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「これまでの勉強では太刀打ちできない」志望者急増…中学受験"中堅校"の入試問題に起きた大変化

プレジデントオンライン / 2023年5月18日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

中学受験における中堅校の入試問題が変化している。プロ家庭教師の西村則康さんは「知識だけで答える問題は減少し、難関校同様に思考力や記述力を求めるようになった。甘く見ていると、大きな失点につながる」という――。

■中堅校を志望する層が増えている

近年、首都圏では中学受験熱が高まり続けている。かつて中学受験といえば、できるだけ難関校を狙う家庭が多かったが、近ごろは地元の公立中学校よりもより良い教育環境を求めて、中堅校を志望する層が急激に増え、厳しい戦いとなっている。中堅校とはいえ、入試問題を見ると知識だけで答えるというものは減少し、難関校同様に思考力や記述力を求める問題に変化している。中堅校だからと甘く見ていると、大きな失点につながる危険性がある。今回は2023年度入試から見えてきた中堅校の科目別出題傾向を解説していく。

■記述問題が増加、内容理解を求められる

まずは国語。数年前までは、難関校と中堅校では決定的な違いがあった。それは記述問題があるかどうか。難関校では昔も今も国語入試には必ず記述問題が出題される。一方、中堅校ではいくつかの選択肢の中から正しい答えを見つける選択問題が中心だった。また、記述問題があったとしても、文中から言葉を抜き出すというものだった。それが、ここ数年前から、記述問題が増加。単に言葉を抜き出すだけでなく、「抜き出し」+「自分の言葉」を書くという問題が登場するようになった。

もっとも難関校の記述問題はすべて自分の言葉で書かなければならない。それに比べればまだ簡単ではあるが、対策は必要になる。まず文中の言葉を使って答える条件記述に慣れ、次にそれを別の言葉に言い換えたり、要約したりする練習を積み重ねることだ。

そのときの文章の読み方として、例えば物語文で登場人物の気持ちを聞かれている場合、場面の変化や情景の変化、行動の変化に注目しながら、「結局、この人は何が言いたいのだろう?」と相手の気持ちを理解しようとしながら読み進めていくことが大切になる。つまり、各問いに対して、「この問題の答えはこのあたりに書いてあるはずだ」と文中にある言葉を探すのではなく、より文章全体の内容を理解することが求められているのだ。こうした読解力を測るのに自分の言葉で記述させる問題が増え、それが正解できるかが合否の分かれ目になってきている。

■丸暗記・パターン学習ではふるい落とされる

中堅校の算数入試は学校によって傾向が違うため、一言では言い表せない。偏差値的にはそこまで上ではないけれど、算数だけは難しい問題を途中で入れてくる学校もあり、各学校の対策が必要になる。ただ、中堅上位校において共通して言えるのは、どの学校も塾で習ったような定型問題がそのまま出ることはなく、ひとひねりがあり、応用力が求められていることだ。

ところが大手進学塾では、どうやったら鮮やかに早く解けるかの指導に走りがちだ。そういう授業を受け続けていると、何でも公式化したがる子が出てくる。近年、特にそういう子が増えてきているように感じる。しかし、そういう子は塾で学習した問題は素早く解けるが、問題の条件が少し変わっただけで、たちまち分からなくなってしまう。こうした丸暗記・パターン学習で受験勉強をしてきた子をふるい落とすために、近年では中堅上位校でも解くプロセスを重視した問題が増えている。

例えば「場合の数」は和の法則と積の法則を塾で習うが、実際の入試問題ではあえて公式化できないものを出題し、その場で手を動かしながら考えさせる。一つひとつ書き出すというのは骨の折れる作業だが、それを面倒くさがらずにやることで、規則性に気づき、自分の手と頭を使って答えを導き出す。こうした問題を出す学校側の意図は、解くプロセスを重視している点だ。それはすなわち、「あなたはこれまで自分の手と頭を使って考えながら勉強をしてきましたか?」「ちゃんとこの公式で解く意味を理解して使ってきましたか?」と問うているともいえる。

■理科・社会では資料を読みながら考える問題が増えている

近年、中学受験の入試問題は非常に長文化している。また、理科・社会入試では表やグラフなどの資料の情報を読み取りながら、考えさせる問題が増えている。つまり、読解力が重視されているのだ。こうした問題を前にしたとき、「こんなに長い文章を読んでいたら時間がなくなってしまうよ……、もうダメだ」と怖じ気づいてしまうような子は、その時点で負けだ。まずは、「何が書いてあるのだろう?」と興味を持って読み進められるかが、勝敗を決める。

黒板に描かれた棒グラフ
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

そもそも、理科や社会といった科目は、身の回りのさまざまな現象を不思議がったり、世の中で起きていることに関心を持ったりと、好奇心の有無が重要になる。こうした長い文章を出してくるのは、その素地を見ているように感じる。

■「ちゃんと読む」「ちゃんと書いて考える」が重要

パッと見、あまりの長さに怯むが、リード文をしっかり読めば、その先の展開はおおよそ見えてくる。理科・社会入試には大きく2つのパターンの問題があって、1つはすでに知っている知識を使って解く問題、もう1つはリードの中に新しい知識が書かれていて、それを読み進めながら、既存の知識と結びつけて考えていく問題。まずは、どちらの問題なのかをリード文から判断する必要がある。それをきちんと読まずに、いきなり問いから読んで解こうとしてはいけない。なかにはリード文の中にすでに答えが書かれていたり、一見難しそうな問題に見えてもよく読むとそれほど難しくない見かけ倒しの問題もあったりする。つまり、きちんと読めるかが重要になるのだ。

勉強している子供
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

こうして見ていくと、4教科共通して言えるのは、「ちゃんと読み」「ちゃんと書いて考える」という正しい勉強の仕方が身に付いているかどうかを見ているように感じる。難関校の入試も難度こそ違うけれど、同様の傾向が見られる。つまり、中学入試全体が、知識の詰め込みやパターン学習といったこれまでの勉強からの脱却を図ろうと動き出しているのだ。今後はその点を意識して、どんなタイプの問題が出題されても応用力が利く、納得のいく理解を心がけてほしい。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。

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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)

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