタルハリウッド大学の橋本大也教授は「私は45歳で英語の再入門を始めて、半年でTOEICが600点から900点になった。このとき英単語を集中して覚えたが、そのコツは『覚えようとしないこと』だった」という――。

※本稿は、橋本大也『英語は10000時間でモノになる』(技術評論社)の一部を再編集したものです。

■「ボキャビル」はモチベーションがないと続かない

単語を集中して覚える学習をボキャブラリ・ビルディング(ボキャビル)と呼びます。

ボキャビルは、無理してやる必要はありません。読める本を読むだけでも語彙(ごい)は自然に増えていきます。数年間もやっていれば、結構な語彙が身につくでしょう。本を楽しく読むことが何よりも大切です。やりたくないことはすべきでありません。でも、その数年間を数分の一に短縮したいとしたら、ボキャビルの出番です。

覚えた英単語が1.5万語程度に達すると、一般的な本や新聞が負荷なく読めるようになります。ボキャビルなしでそのレベルを達成するには5年や10年くらいの時間が必要になると思います。それを劇的に短縮する方法がボキャビルなのです。

ボキャビルの弱点として、たとえいったん覚えても忘れてしまうことが挙げられますが、多読と併用すると日常的に覚えた単語と触れ合うことになるので忘れることがありません。多読と暗記は対照的に見えますが、じつは相性がいいのです。

ボキャビルは、精読と並んで取扱注意の劇薬です。十分にモチベーションがある人以外、手を出してはいけません。ただし、楽しく取り組めたら劇的な効果があります。楽しいというよりも「苦しくない体験にする」というのが正しいかもしれません。

私はボキャビルをやる際、「これはズルいドーピング行為なんだ」と思ってコソコソやっていました。英語でいうギルティ・プレジャー(後ろめたいがやめられない物事)でした。単純な作業になりがちなボキャビルを楽しい習慣にするには、気の持ちようが大切です。

■英単語は覚えようとしてはいけない

ボキャビルをやる決意をした人に、単語を暗記するコツを伝授します。

「覚えようとしないこと」

言いまちがいではありません。単語をあえて覚えようとしないことが重要なのです。

たとえば、resolution(決意)という単語を覚えたいとします。はじめて単語学習アプリがresolutionを提示してきて、意味を答えられなかったとします。あなたはどうしますか?

おそらく、正解を答えられずイライラします。そして、「resolution=決意だ、resolution=決意だ、resolution=決意だ」と何度も頭の中で唱えます。単語と意味のペアの脳内のつながりを強めようと念じます。ノートに書いて覚えようとするかもしれません。

■根性で覚える暗記方法は効果が薄い

私の経験では、この覚えようとする努力はしなくていい。小さなイライラが積もり積もって、学習が嫌になってくるからです。それに、根性で頑張っても、大した効果がないからです。みなさんは、学生時代の根性のボキャビルをどれくらい覚えていますか? 忘れた単語が多いでしょう。現代のアプリを使ったボキャビルでは、なおさら不要だと確信しています。

英単語の勉強
写真=iStock.com/s-hide-1009
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/s-hide-1009

私は、resolutionに対して瞬時に決意だと答えられなかったら、正解画面を軽く眺めるだけ。すぐ次の問題に進みました。アプリは誤回答した単語を定期的に繰り返し聞いてきます。2回目も3回目も答えられない。でも、気にせず、次の問題へどんどん進めました。まちがえたとき気に病まないこと、逆に正解したときは爽快感をたっぷり味わうように意識しました。

記憶力とは不思議なものです。接触回数が増えると、いつか自然に覚えます。私の場合、2週間くらいしてresolutionを目にした回数が10回目くらいになると、自然に「決意」という意味が思い浮かぶようになりました。正解の爽快感をかみしめます。そこからあと数回繰り返せば、安定した記憶になります。覚えようとして覚えた単語よりも、時間をかけて自然に覚えた単語は長く忘れないものです。感覚化しているからですね。

■1単語を覚えるのに2~3週間かける

覚えようとしない暗記法は、1つの単語を覚えるのに長い時間がかかります。でも、アプリは同時に何十語か何百語のセットを覚えさせようとしています。1語を覚えるのに2週間とか3週間かけるイメージで、のんびりと取り組むことがボキャビルのコツなのです。それでも、数カ月という長期間では大量の単語の暗記が可能です。

ボキャビル用のアプリは数十種類あります。人気ランキング上位のものは、どれもよくできています。学習目的と好みから好きなものを選べばいいと思いますが、私が一番よく使ったアプリはiKnow!でした。コース設定や例文が大人の再学習に最適です。脳科学にもとづく学習プログラムで、最適なタイミングで、最適な単語を学習することができます。いったん正解しても、また忘れたころに同じ単語を聞いてきます。本当に記憶に定着するまで完了になりません。

iKnow!は、単語を単体ではなく、その単語が使われるフレーズで覚えさせようとします。スペルやリスニング能力も総合的に身につくように設計されています。単語とその意味のペアを覚えるのではなく、使い方を覚えさせる、よくできたプログラムです。

■中級者以上には「iKnow!」がおすすめ

私は英語に再入門した最初の2年でiKnow!のほぼ全コースを完了しました。TOEICの得点を伸ばし、英検1級に合格できたのも、iKnow!によるボキャビルのおかげだったと思います。イチオシです。

ただiKnow!は、中級者以上向けが充実していて、若干スパルタ的なところがあります。「もう少し気軽に楽しみながら」という初心者の方には、duolingoとmikanをおすすめします。どちらも、基本単語をゲーム感覚でマスターしていくことができます。

ちなみに、TOEICを受験する人には、“金のフレーズ”こと『TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ』(TEX加藤著、朝日新聞出版社刊)、あるいはアプリの「金のフレーズ2」がおすすめです。私が唯一使った紙の単語帳でした。iKnow!のような学習の仕組みは特にないのですが、TOEICのスコアアップに直結する内容であるため、試験用にドーピングをするズルい気持ちで取り組むといいでしょう。

■資格試験を活用して学習のモチベーションを上げる

ボキャビルと同時に、TOEICや英検のような資格試験を目指すことをお勧めします。ボキャビルは、そうした資格試験の特効薬でもあるからです。語彙と正比例して、みるみる得点や級が上がるはずです。それがボキャビル継続のインセンティブになります。

私は45歳で英語の再入門を始めて、1年目と2年目はTOEICと英検を真剣に勉強していました。再入門時の私の英語力は、TOEICで600点レベルでした。大卒の平均点といったところです。

私の仕事場では、資格試験はあまり意味がありません。ですから、純粋に自分の英語の能力を測りたくて始めました。普段は大学教員なので試験を出す側で、試験を受けたのはもう何十年も前でしたが、久しぶりの試験に燃えました。毎回の出来に一喜一憂しました。

資格試験を受ける動機は、入試、就職、職場で求められるなど、さまざまだと思います。内容については、実践的だとかそうでないと賛否両論あります。しかし、1年か2年、真剣に向き合うなら、どの試験を選んでも、確実に英語が上達すると思います。

単調になりがちなボキャブラリ・ビルディングに長期間取り組めたのは、資格試験のおかげでした。毎回の結果を見て、うれしい、悔しいと感情が大きく揺れ動きました。家族からもからかわれましたが、これが学習のドライビングフォースになりました。

コミュニケーションと瞬発力を鍛えたいならTOEIC、本や新聞を読んだり文章を書きたいなら英検がおすすめです。それぞれの勉強法をお伝えします。

■TOEICでは単語の暗記が何より重要

私のTOEIC初回は約600点でした。思ったより低い点数でショックを受け、立て直しを決意し、2カ月後に受けた2回目で800点を超えました。さらに半年もすると、900点を超えました。この急上昇は、猛勉強したことは事実ですが、TOEICが傾向と対策を研究すると点数に直結する試験だったからでもあります。本当の英語力というより、TOEIC力を高めて短期間で高得点を取ったのです。

TOEICでは、まず単語の暗記が何より重要です。ありがたいことに、TOEICの問題に出てくる単語は限られています。単語の暗記を頑張ると、知らない単語は1つも出てこないという状態にすることができます。

TOEICの学習法では、一般には「過去問をたくさん解け」と言われます。同じタイプの問題が多いからです。しかし、私は過去問はほとんどやりませんでした。毎月受けていたので、それ以上はいらないと考えたからです。ただ、点数アップに過去問を推奨するのは正しいと思います。初回や久々に受ける人は、取り組むと点数につながると思います。

唯一やった過去問は、リスニングパートです。ナレーターの声に慣れるため、出題されるパターンに慣れるためです。文章が短いので、1語聴き落としてもリカバーできる現実の会話よりも丁寧に聴きとる必要があります。

そして、800点以上の高得点を取るには読書が効果的です。普段本を読んでいると、難題と言われるパート7の長文問題が長く感じなくなるからです。読書している人は、時間がだいぶ余るはずです。私のTOEICの点数が急上昇したのは、多読と並行していたからであることはまちがいありません。

■英検のハイレベルの単語も大量の読書をしていればクリアできる

毎月あるTOEIC試験をペースメーカーにしながら、本命の英検1級の勉強に力を入れました。

英検1級は、TOEICと違って傾向と対策が立てにくいように思います。私が3回の受験、1年半で合格できたのは、大量の読書のおかげでした。英検1級の問題は、単語の難易度が高いことで有名です。私も、最初の受験では面喰らいました。ハイレベルの単語が連発していました。

橋本大也『英語は10000時間でモノになる』(技術評論社)
橋本大也『英語は10000時間でモノになる』(技術評論社)

読書をしていない人は、英検1級の単語を覚えることに抵抗があるようです。「こんな単語を覚えても一生使わないよ」と思ってしまうのです。たしかに、日常のコミュニケーションでは使わないかもしれません。しかし、普段、英語で読書をしていると、英検1級の単語は普通に使われる単語なのです。見たこともない単語は覚える気がしないかもしれませんが、見たことはあるけどわからなかった単語は覚えるモチベーションが湧いてきます。iKnow!で英検1級用の単語を暗記しました。

英検1級の問題には、細かな文法を問うものはほとんどありません。長文の内容を正確に理解できているかが問われます。単語については、完全に理解できていなくても、なんとなくわかる単語がいっぱいあれば、問題には答えられます。これは、知らない単語を飛ばして読んでいる読書とまったく同じでした。

英検1級に合格する頃には、辞書なしでやさしい一般の本が読める段階になると思います。そこから先は、もう資格試験で能力を測るのではなく、どれだけ難しい本が読めるか、ややこしいコミュニケーションをこなせるようになったか、自分で判断できるようになります。試験にお別れです。

そして、ある程度英語で本が読めるようになったら、英語を学習するための本も英語で書かれたものに変えましょう。英語で英語を学ぶと、加速度的に英語が上達していきます。

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橋本 大也(はしもと・だいや)
デジタルハリウッド大学 メディアライブラリー館長
1970年生まれ。ITビジネスのコンサルティング業を経て、ビッグデータ分析と人工知能のベンチャー「データセクション」を創業。同社を上場させ、現職。教授としてデータサイエンス人材育成にも努める。英語圏で書評ブログを発信中。著書に『情報考学 WEB時代の羅針盤213冊』(主婦と生活社)など。

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(デジタルハリウッド大学 メディアライブラリー館長 橋本 大也)

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