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1位富山、2位群馬、3位栃木…「来店客が少ない地域」ほど店舗スタッフのネット売上が増えた納得の理由

プレジデントオンライン / 2023年4月29日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

来店客の少ない地方の店舗では、スタッフの賃金水準も低くなりやすい。オンライン接客アプリを展開するバニッシュ・スタンダードの小野里寧晃CEOは「オンライン接客なら、この問題を解決できる。実際、来店客数が少ない地方の店舗スタッフほど、売り上げにつながる投稿を量産している」という――。

※本稿は、小野里寧晃『リアル店舗を救うのは誰か』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■店舗スタッフの“低賃金問題”を解決する

店舗スタッフと企業の対立する課題を解決し続ける中(「ネットがあればリアル店舗は不要」はウソである…店舗スタッフが「1投稿=8100万円」の新記録を出せたワケ)で、スタッフスタートは社会課題の解決にも寄与できるという手応えを感じている。

今、特に国内で社会問題になっているのは、労働人口の減少による雇用問題と賃金の問題だ。同時に働き方改革もしていく必要がある。

23年3月現在、世の中はインフレ傾向になっていることもあり、「賃上げ」に注目が集まっているが、そもそも日本の国力自体が低下してしまっている。例えば、少子高齢化に歯止めがかからず、現在約6500万人いる労働人口は、2050年には4500万人まで減少すると予測されている。そんな働き手不足の中で、ホワイトカラーに比べて賃金が低く抑えられている店舗スタッフとして働こうという人々がどれくらいいるのだろうか。

まずは、店舗スタッフの働く環境や働き方を良くしなければならない。

ママになったら働けない、結婚や介護で地方に引っ越すことになったときに、まだ働く意欲があるのに首を切られる世の中は最悪だ。せっかくインターネットがあるのだから、全国どこにいても働けるようにすればいい。スタッフスタートを活用してオンライン接客をすることで、全国のお客さまにアプローチして誰でもどんな環境でも仕事が続けられるようになればいいと考えてきた。

■地方の過疎化「来店客の少なさ」に勝機あり

実は、僕は店舗スタッフとお客さまとの相性について、以前から違和感を持っていた。

それは全国に店舗があり、何十万人もの店舗スタッフがいる中で、自分の居住地や生活圏から通える店でたまたま出会ったお客さまとの間だけで関係性が閉じてしまうことだ。福岡の店舗に勤めていても、札幌のお客さまに商品提案のセンスがずばりはまることもあるだろう。

お客さま側でも、全く同じことが起きるはずだ。これまでリアルでは出会えなかったけど、相性が抜群にいい店舗スタッフとお客さまのマッチングができたら、もっとECは楽しくなるし、店舗スタッフの働き方も自由になる。

地方の過疎化は進んでいるが、地方店や郊外店は都心店に比べて来店客数が少ないことが多いので、実は投稿を量産するには適している。それだけオンライン接客で成功する可能性が高いということだ。

■令和のカリスマ店員は地方で誕生する

実際、地方にいてもしっかり稼げる店舗スタッフが続々と登場している。

スタッフスタートを活用する全国の店舗スタッフを対象にした調査(21年9月~22年8月)では、1人当たりの年間平均売り上げが高い地域として、1位が富山県、2位が群馬県、3位が栃木県、4位が東京都、5位が石川県となった。

1人当たりの売り上げは富山県が平均約594万円、これは4位の東京都に約100万円の差をつけている。これからの小売りの成功条件は、ロケーションではない。地方の店舗スタッフには売り上げ成長余力が大きい。そんな結論にもつながる。

【図表1】地方店舗のスタッフはポテンシャルが高い
図版=小野里寧晃『リアル店舗を救うのは誰か』(日経BP)

必然的に店舗スタッフも場所に縛られる必要はなくなるはずだ。スタッフスタートによって円滑かつ効率的に、好きな時間や隙間時間に、24時間オンライン接客ができることで、店舗スタッフもお客さまも企業もみんながハッピーになれる。

そして、リアル店舗があることの重要性を改めて感じてもらえるはずだ。店舗スタッフがECでも活躍することで、閉店しなくていい店が増え、雇用が続く。

さらに、地方でカリスマ店員が頭角を現すことで、遠方からでもお客さまがリアル店舗を訪れてくれて、商業施設も盛り上がり、地方活性化にもつながる。実際すでに、僕らの想像を超えて幸せになってくれている人が増えている。

平成のカリスマ店員の時代と違って、「令和のカリスマ店員」は渋谷109だけにいるわけではなく、その「原石」が全国に存在している。

誰でも令和のカリスマ店員になれる時代であり、そのための手段を僕たちは提供している。いたずらに店舗を潰すのでは、彼女ら彼らの活躍の場を奪うことになる。スタッフスタートがもっと世の中に浸透していけば、都市部から地方へのIターンや、地元に帰って仕事を続けるUターンも活発になり、雇用が増えることで地方創生にもつながると信じている。

■店舗スタッフの名誉を高めたい

もう一つ、僕らが目指しているのは、「店舗スタッフの富と名誉を高めること」だ。

賃金を上げ、店舗スタッフの地位向上を図ることで、多くの学生が憧れる存在、具体的には「なりたい職業ランキング」の上位に店舗スタッフを復活させたい。そのためには、まず賃上げを実現して、他の産業や職種に比べて魅力的な収入を得られるようにならないと、早晩見向きもされない仕事になってしまう。

幸い、評価のOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)の概念は多くの導入企業が支持してくれて、まだ完全ではないが、店舗スタッフへのインセンティブの還元は進みつつある。そうして富の部分で貢献できるようになったら、次は店舗スタッフの名誉を高めていく必要があると考えた。

それは、なぜか。このままではリアル店舗が死ぬからだ。店舗スタッフが雇えなくなったり、なり手がいなくなったりすると、代替技術としてロボットやAI(人工知能)の導入が進むだろう。しかし、「おもてなし」は店舗スタッフだからこそ実現できるものだ。

レジ業務や品出しがロボットに置き換わるのは歓迎するが、ロボットやAIにおもてなしができるようになるのは相当な時間がかかるだろうし、できたとしてもお客さまがぬくもりを感じるサービスになるかどうかは怪しいところだ。そんな将来も想像できる中で、現状の店舗スタッフは「誰でもなれる仕事だよね」などと、地位が低く見られているのが本当に残念だ。

■オンライン接客コンテストを開催

リアルでもオンラインでも、お客さまと接する最重要なポジションであるはずなのに、現場の仕事が軽んじられている。

そう感じた僕らは、「店舗スタッフを極めた人はすごい」ということを世の中へ積極的に発信していくことにした。それが、21年から始めた令和のカリスマ店員を決めるオンライン接客コンテスト「スタッフ・オブ・ザ・イヤー」だ(23年は5月より一次審査を開始し、9月に最終審査を開催)。

21年に初開催した「スタッフ・オブ・ザ・イヤー」の一幕。写真はこの年のグランプリに輝いたバロックジャパンリミテッドの村岡美里さん
21年に初開催した「スタッフ・オブ・ザ・イヤー」の一幕。写真はこの年のグランプリに輝いたバロックジャパンリミテッドの村岡美里さん〔写真提供=小野里寧晃『リアル店舗を救うのは誰か』(日経BP)〕

この大会はほとんど僕の独断専行で決めたのだが、結果、とても良い効果を社内外にもたらしている。

22年に開催した2回目の大会には、所属する店舗やブランド、さらには全社を挙げて威信をかけて取り組んでくれる企業も確実に増えてきたし、参加する店舗スタッフの熱量もうなぎ登りに上がってきた。

■「販売職以上に感動できる仕事はない」

ユナイテッドアローズ創業者の重松理名誉会長は、「小野里社長から店舗スタッフの社会的地位を高めるのだという強い思いを聞き、なんとか応援したいと思って」と初回、2回目ともに最終審査の場へ駆けつけてくれた。そして、現場で頑張るすべての店舗スタッフたちにこんなエールをいただいた。

小野里寧晃『リアル店舗を救うのは誰か』(日経BP)
小野里寧晃『リアル店舗を救うのは誰か』(日経BP)

「私は店舗スタッフの先輩で、販売職をスタートしてから2022年で45年がたちました。販売の仕事はすばらしい仕事です。仕入れやマネジメントなどいろいろな仕事がファッションビジネスにはありますが、やっぱり一番の感動を自ら得られるのが販売の仕事。店舗スタッフは経験をバックボーンにお客さまに合った形でサービスの提供につなげていくわけですが、最終的にお客さまにお買い上げいただき、最後に本当に満足していただくと、『ありがとう』と言っていただける。販売職以外の仕事もいろいろやりましたが、販売職以上にこんなに感動できる仕事はないと思う」

これは、まさに僕らが声を大にして世の中に伝えていきたいことだ。

オンラインとオフラインを股にかけた店舗スタッフの活躍なくしては、もはやリアル店舗の窮状は救えない。担い手不足や賃上げなど、喫緊の社会課題から目を背けるのは簡単だ。しかし、そこに未来はない。「やらない理由」を探すのはやめて、店舗スタッフと共に前に進んでいこう。

世の中のムードをそんなふうに変えていくのが、僕らの使命だ。

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小野里 寧晃(おのざと・やすあき)
バニッシュ・スタンダードCEO
1982年10月24日、群馬県前橋市生まれ。2004年、大手Web制作会社に入社、EC事業部長として主にアパレル企業などのECサイト制作に従事。11年、バニッシュ・スタンダードを設立。EC構築から運営の全てを請け負うフルフィルメント事業を提供する中で「店舗を存続するEC」を目指し、16年に店舗スタッフをDX化させる“スタッフテック”サービスの「STAFF START(スタッフスタート)」を立ち上げる。

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(バニッシュ・スタンダードCEO 小野里 寧晃)

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