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4分間の運動を週2回やるだけ…世界標準のトレーニング法「タバタ式」がすごすぎる効果を生むワケ【2022編集部セレクション】

プレジデントオンライン / 2023年5月8日 19時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lagunaguiance

2022年下半期(7月~12月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2022年10月13日)
運動力の向上にはどんなトレーニングが望ましいのか。立命館大学スポーツ健康科学部の田畑泉特任教授は「私は『高強度・短時間・間欠的』に行うことで有酸素性運動と無酸素性運動の要素をどちらも取り入れられる『タバタトレーニング』を研究している。このやり方なら、週2回、4分間のトレーニングをするだけで100%の効果が得られる」という――。

※本稿は、田畑泉『1日4分 世界標準の科学的トレーニング 今日から始める「タバタトレーニング」』(ブルーバックス)の一部を再編集したものです。

■世界中で支持されている「タバタトレーニング」

インターネットで「TABATA Training」を検索すると約950万件ヒットしますが、日本語の「タバタトレーニング」で検索すると、ヒット数は約85万件です(いずれも2022年7月1日現在)。実に、英語ページのほうが日本語ページよりも10倍以上多く存在します。その数字が示すように、タバタトレーニングは日本よりも海外でよく知られるトレーニングなのです。中でも最初に注目したのは、アメリカ西海岸のトレーニングマニアたちでした。どうやら著者の発表した論文を読んだことで一気にブレイクしたようです。

その後、東海岸のハーバード大学医学部の学生たちも論文を読んで知り、タバタトレーニングをやりはじめました。タバタトレーニングは、休息を挟みながら高強度の運動を行う「インターバルトレーニング」の一つですが、このようなトレーニング自体は1930年代から存在していました。それが、1952年のヘルシンキオリンピックで5000m、1万m、マラソンの3つの金メダルを獲得した陸上選手ザトペックが採用していたことで有名になった、という歴史があります。

ただ、著者がタバタトレーニングを研究し、その効果を科学的に明らかにした論文を発表したことで、世界的に「TABATA」が知られることになったのです。今では、アメリカに限らず、ヨーロッパ、南米、アジア各国にも伝わるに至りました。

■駅伝の強豪チームが採用したことでも話題に

また、タバタトレーニングを行っている人も多岐にわたり、プロアスリートやアマチュア競技者をはじめ、時間がない多忙なエグゼクティブや一般の人も取り入れていて、効果的なトレーニング方法として広く認知されるようになっています。

もちろん、海外だけでなく、日本でも多くのアスリートたちがタバタトレーニングを実践しています。著者の知る限りでも、スピードスケートやラグビー、バドミントン選手などが取り入れていますし、数年前には、大学駅伝の強豪チームが採用していることでも話題になりました。最近では、モデルさんやタレントさんなどの著名人もSNSで紹介してくれているようです。読者の皆さんの中でも、運動に関心の高い方などはすでにご存知かもしれません。

ラグビーのスクラム
写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/skynesher

■「高強度」だからこそ最大の効果を得られる

タバタトレーニングは、運動の形でいうと「高強度・短時間・間欠的トレーニング」です。運動の種類や動きなどの決まりはなく、道具を使っても使わなくてもできるので、自分に合ったやり方で気軽に取り組めます。

より具体的にいうと、20秒の高強度・短時間運動を、10秒の休息を挟みつつ、6~8回ほど行って疲労困憊(こんぱい)に至る。これを週2回行うだけです。運動を8回行ったときの合計時間を計算すると、わずか230秒。つまり3分50秒という短時間で完結します。たった4分足らずで、有酸素性トレーニングと無酸素性トレーニングを同時に行えて、なおかつ、どちらも最大の効果が得られるトレーニング方法、それがタバタトレーニングなのです。

これだけのシンプルなトレーニングで最大効果が得られる大きな理由は、疲労困憊に至るほどの「高強度」である点です。タバタトレーニングでいう高強度は、「最大酸素摂取量の170%の強度」に当たります。

酸素摂取量とは、1分間当たり、体重1kg当たりに摂取できる酸素量(mL)のことで、その最大値が最大酸素摂取量です。体を動かすためのエネルギーをつくるには、基本的に酸素が必要ですが、これはどれだけ酸素を取り込んで消費できるかを測るうえで重要な数値で、通常、持久力は最大酸素摂取量で評価されます。

一般的な有酸素性トレーニングの強度は、最大酸素摂取量の50~70%といわれているので、タバタトレーニングはその3倍くらい強度が高い、つまり「高強度」なのです。

■約4分で有酸素性運動20分の持久力アップ効果が

では、最大酸素摂取量の170%の強度とは、具体的にどれくらいでしょうか。これは、休息を入れずに続けて運動した場合、50秒程度で疲労困憊に至る強度、ということができます。つまり、1分も続けられないほどハードな運動強度なのです。

ここで「間欠的」の10秒休息が効いてきます。最大酸素摂取量の170%の強度では50秒しか運動を続けられないところ、タバタトレーニングでは20秒運動した後、10秒の休息を入れることで、また再び高強度の運動ができるようになるからです。これにより、高強度運動20秒を8回も繰り返すことができ、合計で160秒もの高強度運動が可能になります。このことが、持久力などの運動能力向上につながるのです。

また、最大酸素摂取量の50~70%の一般的な有酸素性トレーニングで持久力を高めようとする場合、その運動を20分ほど続ける必要があるとされています。しかし、タバタトレーニングであれば、約4分という「短時間」が基本です。

20秒の運動という単位も非常に「短時間」なうえ、トータルの時間も短くて済むのです。そのため、アスリートやトレーニング愛好者に限らず、多忙で運動の時間がつくれない人や、運動がなかなか継続できない人も、気軽に日常生活に組み込めるトレーニングだといえます。

■「20秒運動+10秒休息」が最大の効果を得られる

ここまで説明すると、「20秒運動+5秒休息」や「30秒運動+15秒休息」など、他の組み合わせはどうなのか、と質問されることがあります。確かに、他にも効果的な組み合わせがあるかもしれません。

しかし、すでに「20秒運動+10秒休息」が、有酸素性トレーニングおよび無酸素性トレーニングにおいて、いずれも100%という最大の効果が得られることがわかっています。100%より上はありません。ですから、著者としては、他のトレーニングパターンに関心を寄せるより、さらにタバタトレーニングの研究・分析を深めて、その良さを伝えたいと思っています。

ここで、タバタトレーニングを行うときの「20秒運動+10秒休息」のセット数が、6~8セットの場合と8セットの場合が出てくるので、それについて触れておきます。このトレーニングはもともと入澤孝一先生が嬬恋高校の生徒を指導するときに導入されたもので、1996年と1997年に著者が発表した論文で対象にしたのは、運動強度を正確に規定できて、疲労困憊も正確に判断できる自転車エルゴメータ(固定式自転車、フィットネスバイク)を使い、6~7セットで疲労困憊に至る運動でした。

フィットネスバイク
写真=iStock.com/goo.gl/73nyq6
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/goo.gl/73nyq6

しかし、世界中の運動愛好者に広まっていく中で、運動強度を正確に規定できないものの、どこでもできる自体重を用いたトレーニングが多く用いられるようになり、8セットを最大努力(できるだけ多く。)で行うやり方が増えてきたのです。このようなことから、トレーニング内容や背景等によってセット数が異なる説明を見ることもあるでしょう。

■タバタトレーニングの実践法

本稿では、自体重を用いたトレーニングを紹介しており、「8セット」繰り返すことを基本としてすすめています。有酸素性運動(トレーニング)は、有酸素性エネルギーを相対的に多く供給する運動と言い換えることができます。中等度の強度で、長く続けられる運動のことで、長時間走るマラソンのような運動ということです。

【図表1】バーピージャンプ①②
イラスト=こばやしひろし
バーピージャンプ。タバタトレーニングを代表する全身運動 - イラスト=こばやしひろし
【図表2】バーピージャンプ③④
イラスト=こばやしひろし
バーピージャンプ。タバタトレーニングを代表する全身運動 - イラスト=こばやしひろし

一方、無酸素性運動(トレーニング)は、無酸素性エネルギーを相対的に多く供給する運動と言い換えることができます。大きなパワーを出すけれど、それほど長く続けられない運動のことで、速いスピードで短時間だけ走るダッシュや100m走などがそれに当たります。

■有酸素性と無酸素性のどちらにも高い効果がある

そこで、タバタトレーニングを詳しく知らない人に、「タバタトレーニングは、有酸素性トレーニングか無酸素性トレーニングのどちらだと思いますか?」と聞くと、「無酸素性トレーニング」と答える人が多いように感じます。なぜなら、少しでもタバタトレーニングの動画を見たことがある人なら、疲労困憊に至るまでハードに運動している姿を知っていて、「あれほどきついなら無酸素性トレーニングに違いない」と考えるからです。

しかし、正解は、前述したように、有酸素性トレーニングと無酸素性トレーニングのどちらにも高い効果があるものなのです。

■人間には「ハイブリッドエンジン」が備わっている

そのことを説明するとき、著者はハイブリッドエンジンを引き合いに出すことが多いので、ここでもその方法で話したいと思います。

近年、人気のハイブリッドカーには2つの動力源があります。一つは、ガソリンを燃焼させる内燃機関のエンジン、もう一つは、バッテリーを使った電動モーターです。動き始めるときは電動モーターを使い、巡行に入るとほとんどガソリンエンジンを使い、追い抜くようなときはさらに電動モーターも使う、というように使い分けているのです。

田畑泉『1日4分 世界標準の科学的トレーニング 今日から始める「タバタトレーニング」』(ブルーバックス)
田畑泉『1日4分 世界標準の科学的トレーニング 今日から始める「タバタトレーニング」』(ブルーバックス)

実は、人間の体にもハイブリッドエンジンがあります。ハイブリッドカーのガソリンエンジンに当たるのが有酸素性エネルギー供給機構で、もう一つの電動モーターが無酸素性エネルギー供給機構です。人間もこれらをハイブリッドカーと同様に使い分けていて、ジョギングをする際、走り始めるときには無酸素性エネルギーを、ほぼ同じスピードで走り続けているときには有酸素性エネルギーを、誰かを追い抜こうとしてスピードを上げるときには無酸素性エネルギーを使います。

スポーツの種類にもよりますが、同様の競技は数多くあります。例えば、サッカーを見てみると、試合の中で9割はジョギング程度の軽い動きをしていて、残りの1割程度はダッシュのような激しい動きなので、どちらのエネルギーも使っていることがわかります。

ただ、一般的なトレーニングは、どちらかというと有酸素性エンジンを強くする持久系のトレーニングか、あるいは、無酸素性エンジンを強くするパワー系のトレーニングに分かれています。そのため、それぞれのエンジンを鍛えるためには、両方のトレーニングを行わなくてはいけないのです。

■タバタトレーニングは「究極の有酸素性トレーニングである」

タバタトレーニングは、10秒の休息を挟みながら20秒の高強度運動を6~8回繰り返す運動ですが、酸素摂取量を測定すると、最初のうちは少ないことがわかります。しかし、8回目ともなると、酸素摂取量がほぼ最大酸素摂取量に達するのです。

ということは、有酸素性エンジンに最大酸素摂取量の100%の負荷をかけているということになり、「究極の有酸素性トレーニングである」といえます。有酸素性エンジンを100%使い切ったことで、体はそのことに反応して心臓や筋肉に働きかけ、エンジンをもっと強くしようとする、つまり持久力などの向上につながるのです。

■運動開始直後に使用される無酸素性エネルギー

有酸素性エネルギー供給は酸素摂取量を測定することで定量化できますが、無酸素性エネルギーは筋肉の中で産生されるので、測定するには筋肉組織の一部を採取しなければなりません。たとえそれを行ったとしても、筋肉全体を取り出しているわけではないので、実質的に全体量を測るのは不可能です。そこで用いられるのが「酸素借」という概念を使った測定法です。

同じ強度の運動を続ける場合、必要なエネルギー量は運動開始直後も、しばらく経ってからでも同じです。しかし、先ほども述べたように、運動を開始した直後は酸素摂取量が少なく、その後、徐々に増加していくことがわかっています。つまり、運動開始直後は需要に対して酸素摂取量が足りず、不足分をどこからか補わなければいけません。そのときに供給されるのが、酸素を必要としない無酸素性エネルギーです。

この運動開始直後の酸素需要量と酸素摂取量の差を「酸素借」と呼び、その値が無酸素性エネルギー供給量と考えることができます。ハイブリッドカーと同じようなエネルギー供給システムなのです。

■究極の無酸素性トレーニングでもある

この酸素借の考え方を利用して、20秒の運動を8回繰り返すタバタトレーニングの酸素借を算出してみました。すると、合計の総酸素借は、その人が持っている無酸素性エネルギー供給量の最大値である「最大酸素借」と同じであることがわかったのです。

ということは、無酸素性エネルギー供給機構に最大の負荷をかけているので、無酸素性トレーニングとしても最大の効果が得られるということであり、タバタトレーニングは「究極の無酸素性トレーニングである」といえます。

これまでも、高強度・短時間・間欠的トレーニングが有酸素性エネルギー供給量を最高に高めることは認知されていましたが、無酸素性エネルギー供給については明らかになっていませんでした。しかし、科学的な分析により、「20秒運動+10秒休息」を繰り返すタバタトレーニングは、有酸素性および無酸素性エネルギー供給能力のどちらも最大に強化できることが判明したのです。

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田畑 泉(たばた・いずみ)
立命館大学スポーツ健康科学部 特任教員(教授)
1980年東京大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科体育学専攻修士課程、同博士課程、鹿屋体育大学体育学部教授、国立健康・栄養研究所健康増進研究部長などを経て、2010年より立命館大学へ。同大学スポーツ健康科学部教授、初代学部長、研究科長を歴任。著書に『Tabata Training The Science and History of HIIT』[Academic Press社(Elsevier社)]『究極の科学的肉体改造メソッド タバタ式トレーニング』(扶桑社)など多数。

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(立命館大学スポーツ健康科学部 特任教員(教授) 田畑 泉)

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