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「仕事が忙しいから、週末は家で過ごすようになった」産業医が見抜く"もうすぐ潰れる社員"3つのパターン

プレジデントオンライン / 2023年5月10日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Peopleimages

部下や同僚がメンタル不調になる前に助けることはできるのか。年間1000人以上の面談を行う産業医の武神健之さんは「一見安定した状況でも、急に潰れる社員はいる。そんな社員には3つのパターンがある」という――。

■安定した状況でも潰れる社員はいる

こんにちは。産業医の武神です。新型コロナ感染症も法律上はインフルエンザと同じ扱いとなり、私のクライエントでは在宅勤務、出社勤務、ハイブリッド勤務など、それぞれの働き方で落ち着いてきている社員がほとんどだと感じています。

このような安定している状況でも、急に潰れてしまう社員は必ずいます。今日は、そんなもうすぐ潰れる社員によくある特徴について、私の産業医面談から得られた3つのパターンからご紹介したいと思います。

■「体力回復のため」週末の外出をやめたAさん

1つめは、週末に1日は外出していた人が、両日とも家で休養するようになったときです。

Aさんは20代後半の一人暮らしの男性社員でした。週末は、土曜日は友人たちとフットサルやドライブ、登山など外で遊び、日曜日は掃除や洗濯物、勉強や食べ物の作り置きなど家で体を休めながらゆっくり過ごすことをルーチンとして過ごしていました。

半年前に会社の大きなプロジェクトメンバーに抜擢されました。プロジェクトは忙しく、平日は過去に経験したことがないほど遅くまで残業をするようになりました。日中もミスは許されないうえにスピードが求められる業務時間が連続し、2カ月ほど経つと自分が疲れてきていることを自覚し始めました。そこで、真面目なAさんは、土曜日に遊ぶことをやめ、週末は両方とも昼までは寝て、午後も家でゆっくり過ごして体力の回復に努めるように過ごし始めました。

3カ月後、Aさんは仕事でミスが目立ち顔色も良くないと、上司に勧められて産業医面談に来ました。覇気がなく、出社前は特に気分がすぐれないそう。食欲もなく、睡眠も「長時間ベッドにいるが疲れが全く取れていない」というAさんは、典型的なメンタルヘルス不調者でした。早急な医療受診を勧め、専門医の診察の結果、Aさんは休職することとなりました。

■「週末の遊び」をやめてメンタルヘルス不調になる人は結構いる

仕事が忙しくなってきたから、しっかり体調を整えるために、週末に遊ぶのを積極的に控える、そしてその時間を家で休息することにする。一見、理にかなった過ごし方のように思えますが、こうやって最終的にメンタルヘルス不調になってしまう人は結構います。

週末2日とも家で過ごせば身体的な疲労や睡眠不足は回復するでしょう。しかし、そのような週末では、特に、今までは週末に外で積極的に過ごす(遊ぶ)ことでリフレッシュしていた人にとっては、気分転換ができず不十分になってしまいます。その結果、金曜日夜の気分をそのまま月曜日に引きずってしまうことになります。このような週末の過ごし方が2~3カ月続くと、多くの方の場合は潰れてしまいます。

気分転換ができていないことに加えて、週末の友人たちとの関わり合いがなくなるため、メンタルヘルス不調による症状が現れても、他人に指摘される機会がなく、本人も気がつかないまま悪化し、最終的に潰れてしまうのです。

■4~5時間眠れない日が2週間続くと危ない

もうすぐ潰れてしまう社員に共通する2つめの特徴は、「4時間未満の睡眠時間が2週間連続している」ことです。

人が心身ともに元気でいるために、睡眠は、食事と同じくらいに大切です。一般的に、睡眠不足の影響は心と身体に現れます。心の影響として、集中力や判断力の低下、認知機能の低下、注意力の欠如、記憶力の低下、気分の不安定化、抑うつや不安の増加などがあります。身体の影響として、免疫機能の低下、炎症反応の増加、(糖)代謝機能の変化、ホルモンバランスの乱れ、体重増加のリスク増加などがあります。

これらの影響は、一般的な睡眠不足の状態が続く場合に見られるもので、個人差がありますが、産業医としての経験上、人は4〜5時間も眠れないことが2週間続くと、高い確率で睡眠不足からメンタルヘルス不調になります。

■毎日6時間は「布団にいる時間」が必要

忙しいビジネスパーソンから、「ベッドにいる時間は4〜5時間ですが、いつもすぐ眠れて、アラームがなるまで爆睡しています。これで大丈夫ですか?」と、聞かれることがよくあります。実はこのような人こそ、注意が必要です。今は大丈夫でも、ちょっとしたことで寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりするようになると、容易に4時間未満の睡眠となり、メンタルヘルス不調になるリスクが高まるからです。

スマホのアラームのスヌーズをオフにする人の手元
写真=iStock.com/AndreyPopov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

こうならないためには、毎日最低でも6時間ほどは布団にいる時間を確保するのがポイントになります。たいてい人は睡眠の1サイクルが90分ですから、6時間横になっていれば90分のサイクルが3〜4回はとれていることになります。そうしていれば、仮に寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりしても、3サイクルくらいは眠れていて、睡眠不足からの体調不良は免れると思います。

忙しくてどうしても毎日6時間の睡眠時間を確保できない場合は、週末と平日に1回ずつでいいので、6時間確保するようにしましょう。それだけで、睡眠不足からくるメンタルヘルス不調はかなりの確率で予防可能です。

■自分より他人を優先するベテラン社員

睡眠時間が4時間未満でなくても、面談で「もうすぐ潰れそうだ」と感じる人がいます。それが3つめの、「朝起きられないのが怖くなって、ソファで寝るようになった人」です。

Bさんは50代の独身女性、ベテラン社員として部下から何かと相談を持ちかけられやすい方でした。嫌な顔をせず人の相談に乗り、困っている人は惜しみなく助ける彼女は、職場では誰にも慕われる人でした。が、いつも自分よりも他人を優先するあまり残業は当たり前となっており、とうとう上司が体調を心配して、産業医面談を受けるように言ってくれたのでした。

面談で体調を確認すると、この数年間、睡眠は取れているものの熟睡感はなく、疲労が溜まっている印象でした。すぐに通院すべき状況ではなかったため、しばらくの間産業医面談に来ていただき、お話ししましょうとなりました。

数回面談をする中で、抑うつ気分などの精神症状はありませんでしたが、「頼まれたことはやらなければならない」、「私なんかを頼ってくれる……」などなど、私にも彼女の硬過ぎる考え方や自己評価が低い性格が理解できるようになってきました。しかし、いずれも、疲労の蓄積の原因には結びつきませんでした。

■「遅刻が怖いから」ベッドではなくソファで寝ていた

ある時、面談の中で彼女が「夜中に気がついたらテレビ放送が終わっていた」と話しました。そこで、彼女がベッドでテレビを見ているのではなく、リビングのソファで寝ていることがわかりました。さらに聞いてみると、少し前に1回、寝坊して遅刻しかけたことがあり、それ以降、朝起きられないのが怖くなり、ベッドではなくソファで寝ているといいます。ソファベッドや3~4人がけのソファではなく、2人がけのソファに寝ているとのことでした。

シンプルなインテリアのリビングルームにソファー
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz

本来、人は適切な寝床で十分に寝ることで疲労から回復したり、体調を整えたりしています。そのため、ソファで寝ることが習慣化すると、睡眠の質が低下し、身体に悪影響を及ぼします。まず、ソファでは適切な寝姿勢をとることができず、布団やベッドほどは寝心地が良くないため、睡眠の質が悪化します。特に深い眠りの時間が短くなるため、疲労回復効果が得られにくくなり、睡眠障害の悪化などが懸念されてしまいます。また、ソファで寝続けることは、腰痛や肩こりなどの身体的な不調を引き起こす原因にもなります。

■「ソファで寝る」判断をしている時点で心配だ

ソファでなくベッドや布団で寝ないと疲れが回復しないということは、多くの人がなんとなく知っていることです。

Bさんのような方に「ちゃんとベッドで寝ないと疲労は回復できませんよ」とか、「布団で寝た方が同じ時間でもぐっすり眠れますよ」とお伝えすると、必ず「わかっています」と答えます。しかしなかなかベッドで寝ようとはしてくれません。

遅刻が怖いから、遅刻しないためにソファで寝る。このような判断になってしまった時点で、すでに精神状況の悪化が始まっているのかもしれません。

もうすぐ潰れる社員に多い3つの特徴について述べてきました。

もちろん、個人差がありますので、このパターンに当てはまったら全員が潰れるわけではありません。また、このような状況でも、チームとしての一体感や自己成長などで働きがいを感じている人はまだ大丈夫です。しかし、いつまでも大丈夫とは限りません。ぜひ、このような人が周りにいたら、上司や同僚が早期に声をかけて支援してほしいと思います。今回のお話も、少しでもお役に立てば幸いです。

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武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、BNPパリバ、ムーディーズ、ソシエテジェネラル、アウディジャパン、BMWジャパン、テンプル大学日本校、アプラス、アドビージャパン、Wework Japanといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト

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(医師 武神 健之)

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