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ラーメンは週5回食べる…62歳の医師・和田秀樹が「週3回はラーメン屋の新店を試す」をやめない理由

プレジデントオンライン / 2023年5月27日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MonthiraYodtiwong

いつまでも脳を若々しく保つにはどうすればいいのか。医師の和田秀樹さんは「前頭葉を刺激することが重要だ。私は週5回ラーメン屋に行くが、そのうち3回ぐらいは知らない店に行くようにしている。それも前頭葉を刺激するためだ」という――。(第1回)

※本稿は、和田秀樹『不老脳』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

■私が週に4、5回ラーメン屋に行く脳科学的理由

わたしはラーメンが好きで週に4、5回ラーメン屋に行くと言うと「そんなに行くんですか」と驚かれるのですが、はい、行っております。

それはともかく、週に4、5回ラーメン屋に行くうち3回ぐらいは知らない店に行くようにしています。行ったことのない店に行って美味しいかまずいか試してみて、まずかったら「実験は失敗だった」と思えばいいと思っているのですね。

「0勝5敗だった」とか「3勝2敗だった」とか脳内で星取り表をつけるだけでも充分刺激になる。

前頭葉は「新たな発見」を求めています。これから高齢者が増えていく中で、どうやって老後を過ごすのかということをよく聞かれたりしますが、そういう時は「生きることを実験だと思えばいい」と申し上げることにしていて、生きることが実験だと思えれば、失敗はさほど怖れる必要がありません。

上手くいかなければまた別な実験をすればいいという考え方ができるでしょう。ある店で醤油ラーメンはダメでも、塩ラーメンはいけるかもしれません。トッピングを変えてみてもいいかもしれない。

食べたことのないメニューに当たりがあるかもしれませんし、「挑戦」というにはあまりにささやかかもしれませんが、それでも前頭葉を働かせることは出来る。少なくとも退屈はしなくてすむのではないでしょうか。

■パチンコは×、競馬と麻雀は○

ここではっきりと申し上げておきますが、脳にとって「退屈は敵」です。刺激がない状態に置かれた脳は衰えていきます。

使われなくなった脳内のネットワークは失われてしまいます。刺激の反対語こそ「退屈」ではないでしょうか。

ギャンブルは前頭葉機能が落ちた中高年や初老のあたりで始めると依存症になるリスクが高いので、毎日やれてしまうネットカジノやパチンコはお勧めしません。が、ドーパミンを得やすいという意味では刺激になりますから、週2日程度しか開催しない中央競馬や、面子(メンツ)を集めてやる麻雀などは脳の活性化という面でよいと思うのです。

あるいは少額投資なども前頭葉を鍛えるにはいいでしょう。どんな趣味でもそうですが、「病膏肓(こうこう)に入る」とか「身上を潰す」といった状態にならずにすむ範囲であれば、わたしはギャンブルだって「実験的生き方」としてよいのではないかと思っています。

今から20年ほど前、当時ユニクロ会長だった柳井正さんが『一勝九敗』という本を著してベストセラーとなったことがありましたが、「損をしても潰れない」「次の実験ができる程度に実験をする」というスタンスであれば勝率より大きな勝ちを目指してよいと思うのです。

■モテなくていいと考える人からボケる

前頭葉を刺激する意欲はなんでも構わないと思うのです。「異性にモテたい!」というのも立派な意欲です。モテるために服を新調したり、話術を磨いたり、綿密にデートプランを考えたり、そのたびごとに前頭葉はフルに活動するでしょう。

「今さらモテるとかモテないとかどうでもいい」と言う人もいるでしょうが、だったら別に熱意を傾けられる対象を探せばいいだけです。

わたしが思うのは、人間の欲求の中で食べることであったり求愛することだったり集団に属することは根源的なもので、「年甲斐もなく」などとして一概に否定すべきではないと思うのです。

そういうことが刺激になる、そういう意欲が持てる人はそうすればいい、というだけの話です。もちろん不倫を推奨したり、キャバクラ嬢やホストに入れあげて散財することを勧めているわけではありません。

ただ、「モテたい」「好かれたい」という本能的な欲望を否定して、「大人げない」「くだらない」と意欲に蓋をすることの方が、むしろ前頭葉の老化を早めてしまうのではないかと思うのです。

だったらいっそ、「これも前頭葉のためだ」くらいに割り切って、高齢者になってもボーイフレンドやガールフレンドとデートをして、周囲から「年甲斐もなく」と顰蹙を買うくらいでちょうどいいのではないかと思うのです。

■理想は養老孟司先生になること

わたしのラーメン屋巡りだって相当に「年甲斐もない」行動だろうと思います。わたしは現在、62歳です。医師ですから、ラーメンで摂取するカロリーやコレステロールだってバカにならないと知っています。

それでも、新しい店を探し、選び、知らない道を歩く刺激や、それに伴う運動量が得られることと動脈硬化を天秤に掛けると、ラーメン屋巡りをやめようとは思わないのです。

初めての土地に旅行に行くのもよいでしょう。新しいスポーツを始めるのでもいいでしょう。現役の時だったら並ばなかったような店にリタイア後だから並んでみるのでも、これまで読まなかったプルーストに挑戦するのでも、中国語を始めるのでもなんでもいいと思います。

なるべく初体験をし、トライアンドエラーをしてみるというのが前頭葉のためにはよいというのがわたしの考えです。わたしは人生の先達として、解剖学者の養老孟司先生を理想だなと思っています。

■人生がつまらないのは前頭葉を使っていないから

お目にかかるたびに思うのですが、85歳の今も知的好奇心に溢れ、発信力を保ち、昆虫のためなら海外にも足を向ける。そう、「年甲斐もなく」ゾウムシ研究に熱中しておられるのです。

おそらく、日々がご自身のやりたいことで満たされていて、暇だと思う時間などないのではないかと思います。どこに行って何を調べて、何時にどこに行けばどんな昆虫がいて、などとシミュレーションするだけでも忙しくされているのではないか。そしてそれは、きっと楽しいことで、わくわくすることではないかと想像するのです。

これからの時代の年のとり方を考えたとき、前頭葉を使った方がボケずにすむとかそういうことを超越して、おそらく前頭葉を使った方が人は楽しいのだ、と養老先生を見ていると思わされるのです。

人生がつまらないのは前頭葉を使っていないから。人生が楽しいのは前頭葉を使っているから。極めてシンプルですが、これが真実なのではないかなと思うのです。

間の脳のチョークローブで指す人間の手
写真=iStock.com/eli_asenova
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eli_asenova

■他人とのコミュニケーションがボケを防ぐ

人とつながる前項で、他者とのコミュニケーションは脳の血流を増やすことを説明しました。他者との関係性の構築は、EQの5大要素を思い出してもらえればおわかりいただけると思いますが、前頭葉がもっとも活動する場面です。

また、第2章では「孤独」のリスクも述べたかと思います。積極的に他者と上手に関わることが前頭葉を衰えさせないためにも重要だとわたしは考えます。

2020年に医学誌『ランセット』が発表した「12の認知症発症リスク」によると、3番目に「老年期の社会的な交流の不足」が挙げられています。

これは、「認知症の発症を40%予防できるか、遅らせることを期待できるリスク」のリストで(残り60%は不明)、つまり、「老年期の社会的な交流の不足」などさまざまな発症リスクを解消できれば、40%は予防できるか、遅らせることが「期待できる」というわけです。

■認知症を防ぐ「8つの社会関係」

2017年に発表された国立長寿医療研究センターの研究では、要介護者ではない65歳以上の約1万4000人を9年以上にわたって追跡調査し、8つの社会関係について認知症発症リスクがどのくらいあるか報告しています。

8つの社会関係とはざっと説明すると「就労しているか」「地域のグループに参加しているか」「配偶者はいるか」「同居家族の支援があるか」「友人や隣人との交流はあるか」「友人や知人の支援があるか」「別居している子どもや親戚の支援があるか」「別居している子どもや親戚との交流はあるか」というもので、前半5つの項目に該当する人は認知症になるリスクが低いという結果でした。

また、該当する項目が0か1の人に比べると、5項目を満たす人は認知症リスクが46%低いという結果でした。

これは認知症に関するデータではありますが、認知機能の低下とは、初期の頃は前頭葉機能の低下にほかなりません。

■アウトプットと健康の意外な関係性

久しぶりに会った人の名前が思い出せない、といったよく経験するような記憶障害の多くは「想起障害」です。なぜ想起障害が起きるかというと、人間の脳は上書きされればされるほど昔の記憶が引き出しにくくなるからですが、「インプット」ばかりするのではなく、「アウトプット」する経路を作ってやれば想起はしやすくなります。

逆に、アウトプットの機会が少ないと、記憶を「想起」しにくくなります。

例えば、退職して会社に通わなくなった場合を考えてみてもらえればわかりやすいかもしれません。

会社の同僚や上司だった人に対して会話する機会も減る、つまりアウトプットの機会が減れば、同僚や上司だった人の名前も出て来にくくなるわけです。

和田秀樹『不老脳』(新潮新書)
和田秀樹『不老脳』(新潮新書)

小学校の同級生や中学時代の恩師の名前なども同じことです。逆に言えば、アウトプットの機会を増やせば記憶の回路は活性化されます。そのためにもアウトプットする相手が必要ですし、その関係性を保つこと、人とのつながりが大事になってくるのです。

内閣府の2018年版高齢社会白書によると、55歳以上を対象とした調査で家族や友人との会話の頻度が「ほとんど毎日」の人の主観的な健康状態は、「良い」が90.1%だったのに対して「ほとんどしない」人では1.1%と大きな開きが出ています。

「主観的な健康状態」ですから、必ずしも実際の健康状態とは一致しないでしょうが、会話がないと「どうも調子が悪いな……」という意識に陥りがちであることは心に留めておいていいのではないかと思います。

ぎくりとしたあなた。夫婦関係や家族関係、友人関係を改善することは、いつ始めても遅くないとわたしは思います。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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