30分1本勝負を頻繁に行う…部下のストレスを減らしチームの生産性を高める"ムカデ型MTG"の中身
プレジデントオンライン / 2023年5月19日 13時15分
※本稿は、山本真司『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■2週間に1回の「バッタ型ミーティング」の決定的な問題点
マネジャーがいつまでも「一兵卒」としてメンバーと一緒に現場を走り回るのはナンセンスです。
これはまさに「一人プロジェクト」であり、時間がいくらあっても足りません。
仮説が見えてからは、全体の仕事をメンバーに振り分けて任せて、あとは定期的なミーティングにより状況を把握し、適宜進捗(しんちょく)を確認するというスタイルで進めるべきです。松下幸之助氏の「任せて任せず」のスタイルです(※1)。
問題は、任せたあとの進捗確認のミーティング頻度です。私が最初、上司から教わったミーティング頻度は約2週間おきというものでした。初めてマネジャーになった時は、何も考えずに2週間ごとにチーム・ミーティングを入れていました。
しかし、2週間おきで十分なのは、あくまで経験豊富で優秀なメンバーが揃っている時だけ。そうではない場合、2週間に一度のミーティングの頻度では少なすぎるということに、すぐに気づきました。第一、2週間も間が空いてしまうと、2週間前に何を議論していたのか忘れてしまいます。
マネジャーの私は、2週間に一回のチーム・ミーティングに出席し、終わったあとは席でじっとしている。また、2週間経つと突然、飛び上がってミーティングに出かけていく。まるでバッタのようでした。
このようなバッタ型ミーティングには、いろいろと問題がありました。前のミーティングで何を議論していたかを忘れてしまうだけでなく、メンバーに適切なタイミングでアドバイスができず、仕事の効率が悪くなってしまったり、リスクの兆しをつかみ取ることができず、気がついたら大きな問題になってしまっていたり……。
その結果、マネジャーとしてその尻ぬぐいに追われ、自分もメンバーもどんどん疲弊していってしまったのです。
■バッタからムカデへ。高頻度で短時間のミーティングを
そこで、ミーティングのやり方を根本的に変更しました。多い時は週に2~3回。
少なくとも最低毎週1回はミーティングを行うのです。
また、難所にぶつかっているメンバーの場合には、それこそ毎日のミーティングも実行します。いつでもチョコチョコとメンバーの周りを動いているような芋虫、ムカデ型のミーティングです。
頻度が高い代わりに一回当たりの時間は短くすることで、メンバーのストレスを減らすようにします。新しいメンバーと組む時は、「私のミーティングは高頻度短時間なんで、チョコチョコやります。よろしく!」と最初に宣言していました。
なぜ、そんな高頻度で行う必要があるのか? 前回のミーティングの記憶が鮮明なうちに次回を設定したいという消極的目的もありましたが、一番大きな理由はリスク・マネジメントです。
いくらもっともらしい仮説を作ったところで、その仮説がそのまま検証されて順調に進むとは限りません。違和感が生じたらすぐに仮説を修正する必要がありますし、大きなプラン変更が必要になることもあるでしょう。顧客の反応も気になります。
それなのに、1週間も2週間も放置していたら、軌道修正はその分遅れてしまいます。結局、メンバーを無駄に働かせることにもなってしまいます。
■チームメンバーの顔を見て話すことの重要性
メールでの報告ではなく、対面でのミーティングにこだわりました。メンバーの「顔」を見るためです。
コミュニケーションは言葉よりも表情や態度のほうが多くの情報を伝えてくれます。
もし、メンバーが与えられた仕事や仮説に違和感を持っていたり、進め方がわからなくなっていたら、それは顔に出るはずです。
ちょっとでも表情に違和感があれば、こちらから聞いてみます。メンバーは、一人で「ああだこうだ」悩みがちで、なかなかマネジャーにまで悩みを持ち込んでくれないものですから、こちらから違和感を発見して悩みを引っ張り出すのです。
昨今はオンラインの仕事も増えていますが、オンラインミーティングでも顔は見ることができますから、同様に違和感を見つけ出すことができるでしょう。
リスク・マネジメントの要諦は、小さなリスクの種や兆しを嗅ぎ分けて、まだ小さいうちにリスクの芽を摘むことにあります。そんな兆しは、経験のあるマネジャーでないとわかりません。少なくとも、メンバーよりは嗅覚が働くはずです。
顔色がすぐれない原因が、個人的な事情であったりキャリア上の悩みであったりする時もあります。仕事には関係ないとはいえ、マネジャーはそうしたことの面倒も、できることであれば見てあげる必要があります。
そうしないと、良いパフォーマンスで仕事をしてもらえませんし、当人にも成長してもらえません。第一、一緒に仕事をするこちらも楽しくありません。
「ウェルビーイング」を大事にする世代をマネジメントするに当たり、これは決定的に重要なことです。
■あなたがバタバタしていると、メンバーも声をかけづらい
高頻度にミーティングを行うことのもう1つの意味は、「メンバーがマネジャーをいつでもつかまえることができる」機会と環境を作るということです。
メンバーがトラブルに直面した際、あるいはトラブルの芽を感じ取った際、マネジャーがすぐに相談に乗れればいいのですが、実際にはいつも余裕含みでメンバーが駆けこんでくるのを待っていられるようなマネジャーは多くはないでしょう。上司に呼ばれ、顧客に呼ばれ、トラブル処理に大わらわなはずです。
しかし、一日一回、短時間でもメンバーと顔を合わせる時間を持てば、彼らも気軽に相談ができます。もちろん、こちらが「仮説はどうだ?」「分析はどうだ?」「顧客の反応は?」「大丈夫か?」などと声をかけてもいいでしょう。
とにかく、メンバーの顔を見ること。それが、最大のリスク・マネジメントであり、ムカデ型ミーティングの最大の目的なのです。
■ミーティングは最長でも30分一本勝負で
ミーティングにかける時間は、長くて30分というところでしょう。高頻度であればいままでの議論を復習する時間も不要ですから、自然と時間も短くなります。
ただ、短時間であることのより大きな意味は、「頭が高速回転する時間以上の長さのミーティングをやってもしょうがない」ということです。
どんな人間でも、集中力が続く時間は限られています。居眠りをする人がいるようなミーティングは、そもそも無駄です。しかも、マネジャーは「ブレインジャック創造思考」でメンバーの話を聞く必要があるのですが、これは想像以上に疲れるものです。
メンバーの話を聞いて、質問をして、自分の頭の思考領域を拡大させていくためには、頭をフル回転させなくてはなりません。私は、毎回30分が限度でした。
昨今のコロナ禍により、直接顔を合わせる機会がめっきり減っている会社も多いはずですが、それでも私は顔を合わせることにこだわってほしいと思います。オンラインでも顔が見えれば十分代替できます(私はオンラインでのテレワークに肯定的です(※2))。
※1 参考「任せて任せず――人の育て方、活かし方(3)」(ウェブサイト「松下幸之助.com」)
※2 参考「ビデオ会議、対面に代わるか」(鶴光太郎、日本経済新聞、2020年9月16日)
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山本真司事務所代表
1958年生まれ。慶応大学卒、シカゴ大学経営大学院修了。東京銀行、ボストン・コンサルティング、ベイン・アンド・カンパニーなどを経てコンサルタントとして独立。著書に『20代 仕事筋の鍛え方』など。
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(山本真司事務所代表 山本 真司)
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