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素人は「晴海フラッグ」に手を出さないほうがいい…お金のプロが断言する「いま選ぶべきタワマン」の最終結論

プレジデントオンライン / 2023年5月17日 15時15分

晴海フラッグ(=2023年2月27日、東京都中央区) - 写真=時事通信フォト

いまマンションを購入するならどこがいいのか。フィナンシャルプランナーの水野崇さんは「長期的な資産価値を考えると、都心部ではない街で『ランドワーク』となっているようなタワマンがいいだろう。一方で、タワマンが集中している湾岸部などの人気エリアは避けたほうがいい」という――。

■不動産価格の高騰が続く中で選ぶべきマンションとは

今年3月に首都圏で発売された新築マンション1戸当たりの平均価格は、1億4360万円と初めて1億円を超えました(不動産経済研究所)。

東京都心や湾岸エリアでは最低価格1億円以上というマンションが次々と誕生しています。こうした状況下で、住宅の購入を検討している方々はどういったマンションを選ぶのが正解なのでしょうか。今回は特に若い世代に人気があるタワマンに絞って考えてみましょう。

現在最も注目されているタワマンは2023年6月から販売開始予定の「HARUMI FLAG SKY DUO(晴海フラッグ スカイデュオ)」でしょう。

晴海フラッグは東京五輪の選手村跡地を改装したもので、全23棟5632戸という巨大プロジェクトです。スカイデュオはそのラストを飾る超高層ツインタワーです。

2棟とも地上50階建て、総戸数は2棟合計で1455戸、販売予定価格は、【1LDK】20階/49.38m2/5600万円台、【2LDK】25階/66.00m2/7100万円台、【3LDK】25階/72.27m2/8100万円台、【3LDK】35階/85.83m2/1億3500万円台などとなっています。

■なぜ晴海フラッグが人気なのか

注目を集める最大の要因は、価格の安さにあります。

晴海フラッグの販売は、選手村宿泊棟として一時使用された21棟のマンションから始まりました。オリンピック開催前から今年にかけて足掛け5年かけて行われました。

当初は無抽選住戸もあるなど人気はイマイチでしたが、コロナ禍で社会情勢が一変する中、価格据え置きで販売を継続しました。この結果、割安感が際立つことになりました。

販売後半となる2021年からは国内外の投資家が転売目的で参戦する「投機物件」に変貌。最終期の2022年には、抽選時の平均倍率数十倍、最高倍率266倍と応募が殺到し、「当たれば大儲け」という超人気マンションになったのです。

それはスカイデュオでも同じです。1億円以上が当たり前となった現在の新築マンション相場を考えると、かなり割安な価格です。それでいて東京を一望できる圧倒的な眺望が手に入ります。今回も激しい争奪戦になることは必至です。

■手放しで勧められない

しかし、私はスカイデュオを手放しで勧められる物件とは思いません。

まず最寄り駅からのアクセスに難があります。都営大江戸線の勝どき駅から徒歩16分~21分となり、利便性は決してよくありません。東京都が2040年までの開業を目指し、東京駅と臨海部を結ぶ地下鉄新路線の事業計画案を発表しましたが、計画通りに実現するかは不透明です。

新たに駅近マンションが販売されれば世間の興味はそちらに移りますので、次の買い手を探すことは難しくなるでしょう。

購入してすぐの売却であれば儲かるかもしれませんが、将来にわたって資産価値が維持されるほど魅力的なマンションなのだろうか、という疑問があります。

タワマンの魅力である抜けるような眺望が望めない住居も少なくありません。立地上、複数マンションに囲まれる「お見合い」状態になっているからです。

購入者の質も懸念されます。晴海フラッグは国内外の投資家も多数参戦しています。投資家は自身の住まいではなく転売が目的ですので、割安な住戸を購入し数年間は分譲賃貸として運用を続け、タイミングをみて売却します。そのため、将来的には中古物件が市場に溢れることが予想されます。

国内投資家よりも、外国人投資家の方が所有期間は短くなり、さらには為替相場の変動にも敏感です。

現在の円安局面から円高局面に相場反転することがあれば、利回り悪化による売り抜けの競い合いが始まるかもしれません。不動産価格は、需要と供給のバランスで形成されます。

売却時期が重なれば、晴海フラッグを含めた晴海地区のマンション価格は暴落するリスクがあります。一般の方が手を出すには難易度が高いように思います。

不動産価格の下落のイメージ
写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi

■大規模修繕にかかるお金は不透明

また近年はタワマンの雨漏り事例が増えています。特に深刻なのは湾岸エリアのタワマンです。普段から強い潮風や塩分を含む雨にさらされており、内陸タワマンよりも外装シーリング材の劣化スピードは速いと考えられます。

雨漏りを放置していると、建物のみならず健康被害も心配され、資産価値は大きく下落することになるでしょう。

「大手デベロッパーの発売だから管理に問題はないのでは」と考えるかもしれませんが、そうとも限りません。

タワマンの本格的な普及は2000年代に入ってからですので、比較的新しい建物形態です。

建物の耐久性に関しては、まだわかっていないことが多く、タワマンの大規模修繕についても実施例が少ないのが実情なのです。

■もし修繕積立金がショートしたら

国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、マンションの大規模修繕工事は築12~15年周期で実施されます。1戸あたりの工事金額は、1回目で平均151万6000円となっています。昨今の資材高騰により当初の予定よりも高くなることも考えられます。

大規模修繕工事中のマンション
写真=iStock.com/taka4332
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

築30年前後には2回目の大規模修繕工事が行われます。築30年ともなれば住民の多くが高齢化しており、新築時よりも値上がりした毎月の修繕積立金は、かなりの負担となるはずです。

もし修繕積立金の不足といった事態に陥ると、積立金値上げの前倒しや100万円単位の臨時一時金の徴収を求められることになります。大規模修繕を先送りすれば、外壁シーリング材の劣化による雨漏りだけではく、共用設備の不調も発生します。

■管理費は簡単に変えられない

タワマンは、修繕費だけでなく、管理費も割高です。タワマンの“足”ともいえる複数基のエレベーターは、定期点検が欠かせません。所在階にかかわらず高額なメンテナンス費用が発生します。スパやジム、展望ラウンジなどホテル並みの共用施設をうたうタワマンも多いですが、この管理費も住民で折半です。

国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、マンションの管理費の平均は月額1万970円ですが、タワマン(20階建て以上)の平均は月額1万5726円と1.43倍になっています。

少しでも管理費の負担を減らそうと、共用施設の変更・廃止をするタワマンもありますが、簡単ではありません。変更・廃止には区分保有法の規定により全区分所有者の4分の3以上の賛成が必要です。タワマンは多ければ数千世帯が暮らしているため、そこで合意を得るにはたいへんな労力がかかります。

そして晴海フラッグのようにオーナーに外国人投資家が多いタワマンなどは、さらに難易度が上がります。

■湾岸や武蔵小杉を避けたほうがいいワケ

そもそもタワマンの魅力とはなんでしょうか。

普通のマンションと違うのは、眺望の良さ、超駅近や都心のど真ん中など圧倒的な利便性の高さ、それゆえの資産性といったところでしょう。これを満たす物件であれば、割高な修繕費や管理費を払っても、むしろ得をする物件です。購入する価値があります。

では、どこのタワマンを選べばいいのか。

避けたほうがいいのは、湾岸エリアや武蔵小杉などすでにタワマンが密集しているエリアです。

購入時はとても魅力的に映りますが、数年経つと近隣に同規模タワマンが建ちお見合い状態になることが珍しくありません。新たに建ったタワマンによって眺望が失われた住戸の価格は大きく下落します。さらに、住民が増えることによって最寄り駅の出勤ラッシュが発生や、待機児童問題なども起きています。

いまタワマン密集エリアを購入するのは、高値づかみになりやすく、将来にわたって資産価値を維持するのは難しいでしょう。

■「ランドマークタワマン」の魅力

私のおススメは都内近郊都市や地方都市にぽつんと建つ「ランドマークタワマン」の中古物件です。

こうしたタワマンは、行政や地権者が主導し再開発の一環として「ランドマーク」としてマンションが建てられます。都心へのアクセス良好な場所に位置しているので都会的な生活もできますが、普段は都内近郊ならではのゆったりとした時間も過ごせます。

なによりすぐ隣に眺望を遮るような同規模マンションも建たず、1棟だけの特別な住環境が長期的に維持されます。

駅直結など利便性が高く、不動産価値は安定しています。郊外からの住み替え需要も見込め売却時も次の買い手を見つけやすいでしょう。

東京都心のように億ションだらけということもありませんので、共働きの夫婦であれば購入の検討に入る価格帯の住戸が中心です。

このような「ランドマークタワマン」のオーナーは、マイホームとして居住している人が多く、マンション管理などにも積極的です。地域の資産家が高層階を購入していることも多いですが、彼らの目的はセカンドハウスや節税が目的です。短期的に売り抜けすることはなく、投機対象になる可能性は低いでしょう。

都心のマンションに投資している外国人投資家たちは、このような物件にはあまり興味を持ちません。その点もメリットといえます。

私は普段ファイナンシャルプランナーとして個別相談を受けていますが、「ランドマークタワマン」に住むご相談者からは、多数の「含み益」の報告を受けています。

タワマンを買うのであれば、将来の価値がどう変化するかが見えない新築に飛びつくのではなく、住民の顔が見え、すでに価値が安定している「ランドマークタワマン」の中古のほうが安心だと考えます。

■マンションで不幸にならないために

タワマンのシンボリックな見た目に心引かれる人は多いでしょう。新築タワマンのモデルルームには「買わせる」仕掛けが所々にあり、その場の高揚感から勢いで申し込みするケースも少なくありません。

不動産は多くの人にとって、人生で最も大きな買い物になります。買い方1つで、幸せな人生にも不幸な人生にもなり得るものでしょう。

購入価格は適正なのか、住宅ローンは身の丈に合うのか、資産価値は維持されるのかなど、できるだけ慎重に選びたいものです。

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水野 崇(みずの・たかし)
ファイナンシャルプランナー
東京理科大学理学部応用数学科卒業。2019年に「水野総合FP事務所」を開所。独立系FPとしてライフプランや投資・資産運用、不動産・住宅ローン相談を中心に、年間100名以上の相談業務に従事。マネー教室を運営し中学生から社会人までを指導している。

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(ファイナンシャルプランナー 水野 崇)

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