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夜遅くまでゲームをする子供に「いい加減にしなさい」は三流、「やめなさい」は二流、では一流の注意とは?

プレジデントオンライン / 2023年4月30日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

夜遅くまでゲームをする子供には、どう注意すればいいのか。人材育成コンサルタントの嶋津良智さんは「『いい加減にしなさい!』などと言っても子供には伝わらない。具体的な数字や動詞を使いながら、『伝える→体験→振り返る』の順で理解度を確認するといい」という――。

※本稿は、嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■便利だけど曖昧な言葉に頼ってはいけない

伝わらないコミュニケーションでしばしば使いがちな道具=言葉が、便利な曖昧な言葉です。あなたも便利な曖昧な言葉を使っていませんか?

「コミュニケーションをしっかりとっていこう」
「きちんと確認してミスを防ごう」
「責任をもった行動を」
「ちゃんと強化する」
「早くして」
「もっと丁寧に」

まだまだありますが、このあたりでやめておきましょう。私もついつい使ってしまうこうした便利な曖昧な言葉ですが、こうした言葉に頼りきってしまうと、人を動かせるコミュニケーションがとれなくなってしまいます。

「しっかり」や「きちんと」とは具体的にどのような程度なのでしょう。「責任ある行動」とはどんな行動でしょう。「ちゃんとした」「強化」とは、何をどのようにどの程度、行うことなのでしょう。「早く」とはいつまでに? それともどのようなスピードで? 「もっと」とはどれくらい? どういうことを「丁寧」というの? すべて、人によって、あるいは会社や家庭によって、まったく違う答えが返ってきそうですね。つまり、便利な曖昧な言葉とは、正確な情報が折り込まれていないので、ミスやトラブルを招く原因になるのです。

■「もっときれいに拭いて」では意味がない

「彼女に優しくしてあげて」と言われたら、何をしてあげたらよいと思うでしょうか? いろいろな答えが浮かびますよね。

ところが、「ソファで居眠りしている彼女に、そっと毛布をかけてあげてください」という指示をすると、どんな人に頼んでも、行動はそう変わらなそうですね。つまり、具体的なことがらに落とし込んでいるので、ミスが起こりにくくなるのです。

レストランで、外国人のスタッフがテーブルを拭いているのを見て、店長が「もっときれいに拭いて」と言うのは、典型的な曖昧な言葉の使用例です。「ちゃんと」も「きれいに」も、どちらも曖昧なうえ、さらに文化背景が違えば、理解も大きく離れてしまいます。だから、何度同じ言葉で伝えても、伝わらないし問題も解決しません。

もし、「ダスターをテーブルの左上に置き、右上に向けて一直線に拭く。同じようにテーブルの右下まで拭く。終わったら今度は、縦に一直線に拭く」と言えば、ほぼ確実に理解できるでしょう。

アルコールを消毒する女性店員の手元
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

私も、シンガポールに拠点を移した時、多言語・多文化のなかでは、解釈の異なる言葉を使うと誤解やトラブルを起こす原因になると痛感しました。最近では異世代間でも文化背景がまったく違いますから、「若い子が言っていることがまったく理解できない」「おじさんの話している意味がわかんない」ということもしばしばですよね。だからこそ、曖昧さを極力残さないコミュニケーションが重要なのです。

■動詞や数字を使ったほうがいい

曖昧さを回避するには、形容詞やオノマトペ(擬音語)を使わずに、動詞や数字を使うことをお勧めします。

世の中の親の口癖の一つが、「いい加減にしなさい!」だと思うのですが、子供からすると、「いい加減ってなんだろう?」なんですね。例えば、子供が夜遅くまでゲームをしていた場合、「いい加減にしなさい!」と言っても伝わらないでしょう。もう少し具体的に、「ゲームをやめなさい!」と言ったとしても、なぜやめなければいけないのか分かりません。「もう10時を過ぎたんだから、ゲームをやめて寝なさい!」と言えば、やめなければいけない理由と、なにをすればいいかを伝えられます。

あるラグビーの名コーチは、「ボールを投げるのが遅い!」ではなく、「パスをするのが3秒遅い!」と言って、選手を導いていたそうですが、これならどう改善すればいいのかよくわかりますよね。

さらに、「いつ」「どこで」「だれが」「だれと(に)」「何を」「なぜ」「どのように」、「いくらで」「どれだけ」という情報と、量、品質、コスト、納期、ルールの情報を具体的にすれば、曖昧さを減らしていけます。じつは、私も曖昧さを減らそうと、これらの情報を書き込む表を作って指示を出していたことがあるのです。

手間のほうが大きいのでやめてしまいましたが、コミュニケーションではそれくらい曖昧なことが多いのだと痛感しました。わからないことをいちいち確認するよりも、最初にすべて明らかにして始めるほうが、結果的に手間もかかりませんし、間違いも減らせます。お互いに心がけていきたいものです。

一流は動詞を使う
曖昧さを残さない

■子供の「うん、わかった」は実は伝わってない

息子がまだ小学生だったころ、ちょっとした悪さをしたときに、注意をしました。それで最後に「わかった?」と尋ねました。

すると息子が、「うん、わかった」と答えたので、「じゃあ何がわかったのか、パパに教えてもらっていい?」と言ってみたのです。息子の答えは、「わかんない」「もう一度説明するね。……。わかった?」「わかんない」どうやら息子に伝わっていないようなので、「じゃあ、パパの言うことの何がわからないのか、教えてもらっていい?」すると息子は、「パパのいうことが難しくてわかんない」と言ったのです。

母親に叱られて体を縮ませている小学生男児
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

こうしたやりとりの結果、息子は注意を聞いていないので説明できなかったのではなく、私の話が難しくて理解できないので説明できなかったことがわかりました。そこで再度説明するときには、話を分解して短くし、一つずつわかっているのかを確かめながら話したところ、何を理解できたのかをちゃんと説明できるようになりました。

私が、息子に話が伝わっていると勘違いして、最初の「わかった」という彼の返事を鵜呑みにしていたら、何も伝わらないままだったんです。子供には、じつは伝わっていないということはよくあります。大人がいう言葉の意味がわからない、内容が難しくてわからない、なぜだかわからない、自分はそういうふうに考えたことがなかった、自分はそう思わない、違うことと勘違いしていた……。

■王道は「伝える→体験→振り返る」という順番

子供の「わからない」の理由はいろいろありますが、これは子供だけに限った話ではありません。誰が相手であっても、「じつは伝わっていない」ことは多いものです。それをお互いの経験で補いながら、なんとかすり合わせている状態なのです。

すり合わせを簡単にするには、相手の知識や理解度に合わせて軌道修正してもいいのです。ピンときていないようなら、わかりやすそうなたとえ話をしてみる。そのたとえ話でもわかりづらそうなら、別のたとえ話をする。そうしなければ伝わらない話はたくさんあります。

話が伝わりやすくなるように、できるだけ身近な経験や有名人のエピソードを使って、理解度をすり合わるためなんです。伝えるときの王道は、『伝える→体験→振り返り(気付き)』の順です。

「◯◯をこんなふうにやってみてくれる?」「ありがとう。やってみてどうだった?」「さらにこうすると、もっとよくなるよ」と、まず伝えてからやってもらい、気づきを促し、必要ならフィードバックをします。しかし伝えたいことに予備知識や体験のないとき、難解なテーマや日常を離れた内容を伝えるときは、『体験→振り返り(気付き)→伝える』の順が、伝わりやすくなります。

■気付きを出発点にすれば興味を引き出せる

「とりあえず、◯◯をやってみてもらっていい?」「ありがとう。やってみてどうだった?」「さらにこうすると、もっとよくなるよ」と、やってみてもらってから、振り返って気づきを引き出すとともに、伝えたかったことをフィードバックして、「じゃあ、もう一度やってみてくれるかな?」と再び体験してもらえば、理解しやすくなり、必要な行動を引き出しやすくなります。

また、伝えたいことに関して予備知識や体験はあるけれど、そのことに関して興味やモチベーションが低い場合には、『振り返り(気付き)→伝える→体験』の順で話すほうが伝わりやすくなります。「先輩がやっている◯◯の仕事を見て、どう思った?」「確かにそうかもしれないね。その仕事を今度は君にもやってもらおうと思っているんだけど、こんなふうにやってくれるかな?」と、気付きを経てから伝えて、体験してもらうと、気付きを出発点にして興味を引き出せるので、要所も伝わりやすくなります。

■相手の理解度に応じて伝え方を修正していくべき

その上で「よくやってくれたね。あとはこうすると、もっとよくなるよ」とフィードバックをすると、相手は受け入れやすくなるのです。

嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版社)
嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版社)

コミュニケーションの目的は、話が伝わって、相手から必要な行動を引き出すことだとお話ししましたよね。それには、相手に十分に伝わっているかどうかをチェックして、「ちょっとわかってないな」「ピンときてないな」から、「なるほどね!」になるまで、丁寧に軌道修正していくことも必要なのです。

さらには、「行動すると利益につながる」と考えている人には、行動によるメリットを伝えると行動してくれやすくなりますし、「行動するとリスクにつながる」と考えている人には行動しないデメリットを伝えると必要な行動を引き出しやすくなります。人は単純なので、何を欲しているかがわかると動きやすくなるのです。

一流は、相手に合わせて話す順序を変える

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嶋津 良智(しまづ・よしのり)
人材育成コンサルタント
日本リーダーズ学会代表理事。リーダーズアカデミー学長。1965年、東京都生まれ。日本唯一の上司学コンサルタントとして、講演・企業研修・コンサルティングを行う。著書に『怒らない技術』(フォレスト新書)や『だから、部下がついてこない!』(日本実業出版社)、『』(明日香出版社)などがある。

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(人材育成コンサルタント 嶋津 良智)

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