東京23区分譲マンション価格1億円突破…モノを"捨てられない人"は1畳あたり243万円超を台無しにしている
プレジデントオンライン / 2023年5月6日 11時15分
■モノを捨てられない人が払っている大きな代償
春は、進学・就職・引っ越しなど、何かと周囲の環境が変わる時期である。これを機に、使わなくなった教科書や参考書、洋服、靴、かばん、子どものおもちゃ、食器、家電など、いわゆる不用品を整理して、すっきり部屋が片付いたという人もいるだろう。
しかし、「やろうと思っていたけれど、結局、今年もできなかった」とガックリ肩を落としている人もいるはずだ。
2022年3月に拙著『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか』(日経BP社)を上梓すると、円安・物価高の状況と相まって、メディアから家計管理や節約ネタの取材依頼が殺到した。そこで気づいたのは「整理整頓はやれば良いことはわかっているが、やっぱり部屋は片付かない」と悩む読者がとても多いことだ。
そこで、今回は使わないモノ、不要なモノの山に囲まれ、家の中で有効に活用できていないスペースがあることで、あなたがどれくらい損をしているかを考えてみたい。
■首都圏新築分譲マンションの平均価格が1億円超
不動産経済研究所が4月中旬に公表した3月の首都圏新築分譲マンション市場動向によると、平均価格は前年比2.2倍の1億4360万円となり、単月で初めて1億円超となった。3月単月の数字とはいえ、インパクトは大である。しかも昨年から工事費用も上がっており、今後も首都圏全体の上昇傾向は続くとみられている。
年間ではどうか。同研究所の2022年度の首都圏新築分譲マンション市場動向を見ると、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県における、1戸当たり平均価格は6907万円、1m2当たり単価(以下、単価)は103万9000円となっている。前期比では、平均価格が547万円(+8.6%)と2期連続、単価が8.6万円(+9.0%)と、11年連続でアップしている。
エリアを東京23区に絞ると、単価はバブル期を下回る(1991年度151万円)ものの、2022年度は150万円だから、その差はわずか1万円。今や、新築マンション価格は、ほぼバブル期と同水準になったことになる。
【図表1】は、地域別の平均価格と単価の動向を時系列で表したものである。
![【図表】地区別価格動向(平均価格・㎡単価) ※単位:万円](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/4/1200wm/img_349088a52ac29962ac00b49e8fbdf73c247252.jpg)
東京都以外の神奈川県・埼玉県・千葉県もチェックすると(2016年度と2022年度の比較)、地域によって、上昇幅に差がみられた。
3県のうち、上昇幅が大きかったのが埼玉県。平均価格(単価)は、2016年度4259万円(60万1000円)から、2022年度5135万円(76万8000円)と、平均価格で876万円、単価16万7000円のアップとなっている。
千葉県は、2016年度4089万円(56万3000円)から、2022年度4529万円(66万1000円)と、平均価格440万円、単価9万8000円の上昇にとどまっている。
■首都圏を中心に賃貸の家賃も上昇傾向が続く
首都圏の新築分譲マンションの不動産価格の状況を例に挙げたが、賃貸物件の賃料はどうか。東京カンテイの「三大都市圏・主要都市別/分譲マンション賃料推移(22年・年間版)」によると、2022年の分譲マンションの平均賃料(1m2あたり)は、首都圏が3328円(前年比+1.8%)、近畿圏2098円(〃+6.4%)、中部圏1914円(〃+4.4%)で、首都圏の伸びはやや鈍化傾向にあるものの、近畿圏は5年連続の上昇で2000円台を突破。中部圏も2020年以降4~5%以上の上昇をキープしている。
先日、この4月から、お子さんが社会人として東京都内でひとり暮らしを始めるという家計の相談があり、「数年前に上の子どもの部屋探しをした頃よりも、ずいぶん家賃が上がっていて、びっくりしました。息子の給料では、都内の便利な駅近の物件なんて、とても借りられませんよ」と嘆いていた。
■世帯年収ごと新築マンションの物件価格はどれくらい?
以上のように不動産価格や賃料が上昇しているのに対し、賃金上昇はパッとしない。厚生労働省が発表した2023年2月の「毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)」によると、物価上昇を加味した実質賃金は、前年同月比2.6%減。11カ月連続のマイナスだ。基本給や残業代などを合わせた現金給与総額(名目賃金)は、14カ月連続で前年同月を上回っているものの、物価上昇に賃金の伸びが追い付いていない状況が続いている。
給料が上がっていないということは、マイホーム購入希望者の物件の予算もこれまでとそう変わらない。物件価格が上がり、給料も上がる見込み薄なら、希望する物件のエリアや広さ、間取りなどを見直して、物件価格を下げざるを得ない。
首都圏の新築マンション契約者(ファミリー世帯)は、どれくらいの年収でどのような物件を購入しているのだろうか。
リクルートの「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」のファミリー世帯年収別データによると、平均年収600万円未満世帯は物件価格4071万円、600万~800万円未満世帯は4474万円、800万~1000万円未満世帯は4927万円、1000万~1200万円未満世帯は5507万円、1200万円以上世帯は6650万円となっている(【図表2】参照)。
![【図表2】ファミリー世帯年収別マネープラン&購入データ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/3/1200wm/img_b3ffbaef3c3ed882a53f96f98b763bcc423162.jpg)
■適正な「年収倍率」はいったいどれだけなのか?
冒頭の平均価格1億円超よりも、よっぽど身近でリアルな価格帯だが、気になるのは、「年収倍率」の格差だ。当該データでは、世帯年収が上がっても、購入時の「平均年齢」や「広さ」「自己資金」などはそう変わらない。「共働き率」が高くなる点も納得だろう。
しかし、「年収倍率」については、1200万円以上世帯が4.4倍なのに対し、600万円世帯では8倍にものぼる。これは、かつて筆者がFPとして独立した頃、年収倍率は「5倍程度」が目安といわれていた頃に比べ、各段に上がっている。
国土交通省の「住宅経済関連データ」では、首都圏のマンション購入者の平均は2021年が年収759万円に対して物件価格4540万円、年収倍率6倍だったが、2021年は、年収835万円に対して物件価格6260万円、年収倍率7.5倍とはね上がっている。
年収倍率は、単に年収を基準にした物件価格の目安に過ぎない。無理のない返済額は、年収以外にも年齢や家族構成、職業などによっても変わってくる。しかしながら、「昨今はこれくらいが当たり前ですよ」といったセールストークもまかり通っており、鵜呑みにせず、自分たちが返済できるのかを熟慮すべきだろう。
■首都圏新築マンション「1畳分の死蔵」分は168万円超
さて、ここまで最近の不動産価格の状況について説明してきたが、これらを踏まえて考えたいのは、賃貸にしろ、持ち家にしろ、今住んでいる家で、モノを置くスペースには「コスト」がかかっているということだ。
とりわけ、前述の首都圏のような1m2単位あたりの価格がバカ高いエリアの新築マンションに住んでいる場合はなおさらである。前掲の2022年度の首都圏分譲マンション1m2当たりの平均単価は103万9000円だった。不動産業界のルールでは、1畳=1.62m2と定められているので、たった1畳に約168万円ものコストがかかっている計算になる。23区なら、1m2150万円なので1畳分で243万円となる。
![黒田尚子『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか「自然に貯まる人」がやっている50の行動』(日本経済新聞出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/8/1200wm/img_280992b581f4468279329b8439bee675195508.jpg)
ほとんど着ない衣服やガラクタ同然の雑貨、脱ぎっぱなしの服や洗濯物が絶えず置かれたソファやマッサージチェア、ぶら下がり健康器……探せば、どんな家庭にも不要品はあるだろう。それらはスペースを占有し、家庭によっては、それは1畳どころか、3畳~4.5畳に拡大し物置部屋化してしまうケースもある。そうなると、ドブに捨てているのは200万円前後(1畳)では到底すまず、500万~720万円(3畳)、750万~1090万円(4.5畳)と巨額になる。(賃貸なら、首都圏で1畳分月5400円、年6万4000円超を支払っている計算)。
すでに購入して住んでいると、占有面積に対するコスト意識など考えたことがない方が大多数だろうが、どうしても、モノが捨てられないという人は、不用品の山で、どれくらいのコストを無駄にしているのか振り返ってみては、いかがだろうか。
そして、これから購入する方は、わが家が快適に生活できる居住スペースとそれにかかるコストのバランスをよく考えていただきたい。
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ファイナンシャルプランナー
CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書に『親の介護は9割逃げよ「親の老後」の悩みを解決する50代からのお金のはなし』など多数。
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(ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子)
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