アプリで誘い出し"テキーラ一気"で20万円請求…新宿・歌舞伎町で横行するぼったくりバーの最新手口
プレジデントオンライン / 2023年5月18日 17時15分
■マッチングアプリでバーに誘い出し…
新宿・歌舞伎町でぼったくりの被害が相次いでいる。4月上旬には男性客から不当に高額な代金を請求したとして男女16人が逮捕され、その数日後にはリーダー格と見られる男も逮捕されたとテレビや新聞で報道された。
歌舞伎町におけるぼったくりの手法は定型化されている。バーの店員とグルである女性がマッチングアプリで男性客を誘い出し、「知っている店があるから行こう」「おすすめの店がある」などともっともな理由をつけて、ぼったくりバーに連れて行くのだ。
歌舞伎町をはじめ、池袋、湯島、六本木といった都内の歓楽街では、「客引きについていかないように」とのアナウンスがいつも流れているが、その注意を守っていたとしてもぼったくりの被害に遭う可能性は十分ある。
■テキーラ1杯3000円、請求された金額は20万円
40代の男性Aさんは先輩から合コンに誘われ、歌舞伎町のバーへ行くことになった。相手は先輩がマッチングアプリで知り合った女性で、友人を3人連れて来てくれるという。しかし、男性4人で待ち合わせ場所に行くと、そこには女性が1人しかいなかった。「知り合いの店が近くにある。友人はあとから合流する」という女性の案内で、とあるバーに入った。
「バーのシステムは2時間の飲み放題が1人5000円でした。ほかの女の子たちは20分に1人ずつ来て、“さっき仕事が終わったところで”と言いながらテキーラのショットを頼むんです。仕事終わりにいきなりテキーラを頼む若い女性なんて、違和感しかありません。その時点で嫌な予感がしていました」(Aさん)
![マッチングアプリを使ったぼったくりの被害に遭ったAさん](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/a/1200wm/img_9a3e64645aa6cede898c01e66582ce3c511012.jpg)
タイプの女性がいたのでAさんが会話をしようとすると、「みんなで歌おうよ~!」と無理矢理カラオケを始めた。1曲目を歌っている途中から連続で何曲も予約を入れ、サビの部分でテキーラのショットを一気に飲む流れに持って行かれた。
1人5000円なので8人で合計4万円のところ、請求された金額は20万円だった。1杯3000円のテキーラは飲み放題のメニューには入っていないと説明され、そのうえ消費税のほかに「tax」が10%上乗せされており、クレジットカードで支払いをする場合はさらに10%の「tax」がかかると説明されたという。
■つい最近までは警察は介入していなかった
歌舞伎町におけるぼったくりの被害は今に始まったことではない。ぼったくりの報道が過熱しているのは、警察が摘発をするようになったからだ。マッチングアプリを使ったぼったくり被害があまりにも増えたため、放置しておくわけにもいかなかったのだろう。また、今年4月の「歌舞伎町タワー」開業に合わせた浄化の一環とも考えられる。要するに摘発するにはタイミングがよかったのだ。
昨年、マッチングアプリで知り合った女性と一緒に訪れた歌舞伎町周辺のバーでぼったくりの被害に遭ったという大学生の男性が話す。Aさんが被害に遭った時とほぼ同じ手法だ。
「バーに入ると自分たち以外に客はいませんでした。店のシステムは2時間の飲み放題で1人5000円だと説明されました。店員からテーブルゲームを勧められ、女性とそのゲームで遊ぶことになりました。負けたら「クライナー」というアルコール度数15~20%のお酒をショットで1杯飲むというルールだったのですが、このショットが飲み放題のメニューには入っていなかったんです。請求された金額は21万円でした」
男性は現金を持ち合わせていなかったため、店の人間に付き添われる形で近くのATMへ行くことになった。しかし、残高不足で全額払うことができず、家族や友人に電話をかけさせられたという。そこで機転を利かせてこっそり110番通報をしたが、やってきた警察官は「民事不介入なので」と対応してくれなかった。
被害が急増すればいまのように警察が動くようになるが、それによって被害が減ると警察はまた「民事不介入だ」と言って野放しにする。だから、「いたちごっこ」が起きるのだ。
■「店を閉めてるならバーを貸してほしい」
ぼったくりグループの被害に遭っているのは、マッチングアプリの利用者だけではない。最近では、行きつけの店がいつの間にかぼったくりバーとして営業しているケースが増えてきている。
「まさか自分の店が知らないうちにぼったくりバーになっていたなんて思いもしなかった」そう語るのは歌舞伎町でバーを営む男性のBさん。自分の店で起きている異常な状況に困り果てていた
Bさんは、コロナ禍による緊急事態宣言中にコロナ協力金を東京都から受け取っていた。1日に6万円ももらえるのであれば家賃は問題なく支払えるし、店を開けたところでたいした集客も見込めないので、完全休業にしていた。
そこに「店を閉めているのなら、金を払うのでバーを貸してほしい」と、ある男から接触があった。賃貸物件は民法上で、賃貸人の承諾を得なければ賃借物を転貸することはできないと定められており、基本的には禁止行為だ。しかし、相手から提示された額は正規の家賃の1.5倍だった。空いている箱を貸すだけで家賃がタダになり、そのうえ50%のマージンまでもらえる。
Bさんは軽い気持ちで休業中の自分の店を又貸ししてしまった。賃貸借契約を結べるわけがないので、相手の男とは業務委託の契約を結んだ。
■自分の店がぼったくりバーとして使われていた
Bさんが異変に気が付いたのは、又貸しを始めてから数カ月後のことだった。日中、自分の店に入りテーブルに置いてあった伝票を見ると、1組あたり10万円以上の会計が目立った。1日に平均して3組が店を訪れており、単純計算でも1カ月に900万円の売り上げだ。雑居ビルに入る小さなバーとしては異常な額である。
「監視カメラの映像を確認してみると、自分の店の前で客と店員がもめていました。そのとき自分の店がぼったくりバーになっていることに気付いたんです」
![チェーンの飲食店が多い歌舞伎町一丁目にもぼったくり店はあるが...](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/d/1200wm/img_ed9345b0be105eefd8c45372492d6d0f455016.jpg)
もしもBさんの常連客が店にやってきて、「営業再開したんだ」と店に入ってしまったら大変なことになる。すぐにぼったくりグループに立ち退くよう話したが、そう簡単にはいかなかった。そもそも又貸し行為自体が民法に違反しているため、すでにBさんは弱みを握られている。相手が居座ってしまえば、もはやどうすることもできないのだ。
数週間に及ぶ話し合いの末に、ぼったくりグループは別のテナントに移ってくれたというが、歌舞伎町では同じような被害に遭っているバーのオーナーはほかにもいるとAさんは言う。
「緊急事態宣言が明けて営業ができるようになった後も、ぼったくりグループとの関係を切れずに困っているオーナーがいるようです。今でも定休日だけぼったくりグループに貸していたり、営業終了後に時間貸しをしていたりする店舗もあるくらいです」
■店は狭く、店名は筆記体で書かれていることが多い
歌舞伎町のぼったくりバーは、チェーンの飲食店が目立つ歌舞伎町一丁目、ラブホテルやホストクラブが多くある歌舞伎町二丁目のどちらにもあるが、やはり人通りが少し減る二丁目に多い傾向にある。それも、路面店ではなく1フロアにいくつものバーが入った雑居ビルの2階以上にある。
![人通りの少ない歌舞伎町二丁目にぼったくり店が集まる](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/3/1200wm/img_4365d2243ce7e9e09f1e1440a36b84b7509552.jpg)
![國友公司『ルポ歌舞伎町』(彩図社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/3/1200wm/img_d31b7b114cd98d1e627bc5b4be038c8c375528.jpg)
また、被害に遭ったAさんと大学生の男性ともに、店内はカウンターにテーブル席がひとつの計10人ほどが入れる店で、ほかに客はいなかったという。そして、店名は筆記体の英語で書かれていることが多い。シラフでも簡単に読めない店名を、酔っ払っている状態で覚えられるわけがないからだ。
連日の報道によりマッチングアプリを使ったぼったくりの手法は世間に広く知られつつある。だが、客の油断を突くような新たな手法が私たちの知らないところで日々生まれていることを忘れてはならない。
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ライター
1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライター活動を始める。キナ臭いアルバイトと東南アジアでの沈没に時間を費やし7年間かけて大学を卒業。編集者を志すも就職活動をわずか3社で放り投げ、そのままフリーライターに。元ヤクザ、覚せい剤中毒者、殺人犯、生活保護受給者など、訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が、2018年の単行本刊行以来、文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーとなっている。そのほかの著書に『ルポ歌舞伎町』(彩図社)がある。
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(ライター 國友 公司)
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