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年収700万円以上から「コンビニの値札」を気にしなくなる…統計が明らかにする「年収別の生活レベル」とは

プレジデントオンライン / 2023年5月8日 10時15分

出典=マイナビ転職『賃金についての調査』(2022年)

満足した生活を送るためには、いくら稼げばいいのだろうか。マイナビ転職編集長の荻田泰夫さんは「年収が700万円を上回ると、生活の満足度が大きく好転するというデータがある。このラインが、ビジネスパーソンとして一つの目標になりえるだろう」という――。

■正社員の約6割は今の生活に金銭的な不満を抱えている

収入アップが見込めない状況で、物価や電気料金などの高騰が続くなど、お金に関する悩みは尽きない。

どの程度の年収があれば不安・不満はなくなるのか。年収レンジごとの「生活のリアル」を見ていこう。自分の目指す生活レベルがどのあたりなのか、お金の悩みを解消するにはどうすればよいのか、ぜひ参考にしてほしい。

マイナビ転職の『賃金についての調査』によれば、今の生活に対して金銭的に「不満」だと答えた人が約6割にのぼった。将来の生活に対しても聞いたところ「不安」という答えが全体の7割を占めている。

現在の賃金(年収)が妥当かどうかを聞いたところ、最も多い答えが「低過ぎる」(約4割)だった。年収500万円以下の約5割が「賃金が低すぎる」と感じており、「賃金が低すぎる」と回答した人の理想の年収と現実の年収の差額は約100万円だった。

正社員の年収の中央値は450万円。年代別に見ると、20代が350万円、30代が425万円、40代が500万円と、年代が上がるにつれて、少しずつ上昇する傾向はあるものの、管理職と一般層では300万円の差が出ている。

次に年収レンジごとの生活のリアルを見てみよう。

■年収300万円未満の3人に1人が「食費」をためらっている

「金銭的理由で生活費の出費をためらうことがあるか」を調べたところ、年収レンジごとにためらう項目にも差がみられた。

年収300万円未満がためらう出費
1位:被服・美容・化粧品費 46.8%
2位:趣味・娯楽・レジャー費 45.2%
3位:交際費 38.3%
4位:食費 34.6%
5位:車両費・移動費 22.3%

今の生活の満足度については77.1%が「不満・やや不満」と回答。20代単身者の割合が高く、生活必需品以外の出費はなるべく抑える傾向がある。特に必須であるはずの「食費」の出費をためらうのは、他の年収レンジと比較して高い数字となっているのが特徴的だ。

SNSでも食品価格やコンビニ弁当の値上げについての悲鳴が後を絶たないことから、例えばコンビニで昼食を購入するにしても、比較的安価なお弁当やおにぎりにするなど、「食べたいもの」より「価格やコスパ」を重視せざるを得ない状況が推測される。

飲料などを含めた食費を1日1200円以内に抑えたとしても、月3万6000円ほどの出費となるため、外食やカフェの頻度を調整したり、できる限り自炊したりするなど、節約を心がけている人も多いのではないだろうか。

■年収300万~500万円は「交際費」をためらう人が少ない

年収300万~500万円未満がためらう出費
1位:趣味・娯楽・レジャー費 36.7%
2位:被服・美容・化粧品費 32.7%
3位:食費 27.5%
4位:交際費 26.7%
5位:車両費・移動費 20.2%

他の年収レンジと比較して「交際費」をためらう人が少ないのが特徴的だ。20〜30代の独身者の割合が高く、自分で自由に使えるお金もある程度あることから、友人や同僚との外食などをためらわない人が多いのではないだろうか。今の生活の満足度について64.0%が「不満・やや不満」と回答している。

年収500万~700万円未満がためらう出費
1位:趣味・娯楽・レジャー費 39.7%
2位:交際費 31.6%
3位:被服・美容・化粧品費 29.4%
4位:食費 23.0%
5位:車両費・移動費 22.7%

「趣味・娯楽・レジャー費」をためらう人が比較的多い傾向が見られる。30〜40代で子どもがいる既婚者の割合が高いことから、子どもの衣類などで「被服・美容・化粧品費」は削れない分、趣味や娯楽は諦めざるをえないという人も多そうだ。今の生活の満足度については51.4%が「不満・やや不満」と回答している。

【図表】【年収別】金銭的理由で出費をためらう・諦めることがあるもの(複数回答・上位5項目)
出典=マイナビ転職『賃金についての調査』(2022年)

■年収700万円以上の約6割が生活に満足している

年収700万~900万円未満がためらう出費
1位:交際費 34.4%
2位:趣味・娯楽・レジャー費 26.7%
3位:被服・美容・化粧品費 24.4%
4位:車両費・移動費 20.6%
5位:食費 18.3%

役職者もしくは企業規模5000人以上の企業に勤務する人の割合が高く、居住エリアは首都圏・大阪・名古屋など大都市に絞られてくる。家での食費はさほど気にしないものの、友人との外食や飲み会は適度に控える傾向が見られる。居住地域や家族構成によって大きく変わるため一概に言えない部分もあるが、宅配サービスやカフェを気軽に利用する、コンビニやスーパーで何か買う際にも、食材以外にお酒や好きな果物を購入するなど、食べたいものをそこまで躊躇しないという人が多そうだ。

今の生活の満足度については、この年収ラインではじめて「満足・やや満足」が「不満・やや不満」を上回り、60.3%が「満足・やや満足」と回答している。

■年収900万円を超えると所得税の負担が大幅に増える

年収900万~1100万円未満がためらう出費
1位:交際費 27.0%
2位:趣味・娯楽・レジャー費 25.4%
3位:被服・美容・化粧品費 22.2%
4位:食費14.3%
5位:車両費・移動費 14.3%

40歳以降の管理職が多く、今の生活の満足度について「満足・やや満足」と答えた割合は52.4%と、年収700万〜900万円未満の年収レンジを下回っているのが興味深い。年収900万円を超えると所得税の負担が大幅に増えることが弊害の一つになっている可能性もある。

壁にもたれ頭を抱えるビジネスマン
写真=iStock.com/DNY59
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DNY59
1100万円以上がためらう出費
1位:趣味・娯楽・レジャー費: 30.4%
2位:交際費 21.4%
3位:被服・美容・化粧品費 19.6%
4位:食費 16.1%
5位:車両費・移動費 8.9%

経営者や役員の割合が高くなり、賃金が「見合っている」(53.6%)という回答が最も多くなる。今の生活の満足度については73.2%が「満足・やや満足」と回答している。

以上のように、年収700万円未満の半数以上が生活に不満を感じているのに対し、年収700万円以上では約6割が生活に満足している。必ずしもお金がすべてではないものの、現実として年収700万円以上なら生活に満足と感じる人が多いと言えそうだ。

■金銭的なストレスが生活の満足度にも影響

年収700万円以上の半数以上が「賃金は見合っている」と回答しており、趣味や娯楽への出費をためらう人は少ない。一方、年収700万円未満のうち4割が趣味・娯楽・レジャー費の出費をためらう傾向がある。

内閣府の「満足度・生活の質に関する調査報告書 2022」によれば、趣味の有無は心の健康状態に大きく影響する。「趣味や生きがいがある人」の半数以上はストレスがない状態だが、「趣味や生きがいがない人」の3割近くの方がストレスの高い状態にあるという。

「生きがいがない」と考える理由として「使える金銭の余裕がない」と回答している人が3割を超えており、生活満足度、生活の楽しさ・面白さの満足度がともに低いことが示されている。

お金のかからない趣味や娯楽もあるので一概には言えないものの、趣味や娯楽に出費できるゆとりの有無も、生活の満足度に少なからず影響しているようだ。

■「年収700万円の壁」を超えるための選択肢

年収を上げるには、例えば次のような選択肢がある。

① 年収の高い職種・業界・企業に転職する
② 管理職を目指す
③ 副業をする
④ 時代に合った新たなスキルを身に付ける
⑤ 起業する

「管理職を目指す」ことは今いる会社で年収をアップさせる方法としてはもっともオーソドックスだが、自身でコントロールできない部分が多く、誰にでもオススメとは言い難い。

「年収の高い職種・業界・企業に転職する」のが実現可能性や達成までの時間を考えると挑戦の価値あり、と言えるだろう。一見難しいチャレンジと感じるかもしれないが、マイナビ「転職活動における行動特性調査 2022年版」によれば、転職にあたって業種を変える人は約6割、職種にいたっては約7割が変わっている現実がある。

■ゆくゆくは年収700万円以上を狙えそうな会社に入る

成長産業においては常に人手不足のため、未経験者に対しての研修や育成に力を入れている企業も多い。未経験から始められる企業に入社し、数年間スキルを磨いた後に、目指す年収が得られる企業に転職するという手段もある。

マイナビ転職で「初年度年収700万円以上」かつ「職種未経験OK」の求人は全体の約7%(3月7日現在)。「初年度年600万円以上」では約14%と倍の求人がある。いきなり年収700万円以上を目指すのではなく、ゆくゆくは年収700万円以上を狙えそうな会社に入るほうがハードルは低いだろう。

契約成立で握手
写真=iStock.com/wutwhanfoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/wutwhanfoto

地方在住でも賃金が比較的高い傾向のある都市部の企業に入社し、必要な時以外はフルリモートで働ける企業もある。勤務地を居住地ではなく都市部を指定して「フルリモートワーク」や「完全在宅勤務」で検索するとかなりの数の企業の募集が見つけられるはずだ。

今の業界・職種にしばられず、広い視野で転職活動を行うことで、可能性を見いだせるのだ。

■どこに身をおけば自分の市場価値が上がるかを見極める

業界・業種など“経験”を軸に転職先を探すのがスムーズではあるが、少し軸をずらして仕事を探すと可能性が大きく広がるケースが多い。

特殊な例かもしれないが、声優だった人が営業職に転職した例がある。その企業の営業職はお客さま向けの説明会で話をするのがメインの業務のため、「声を使う」「話す」という得意なスキルをアピールして転職し、第一線で活躍している。

ホテルに勤務していた人が金融系の営業職に採用されることも多い。高度な接客マナーとホスピタリティを兼ね備えているため、ハイクラスのお客さまを相手にする資質ができているという印象を持ってもらえるからだ。

「自分の強みが分からない」と思っている人は、仕事の経験だけではなく、趣味や普段の生活に関わることを含めて、自分の得意なことや、人よりも容易にできることは何かを洗い出すと、自分の本来の強みが見えてくるはずだ。

自分の得意なことを生かせる仕事は何か?
自分をどんな理由で売り込めるのか?

自分の市場価値を最も高められる環境を見つけられるかどうかが大事なのだ。

■キャリアプランの有無が行動に変化をもたらす

年収を上げるには、いつまでに、どれくらいの収入を得たいのか、目標を立てることをお勧めしたい。目標を達成するには、自分に残されたビジネスパーソンとしての時間を自覚してキャリアプランを描き、実行していくことが欠かせない。キャリアプランは若手だけのものではないのだ。

ハーバード大学の学生を10年間追跡調査した結果が興味深い。「目標をもっているが、紙には書いていない」と答えた卒業生(全体の13%)は、「目標をもっていない」と答えた学生の2倍の収入を得ていた。「目標をもち、それを紙に書いている」と答えた卒業生(全体の3%)は、残り97%の卒業生の10倍の収入を得ていた。

目標を持ち、紙に記して明確に見える化することで、潜在的な意識が実際の行動に良い影響を及ぼし、収入アップにつながるキャリアを後押ししてくれたと言えるのではないだろうか。

年収が700万円を上回ると、生活の満足度が大きく好転するという現実がある。

そのラインが、ビジネスパーソンとして一つの目標になりえるだろう。転職、副業などさまざまな方法があるが、まずは具体的な目標を立て、達成に向けた行動計画に落とし込み、実行していくことが大切だ。

より満足度の高い生活を求めるのであれば、一歩踏み出してみる価値はあるはずだ。

参考資料
※1:マイナビ転職『賃金についての調査』(2022年)
※2:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書 2022」
※3:マイナビ「転職活動における行動特性調査 2022年版」
※4:マイナビ転職『副業に関する意識調査』2020年11月
※5:Harvard Business School Goal Story Study about goals at Harvard MBA program, 1979.

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荻田 泰夫(おぎた・やすお)
マイナビ転職 編集長
2006年マイナビ入社。企業の中途採用支援を行う。その後、東京、近畿、東海エリアの営業統括部長を経て、2017年より総合転職情報サイト『マイナビ転職』の編集長に就任。2018年より、転職事業本部 副事業本部長。現在は「マイナビ転職 YouTubeチャンネル」で求職者向けに、「HRチャンネル・HRサロン」にて企業の人事担当向けに積極的な情報発信を行っている。

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(マイナビ転職 編集長 荻田 泰夫)

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