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3位は鈴木杏、2位は小池栄子、1位は…国内ドラマ「2022年俳優ランキング」女性部門ベスト10【2022編集部セレクション】

プレジデントオンライン / 2023年5月10日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

2022年下半期(7月~12月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2022年12月28日)
2022年に日本国内で放送・配信されたドラマで、評価するべき俳優はだれか。ドラマ偏愛コラムニストの吉田潮さんが作成した「2022年俳優ランキング」を紹介する。第2回は女性部門ベスト10――。

■10位は将来が楽しみな11歳の名女優

超主観的「ベスト俳優ランキング2022」、女性部門を。採点基準としては、名主演または記憶に残る熱演を30点、その人ならではの比類なき好演を10点、適役または評価すべき演技を5点とし、合計点を算出。複数のドラマで好演するほど得点が積み重なる。同点は好みと贔屓であしからず。

10位 毎田暖乃

「妻、小学生になる。」(TBS)30点。

朝ドラ「おちょやん」(2020年・NHK)の子役時代も名演だったが、心底たまげた。亡くなった妻が小学生に乗り移って夫の元に帰ってくるファンタジー作品だ。子供が大人びた役を演じるというレベルではなく、妻そのもの。よくある入れ替わり・乗り移り系も、暖乃の怪演でリアリティーと切なさが3割増しに。「あなたのブツが、ここに」(NHK)の娘役もよかったが、将来が楽しみな女優のひとりである。

9位 山口紗弥加

「シジュウカラ」(テレ東)30点。

美しい若者(板垣李光人)に恋をして、モラハラ夫(宮崎吐夢)と決別する漫画家役。ただの不倫モノではなく、40歳から人生を変える女の覚醒と覚悟を描く物語だ。おばさん・売れない漫画家と自分を卑下し、主語もモチベーションも失っていた女が、痛みを伴いながらも生き直す。繊細な表情の中に狂気と純真、紗弥加の本領発揮。妻と母を卒業し、言葉と自由と孤独を手に入れた姿がすごくよかった。

■素晴らしき女性陣が作り上げた良質ドラマ2本

8位 川口春奈

「silent」(フジ)30点。

10月期に最も話題を呼び、ロケ地巡りや手話の魅力などの社会現象まで報じられたのが「silent」。間違いなく彼女の代表作になった。

写真=フジテレビ「silent」公式サイトより
写真=フジテレビ「silent」公式サイトより

耳が聞こえなくなりつつある元彼(目黒蓮)のために手話を学び、言葉を尽くして気持ちを伝えようとする必死さが愛おしくて。春奈がほぼ毎回涙を流すのだが、その種類の多さと表現の豊かさに感服した。「天魔さんがゆく」(2013年・TBS)で無邪気に白目むいて笑いを誘っていた頃を懐かしく思う。朝ドラは、まあ、ほら、わやだったから……。

7位 長澤まさみ

「エルピス」(フジ)30点。

スキャンダルで落ち目の女子アナという役どころで始まる「エルピス」。傍若無人に正義をふりかざす強靭(きょうじん)なヒロインではないところが魅力的だった。

長澤が本来もっている品の良さは、理不尽が横行する組織の中で抵抗しつつも、立ち位置をわきまえるアナウンサーにぴったり。権力に媚びる悪習にバッサバッサと斬りこむのではなく、自問自答を繰り返して心がずっと揺らぎっぱなしのヒロインは難役。組織に属する大人の鬱屈(うっくつ)を語るナレーションも、劇中で歌った「贈る言葉」も良質。

良作の中で適役。一点突破でランキング入りが多いが、ここまででふと気づいたことが。実は、監督や脚本家が女性の作品が多い。女性の描き方に矛盾や破綻や思い込みが少ないのかもしれず。2022年ドラマの特徴のひとつといえそうだ。

■恵まれない環境を演じさせたら日本一

6位 満島ひかり

「First Love」(Netflix)30点、「初恋の悪魔」(日テレ)5点。計35点。

「First Love」の配信で一気に浮上。満島の魅力がこの作品に凝縮されていたように思う。初恋の相手と運命の再会を果たすが、そこに至るまでの紆余(うよ)曲折はかなりやるせない。

美人で聡明(そうめい)、将来有望だった女子があることを機に、恋人と離れ離れになり、不幸と不運の連続。破れた夢、家柄の合わない結婚、シングルマザーの苦悩、職に就けない経済不安。健気な満島が頑張れば頑張るほど、残酷な試練という歯車の音が聞こえてくるような。そういえば「初恋の悪魔」では、家出少女を無償で支援するも、不当逮捕される不運な役。恵まれない環境を背負わせたら日本一ね。

5位 仁村紗和

「あなたのブツが、ここに」30点、「祈りのカルテ」(日テレ)5点。計35点。

仁村を初めて見たのは「明日もきっと君に恋をする。」(2016年・フジ)だった。同じ日を繰り返し続ける、憂いあるヒロインを演じ、独特の雰囲気と強い意志を感じさせる顔立ちに惹きつけられた。着々と力をつけ、朝ドラ「おちょやん」の京都編、お茶子の同僚役として出演。

そんな彼女が、コロナ禍でホステスをクビになり、運送屋に就職したシングルマザーを演じたのが「あなブツ」。笑いあり、涙あり、苦難も疲弊も恋模様もあり。しかもエンディングではクールに踊り、超魅力的な女優になっていて驚いた。運送業者の災難、シングルマザーの苦悩、コロナ禍の疲弊、実母との邂逅や元夫との決別などなど、「女の半生」を仁村がまるっと背負って、しかも気持ちよく見せてくれたのだ。

加点は「祈りのカルテ」で元夫から搾取される妻の役。真に迫る演技で、若手有望株として入賞させたかったので。

■失恋クイーンの好演に拍手

4位 夏帆

「silent」30点、「First Love」5点。計35点。

夏帆の演技力の高さは今に始まったことではないが、今年はフラれまくっていて、失恋クイーンに君臨。その切ない表情は女性たちから絶賛された。

10月21日配信開始のアマゾンプライムのオリジナルドラマ「モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~」の完成披露イベントに登壇した夏帆さん(=2022年10月18日、東京都新宿区の新宿住友ビル)
写真=時事通信フォト
10月21日配信開始のアマゾンプライムのオリジナルドラマ「モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~」の完成披露イベントに登壇した夏帆さん(=2022年10月18日、東京都新宿区の新宿住友ビル) - 写真=時事通信フォト

「silent」における桃野奈々役はもう鳥肌モノ。手話ネイティブの女友達という役どころで、最もスキルが必要。手話を完璧にこなしただけでなく、恋心が叶わない切なさを体現。スマホを耳に当てるシーンは何度見ても泣ける。それでいて、嫌味や皮肉を表現する可愛らしさや親近感もある。

そういえば、星野源主演の映画『箱入り息子の恋』では目の不自由な女性を演じていたことを思い出した。着実に役をまっとうする信頼感。「First Love」では佐藤健の婚約者役。こっちでもフラれるわけよ。

松重豊と濱田岳の2時間モノ「大川と小川の時短捜査」(テレ東)では、男社会の権化のような警察で上位3%に出世したいと狙っている冷静沈着な女性刑事役。ドジっ娘じゃない、クールで優秀な刑事は、ちゃんづけで呼ばれたら返事をしない矜持。女というだけでなめられていると日々絶望する刑事役も好演した。

■生きのいい若手女優が続々と

さて、ベスト3の前に、次点を。

筒井真理子 20点 「エルピス」、「ヒヤマケンタロウの妊娠」(Netflix) テーマは母の苦悩。
大竹しのぶ 15点 「PICU」(フジ)、「鎌倉殿の13人」(NHK) 頑固な母と謎のおばばが最高。
上白石萌音・深津絵里・川栄李奈 「カムカムエヴリバディ」(NHK) 特別枠で10点ずつ。

ただし、10点は他にも。名前だけでも挙げておきたい。

二重人格を好演した松岡茉優、盤石の演技力の吉川愛、メインの役どころが増えた岸井ゆきの、馬車馬のように働いて出演作が多い山田杏奈、アクションで魅せた別名「アサシン女優」山本千尋、幼さからの脱却に成功した桜田ひより。

若手女優の群雄割拠というのも2022年の特徴のひとつかも。いよいよベスト3へ。

■心わしづかみにされ心拍数急上昇

3位 鈴木杏

「空白を満たしなさい」30点、「拾われた男」5点(ともにNHK)。計35点。

女優の鈴木杏さん
画像提供=フォスター、撮影:近藤誠司

夫が自ら命を絶つ。幼子ひとりを抱え、悲しみと不安に押しつぶされそうになるも、何とか踏ん張る。ところが、その3年後に夫が生き返って戻って来る。

「空白を~」で主役(柄本佑)の妻の役は、嬉しいとか怖いとか悲しいとか気持ち悪いとか、ひとつの形容詞では表せないくらい、多岐にわたる複雑な感情の乱高下がある難役だった。鈴木杏のすごみがすべてここに注ぎ込まれた、そんな気がした。

しかも母親と不仲で、背景には教育虐待といってもいい幼少期の辛い経験も。なんともいえない表情に魅せられたし、心拍数も急上昇させられた。お見事。

その直後に「拾われた男」で、怜悧なマネージャー役を演じていて、主人公(仲野太賀)への塩対応がおかしくておかしくて。そのギャップ!

出演作品数は少ないが、心わしづかみ率の高さから3位に。

■呼吸を忘れるほど素晴らしかった北条政子

2位 小池栄子

「鎌倉殿の13人」30点、「競争の番人」(フジ)10点。計40点。

言うまでもなく、「鎌倉殿」の北条政子役は最高だった。ふがいない弟や頼りにならない父、面倒くさい義母にひと言余計な妹、そして問題と軋轢を生んだ最愛の夫……。

前半は完全に「長女の憂い」「墓守娘」状態。いや、可愛らしい女の嫉妬や見栄というコミカルな場面では顔芸も披露。物語が進むにつれ、夫や子が亡くなり、息子も父も弟も権力で変わっていくさまをやりきれない思いで見つめる。慈悲深さを湛えた表情。北条家と御家人を守るために、毅然(きぜん)とした態度で坂東武者の誇りを説く。

最終回、義時とのラストシーンは呼吸を忘れさせた。義時の激変と政子の不変はセットなのだと改めて思い知らされた。すごかったわー。

「競争の番人」では、公正取引委員会の主査役。変わりものやはみ出し者、上意下達のTHE公務員がいる部署で、唯一まともというか、頼れるバランサーだった。こういう女性がきっとどこの部署にもいて、補ってくれているんだろうなと。悪女役よりも、まともで知的で常識のある女性上司役のほうが似合うと改めて思った。

■唸るほどの適役、圧巻の演技力

1位 松本若菜

「復讐の未亡人」(テレ東)30点、「やんごとなき一族」(フジ)30点、他5点。計65点。

1位はダントツ松本若菜。唸るほどの適役、驚きのはじけ役、納得の演技力は女王にふさわしい活躍っぷり。

女優の松本若菜さん
画像提供=トリプルエー

話題になったのは「やんごとなき一族」の義姉役。ヒロインの土屋太鳳をいびり倒し、童謡を歌いながら嫌味と嫌がらせを繰り広げるエンターテインメント型ヒールを完遂。

連ドラ初主演作となった「復讐の未亡人」では、夫を自死に追い込んだ会社の人間に次々と復讐(ふくしゅう)をする女の役。人としての温度を保ちながらも、心はない表情がすごかった。

「金魚妻」(Netflix)で演じた頭痛もちの妻役は脈打つような痛みがこっちにもうつるほどの熱演。ものすごい濡れ場もあり(相手は眞島秀和)、予想外の結末には膝を打った。あの話だけは面白かった。

派手な役柄だけではない。「ミステリと言う勿れ」(フジ)では優秀で勘のいい、そして命がけで犯人をカクホする勇敢な刑事役、「ファーストペンギン!」(日テレ)では農水省の話の通じる官僚役。美しく能力の高い女は冷酷に見えるが、若菜が演じるデキる女は無駄がなくて潔い。来年も新たな面を見せてくれることだろう。

ひとつの作品における好演で順位付けをするなら、主演女優賞は満島ひかり、助演女優賞は迷うところだが、夏帆に。とにかく涙腺を刺激した点を評価した。

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吉田 潮(よしだ・うしお)
ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。

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(ライター 吉田 潮)

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