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「簡潔に要点を3つにまとめる」は百害あって一利なし…AIが書けるレベルの資料しか作れない人が陥る落とし穴

プレジデントオンライン / 2023年5月17日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Michail_Petrov-96

言いたいことを「簡潔にまとめよ」。社会人1年目の社員がしばしば注意されることだが、元電通社員のストラテジックプランナー筧将英さんは「プレゼンやビジネストークでは簡潔さは重要ですが、その前のよく考えるべき段階でまとめようとするのは百害あって一利なしです」という――。

※本稿は、筧 将英『「考えるスキル」を武器にする』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

■言いたいことを「簡潔にまとめる」は本当に正しいか?

社会人になると、上司や先輩から「簡潔に伝えることが大事」と教わります。

確かに、誰もが自分の仕事で忙しいわけですから、相手の時間をムダにしないためにも、最初に結論を持ってくることで論点を明確にして「簡潔に伝える」ということは大切です。

また、人間関係を円滑にするという観点からも、よけいなことを言わず、必要なことだけを簡潔に伝えることは大切でしょう。

実際、多くのビジネス書を読むと、「報連相など伝えたいことはあらかじめ整理し、簡潔にまとめる」「最初に結論を伝えて論点を明確にする」「要点を3つにまとめる」など、「簡潔に伝える」ことの重要性が説かれています。

この本がビジネストークやプレゼンテーションがうまくなるための本であれば「簡潔にまとめる」方法をお伝えすればいいのですが、そうではなく「考えること」を身に付けるための本です。そして、「考えること」においては、「まとめること」は“百害あって一利なし”なのです。

ほとんどの人が「まとめながら考える」ことができますが、実はそうすることで「考えること」からどんどん遠ざかってしまうのです。これは多くの人がやってしまいがちな失敗です。

では、なぜ「考えること」と「まとめること」を同時にやってはいけないのでしょうか?

■社会人1年目に資料作成で先輩に怒られた話

私は、社会人1年目のときに、先輩からこっぴどく怒られた経験があります。

あるクライアントに提案する資料を作成するサポートをしていたのですが、先輩からは事前に「資料は言葉をまとめるなよ」と言われていました。そのときは「どういうことだろうか?」と理解できず、図表1のような資料を作りました。

出典=『「考えるスキル」を武器にする』(フォレスト出版)

すると、資料を見た先輩から、「まとめるなって言っただろ!」と、叱られることになりました。さて、この資料の何がいけなかったのでしょうか? おわかりになりますか?

一見わかりやすい資料に見えるかもしれません。ところが、この資料を見てみると、書かれていることは否定はできないけれども、内容にほとんど新しさ(=価値)がありません。これではクライアントに提案する資料として使い物になりません。

ある程度経験があれば、こういった資料は何も調べず、何も考えずに書けるでしょう。今であればAIでもこれくらいは書いてしまいます。しかし、それでは意味がないのです。なぜなら、新しい情報がまったくないからです。

企画の立案者やプランナーの価値は、「それっぽい言葉」を作って並べることではありません。この本では、そうしたことを否定していきます。

確かに、言葉をまとめることはビジネスパーソンとして必要なスキルではありますが、まとめる意識は、ターゲット、商品、社会、現象などの本質に迫る際には障害になってしまうのです。

先ほどの資料の場合であれば、大文字の部分ではなく、小さな文字で書かれている部分や、下の「※」のところに書かれている注釈など、一見重要でないように見える部分のほうが情報として価値がある。そして、そこにフォーカスを当てた企画書のほうが価値が高いと考えます。

では、まとめないようにするためには、どうしたらよいのでしょうか?

■「質か量か」という議論について

「まとめない」とは、「頭に浮かんだことを手あたり次第アウトプットする」「クオリティを気にせず、とにかく書き出してみる/口にしてみる」ということです。これについては仕事に付きものの「質か量か」という議論もからんでくるので、先に整理しておきます。

働き方改革が普及することで、「長時間勤務や仕事量が多いのは良くないことだ」という価値観が世の大勢を占めるようになりました。私の前職である電通もこの流れを受ける形で、勤務時間の上限が設定されたり、有給休暇の消化が義務付けられています。

もちろん、私自身も長時間勤務は是正されるべきだし、有給休暇はきちんと消化したほうがいいと思っています。

しかし、そもそもこの問題については、量か質かの二項対立にすることで議論を煽る人が多いので、今のような大げさな話になっている面が大きいと思います(ちなみに、二項対立は議論にしやすいものの、二項対立にすることでかえって課題解決から遠ざってしまう場合が多いので注意しましょう)。

個人的な結論としては、量と質を二項対立ではなく、因果関係で捉えるべきだと思っています。つまり、「量をこなすことで質を生むことができる」と考えるのです。

【図表】量と質を二項対立ではなく、因果関係で捉えるべき
出典=『「考えるスキル」を武器にする』(フォレスト出版)

こんなことを言うと、私が長時間勤務に賛成しているように思われるかもしれませんが、そうではありません。スキルや経験は自分の中に蓄積できるので、ある程度の量をこなし、仕事に熟練すれば、同じ仕事であってもかかる時間は短くなっていきます。

もしかしたら、よく言われる「若いうちの苦労は買ってでもしろ」という言葉は、そういうことを指すのかもしれません。

■「考えた時間」よりも「思考量」が大事

そもそも「量」について正しく理解する必要があります。「量をこなす」といっても、単に長い時間をかけることではありません。「量をこなす」とは「思考量(考えた量)を最大化する」ということであって、「考えた時間」が長いか短いかは関係ありません。

その時どきの集中力に左右されますが、ある事柄について15分間のうちにアウトプットできる量は、人によって大きく異なります。

【図表】「量をこなす」とは「思考量(考えた量)を最大化する」ということ
出典=『「考えるスキル」を武器にする』(フォレスト出版)

おそらく、考えることが苦手な人とかなり得意な人とでは、最大で100倍くらいの差がつくのではないでしょうか。

なぜ「考えた量」が重要なのかというと、同じことを考えつづけても意味がないから。実は、「考えることが苦手」と言う人のほとんどは、頭の中で同じことを繰り返し“思っている”だけなのです。

そもそも「思う」と「考える」は別物です。多くの人はこれを知らないから、あるいは同じだと勘違いしているから、考えることが苦手なのです。

では、「思う」ではなく「考える」にはどうしたらよいのでしょうか?

解決策は「書くこと」です。紙でもPCでもスマホでもよいので、とにかく書く。それだけで、頭の中で思考を堂々めぐりさせることなく、考えられるようになります。なぜならば、人間は同じことを書きつづけることはしないからです。同じことを繰り返し書いてもムダだとすぐに気づきます。

たとえば、「日本の少子化がなぜ起こっているのか」について考えてみてください。まずは、5分間、頭の中で考えてから、考えたことを紙に書き出してみる。その次は、5分間のうちに頭に浮かんだことをリアルタイムに書き出せるだけ書き出してみる。

筧 将英『「考えるスキル」を武器にする』(フォレスト出版)
筧 将英『「考えるスキル」を武器にする』(フォレスト出版)

両者の分量を比較してみましょう。

おそらく普通の人だと、リアルタイムに書き出すほうが3倍くらい多くなったのではないでしょうか。もし、「同じくらいの量だった」という方がいたら、その方は「考えること」にかなり慣れている人です。

このように、「書くこと」で「まとめない」ようにでき、そして「書くこと」で「考えること」ができるのです。

「考えること」と「まとめないこと」のつながりをご理解いただけたと思いますので、さっそく「まとめないコツ」を紹介していきましょう。(以下、続く)

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筧 将英(かけひ・まさひで)
ストラテジックプランナー/クリエイティブストラテジスト
1983年愛知県生まれ。名古屋大学工学部、名古屋大学大学院情報科学研究科卒業後、電通入社して大手クライアントやスタートアップ企業のマーケティング戦略、コミュニケーション戦略の立案を中心として、キャンペーン設計から企画・実施までのディレクションを行う。2021年にストラテジーブティック「Base Strategy株式会社」を設立し、代表取締役に就任。同時に広告と芸能のハイブリッドエージェンシーである株式会社FOR YOUの執行役員CMO、株式会社ナンバーナインの社外取締に就任。

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(ストラテジックプランナー/クリエイティブストラテジスト 筧 将英)

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