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島耕作は会長になる頃からセックスシーンが減るが…75歳・弘兼憲史が「何歳になっても擬似恋愛を」と勧めるワケ

プレジデントオンライン / 2023年5月25日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PhotoInc

いつまでも若く活き活きと過ごすにはどうすればいいか。漫画家の弘兼憲史さんは「『もう色恋はどうでもいい』と思うようになったら、それは老化のステップを一段上がっている。亡くなるまで精力的に仕事をしたピカソと小林一茶はともに女性遍歴が豊富だった。擬似恋愛は間違いなく若さを保つ秘訣である」という――。

※本稿は、弘兼憲史『弘兼流 70歳からのゆうゆう人生「老春時代」を愉快に生きる』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

■死ぬまでSEXを実践した俳人

葛飾北斎、貝原益軒、伊能忠敬の3人は歳をとってもますます元気だったわけですが、古今東西、「お盛ん」だった著名人も数多くいます。

もちろん、男性はいくつになっても女性への関心がなくなることはありません。現代にまで脈々と続いています。ある男性週刊誌でも「死ぬまでSEX、死ぬほどSEX」という刺激的なタイトルの企画がずいぶん続いていました。

さて、死ぬまで情熱的だった有名人として、まず名前が浮かぶのはパブロ・ピカソでしょう。

キュビズムの創始者で『ゲルニカ』『アビニヨンの娘たち』などの多くの名作を残したピカソは、もしかしたら芸術作品以上に「艶福家」としてのほうが有名かも? と思わせるほど女性遍歴が豊富です。

結婚は2回、愛人は3人と伝えられていますが、その数はもっと多かったという説も。最後の愛人との間に子どもが生まれたのは68歳のときです。

日本にも多くの“兵”がいたようですが、俳人の小林一茶もそのひとりでしょうか。江戸時代に活躍した一茶は3回結婚し、最後の結婚は64歳のときです。

翌年、病気で他界しますがこのとき3番目の妻・やをは一茶の子どもを身ごもっていたそうですから、不謹慎な言い方かもしれませんが、一茶は文字通り「死ぬまでセックス」を実践したのかもしれません。

■会長職前後の「島耕作」でセックスシーンが減った理由

そのほかにも良寛や一休さんも70歳を過ぎてから恋愛を愉しんでいたようですから、仏に仕える身であっても性の道は大いなる関心事なのでしょう。

女性への情熱とは別に、ピカソと一茶に共通しているのは、精力的な仕事振りです。ピカソは91歳で亡くなる際まで絵筆を握っていました。創作意欲は絵画にとどまらず、版画、彫刻、陶器など10万点を優に超える作品を残しています。まさにあふれ出るエネルギーです。

一方の一茶は病気がちだったこともあって65歳で亡くなっていますが、江戸の平均寿命からすれば十分に長寿の部類です。多作の俳人として知られており、松尾芭蕉の作品が生涯で一千句余り残っているのに対して、一茶は二万句を超えています。

女性が創作意欲の糧になっていたのか、あるいはもともと漲るほど精力があったのか、真偽は不明ですが二人とも仕事にも女性にもパワフルだったのです。

さて、島耕作は会長職に就く前後くらいからセックスのシーンが減っています。作者としては、ごく普通に考えて「もうあまりしないだろうな」と思うからです。

一般的に男性の「打ち止め」は60歳くらいでしょうか。もちろん個人差がありますから、50歳半ばで“引退”する人もいれば歳くらいになっても現役の人がいるはずです。

個人の肉体的な能力だけではなくて周囲の環境(平たくいえばセックスをしたい相手がいるかいないか)によっても引退時期は変わってきます。

■「もう色恋はどうでもいい」が老化につながる

バイアグラやさまざまなサプリメントの登場によって、この時期も変わりつつあるようです。インターネットには常時、この手の広告が掲載され、最近は大手の新聞広告にも堂々と「男のパワーが甦る!」的なコピーが踊っています。

「そんなに需要があるのだろうか?」

私はあなたの隣で眠りに落ちるとき、私は最も美しいと感じます
写真=iStock.com/RealPeopleGroup
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RealPeopleGroup

そう感じますが、いずれにしても幾つになっても(体を壊さない程度で)セックスを愉しむことはいいことでしょう。だから、たとえ挿入までに至らずとも、セックスへの関心だけは持ち続けるべきです。擬似恋愛、擬似セックスは間違いなく若さを保つ秘訣でもあるからです。

友人、知人の中には男同士で山に登ったり、温泉に行ったりするグループがあります。年に数回、飲んで食べて温泉につかるのは格好のリフレッシュ法でしょう。でも、いつも男同士であきませんか? と私は思ってしまいます。

そんなとき、年齢は関係なく少し気を惹かれるような女性が加わっていたら旅行はいい意味で刺激的になります。

男として、よい印象を与えたいという気持ちやオスとしての本能が頭をもたげ、グループ内にわずかな緊張感も出るかもしれません。いつも同じ顔ぶれで、同じ話をして笑い合っているより、愉しいに決まっています。

「恋愛なんて終わった」「もう色恋はどうでもいいよ」と思うようになったらそれは老化のステップを一段上がっています。

■地域サークルでは組織の構造を把握し、自分を出すこと

自分は人間関係を作るのは上手いほうだと密かに思っていたのに、セカンドステージでは環境の変化によって苦労してしまうことがあります。

たとえば現役時代、会社では人望があり、人間関係で大きなトラブルをほとんど経験しなかった人が、リタイア後、参加した趣味のサークルでは友人がなかなかできず、疎外感に苛まれる、というケースもあるようです。

私の知人もそんなひとり。学生時代、卓球の同好会に所属していた彼は退職を機に地域の卓球サークルに入ることになりました。

気が進まなかったのですが「体のことも考えてね」という奥さんの声に後押しされ、重い腰を上げました。「年中、家にいられたら鬱陶しい」が奥さんの本音でしょうが……。

サラリーマン時代、クセの強い上司や同僚、胸襟を開かない部下など、さまざまなタイプとつきあってきた彼は、そんなサークルでもメンバーとうまくつきあっていけると考えていました。

ところが、最初に彼はつまずきます。サークルのボス的な人と対戦し、熱戦の末、勝ってしまったのです。最初は「少し手加減をしよう」と自分に言い聞かせていましたが、つい本気になってしまい、その結果、目の敵(かたき)にされてしまいました。

サークルもそうですが、新しい会社や組織での人間関係をうまくやっていこうと考えるなら、はじめは「相手を立てる」ことです。もちろん、スポーツであれば堂々と勝負をするのが基本です。

ところが、『課長 島耕作』にも登場しますが、どんな組織にもボス的な人が君臨し、周囲にはその子分がいます。そこで意地を通して虎の尾を踏んでしまうのは、賢明ではありません。

地域のサークルのようなところでは、少し会話を続け、雰囲気を観察すれば、そこが風通しのいい組織か、数人の人間が独善的に振る舞っている組織かわかります。

そこをしっかり認識してから、自分を出すべきなのです。それを怠り、自己主張をすると、相手を不快な気持ちにして、関係を悪化させてしまうこともあります。

■会話上手が頻繁に使う相槌

人間関係を円滑にするには、まず相手を「立てる」ことも忘れてはなりません。どんな人でも、「立てて」もらって気分を害することはありません。本音をちょっと脇に置いておき「立てる」だけなら、自分も損はしません。

「そんな、オベンチャラいうな」

そう怒る人もいます。しかし、お世辞であっても「立て」続ければ、ほとんどの人が「本当のオレを理解している」となります。

相手を「立てる」ためには、会話のテクニックも必要です。

大切なのは話し上手ではなく、聞き上手。間違っても「というより」とか「ていうか」「ただそれも」などの否定的な相槌は封印することです。会話上手は「なるほど」「その通りですね」「よくわかります」といった肯定的な相槌をふんだんに打ちます。

共感を得られた相手はますます話しやすくなり、会話も弾みます。話し上手とは聞き上手のことをいうのです。

教育クラスを持つ男女の国際グループ
写真=iStock.com/Prostock-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prostock-Studio

■「愛されキャラ」が気をつけていること

最近「人たらし」という言葉をよく聞きます。

たらすは漢字で「誑す」。ごんべんに「狂」ですから、本来はいい意味ではありません。「女たらし」は比較的よく使われる言葉ですが、女にだらしなく、騙したり、弄んだりするイメージがあります。

「人たらし」も本来は「人を騙す」という悪い意味として使われていました。ところが、いつからか「人たらし」は可愛げのある、愛されキャラに変貌しはじめたようです。

一説によると、作家の司馬遼太郎が太閤・豊臣秀吉を「人たらしの天才」と書いたことが最初といわれていますが、いまではすっかり「気配りのできる成功者」のようなイメージも定着しつつあります。田中角栄元首相は「今太閤」と称されましたが、彼もまた「人たらし」といわれていました。

「人たらし」になるためには、いろいろな条件がつきますが、もっとも重要なのは「褒める」ことです。褒められて嫌な気持ちになる人はいません。

どんなシーンでも、まず相手を褒めることを心がけます。背広でもシャツでも靴でもなんでもかまいません。褒めることは、別の言い方をすれば「他人の長所を見つけること」です。セカンドステージはもちろん、新たな人間関係で他人の心を開くカギです。

■謙虚で損をすることはない

嫌なヤツが存在するのは仕事関係だけではありません。

定年退職をして、気分は晴れ晴れ、人間関係に悩んだり、気をもんだりすることはあるまい、とタカをくくっていると思わぬシッペ返しを食らうことがあります。私の知人も退職後、地域のコミュニティーで苦い思いを経験しています。

住まいは都内の高級マンションで、住民の多くはエリートサラリーマンや高級官僚、医師、弁護士などだったそうです。管理組合の運営は管理会社に任せっきりというパターンが続いていたのですが、補修工事の中身に関して住民間で意見が分かれてきました。

最初はエレベーターホールの周辺の壁の色をどうするかでもめはじめ、その後どんどん対立がエスカレート。ついには住民を二分してしまったのです。

ふたつのグループの代表格は二人とも元高級官僚で、ともに局長クラスまで務め上げたエリート。ただし、片方が3年先輩だったそうです。トラブルの原因はほんの些細なこと。後輩の口の利き方に先輩が腹を立てたのです。

「○○したまえ」
「なんだ、その言い方は。若造が偉そうなこというな」

若造といっても、もはや若造ではありませんが、これが端緒となり、両者の溝は修復できないほどこじれてしまいました。ちょうど、順番で役員を任されていた知人は両方の間に立たされ、思いもよらない苦労をしたそうです。

「そんなことで……」

私ははじめ信じられませんでした。しかし、考えてみると年功序列制が崩壊しつつある社会では、こういうことがしばしば起こりえます。

■企業のトップほど「言葉遣いが謙虚」である理由

仕事では相手が上司や取引先の顧客であれば敬語を使うのは当然です。ビジネスマナーや社会的常識を備えている人であれば、これは自然にできます。微妙なのは、「ここは敬語を使ったほうがいいのか?」と判断がつきにくいシーンです。仕事のうえでも、こういうケースがあると思います。

「相手は見るからに年長者だけど、ウチの社がお客さま。相手に合わせるか……」

私のポリシーは「年齢やポジションに関係なく、ふだんから敬語を使う」です。

どちらかといえば相手が下の立場であっても、むしろ積極的に敬語を使います。その理由は「謙虚な心」の大切さを痛感しているからです。

幸運なことに、私はこれまでにビジネス誌の対談企画で著名な経済人と数多く話す機会に恵まれました。

企業のトップは大まかに二通りに分かれます。カリスマ性に富み、周囲の人間が畏敬の念を持って接するタイプと、社員がフランクに接する仲間的なタイプです。

どちらも成功している経営者はとても魅力的な人たちなのですが、共通しているのは概ね言葉遣いが謙虚だということです。

こういう方々に接すると、つくづく「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということわざを思い出します。「人格者」と評される最大の条件は謙虚さなのです。

■謙虚な人ほど周囲と円滑な人間関係を築けるワケ

その逆のケースはまさに枚挙にいとまがないといえます。

ファミレスで店員さんに「水」とぶっきらぼうに言う高齢者。なかには無言でコップをドンとテーブルに置いて指差す人もいます。これに関しては、客商売をしている人の中に“三波春夫根源説”がまことしやかに流布しているという話を聞いたことがあります。

弘兼憲史『弘兼流 70歳からのゆうゆう人生「老春時代」を愉快に生きる』(中央公論新社)
弘兼憲史『弘兼流 70歳からのゆうゆう人生「老春時代」を愉快に生きる』(中央公論新社)

かつて三波春夫が「お客さまは神様です」といったことが定着してしまい、「お客さまイコール神さま」「店員イコールしもべ」という関係ができてしまったというのです。真偽のほどはわかりませんが、そんな説が聞かれるほど「お客さまは偉い」という風潮があるのは確かでしょう。

目に余るようなクレーマーの台頭も、この意識が歪んだ形で現れているのかもしれません。とくに歳をとるほど、ここは自戒したいものです。

私はよく第二の人生のスタートを小学一年生にたとえます。

一年生はみんな対等、どんな境遇の子も平等に机を並べています。そこで協調性や連帯感を身につけて、周囲と円滑な人間関係を築こうとするのです。そのときもっとも必要なのは謙虚さ。人間、謙虚になって損をすることはありません。

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弘兼 憲史(ひろかね・けんし)
漫画家
1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)に入社。74年に漫画家デビュー。作品に『人間交差点』『課長 島耕作』『黄昏流星群』など。島耕作シリーズは「モーニング」にて現在『会長 島耕作』として連載中。2007年紫綬褒章を受章。

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(漫画家 弘兼 憲史)

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