職場に好きな人がいるのに告白できない人が1ミリも心理的な負担なく好意を伝える"ズルい方法"
プレジデントオンライン / 2023年5月27日 10時15分
※本稿は、樺沢紫苑『言語化の魔力 言葉にすれば「悩み」は消える』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
■目前の「つらい」「苦しい」に囚われて、視野狭窄になる理由
深い悩みを持つ人は共通して、「相談できる人がいない」「自分のことを気にかけている人などいない」「自分のことを心配してくれる人なんかいない」と言います。
実際には、その人を支えている人、気にかけている人は間違いなく存在しているのに、不思議なことです。なぜそのようなことが起きるのでしょう。
人間は追い詰められると、何か1つの考えにとらわれてしまい、周囲の事柄に考えが及ばなくなってしまう。これを「心理的視野狭窄」といいます。
「心理的視野狭窄」に陥ると、周りのことがまったく目に入らなくなります。「人に相談したり、本を読めば問題解決に役立つ」という、当たり前のことも考えつかなくなります。
つまり、不安や恐怖に追い詰められた心理状態に陥ると、目前の「つらい」「苦しい」ばかりに注目して、自分のことだけで手一杯。他者に対する興味も関心も、気遣いもなくなってしまいます。他人の存在が目に入らなくなるのです。
さらにうつ状態などが悪化し、心理的視野狭窄が極まると、「問題解決できないなら、死ぬしかない」という短絡的な思考に陥り、自殺に至るのです。
■とりあえず10分登ってみてから考える
東京の愛宕神社(港区)に「出世の石段」というのがあります。この石段を駆け上ると、出世できるそうです。86段の石段なのですが、傾斜が40度もあり、眼前にそそり立つような威圧感があります。
この「出世の石段」を上り切るにはどうしたらいいでしょうか?
1段ずつ上っていくしかありません。しかし多くの人は、一番上の86段目を見上げて、「ああ、キツそう。一気に上るのは、自分には無理」と思ってしまう。
「悩みの解消」も同じです。一番下から、いきなりゴールを見上げるので、難易度マックスとなります。「自分には無理」と思うのも、不思議ではありません。
では、とりあえず10段だけ上ってみます。10段だけなら、さほどたいへんではありません。また10段上って、振り返ってみると、風景が変わります。
さらに10段、そしてまた10段上る。40段目まで上ると、見上げる風景も変わってきます。
「この調子なら、上まで行けそうだ」
後ろを振り返れば「もう、こんなに高いところまで来たのか。半分は来たかな」とプチ達成感も出て、モチベーションは上がります。
そうして上っているうちに、86段を上り切るのです。
登山をする人はわかると思いますが、たった10分登っただけでも、風景がガラッと変わるのです。これが、「視座を高める」ということです。
ほとんどの人は、1段も上らない状態で「上る」「上らない」を決めます。
とりあえず、10段目まで上ってから、「上る」「上らない」を決めても手遅れにはなりません。
むしろ「より正しい」判断ができるというものです。
1段も上らずに、遠いゴールを見上げて「あーどうしよう、どうしよう」と悩んでいるのは時間の無駄。とりあえず1段、とりあえず10段上ってみましょう。
つまりは、上りながら考える。実際に、行動、アクションしながら悩めばいい。
見える風景が変われば、いろいろなアイデアも浮かびます。「どうみても無理」「自分には無理」と思えていたことが、視座を少しだけ高く持つことで、「自分にもできそう」に変わるのです。
■「0/100思考」は人を不幸にする
「ニュートラルに考えられない」とは、言い換えるならば「考え方が極端」ということです。
たとえば、その代表例が「0/100(ゼロヒャク)思考」。
別名「二分法的思考(二分思考)」とも呼ばれます。「0か100か」「YESかNOか」「やるかやらないか」「白か黒か」「善か悪か」という二択のみの思考です。
行動した結果も「成功か失敗か」「0点か100点か」。
中間がない、極端な考え方です。
たとえば、メンタル疾患の患者さんに「症状が改善しても、薬は飲み続けた方がいいですね」と説明すると、「薬は、一生飲み続けないといけないのですか?」と質問されます。
「薬をやめる」か「一生飲み続けるか」。「極端」対「極端」の二者択一の思考です。
実際は、「毎日は飲まないけども、調子の悪い時だけ飲む」「薬をやめたあとに再発して、また薬を飲み始める」など様々なパターンが考えられます。
「メンタルの症状で調子が悪くてつらい」という今の悩みよりも、「10年後に薬を飲んでいるかどうか」を心配する。どうなるかまったくわからない10年先のことを考えるなら、不安や心配は無限に増えてしまいます。
「二分思考」の「二者択一」で物事を考えてしまうと、選択肢が「極端な2つ」しかないわけですから、結果として「コントロールできない感」が強まり、ストレスを多く抱えやすい。
メンタル疾患になりやすい人の特徴でもあります。
■「0/100」から脱却すると、選択肢が増える
たとえば、職場に好きな人がいて、告白しようか迷っているとします。
「告白する」「告白しない」の二者択一で考えると、「断られて気まずい関係になりたくない」「冷たくされて傷つきたくない」など、告白した場合のデメリットが連想され、「告白しない」という決断にしかなりません。
さてここで、「0/100思考」ではない考え方で、対処法を考えてみましょう。
告白することの目的は、何なのでしょうか?
「相手が自分のことをどう思っているのか、自分に好意があるのかどうか、それを知りたい。そして、もし好意があるのなら、お付き合いしたい」
「相手が自分に好意があるのか?」を知ることができて、好意があると判断された場合にのみ告白すれば、失敗する確率は限りなく減っていきます。あなたの心が傷つき、挫折し、打ちのめされることもなくなります。
▼地方に出張に行った時に、特別にお土産を買ってくる
▼他の人よりもやや高価なものを買って差別化する
「あなたに対して好意を抱いていますよ」ということを「非言語的にお伝えする」のはどうでしょう。それに対する反応を見てはどうでしょうか? 喜んでくれれば脈あり、迷惑そうな顔をすれば脈なしです。
あるいは、「近くにできたイタリアンレストランに行ってみない?」と食事に誘ってみるのもいいでしょう。1対1で誘ってOKであれば脈あり。「友達も一緒に」とか「ちょっと最近忙しいので」と言い訳めいた返答なら脈なしかもしれません。
食事に誘うくらいならよくあることなので、断られたところで、気まずくなることはありません。精神的に打ちのめされることもないはずです。
「告白する」「告白しない」の「0/100思考」から脱却して、告白以外の方法で「間接的に自分の好意を相手に伝える」「相手の好意を探る」方法は、いくらでもあるでしょう。
「0/100」から脱却すると、思考が柔軟になり、様々なアイデアや対処法が浮かびます。
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精神科医
作家。米・イリノイ大学への留学を経て樺沢心理学研究所を設立。YouTubeやメルマガで精神医学の情報を発信。著書に『学びを結果に変えるアウトプット大全』『精神科医が教える ストレスフリー超大全』ほか。
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(精神科医 樺沢 紫苑)
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