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「祖父母は孫に高いランドセルを買い与えてはいけない」中高年の"見栄支出"が本人と子孫を滅ぼす

プレジデントオンライン / 2023年4月27日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

中高年になったら変えるべきことは何か。明治大学文学部教授の諸富祥彦さんは「中高年は、時間、体力、気力、エネルギーを節約しないと、やっていけなくなる。エネルギーを奪う余計なコト・モノや人間関係、商品と自尊の欲求は思い切って捨てた方がいい」という――。

※本稿は、諸富祥彦『50代からは3年単位で生きなさい』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

■50代・60代は自分の心に聞いてみて「捨てる」

まず、中高年になったら、思い切って「捨てるべき」ものについて、お話ししたいと思います。中高年になったら、思い切って「捨てるもの」は主に4つあります。

①時間とエネルギーを奪う「余計なコト」
②余計なモノ
③余計な人間関係
④見栄や世間体(承認と自尊の欲求)

それでは順番に説明していきましょう。

①時間とエネルギーを奪う「余計なコト」を捨てる

中高年になると、「残り」の人生の時間がだいぶ少なくなってきます。体力も気力も衰えてくる。時間、体力、気力、エネルギー、これらを節約しないと、やっていけなくなります。

私も実感していますが、50代半ばを過ぎたあたりから時間の流れが、とても速くなっていきます。時間が本当に足りない。

毎日、さっき起きたと思ったら、もう夕方、夜になっている。

「あれっ、さっき起きたばっかりなのに、今日はもう終わっちゃうの」

こんな毎日です。

時間が本当に足りない。毎日がこんなに短いんだったら、10年なんてもう「あっという間」です。

相当時間を節約しないと、いい人生を生きることはできないと思います。

では、どうすればいいのか。それは「余計なコトを捨てる」ことです。余計なコトに使う時間、エネルギーを減らす。そして、大切なことにだけ集中的に時間とエネルギーを使っていくのです。

「こんまり」するのです。近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』というベストセラーがありますが、アメリカで「こんまり」と言ったら、知らない人はいないのではないでしょうか。アメリカでは「こんまり」すると、日常用語で使うくらい有名な言葉ですね。

「こんまり」する。それは、あるモノをとっておくか捨てるかは、自分の心に聞いてみて、「ときめかないと捨てる」ということです。ときめかないと捨てる。ときめいたら捨てない。この方針で、「すること」「捨てること」を振り分けていくのです。

■惜しくても心を鬼にして、ためらいなく捨てていく

②「余計なモノ」を捨てる

中高年になったら、どんどんモノがたまります。

特に都心で暮らそうとすると、広い住居は望めません。年を取ると、狭くても便利な場所。狭くても便利な住居。いろいろなところに通うのに、便利な場所で暮らしていく。都心回帰の傾向が中高年になればなるほど高まってくるのも、よくわかります。将来のことを見据え、大きな家を処分して都心に住み替える方も少なくありません。

子どもを育てている時は大きな家がよかったけれども、夫婦だけだと、あるいは単身だと、広い家は掃除をするのに大変なだけ。狭くても便利な都心の、移動が便利な場所に住みたいというニーズが高まってくるわけです。

そうなってくると、部屋は狭くなります。ますますモノを置く場所がなくなって、さて「こんまりするか」となるわけです。

私は学者ですから、書籍が多いんですね。しかし、研究室は残念ながらそんなに広くないです。だから書籍も選んで捨てていく。多少惜しい気持ちになっても「これは要らない」と思ったものは、心を鬼にして、ためらいなく捨てていくことが重要です。

■退職したら終わる関係はそろそろ整理する

③「余計な人間関係」を捨てる

人間関係ですごく気を使っている、時間もエネルギーもすごく使っているという人が多いです。親戚関係。家族の関係。仕事関係。ボランティアでの関係。いろんなお付き合いがありますね。お付き合いに時間もエネルギーもすごく使ってしまっている。そんな人は、人間関係を整理する。人間関係を「こんまり」する。それが重要になってきます。

つまり、ときめかない人間関係は捨てていく。モノを処分するのと同じように、人間関係も処分していったほうがいい。

とりわけ、50代のうちに、自らの意思で人間関係を整理しておくことが大事です。60歳を過ぎると、死別や退職などで、望んでいなくても少しずつ人間関係が切れていきます。人がどんどん死んでいく。

手をつないで手をつないでいる人々
写真=iStock.com/TAK
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TAK

退職すると仕事上の付き合いだった人と、関係が完全に切れます。選ぶ・選ばないに関わりなく、自分の選択に関わりなく、だんだん孤独になっていく。精神的なショックも少なくありません。

「退職した後も続ける人間関係」と「退職したら終わってしまう人間関係」とを区別して、退職したら終わる関係はそろそろ整理していくのも重要です。

面倒な付き合いを避ける。1人で過ごせるような人間になることが、ますます必要になってくる。「孤独力」が重要になってきます。

惰性で続けている人間関係は整理する、カットするということをそろそろしていったほうがいいと思います。

たとえば、人間関係が大きなウエイトを占めている仕事をしている人には、「名刺が1万枚集まりました」というのを大きな喜びにしている人もいますね。人間関係、人脈が自分の大きな財産、リソースだというわけです。けれども、仕事を辞めてしまった後は、名刺のほとんどが役に立ちません。

ですので、人間関係が占めるウエイトを退職に向けて徐々に減らしていくのが大事だと思います。

あくまでも仕事上の付き合いの人は、「そのうち終わる付き合い」だと割り切って付き合っていく。一方、「仕事が終わった後も大事にしたい人間関係」が占めるウエイトをそろそろ大きくしていくのです。

仕事の忙しさで気を紛らわせてきた人ほど、退職するとぽっかりと心に穴があいてしまいます。孤独を楽しんで生きることができるようになること、「孤独の達人」になっていくことが重要です。

孤独力が高い人は、自分1人で人生を楽しむことができる。自分1人でじゅうぶんに深く、豊かな時間を過ごすことができるのです。

■中高年になって「捨てるべき最大のもの」

④見栄や世間体、「承認と自尊の欲求」を捨てる

皆さんの周りの「面倒くさい」50代、60代、70代を思い浮かべてください。「誰かに認めてほしいという気持ちが強い人」「誰かにプライドを立ててほしいという気持ちが強い人」ではないでしょうか。こういう気持ちが強いと、本当に、「面倒くさい人」になってしまいます。

面倒くさい中高年。なりたくないですよね?

「なんかあの人、面倒くさいねぇ~」と言われる人は、やたらと人に構ってほしがっている人です。

面倒くさがられる中高年になりたくはないでしょう?

だとしたら、捨てるべきは何か。捨てるべきは「承認と自尊の欲求」です。

承認と自尊の欲求、つまり「立ててほしい」「大切にしてほしい」「認めてほしい」という気持ちは、自己実現論で著名なマズローの言う人間の「欠乏欲求」の最大のものです。ここに執着してしまうか、それともそれから自由になれるかが、「面倒くさい中高年」になるか、

「さわやかに自分の人生を生きることができる人」になるかの大きな分かれ目になります。「認めてほしい」とか「かまってほしい」とか、こういった気持ちから、どれくらい解放されているか。そこに「さわやかな充実した中高年」になるか、人に求めてばかりの「面倒くさい空虚な中高年」になるかの大きな分岐点があるのです。

中高年になって「捨てるべき最大のもの」。それがこの「承認と自尊の欲求」なのです。

承認欲求が強いままだと、SNS上でも「いいね」欲しさに、おもねった書き込みをしたり、自分が批判されて逆ギレして噛みついたりします。

ちょっと批判されたら逆ギレして、噛みついたり、絡みついたりして、面倒くさい人。あなたの周りにもいるはずです。

そういう人にならないようにしましょう。

自分も疲れ果てるし、周りの人を振り回すだけです。

もし自分に、そういうことをしてしまいそうな傾向があると思ったときは、しばらく「SNS絶ち」をする。ツイッターをしばらく見ない。LINEもしばらく見ない。少なくとも、返信はしない。自分で書き込みはしない。見るだけにしておく。そうやって「面倒くさい人」にならないようにしましょう。

■40代以下の方に年賀状は控えたほうがいい

また、次の2つのことも、考えておきたいものです。

・年賀状、お歳暮などの何となく続けてきた「習慣」をやめる

50代、60代で「やめたほうがいいもの」は、何となく続けてきた「習慣」です。年賀状や暑中見舞い、お歳暮やお中元もそろそろやめてもいいかもしれません。特に、仕事関係の後輩や取引先のうち、年下の人への年賀状、暑中見舞いなどの慣習はやめてしまうのがいいと思います。

年賀状を書く男性
写真=iStock.com/JGalione
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JGalione

若い人でたくさん年賀状を書いている人は珍しいです。けれども、若い人にしてみたら、会社に残っている60代は、大先輩にあたります。「年賀状をもらったら返さなくては」という義務感だけで、年賀状のやり取りをしている可能性が高いです。

本当はやめたい。面倒くさいだけです。ですので、次の年からは、「年賀メール」だけにしておく。すると、「ああ、助かる」と思う若い方は意外と多いかもしれません。40代以下の方にはそろそろ年賀状は控えたほうがいいかもしれません。

お中元、お歳暮もそうですね。贈ってきたら返さないといけない。どの都市に住んでいるかによっても違いますが、地方だとまだまだこういう習慣が盛んです。

けれども、これももう50代半ばを過ぎたら、そろそろやめていいんじゃないかなと思います。お互い手間がかかるだけです。だったら、そのお金で自分の欲しいモノを自分で買ったらいい。手間も省けるし、効率がいいです。

そんなふうに、時間やエネルギーの使い方を変えていったほうがいいのではないでしょうか。

■孫に高いランドセルを買ってはいけない理由

・孫に見栄を張らない

60代半ばになったら、子どもや孫との付き合い方も見直したいものです(50代で、もうお孫さんがいる人もいるでしょうし、70代ではじめてお孫さんができる人もいるでしょうが……)。

たとえば、お孫さんが小学校に入学した時に、お祝いに数十万円も渡してしまう人がいます。

これは、双方にとってやっかいで、危険なことです。大金持ちならいいですよ。何億も持っている人ならば、ポンと数十万円渡してもいいと思うんですけれど、ふつうの人が70代になって、自分の老後の資金も心配なのに、見栄を張って数十万円も渡す。

本当はお金がないんだけど、見栄を張っているわけです。しかしこれは、自分の生活の首も絞めるし、相手にとっても気を使わせるだけです。これは、年寄りの承認欲求の表れですね。

ランドセルもそうです。今、ものすごく高いランドセルが売られていますね。お金がないのに見栄を張って高いランドセルを買い与える人もいます。

孫に「おじいちゃん、おばあちゃん、スゴイね」と思われたいわけです。しかし、1回これをやってしまうと、何か欲しくなったら、おじいちゃん、おばあちゃんに言えば買ってくれるんだと、悪い習慣をつけるだけです。モノを欲しがる悪い欲望を駆り立てるだけです。

その後も中学入学だから、高校入学だからと、金銭的な援助をその都度求めるようになる。ゲームが欲しくなったら、「おじいちゃん、おばあちゃん買って」と求めるようになる。親としては、わがままな子にしたくないということで、もうこれ以上、モノを買い与えたくない。

けれども、おじいちゃん、おばあちゃんが買うから、子どもの欲望にコントロールがきかないと困っている親御さんも多いんですね。

それに気付かずに、お孫さんに喜んでほしいから、どんどんモノを買い与えてしまう。しかも自分のなけなしの老後資金を減らしている。これは、やめたほうがいいです。

本当にお金がなくなったら、自分のお子さんに「ごめん。私、もう生活できない。なんとかして」と泣きつく。これこそホントの迷惑です。

■お年玉は「1人3000円」でいい

なので、60代、70代は自分で自分の生活資金をちゃんと管理する。そのためにも、ヘンに孫に見栄を張って大金を渡したりしないことが大事です。

お年玉なんかも同様です。あらかじめ「1人3000円ね」と言って、渡すことが大事です。たとえば、去年まで、1人1万円あげていた。けれども、70歳になって老後資金が底を尽き始めたというときには、正直に「ごめんね。おじいちゃんね、今、生活が苦しいんだ。去年まで1万円だったけれど、今年から3000円でごめんね」と言って正直に伝えるほうがいい。

これを「自己開示」と言います。自分の弱い姿をおじいちゃん、おばあちゃんが正直に見せることがお子さんやお孫さんの教育にとって重要になってきます。

見栄を張るのがカッコイイわけじゃないんですね。見栄を張らずに、自分の弱い姿を正直にさらすのが、人間としてカッコイイ。そういう姿を見せることです。

もしそれで子どもや孫が離れていくくらいだったら、離れてOKだと考えましょう。そんな子どもや孫は寄りつかなくてOK。お金目当てに寄ってくる子どもや孫は要らない。そんな姿勢でいいのではないでしょうか。

諸富祥彦『50代からは3年単位で生きなさい』(河出書房新社)
諸富祥彦『50代からは3年単位で生きなさい』(河出書房新社)

私は、まだ孫はいませんけれど、もし孫ができたとしたら、正直に、「ごめん。今お金がないから、今年のお年玉は1000円にまけて。1日の食事代、1000円で暮らしているんだ」と正直に言えるおじいちゃんになりたいと思います。

見栄を張らず、自分の弱みをちゃんとさらすことができるおじいちゃん、おばあちゃんがカッコイイ。そういう姿を見て、お孫さんも、立派に育っていくんだと思います。

余計な人、余計なモノ、余計な人間関係。そして、何より見栄と世間体、承認と自尊の欲求。これらを55歳から70歳くらいまでに少しずつ、少しずつ見直していきましょう。解約し、手放し、捨てていきましょう。本当に大事なものを大事にできる人生につながっていくはずです。

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諸富 祥彦(もろとみ・よしひこ)
明治大学文学部教授
1963年福岡県生まれ。教育学博士。臨床心理士。公認心理師。教育カウンセラー。「すべての子どもはこの世に生まれてきた意味がある」というメッセージをベースに、30年以上、さまざまな子育ての悩みを抱える親に、具体的な解決法をアドバイスしている。教育・心理関係の著書が100冊を超える。

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(明治大学文学部教授 諸富 祥彦)

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