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「プロテイン入りのお米」は売れるか…デキるマーケターなら企画段階で必ず確認する4つの項目

プレジデントオンライン / 2023年4月28日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shironagasukujira

ビジネスの成否を左右する顧客インサイトはどのように探ればいいか。起業家の神山理子さんは「思い込みに囚われず、顧客の中では整理しきれていない複雑な感情を体系化して整理する必要がある。『理想の状態は何か』などの4項目を見ていくといいだろう」という――。

※本稿は、神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■ボイトレ教室を本当に探しているのは誰か

インサイトを発掘する前に、まず心に留めておくべきことがあります。

それはインサイト発掘において、“思い込み”が想像以上に障壁となるということです。

私が音楽メディアをグロースしていたときのお話をします。

私は、全国のボイストレーニング教室を紹介するメディアをやっていました。

グロースするためにメディアの方向性を検討する会議にて、「ボイストレーニング教室に通うか検討している人は、本当は何を求めているのか?(インサイト)」を定義し直すことにしました。

私以外のマーケターたちは、「ボイストレーニングに通うか検討している人たちは、異性との「出会い」を求めているに決まっている。これは検証の余地もないでしょう」という意見でした。

確かに、ネット上では「料理教室 出会い」といった検索数が多いため、「ユーザーは習い事に出会いを期待している」という可能性もあります。

しかし、私の身近にいる音楽が好きな人たちは、私が想像する範囲では、異性と出会うために音楽をやっているのではなく、本気で上達したいと考えている人ばかりなのです。

「私と他のマーケターでは、周囲にいる人の属性が違う可能性がある」

そう思い、私は単独でアンケートを実施しました。

■インサイトは決め打ちせず、絶対に検証するべき理由

予算がなかったので、アンケートを作って、自分の友人や渋谷駅の通りすがりの人、マッチングアプリで出会った人などから、少しでもボイストレーニングを検討している人がいれば、片っ端から回答依頼をしました。

その結果、他のマーケターの仮説である「ボイストレーニングでは出会いを重視している」という人は全体のわずか2%しかおらず、「むしろ誰にも出会いたくなく、自分と向き合いながら本気で歌が上手くなりたい」という人が98%だったのです。

この結果には、他のマーケターたちも驚いていて、「あのまま検証せずに、出会い路線に変更しなくて良かったね」という話になりました。

もし「出会えるボイストレーニング10選!」みたいな訴求をしていたら、きっと本当にボイストレーニングを検討している層には何も届かなかったでしょう。

インサイトを考えるとき、無意識に自分の身近な人を想像しながら「きっとこういう気持ちなんだろうな」という仮説を立ててしまいます。

しかし「これは間違いないだろう」と思い込んでいるインサイトが、実際は全くの的外れだったということは多々あります。

インサイトは決め打ちせず、絶対に検証してください。

■顧客の欲求を表にして捉える方法

真のインサイトを見つけるには、思い込みに囚われないことが大切ですが、これは思っているより難しいです。

また、顧客の中では整理しきれていない複雑な感情を、体系化して整理していく必要があります。

これらの課題をクリアするにはインサイトを表にまとめることがおすすめです。

インサイトを表にする目的は、「彼らが抱えている悩みの裏側にある、彼らが気づいていない“本当の”悩みを見つけること」です。

「彼らは日常において何を理想の状態と見なしていて、本当はどうなりたいのか」を発見します。

そしてその理想状態を実現するために考えている「表面的な欲求」を見つけます。

「表面的な欲求」の正しい解決策を彼らが知っているとしたら、すでにその欲求は解消されてなくなり、彼らは理想状態を実現して満たされているはずです。

しかし欲求がそこにまだ存在しているなら、それは「彼らが現状で思いつくことができる解決策では、解決ができない欲求」ということになります。

顧客の中では整理しきれていない複雑な感情を、体系化して整理していく必要がある
写真=iStock.com/NicolasMcComber
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NicolasMcComber

そこで、「彼ら自身が現状で思いつくことができる解決策」をリストアップして、「それでも解決ができない理由」をそれぞれ出します。

これらがより深い“本当の”悩みになります。

その中から「自社の事業で解決できるもの」「顧客の理想実現に対して最もインパクトが大きいもの」を選び、事業として実現していきます。

書き起こしていくとすれば、次のような項目になります。

1.彼らにとって、理想の状態は何か。本当はどうなりたいのか。
2.その理想状態を実現するための、彼らの表面的な欲求は何か。
3.2に対して、彼らが現状、自分で思いつくことができる解決策は何か。
4.3が解決できない理由は何か(これが“本当の”悩みになる)。

これを表にまとめていきます。

■ターゲット顧客の考えていることを占い師のように当てる

例えば、女性向けの新しいダイエット商品を開発するとすれば、図表1のような表になります。

【図表】女性向けの新しいダイエット商品を開発するとすれば…
出典=『女子大生、オナホを売る。』

この場合、ターゲット顧客の本当の悩みは「お米を食べながら痩せたい」なので、「お米を食べながら、糖質制限ダイエットを成功させる方法」があれば、ターゲット顧客の悩みが解決できます。

例えば、プロテイン入りのお米などです。

この欲求の構造について、表では端的にしか書いていませんが、実際にはもっと複雑な心の流れがあるはずです。

神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)
神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)

例えば、「その前に脂質制限ダイエットをしていたけど失敗してしまった。友達が糖質制限で痩せていたので、自分もそのほうが向いている気がした」といった事情があるかもしれません。

実際の商品開発には影響しなくても、ターゲット顧客の思考の流れはできるだけ深く汲み取るようにしましょう。

なぜなら、実際に商品ページを作るとき、ターゲット顧客へ訴求するためには、ターゲット顧客の考えていることを占い師のように当てていく必要があるからです。

いわゆる「自分ゴト化」させるということです。

■こなれたワードを扱えるようになれるか

もっと言うならば、「ターゲット顧客のボキャブラリー(語彙(ごい)力)」も理解できるとさらに良いです。

ターゲット顧客と同じ語彙を用いることで、よりターゲット顧客の心に響きやすいからです(想像してみてください。あなたも他の業界の人と話すとき、慣れないワードを使われて、意識が逸れて話の内容が入ってこなくなったことがありませんか?)。

ちなみに、私がオナホユーザーのインサイトを書き起こしたときは図表2のようになりました。

【図表】オナホユーザーのインサイト
出典=『女子大生、オナホを売る。』

実際にここまで落とし込むためにはたくさんの情報収集が必要になります。

自分がチャンスだと思った市場が、必ずしも自分がターゲット顧客層であるとは限らないので、その際にはユーザーインタビューを行っていきます。

一方で、自らがターゲット顧客層である市場では、比較的インサイトを汲みやすいでしょう。

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神山 理子(かみやま・りこ)
起業家
愛称はリコピン。1997年生まれ。明治大学商学部卒。20歳の時にインターン先で音楽メディアの運営責任者となり、業界No.1までグロースして売却。その後シンガポールにて新規事業を立ち上げ、同事業の法人化を経て、オナホD2Cの会社を創業。自ら開発したオナホをAmazonランキング4位にまで育てるも過労のため退任。休暇3日目に新しい事業アイデアが閃き、休みもそこそこに自身2社目となる(株)ひだねを立ち上げる。創業1年で同社を売却し、次の事業に向けて準備中。消費者のインサイトを掘って、コンセプトをつくることが得意。たまにマグロ漁船員。1児の母でもある。

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(起業家 神山 理子)

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