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野菜果物ジュースは菓子パンより健康に悪い…医師が「ジュース類は消化機能を無視した食品」と警告する理由

プレジデントオンライン / 2023年5月5日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tavan amonratanasareegul

■なぜ野菜果物ジュースの常飲は危険なのか

栄養素の不足を補うため、野菜や果物のジュースを毎日飲んでいる人も多いだろう。

しかしそれは本当に体に良いものだろうか。

「×種類の野菜が取れる」「1日分のビタミンがとれる」などと謳っている商品があるが、必ずしもその栄養素がきちんと吸収され、体に良い効果を発揮するとは限らない。

理由は大きく2つある。1つ目は、製造工程で栄養素が減る可能性や、重要な栄養素が壊れてしまうこと。2つ目は、栄養素の破壊によって糖分の吸収効率が高まり、飲めば飲むほど糖尿病などの発症リスクを高めてしまうことだ。

生活習慣病の患者をきちんと指導する医師ほど、野菜果物ジュースを常飲する危険性を指摘する。すでに病を発症する人だけでなく、健康な人にも勧められない。私自身も食に関する取材を多くしてきて同じ考えをもっている。

もし体にいいから、健康を維持したいからという理由で野菜や果物ジュースを日常的に飲んでいるのであれば、その危険性を知り、頻繁に飲む必要があるのか見直してほしい。

■もちろん野菜や果物そのものは健康に良い

もちろん、野菜や果物そのものには健康に良い効果がたくさんある。昭和大学医学部の山岸昌一教授が説明する。

「野菜の中でも、ネギ類や葉物野菜、ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科の野菜を習慣的に食べている人はそうでない人に比べて、心臓病になりにくい、寿命が長いというデータは山のようにあります。果物にも、食物繊維が豊富に含まれていて、これらは腸内環境を整え、糖分の吸収をゆるやかにしたり、コレステロールの吸収を抑制したりします。糖分の吸収が和らぐと血糖値の急激な上昇が避けられるため、糖尿病の予防や血管の老化が抑えられるのです。実際、定期的に果物を食べている人では心血管病、大腸がん、うつ病などのリスクが低くなることが報告されています」

昭和大学医学部の山岸昌一教授
昭和大学医学部の山岸昌一教授

世界五大医学誌の一つ『BMJ』では2014年、83万人を対象に26年間も追跡した大規模な研究結果が発表された。それによると一日に食べる野菜と果物が一品増えるごとに死亡のリスクが6%ずつ下がるという。

また、果物にはビタミンCも多く、シミのもとになるメラニン色素の合成を抑制するなど、美肌にも貢献することが知られている。

■ジュースにすることで「食物繊維」が失われる

しかし、この素晴らしい効果がジュースにした途端、打ち消される。原因の一つは「食物繊維」が失われてしまうことだ。野菜や果物に含まれる食物繊維には、健康を維持する多彩な働きがある。それがジュースにすることで、繊維が壊れて台無しになってしまうのだ。

「果物はジュースに加工されると、なんと食物繊維の80%が失われるといわれています。そのまま食べれば糖分の吸収を和らげるのに、ジュースにした途端、吸収効率が高まり、食後の血糖値上昇につながってしまうのです。10年以上前の論文になりますが、『BMJ』で発表された研究で、果物を丸ごと食べた場合とフルーツジュースとで糖尿病の発症リスクを比較しています。するとフルーツジュースでは糖尿病の発症リスクが8%上昇しているのです。どれくらいからリスクが上がりだすかというと、1週間で3杯程度から。つまり1日に換算すればコップ半杯です」(山岸教授)

また野菜や果物に含まれている糖分の吸収効率も問題だ。AGE牧田クリニック院長の牧田善二医師は「ジュース類は、人の消化や吸収機能を無視して作られた飲み物」と指摘する。

グラスに注いでいる野菜ジュース
写真=iStock.com/masa44
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/masa44

■「必要な時にインスリンが出せない=糖尿病」になる

「食べ物が胃に入ると、炭水化物なら3時間、脂肪なら7時間ほどかけて消化されます。ドロドロになったものが腸に送られ、ゆっくりと体に吸収されるのです。ところが液体に消化は必要ありません。ジュースは胃を通り越して一気に腸に入ってしまいます。血糖値が急上昇し、血管の内皮が傷ついて、やがて血管が硬くなってしまいます。野菜や果物ジュースより清涼飲料水のほうがたくさんの糖質を含んでいますから、悪性度が高い。しかし、野菜や果物ジュースはみなさんが“体にいいから”と信じて飲んでいることがやっかいなのです」

AGE牧田クリニック院長の牧田善二医師
AGE牧田クリニック院長の牧田善二医師

人の空腹時血糖値はだいたい90ミリグラム/dl。牧田医師はこれを「100ccの血液中に90ミリグラムの砂糖が溶けていると理解するといい」と説明する。

「体の全血液がおよそ5リットルですから、血液中には約4・5グラムの砂糖が溶けている計算になる。糖質が高い飲料を摂取するということは、そこに砂糖の塊、血糖値でいえば千の数字が出るほどの量を一気に取り込むことになります。体は血糖値が急上昇しないように、すぐさま膵臓(すいぞう)から大量のインスリンを分泌します。それを何度も繰り返しているうちに膵臓は疲弊し、必要な時にインスリンが出せない=糖尿病に行き着くんです」

私が野菜果物ジュースを批判する最大の理由は、ここにある。菓子やケーキ類をはじめ、炭水化物を多く含むものはもちろん血糖値を上昇させるが、それでも消化に数時間はかかる。まだマシである。ところが液体であると、たとえそれより少ない糖質摂取量であっても、血糖値を急上昇させる。

■飲み物で糖分を取ると太りやすくなる

以前、日本臨床栄養協会評議員で管理栄養士の遠藤惠子氏とともに国内のメジャーな飲み物をチェックしたことがあるが、よく出回っている野菜果物ジュースは、糖質10グラム以上含まれている商品が多かった。

「急激な血糖値上昇を繰り返していると、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まることも知られています。また太りやすくもなるでしょう。飲み物で糖分を取ると、レプチンという食欲を抑制するホルモンが分泌されにくくなり、満足しにくいという報告があるのです」(山岸教授)

健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏
健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏

健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏も、「果物を食べている人ほど体重が減少する一方で、フルーツジュースを飲む人ほど体重が増加している傾向がみられる報告もあります」と補足する。

肉を食べると太ると思っている人もいるかもしれないが、太るのは糖分だ。食事をすると血糖値が上がる。すると膵臓からインスリン(ホルモン)が分泌され、血中の糖を肝臓や筋肉に取り込み、血糖値が下がる。しかし取り込む量にも限界があるため、糖質を取りすぎてしまうと、血中のあまった糖が脂肪細胞に取り込まれて太る。また糖質を大量摂取して血糖値が急上昇すると、体は大量のインスリンを分泌し、血糖値を抑えようとするため普段の空腹時血糖値より下がってしまう。空腹感や食べたい欲求がより強く起き、どか食いをしてしまうという悪循環につながる。

■「果糖」は「ブドウ糖」よりもAGEを形成しやすい

デメリットはまだある。

果物に含まれる「果糖」は、米やパンが吸収されてできる「ブドウ糖」よりも、老化を促進する悪玉物質「AGE」を形成しやすい構造なのだ。AGEは、タンパク質と糖がくっついて劣化する現象(糖化)が進むことで発生する。前回、「干物」の記事で取り上げたように揚げ物のような調理過程でも、また体内で血糖値が急上昇して糖化が進むことでも発生し、蓄積される。再び山岸教授の話。

「例えばホットケーキ。小麦粉(糖)と卵(タンパク質)を混ぜ合わせたものがフライパンで加熱され、糖化反応が起きた結果、こんがりきつね色になります。そういったAGEを含んだものを多量に食べることでもAGEが蓄積されますし、私たちの体内でも同じように高血糖によってコラーゲン(タンパク質)がAGE化すると老化が進むということです。体中のコラーゲンがAGE化するとシミやシワなどの老け顔になったり、動脈硬化や骨がもろくなる、変形性関節症などさまざまな機能障害が起きてしまいます」(同)

■「野菜だけのジュース」でも取りすぎは禁物

フルーツジュースの過剰摂取は、老化物質AGEを生み出して体内に蓄積させること、血糖値急上昇により血管を傷めるという2点から体を老化させる。

それではフルーツジュースではなく、野菜ジュースについてはどうかというと、“野菜ジュースのみ”の大規模な研究報告が見当たらない。山岸教授は「要は、果物でも野菜でもジュースとして取る場合は、適量にとどめること」と言い、「取りすぎは、糖の過剰摂取につながる」と話す。

フルーツと野菜の搾りたてのジュース
写真=iStock.com/fcafotodigital
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fcafotodigital

市販の野菜ジュースを購入する際、パッケージに表示される「糖質量」を確認してほしい。野菜ジュースという名前であっても、野菜に含まれる糖分の量が少なくないはずだ。すると前述したように血糖値急上昇につながり、動脈硬化や糖尿病、肥満リスクを高め、AGEを発生させて老化を促進してしまう。

■野菜ジュースは「野菜を食べる代用」にはならない

だがそれでも自分は野菜不足だから、せめて野菜の栄養素をジュースで摂取したほうがいいと考える人がいるかもしれない。ジュースに含まれる栄養価について望月氏に解説してもらった。

「例えば『野菜一日分使用』と記載しているものは、1日分の野菜が取れるわけではなく、1日分(350g)を使ったということで製造工程で栄養素は減ります。市販の野菜ジュースは加熱処理をしていますので、野菜本来のビタミンや食物繊維を摂取することは難しいでしょう。ですのでパッケージに“1日分のビタミンCがとれる”と記載されている場合は、ほとんどが添加されたものになります。食物繊維も添加すれば摂取することができます。添加によって野菜と同じ栄養価を取ることができるということです。栄養素として野菜不足を補うことはできるかもしれませんが、野菜を食べる代用にはなりません。ジュースでは“噛む”という行為もないので、吸収にも影響が出ると思われます」

野菜ジュースに含まれる栄養素がどの程度体に吸収されるのかは、正確にはわからない。それよりも確かなことは、血糖値が急上昇することや病気のリスクを高めることなのだ。

脅すようなことばかり書いてしまったが、あらゆる食品の中で液状による糖分摂取がもっとも危ないと私は考えている。時間がないから、野菜や果物が嫌いだからという理由であれば、ほんの少量でいいので、食材そのものを食べてほしい。ゆっくり噛んで食べるなら、口から胃、そして腸へとゆっくり体に吸収される。また食物繊維も十分含まれているため、血糖値の急上昇につながりにくく、健康や美容へのたくさんの良い効果が期待できる。(第3回に続く)

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)など。新著に、『野良猫たちの命をつなぐ 獣医モコ先生の決意』(金の星社)と『老けない最強食』(文春新書)がある。ニッポン放送「ドクターズボイス 根拠ある健康医療情報に迫る」でパーソナリティを務める。 過去放送分は、番組HPより聴取可能。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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