コンビニに行くことは貯金の切り崩しと同じ…お金のプロが「コンビニ通いはやめなさい」と指摘する理由
プレジデントオンライン / 2023年5月15日 10時15分
※本稿は、佐藤健太『何歳からでも間に合う初めての投資術』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。
■老後資金を蓄えるためにやるべき「節約」
老後資金を蓄えるための手段は、まだまだあります。しかも、「タワマン売却」といった大口のものでなく、まさに「チリも積もれば山となる」式に生活に余裕をもたらすポイントをご紹介します。
「節約」です。「なーんだ、節約ならもうさんざんやってるよ」という方もいるかもしれません。
特に2022年は、不安定な世界情勢を背景に米国や英国などで急激な物価上昇を記録し、中央銀行がインフレ退治に躍起となる姿が目立ちました。日本でも物価高・資源高が深刻化し、電気代やガス代が前年に比べ2割以上も上昇、日々の生活において「節約」を意識した人は多いでしょう。
使っていない部屋の電気は消す、風呂の追い焚き回数は最小限にする、エアコン設定温度をいつもより抑える――。日頃から涙ぐましい努力をする人はいますが、生活する以上は最低限のコストがかかります。
また、「やってるつもり」でも、一方で無駄な支出を気づかぬうちに増やして、節約分を食ってしまっている、ということも。
インフレに対抗するためには、収入を増やすか、支出を削るか、この2つしか方法はありません。
では、具体的に何を、どのように「節約」すべきなのでしょうか。そこまでの努力をせずとも、毎月の支出を抑制できる方法をお伝えしましょう。
■さっさと固定電話は解約すべき
個人のスマホ保有率が7割超となる今日、自宅にある固定電話をほとんど使用しない人もいるのではないでしょうか。固定電話の利用状況は年々減少しており、2017年に70.6%と7割を超えていましたが、2020年は68.1%にまで下がっています。
ほぼ使っていなくても当然、コストはかかり続けます。総務省の「情報通信白書」(2021年版)によると、固定電話の年間料金は平均1万7633円です。通話料金もかさむでしょう。固定電話とインターネットを併用する場合は「IP電話」(インターネットを通じた電話サービス)を利用すれば、月々の基本料金を抑えられます。固定電話の解約や見直しを考えた方がいいかもしれません。
■「日本のスマホ代は高すぎる!」は本当か
「日本のスマホ代は高すぎる!」と女優・米倉涼子さんが叫ぶテレビCMは印象的です。総務省が米国や英国、フランスなどの主要都市と比較した2020年6月の調査報告によれば、平均月額(データ容量5ギガ)は東京が6250円、ロンドン1800円、パリ1986円、ソウル3931円などとなっています。
日本のスマホ代の平均は年間10万4192円で、月に8683円となっています。たしかにスマホ1台あればさまざまなことができるので今や欠かせないモノであるのは間違いありませんが、1カ月に9000円近くも支払うのは痛い出費、と言えます。
ただ、料金が高い人には特徴もあります。例えば、不要なオプションが付いているケースです。契約時に無料だからと付けたサービスが期間を過ぎても解約していない場合、有料になって延長されていることがあります。
■「格安SIM」で問題ない
次は自分の利用状況と契約プランが合っていない場合です。データ容量は契約プランで異なりますが、本来は必要がない大容量のプランで契約している人も見られます。自分に合った適切なプランになっているのか絶えず見直すことが重要です。
若年層を中心に多いのは、新しい機種が発売されるたびに最新スマホを購入することです。購入時に一括払いではなく、機種の分割払いにしている人は毎月の料金に上乗せされて支払うことになります。
スマホは毎年新しい機種が発売されますので、そのたびに購入していれば前の機種の分割払いが終わらないうちに次の機種を購入することになります。単に「新しいから買う」ではなく、「この機能が優れているから」など購入理由をじっくりと考え、月々のコストを抑えるようにしたいところです。
スマホ代を高く払っている人は、通信事業者から回線を借りて低価格でサービスを提供している「格安SIM」への乗り換えを検討しましょう。また、データ容量が気になる人はできるだけ店や駅などにある無料の「Wi-Fi」を利用することをオススメします。
■「節約」最大の敵はコンビニ
日々の生活で、「節約」の最大の敵は何かと言えば、実はコンビニです。
とにかく便利なコンビニ。かつては若者の姿が目立っていましたが、今は高齢者の利用者が増加しています。コンビニ業界はシニアをターゲットにする時代に入り、激しい高齢者獲得競争を展開しています。しかし、コンビニの利用頻度が高くなっていけば老後生活を圧迫する要因にもなりかねないため注意も必要です。
![コンビニの店内](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/5/1200wm/img_9586e7e484d87dc99cb36fa87e342f05192661.jpg)
「これは今夜の夕食。それは明日の分だよ」。横浜市のコンビニで総菜や弁当をレジカウンターに置くのは、近所で一人暮らしをする70代女性。両手からあふれそうになるほど商品を持ち、顔見知りとなったアルバイト店員と会話を交わしています。電子レンジで弁当を温めている間に小銭入れから硬貨を取り出し、「それじゃあ、明日も来るよ」とビニール袋を手に帰って行きました。
こうした光景を目にしたのは1度や2度ではありません。皆さんもあるのではないでしょうか。独居シニアが増えている今、こうした状況が全国のコンビニで見られています。
■来店客の半分が50歳以上
業界首位の「セブン‐イレブン」の来店客を見ても、かつては20代以下の若者利用者が6割程度に上っていましたが、最近は約2割にまで減少していることが分かります。若年層のコンビニ離れが進む一方で、50歳以上は5割程度に増加しました。人口の高齢化を考えれば、中でも65歳以上のシニアが急増していると考えられます。
その背景には、情報感度が高いといわれる若者がネット通販やディスカウントストアに向き、単身世帯が約3割を占めるシニアは身近にあるコンビニを利用するようになったとみられています。
コンビニはもともと、総菜や菓子類などが小分けされている点など一人暮らしの人とマッチしており、わざわざ商店街まで出向いたり、混雑するスーパーで並んだりする必要がないことも高齢者にとっては利用する動機になります。
足腰が弱くなり、早朝から動き出すことが多いシニアには24時間営業の店が身近にある点は使い勝手が良いのでしょう。1989年に来店客の約6割を占めていた20代以下も今や50~60代。利用者の高齢化は進む一方です。
■スーパーとの価格差
しかし、コンビニには「弱点」もあります。それはスーパーに比べて販売価格が高いことです。その理由は、スーパーもコンビニも商品をメーカーから購入して販売していますが、基本的にコンビニはフランチャイズという仕組みで運営されているため、各店舗は利益の一部を本部に納める必要があります。当然、この分は価格設定を高めにして販売することを迫られます。
また、24時間営業をすれば人件費や光熱費といったコストも高くなります。メーカーからの仕入れ値も含め、スーパーよりもコンビニ経営にはコストがかかるため、販売価格がどうしても高くなっているのです。
実際に買い比べてみると分かりますが、菓子類や飲料などを10点ほど購入した場合、スーパーに比べて1.3~1.5倍ほど多く支払うことも珍しくはありません。
■月に4万5000円も余計に払っている
都市部に集中するスーパーと比べれば、食料品や文房具などの購入、公共料金の支払いまで身近にある1つの店で済ませられる点はコンビニ利用の最大のメリットと言えます。
しかし、仮に朝・昼・夕の食事をずっとコンビニだけに依存した場合はどうなるでしょうか。
![佐藤健太『何歳からでも間に合う初めての投資術』(ワニブックスPLUS新書)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/e/1200wm/img_9ed37304e3cabcb342d3ac92ccba33fd115801.jpg)
仮にスーパーよりも販売価格が1.5倍高いとして計算した場合、1回当たりの食費が750円であれば、コンビニには1日に2250円支払っていることになります。
コンビニは定休日がないため、1カ月続けると月に6万7500円。1年間では実に81万円です。これが1回当たり500円のスーパーであれば、単純計算で1日1500円、月に4万5000円、1年で54万円となり、その差は27万円にもなります。
老後生活の5年間なら差は135万円、10年間では270万円です。
もちろん、すべての商品が1.5倍というわけではなく、あくまでも仮定の話にはなりますが、決して小さいものではないでしょう。超高齢社会の到来で利便性が高いコンビニのシニア利用者は今後も増えていくことでしょう。しかし、その際には自らの所得や資産も頭に入れておくのが肝要と言えます。
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FP相談サービス執行役員・心理カウンセラー
ライフプランのFP相談サービス「マネーセージ」執行役員(CMO)。心理カウンセラー、教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。コラムニストとしても活躍。
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(FP相談サービス執行役員・心理カウンセラー 佐藤 健太)
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