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部下に「違うんだよ」とは絶対言わない…仕事のデキるリーダーが異質な意見が出た時にする質問

プレジデントオンライン / 2023年5月18日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

考え方や知識をアップデートし続けている人は何をしているのか。立命館大学ビジネススクール専任教授の山本真司さんは「他者の『異質な部分』を探し自身に取り込むことで考え方の幅が広がる。自分と相手の考え方をベン図にして、共通集合を見つける作業をすると新しい結論が出てくる」という――。

※本稿は、山本真司『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■私が「意識して若い人と一緒に仕事をする」理由

私はなるべく若い人と一緒に仕事をするようにしています。スタートアップへ投資をしたり、大学院で若い人たちとも接点を持っています。

彼らと一緒に仕事をしていて楽しいのは、自分の経験に裏づけられ「正解」だと信じ込んでいた考え方や仮説が、若い人との触れ合いによって変わってくることです。つくづく、思い込みは怖いなと感じます。異質との触れ合いの重要性を感じる瞬間です。

しかし、「異質から学ぶ」などということは、余裕のある状況なら口にできても、日々業績のプレッシャーに追われ、上にも下にも気を遣いながら仕事をしているマネジャー層には、きれいごとにしか聞こえないかもしれません。

そこで、ちょっとした技術をお伝えしたいと思います。それが「ベン図法」対話術です。

異質な人の考えをうまく取り込むためのコツは、自分と相手との間の考え方の共通集合を探すことです。どんな人とでも、考え方が重なる共通集合は絶対にあるはずです。

それを見つけるために、相手の発想に耳をそばだて、かつ、どうしてそういう発想を持つに至ったのかの理解に努めます。

ただ、相手と自分の考えがいかに一致しているかを確認するだけでは、あまり意味がありません。本当に重要なのはむしろ「異質な部分を探す」ことなのです。

■お互いの考えを完全に一致させるのは、そもそも無理

ここでちょっと、想像してみてください。まず、あなたの考え方を円で表してみます。この円の中には、中心点であるあなたの主張とともに、それを導き出すために使った「観察事実」、つまり、「何が起きたか」ということと、「なぜそれが起きたか」という原因を考える「思考回路」の両方が描かれていると思ってください。

そして、異質で、あなたと違う意見を持つチームメンバーの主張、「観察事実」「思考回路」をもう1つの円で表してみます。相手の円は、あなたの円と重なることなく、離れたところに描いてください(図表1)。

【図表1】円を2つ描く
出典=『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』

ここで多くの人は、この円の中心点を完全に一致させようとします(図表2)。

確かに自分の円とメンバーの円が重なると嬉しいものです。共通点が多ければ多いほど、会話が盛り上がり、相手と仲良くなれるのはそのためです。そういうメンバーには安心して仕事を任せたいと思うはずです。

【図表2】円の中心点を完全に一致させようとする
出典=『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』

一方、円がずれているメンバーに対しては、なんとか自分と同じ考え方になるように、すなわち、完全に円が一致するように説得を重ねようとします。しかし、いくら説得を重ねたところで、メンバーと自分の考え方が完全に一致することはほとんどありません。

その結果、メンバーに仕事を任せきれず、最後にはすべての仕事をジャックしてしまう。そう、まさに「一人プロジェクト」であり、メンバーも自分も不幸になります。

■「違うんだよな…」の発想では、異質を取り込めない

そもそも、人間同士が完全にすべての価値観、考え方が一致することなどあり得ません。特に価値観が大幅に違うX世代、Y世代、Z世代では皆無と言えるでしょう。

いま思えば、「一人プロジェクト」の当時、円が完全に一致しているように見えたチームメンバーは、実は、私の円に合わせてくれているに過ぎなかったのだと思います。

彼らは個性を殺して、私の軍門に降ってくれた。これはいわゆる親分と子分の関係であり、まさにピラミッド型組織の典型です。

一見やりやすいけれど、それは、いわば私のコピーがチームに何人もいるようなもの。そこからはなんのイノベーションも生まれません。

さらに悪いことに、メンバーが私と円を少しでもずらした瞬間に、私はそのメンバーの忠誠心を疑いました。子分が離反するんじゃないかという不安が心に湧いてきて、「君は、まだまだだな。違うんだよ」とでも言って、その後、飲みに連れ出し、さらに説教していました。まさに最悪のマネジメントでした。

しかし、同じようなことをあなたもやっていないでしょうか。「違うんだよな」と思い、何度も説得を重ねる。そんなマネジャーをメンバーは疎ましく思っているに違いありません。

■円が重なるところが「異質との出会い」

次に、マネジャーの円の外側にもう一回り大きな円を描いてみます(図表3)。すると、二重円ができ上がります。

【図表3】マネジャーの円の外側にもう一回り大きな円を描く
出典=『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』

最初の円の中心点は結論であり、主張です。その主張を導く際には、「観察事実」と、何が原因でそういう観察事実が起きたのかという「思考回路」の両方を考慮したはずです。

それも、複数個の「観察事実」と、複数個の「思考回路」の中から、重要だと思うものを選択して結論である主張を出したはずです。それが最初の円の中身です。

その最初の円の周りに、主張を出す時には捨ててしまった他の複数個の「観察事実」と「思考回路」を書き入れて、円でくくるというイメージです。いわば思い込みを捨てて、こういう考え方もあるかな、と柔軟に考え方を広げるということです。

そして、マネジャーのあなたのこの周辺円を、メンバーの円と重なるところまで広げて描いてみましょう。昔懐かしい、ベン図のでき上がりです。この2つの円の共通集合が、マネジャーとしての「異質との出会い」です。

つまり、自分の主張や興味関心の輪を広げてみるという思考が大事だということです。そして、その重なった部分にはきっと、新しい刺激があるはず。そう考えることが重要です。

この作業によって、私も自分の考え方を何度も変えたことがあります。

ただ、それがメンバーの主張の丸飲みであったケースは少なく、彼らのアンテナに引っかかった「観察事実」や「思考回路」の一部を自らの思考に取り込んで、自分の領域に入れ込んでしまうことで新しい結論が出てくる(図表4)。

【図表4】メンバーの「観察事実」や「思考回路」の一部を取り込む
出典=『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』

そう、まさに「ブレインジャック」です。

■話を聞きながら、自分の思考が進化していく快感

メンバーと話す際には、このように自分の考え方、意見をしっかり持った上で、柔軟に外延を広げようという心の準備をしておくといいでしょう。

メンバーの「観察事実」「思考回路」の面白いところを取り込み、消化することで、異質の刺激を受けて、異質を取り込み自分の考えが進化するのが楽しくなるはずです。

メンバーとの共通集合を見つける際には、「どうしてそういう結論を導いたのか?」という過程を尋ねることが極めて有効です。

「あなたの主張(点)は、××だね。どうして、そういう結論になったか話してくれませんか?」(円を構成する「観察事実」と「思考回路」を尋ねている)などと聞くのです。

そして、メンバーの説明を聞きながら、頭をフル回転させて、自分の頭では捨ててしまった、重要でないと判断した「観察事実」や「思考回路」との接点がないか、自分の考え方を進化、拡充させるのに使えないかを必死で考えます。

そして、共通集合が見つかったら、今度はメンバーに向かって、「面白いものを見つけてきたね。その観察事実は、こういうふうに考えても面白いんじゃないかな。いずれにしても、君の観察力の鋭さのおかげで、仮説が一歩進化した。ありがとう」と伝える。そう、まさに双方向のやり取りが生まれるのです。

■共通点がどうしても見つからなかった場合の質問

この話はここで終わりません。おそらくメンバーの話をいくら聞いても、共通集合が見つからない、接点が見つからないことがあるはず。いや、そういうことのほうが多いかもしれません。

そんな時は、もう1つの質問をしてみましょう。

「今回のあなたの主張に直接関係ないかも知れないけど、面白い、記憶に残る『観察事実』や考え方(『思考回路』)があったら聞かせてもらえないかな?」

そう、この質問により、メンバーにも、いまの小さな円の外延を広げて二重円にしてもらうようにお願いするわけです(図表5)。

【図表5】メンバーの円の外側にもう一回り大きな円を描いてもらう
出典=『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』

この時に、共通集合を見つけて「あっ、いまの『観察事実』は面白いね」「その『思考回路』はいいね。なるほど」などと反応することで、メンバーの円はさらに広がっていきます。

あなたにもこういう経験はないでしょうか。自分とは立場がまったく違う人、たとえば別の会社の幹部などと話をしている際、あなたがあまり重要でないと思っていた観察事実や思考回路に、相手が「それは新しい発見だ」「それは面白い」と反応するという経験です。

ある人とある人の興味の範囲が、いつでも100%、同じであるわけがないのです。その違う考え方を自分の中に貪欲に取り込める人こそが、イノベーションを起こすことができます。

そのためには、こちらが柔軟に相手の「観察事実」や「思考回路」を受け入れる姿勢を持つことです。

■マネジャーに勉強が必要な、本当の理由

このような仕事のやり方を私は「ベン図法」と名づけています。この方法論を意識的に確立して以降、チームメンバーとのミーティングが楽しくなりました。同時に、誰からでも学べることを改めて認識しました。

そして、効率的に、かつ高い品質で成果が上げられるようになったのです。おまけに共同作業を行うことでメンバーの巻き込みも図ることができ、チームの一体感も強くなりました。

いま思えば、これはまさにフラット型組織を作るために最適な方法論だったわけです。自分だけで考えるのではなく、異質と異質を組み合わせ、結合させる。

だからこそ新しいものが生まれ、チームの巻き込みで成果も上がる。メンバーと仕事をしていても、考え方が違うほうが面白くなってきました。

山本真司『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』(PHP研究所)
山本真司『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』(PHP研究所)

そのためには、自分の周辺円をどこまで広げられるかが鍵になります。自分の周辺円を広げない限り、メンバーの円、周辺円の考え方との接点は出てこないからです。

だから、マネジャーになったら、意識して自分の観察事実や思考回路を広げるための積極的学習が必要になります。

他人が経験したことに耳を傾けたり、外部の専門家に話を聞いたり、経営学の勉強をしたり、経営学以外のリベラルアーツ系の本を読んだり、街中をふらついて消費者を観察したりといった、学習を通じた自分の関心領域の拡大が、ベン図法を成功裏に実行する鍵になるのです。

これらは、「ベン図法」を使うようになってから、私が意識的に行うようになったことです。

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山本 真司(やまもと・しんじ)
山本真司事務所代表
1958年生まれ。慶応大学卒、シカゴ大学経営大学院修了。東京銀行、ボストン・コンサルティング、ベイン・アンド・カンパニーなどを経てコンサルタントとして独立。著書に『20代 仕事筋の鍛え方』など。

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(山本真司事務所代表 山本 真司)

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