「ランチの輪に入れない…」新しい職場になじめない人に産業医が勧める"明日からできる習慣3つ"
プレジデントオンライン / 2023年5月22日 8時15分
■なじめない人の3つのパターン
入社や異動、転職などで新しい職場に入ると、最初の1カ月ぐらいは周りも世話を焼いたり、助け舟を出したりしてくれますし、そうするうちに周りと打ち解けていくこともあります。しかしそこで打ち解けられず、「どうもなじめない」という違和感や不安が生まれてくるのが5月や6月ごろです。この頃になると、職場になじめている人と、そうでない人の差が目立ち始めるためです。
職場になじめていないと感じる背景は、おおまかに次の3パターンに分けられます。
① 一人で過ごすことが多く、孤立しているように感じている
たとえば他の同僚は誘い合ってランチに行ったり、社員食堂でも同じテーブルで雑談をしながら食事をしているのに、自分だけ誰からも声をかけられず、一人で食べている。あるいは会議のときに、周りの人は意見を求められるのに、自分だけ声をかけられることが少ないと感じる。そこから「なじめていない」と思うようになります。
② 仕事の話に入っていけず、疎外感を持っている
会議やミーティング、日常の仕事に関する会話などで、話題に入っていけずに疎外感を抱いてしまいます。特に、自分の仕事や発言について、上司や先輩、同僚からフィードバックがなかったり、サポートが不十分だと、自分がやっていることが正しいのかわからず、余計に発言しにくくなってきます。チームに貢献できているのかもわからないので、自信をなくして疎外感が強くなってしまいます。
③ 社内風土や価値観が合わない
これは最近よく見聞きするパターンです。新しい環境に入ってみたら、価値観や文化が合わない。それでも、一般的に職場というのは同調圧力が強いコミュニティーなので、「合わせなくては」という意識も働き、息苦しさを感じてしまうのです。
「職場になじめない」と感じる人の多くは、これら3つのパターンのいずれかか、複数が組み合わさっています。
■なぜ「なじめない」と感じてしまうのか
「職場になかなかなじめない」と感じる人の多くは、新しい環境や人間関係に対して強く緊張してしまう、恥ずかしいと感じてしまうなどの傾向があります。また、自己肯定感が低く、自分に自信がないという人も、「相手にされないかもしれない」「相手がいやがるんじゃないか」といった不安を抱えて、人に話しかけることを躊躇してしまいます。
過去の失敗経験を引きずっている人も少なくありません。たとえば学生時代に、同じクラスの子に頑張って話しかけ、一緒に昼ごはんを食べたけれど、全く盛り上がらなかった。前の職場で、何かわからないことがあって上司や先輩に質問したところ、「自分で考えろ」と突き放された、などです。
もともと自己肯定感が低かったり自分に自信がなかったりする人は、そういった失敗経験を引きずりやすく「また同じことが起こるのではないか」と考える傾向があるため、自分から話しかけることに抵抗を感じてしまいます。
そして、仕事で何かわからないことがあっても、なかなか質問したり相談したりすることができません。報連相ができずにトラブルになったりと、あとあと仕事に影響が出ることにもなってしまいます。
一方、価値観や社内風土が合わないためになじめないという人は、新しい環境に対してやや斜に構えたところがあるようです。「私はここの人たちとは違うから」と、自分で壁をつくっている人が多いように感じます。どちらかというと、「なじめない」というよりも、「自分からなじもうとしない」わけです。こうした姿勢は、周囲も敏感に感じ取りますし、チームプレーにも悪い影響を及ぼすことがあります。
■すぐにできる「職場になじむための3つの習慣」
では、どうしたら職場になじむことができるのでしょうか。すぐにできることは大きく3つあります。できるところから始めて、ぜひ習慣にしてほしいと思います。
① 仕事に関する質問をする
質問することは、勇気がいるし、苦手な人も多いかもしれません。しかし、これが相手とキャッチボールを始める一番良いアクションです。ただ、いきなりプライベートな質問をするのは、お互いの共通点がわからない状態から始めないといけませんから非常にハードルが高い。一方、仕事は共通の話題なので、質問するときにもうまくいきやすいでしょう。
質問されると、相手は頼られていると感じてうれしく思うことが多いので、実は迷惑がられることはほとんどありません。それに仕事の話なので、話が盛り上がる、盛り上がらないといったことも気にする必要はありません。
■前向きな姿勢を見せられる
質問すると、自分がどこまで理解しているかを相手に伝えられますから、一緒に働くうえでの信頼関係づくりにつながります。また、相手もどんなサポートをすればいいかがわかるので、チームの協力体制ができてきます。チームワークの第一歩は質問なのです。
最初はメールでもかまいません。「○○の締め切りは、今週の木曜日ですよね?」「取引先に送るメールの文面は、これで問題ないでしょうか」といった、簡単な確認事項でいいのです。自分の関わっているプロジェクトの全体像を聞くのもいいでしょう。「私が今やっているこの仕事は、プロジェクト全体のどの部分なんでしょうか?」と聞いてみるのも役立つかもしれません。
質問をするということは、仕事に対する前向きな姿勢を表すことにつながりますし、相手に対する信頼も表します。「声を掛けてくれるのを待つ」「教えてくれるのを待つ」のではなく、質問することでアクションを起こし、キャッチボールを始めてみてください。
② 相手の名前を呼ぶ
二つ目のポイントは、相手の名前をきちんと呼ぶことです。質問するときや相談するときに、「○○さん」「○○課長」など、名前で呼びかけたり、「それについて、○○さんはどう思われますか?」など、会話の中でも相手の名前を意識的に盛り込みます。
名前を呼ばれると、呼んでくれた相手に対して親近感を持ち、存在感が強くなります。また、名前を覚えてくれていることがわかるのはうれしいですし、頼りにされている感じもするので、コミュニケーションが円滑になります。
③ ポジティブな感情を表現する
三つ目は喜怒哀楽といった感情を表現することです。特に「喜」や「楽」といったポジティブな感情です。話しかけるときや、感謝の気持ちを表すときに、普段よりもちょっとはっきりとした笑顔を見せるだけでも違います。いきなり「怒」の感情を出すのはお勧めしませんが、何かが期待通りにいかなかったときに、ちょっとがっかりした表情を出したりするのはいいと思います。人間らしさを感じて、コミュニケーションを取りやすくなるはずです。
「孤立してしまう」「疎外感がある」「ここの社風や価値観に合わない」と思っていると、どうしても表情が硬くなり、感情の起伏が外に表れにくくなります。ずっと無表情だと、「この人は何を考えいてるのかわからない」となって、周りからすると、余計に取っつきにくく感じるようになってしまいます。
■上司からもパスを出す
新しく入ってきたメンバーが、チームになかなかなじめていないと気付いたら、上司のほうから質問するなどして、パスを出してあげてほしいと思います。
チーム内で自然に使っている略語や業界用語も、初めて聞く人にとってはわかりにくいものです。「今、○○について話していたけれど、初めて聞くとわからないかもしれない。この言葉の意味はわかったかな」などと、ちょっと確認するといいでしょう。上司のほうからこうしたパスを出せば、部下も話しやすくなりますし、なじんでいくきっかけになるかもしれません。
コミュニケーションを深める手段の一つに飲み会もありますが、そもそもなじむのが難しい人は、大人数の輪の中に入るのが苦手な人も多いので、まだ先のことと考えましょう。最初は1対1や、年次の近い先輩を交えた3人ぐらいで話して、慣れてきたら徐々に人数を広げていくといった配慮が必要です。
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産業医・精神科医
産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。
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(産業医・精神科医 井上 智介 構成=池田純子)
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