感情をこめず、無機質に「へー」同僚にマウンティングされてもへっちゃらな人の"棒読みの口癖"
プレジデントオンライン / 2023年5月25日 9時15分
※本稿は、樺沢紫苑『言語化の魔力 言葉にすれば「悩み」は消える』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
■「ストレス耐性」ではなく「レジリエンス」を高める
「ストレス耐性」という言葉があります。ストレスに耐える力、我慢強さのようなイメージです。
しかし、最近の心理学、精神医学の領域では、「ストレス耐性」を高めるのではなく、「レジリエンスを高めよう」ということが言われます。
レジリエンスは、「心のしなやかさ」「心のバネ」「回復力」と訳されます。もともとは工業用語で、「バネの弾性力」を示す言葉です。嫌なことがあって凹むことはある。そこから、バネのように、速やかに元の状態に戻ることができればいいのです。
心をしなやかな状態にしておけば、多少のストレスや苦しい出来事で凹んでも、すぐにやり過ごし、回復することができます。
多くの人はストレスに直面した時に、なぜか「我慢強さ」「忍耐力」「ストレス耐性」を意識します。
「こんなにたいへんな状況だから、我慢しないと!」
我慢する必要など、1%もありません。「我慢する」ではなく、バネのようなしなやかさで、ストレスをするりとかわせばいいのです。
一番良いのは、ダメージを受けないこと。それを私は、「スルーする」と言います。
あなたに必要なのは「スルー力」です。ダメージを受けなければ、「元に戻る」必要すらありません。
ボクシングの試合を見ていてよく思います。相手がどんなに強烈なパンチを持っていても、当たらない限りは、ダメージを受けません。ボクシングの強い選手はスウェーが上手で、相手のパンチをもらわない。
スウェーとは、上体を前後左右に揺らすことで、相手のパンチをかわす防御技術のことです。どんなに強烈なパンチも、当たらなければ、ダメージはゼロです。
■「ふわっ」とスルーできれば、ストレスにならない
闘牛士に向かって、巨大な猛牛が突進してきます。闘牛士はどうしますか?
ムレータ(棒についた赤い布)をヒラリとさせ、突進してくる猛牛の攻撃をよけます。考えてみれば当たり前です。猛牛と少しでも接触すれば、大怪我をするのは目に見えています。
しかし私のイメージでは、多くの人が鋼鉄の巨大な盾を構えて、猛牛を迎え撃つのです。盾は重く、立っているのもつらいですが、ガーン、ガーンとぶつかってくる衝撃をモロに受けながら、倒れまいと歯を食いしばって踏ん張ります。
しかし、ついに3度目の攻撃で我慢の限界を超え、盾もろとも弾き飛ばされるのです。
猛牛が突進してきた時の正しい対応は、次のうちどちらでしょうか?
A ムレータでひらりとかわし、ダメージをまったく受けない。
B 鋼鉄の盾で、真正面から受け止める。
どう考えても、Aのダメージを受けない対処法の方が賢いでしょう。そう思いませんか?
もしそう思うなら、現実社会でも、「スルーする」練習をしていきましょう。
ほとんどの人は、攻撃を受けた時に、スルーできません。反撃をします。
悪口を言われたら、言い返す。あるいは、直接言わないのなら、陰口で応酬する。飲み会での「上司の悪口」、女子会での「姑の悪口」も同様です。
そしてさらに、「自分はなんてダメなんだ」という自責の言葉は、「自分への攻撃」。ストレスを受けて弱っている自分に、自分でムチを打つようなものです。
嫌な出来事、つらい出来事も、「ふわっ」とスルーできれば、ストレスにはなりません。
そこで、闘牛士がムレータをヒラリとさせるのと同じような効果をもつ、知っておくと便利な魔法の言葉が3つあるので紹介します。
スルー力を高める方法を今すぐ知りたい! という気の短い人におすすめです。
■スルー力を高める魔法の言葉
「会社の同僚が、やたらとマウンティングしてきます」
嫌味、悪口を言ってきたり、マウントをとろうとする人は、時々いますね。あなたが「げんなりする顔」を見たくてしょうがない。いわば、「愉快犯」です。
あなたが、「なに、くそ」という表情を見せれば見せるほど、楽しくてしょうがない。それが快感となり、何度も攻撃やマウンティングを繰り返します。
そんなことがあってムカッとした時は、「へー」と言ってください。
言い方も重要です。感情を込めずに、無機的に「へー」と発音します。
「へー、わかりました」
「へー、教えてくれて、ありがとうございます」
心のなかでは、
「へー(それはあなたの考えなので、私はどーでもよいと思いますが)」
「へー(勝手にすれば)」
と思っていてもいいでしょう。
怒り、反感、嫌悪などの感情を示して、あからさまに反論すると、火に油を注ぐ状態となります。先方との関係は泥沼化し、相手の日々の攻撃をさらに強めるだけ。あなたのストレスは、間違いなく増幅します。
クールに「へー」と言うと、相手は「肩透かし」された気がします。ちっとも、「面白くない!」のです。愉快犯を目的としているのに、「不愉快」しか感じないので、先方もあなたをスルーするようになります。
■「ドラクエ」のスライムばりに最悪の奴はしばしば現れる
Eさんがあなたの陰口を言っているらしい、という噂を聞きました。
あなたはムッとしますが、心のなかで「そんな人もいる」とつぶやきます。
世の中にはいろいろな人がいます。性格の良い人もいれば、性格の悪い人もいる。正直な人もいれば、嘘つきもいる。穏やかな人もいれば、怒りっぽい人もいる。
「性格の悪い人」「嘘つき」「怒りっぽい人」と出会うたびに、いちいちムッとしたり、落ち込んだりしていては、キリがないのです。
ましてや、そういう根性の悪い他人の性格を、あなたが変えることは不可能で、完全にコントロールの範囲外。
相手から攻撃されたり、不条理なことを言われた時は、「そんな人もいる」とつぶやく。最近流行の「多様性」というやつです。世の中、いろいろな人がいて、当たり前なのです。
時にはあなたにとって、本当に最悪の奴が、それなりの高確率であなたの前に現れます。しかし高確率ですから、RPG『ドラゴンクエスト』をしていて「スライムがあらわれた!」くらいなものです。
珍しくもないし、驚く必要も、落ち込む必要もない。ただ、「そんな人もいる」とスルーすればいいのです。
■怒られて無言で睨みつけるのは最悪な対応
当然ですが、「へー」は上司や目上の人には使えませんね。上司や先輩などから、ネガティブなことを言われ凹んだ時は、「ありがとうございます」がいいでしょう。
「教えていただき、ありがとうございます」
「ありがとうございます。以後、注意します」
「ありがとう」と言われて不快になる人はいません。
怒られたり、嫌味や悪口を言われたりしたら、ネガティブ感情が湧いて、反撃したくなります。
そんな時に、「ありがとうございます」と言っておけば、あなたのネガティブ感情は消え、さらに、相手の気を削ぐこともできますね。
上司に怒られた時に、思わず無言で睨みつけてしまったりしたら最悪です。火に油を注ぐことになり、ただでさえ険悪な雰囲気なのに、上司からさらに嫌われ、イジメ、イビリの対象にされるでしょう。
そんな時に、「ありがとうございます。以後、注意します」と言えば、あなたのネガティブ感情をマスキングすることができるのです。
ムッとしたり、イラッとしても、戦わずにやり過ごす「スルーする言葉」をつぶやいてみましょう。
感情を揺さぶられずに、むしろ平板、平常心で接する。一朝一夕には難しいですが、練習したり、意識したりしていれば、スルー力は向上していきます。
----------
精神科医
作家。米・イリノイ大学への留学を経て樺沢心理学研究所を設立。YouTubeやメルマガで精神医学の情報を発信。著書に『学びを結果に変えるアウトプット大全』『精神科医が教える ストレスフリー超大全』ほか。
----------
(精神科医 樺沢 紫苑)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
悪質な嫌がらせに「笑顔でやり過ごす」は絶対ダメ…ストレスを他人にぶつける攻撃的な人から身を守る方法
プレジデントオンライン / 2024年7月17日 15時15分
-
なぜ一言目に「でも」と言ってしまうのか…話し相手をイラっとさせる人の「脳の問題点」
プレジデントオンライン / 2024年7月13日 10時15分
-
人間には「3つの脳」がある…精神科医が「イライラ、モヤモヤするのはあなたのせいじゃない」と言う理由
プレジデントオンライン / 2024年7月12日 10時15分
-
「バカなの?」「はい論破」…無意識に攻撃を仕掛けてくる人の口を封じる3つの短い"切り返しフレーズ"
プレジデントオンライン / 2024年6月30日 10時15分
-
人間関係が悪い会社で身を守るサバイバル術 離職率が低い会社は「不満」を言いやすい環境
東洋経済オンライン / 2024年6月25日 16時0分
ランキング
-
1物議醸す「ダイドー株売却」の内幕を丸木氏語る 大幅増配公表直後で批判を向けられた物言う株主
東洋経済オンライン / 2024年7月19日 18時0分
-
2セキュリティーソフト世界シェア1位があだ…ウィンドウズ障害、「過去最大規模」の見方も
読売新聞 / 2024年7月20日 6時45分
-
3マクドナルド、休業店の半数再開=マイクロソフト障害は「無関係」
時事通信 / 2024年7月19日 21時37分
-
4システム障害、影響続く=航空便、正常化に数日
時事通信 / 2024年7月20日 9時40分
-
5松屋×松のや「ワンコイン朝食」でいいとこ取りな朝 値上げ後でも工夫次第でお安く美味しく楽しめる
東洋経済オンライン / 2024年7月20日 7時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください