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控えめな女性が30代で役員候補に…社会人10年目で大化けする"元・低評価社員"の特徴

プレジデントオンライン / 2023年5月27日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

各企業の人事評価トップ5%社員はみな入社当初から別格の存在なのか。企業の働き方改革支援を行うクロスリバー代表で、近著『29歳の教科書』が話題の越川慎司さんは「トップ5%社員の中には、意外にも20代のときに低評価だった人も多いのです。この時期に“3つの仕組み”を身につけられるか。30代以降に花開く人と沈む人を分けるのは、この1点に尽きます」という──。(第4回/全5回)

■「やる気」だけでは越えられない壁がある……

現在30代で、絶大な成果を上げ続けている人々がいます。

彼らの中には、意外にも、20代の頃は一生懸命働いていたにもかかわらず、目立つ成果を上げられずに「できない社員」と見なされていた人がかなりの割合で存在します。

彼らに共通するのは「成果にムラがあった」こと。時には仕事を力強く進め、見事な結果を残すものの、やる気が低下したときや体調がよくないときには仕事に手をつけるのが遅れ、結果的に期限を逸し、人事評価を下げる結果となっていました。

ビジネスにおいて、「やる気」は重要な要素です。しかし、それだけで十分な成果を出すのは難しいことを、これらの事例は教えてくれます。

■30代で“大化け”した人の共通点

20代で「できない社員」と烙印(らくいん)を押された彼らが、30代に入ってから急速に活躍するようになった理由は何だったのでしょうか。それは彼らが「成果を出す仕組み」を構築し、それを活用することに成功したからです。

われわれは、各社の「できる社員」へのヒアリングを通じて、その正体を探りました。結果、大転換を遂げた人は次の3つの仕組みを作り、活用していたことがわかりました。

■①「初動」を早める仕組み

最初に注目すべきは、彼らが「初動を早める仕組み」を持っていることです。彼らの仕事ぶりの一部始終を見ていくと、まず、取り組むすべての仕事に対し初動が圧倒的に早いことに気づかされます。

彼らは自分のやる気に頼ることなく、行動を開始します。これは、やる気があるときだけでなく、やる気がないときでも同様です。

そして、「成功」は目指しません。いきなり成功を目指すと、怖気づいて最初の一歩を踏み出せないからです。

その行動原理は、成功する、ではなく、行動から得た「学び」を次の行動に活かす、というところにありました。

■圧倒的な成果を上げても「自分は怠惰だ」と考えている

また、彼らは週に1回は内省(振り返り)を行っていました。

彼らは意外にも「自分は怠け癖がある」と考えています。とんでもない成果を出し続けているのに、一般社員よりも「自分はそもそも怠惰である」と自己認識しているのです。

だからこそ、自分のやる気に頼らず、しっかり備えています。そして「やらなくてはいけない!」「よしスタートだ!」となったら、迷うことなく行動を開始します。

広告業界で活躍している30代の女性は、「宣言効果」と「締め切り効果」で初動を早めていたそうです。具体的には、「火曜日の午前中までに資料のドラフトを提示します」と同僚に宣言し、締め切りを意識することで、すぐに作業を開始する仕組みを作ったそうです。

■②「手抜き」をする仕組み

2つ目は「手抜きをする仕組み」です。

30代で大化けした彼らは、限りあるリソースを正しく配分するという点に着目しています。彼らは、時間や集中力、体力を無尽蔵に投入するようなことはせず、こうした有限のリソースを最適に使って、重要な仕事に集中し、継続することにより成果を出し続けていました。

不動産会社に勤めている「できる社員」は、ヒアリングに対し「努力なんかしない、準備をするだけ」と断言します。

20代のときは同僚よりも多くこなそうと、顧客への提案件数は断トツのトップだったそうです。失注してもめげずに努力を続けることで、いつか営業成績が改善すると思っていました。

ところが、いくら頑張っても成績は上がりません。そこで、思い切って「努力をやめよう」と考えたそうです。成果につながらないと思われる案件への対応を短縮し、エネルギーを節約する戦略をとったのです。

そして今、30代で本部長に抜擢された彼は「努力をやめたというより、重要な案件に向けた準備をすることが、成果を出し続けることにつながった」と振り返ります。

■「成果につながらない仕事」を見極めよ

30代で成果を出すようになった彼らは、共通して週に1回程度の内省をし、そのうえで、「成果につながる仕事」を見極めています。逆に言えば、「成果につながらない仕事」を見抜いている、ということでもあります。

彼らは仕事を選び、それに集中することで、最大の成果を出すことに成功しました。重要ではない仕事は手を抜いて軽くこなしていたのです。

彼らは「手を抜く」という表現を使いますが、それは「無駄な労力を削減する」という意味であり、絶対に必要な労力を惜しむことはありません。

彼らが「手を抜く」のは、重要でない仕事や、成果に直結しない仕事に対してだけです。ほかの多くの人は、目の前の仕事をこなすことに追われ、結果的に重要な仕事から目を逸らしてしまいます。ところが彼らは、自分の時間と労力を適切に配分し、本質的なタスクに集中することで大きな成果を出し続けていました。

彼らはものごとのフォーカスの仕方が的確で、時間と集中力の配分をコントロールする習慣を身につけていたのです。

■③「信頼」を得る仕組み

3つ目は、周囲からの「信頼を勝ち取る仕組み作り」です。

成果を出すためには、個人の努力だけではなく、周囲の支援や協力も必要不可欠です。しかし、その支援や協力は決して無条件に得られるものではなく、自身が信頼に足る人物であることを証明しなければなりません。

彼らは、まさにその証明を行う仕組みを作り出し、それを活用することで、周囲からの信頼を勝ち取りました。

具体的には、まずは自身の役割と責任を明確に理解し、それに対して全力で取り組む姿勢を見せることで、自身の信頼性を高めていました。また、自身の仕事だけでなく、ほかのメンバーの仕事に対しても積極的に関心を持ち、必要なときにはサポートを提供します。

それらにより、チーム全体の信頼を得る結果になっていました。

円陣を組んで手を重ね合わせる女性チーム
写真=iStock.com/jacoblund
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/jacoblund

■30代で役員候補になった女性の「信頼戦略」

小売業のある「できる社員」は、20代は苦労したものの、30代前半で見事に花を咲かせて役員候補に挙がっています。

彼女は、自身の成果を他部門の人たちとも共有して、仕事への情熱や専門性を理解してもらおうとしていました。自身の成果をアピールするためだけではなく、価値観を理解してもらおうとしたのです。

異なる部門の先輩社員は、「控えめな性格の彼女が仕事への思いを伝えてくれたことで、周囲の人たちが引き寄せられていった」と評価していました。

さらに、彼女は常に周囲からのフィードバックを求め、それを自身の改善に活用していったそうです。これにより、自身が常に成長し続ける姿勢を見せるとともに、他者の意見や視点を尊重する態度も示すことにつながっていました。

周囲からの信頼を勝ち取る仕組み作りは、他者との良好な関係性を築くための重要なステップであり、その結果、彼らは周囲からの強力なサポートを得られるようになり、さらなる成果を出すことが可能となっていたのです。

■信頼を築く=協力者を得る戦略

周囲と信頼関係を築くことは、自身のみならず、組織全体にとっても大きなメリットをもたらします。

自身が信頼される存在であれば、新たなプロジェクトに呼ばれやすくなり、成果を出すチャンスが増えていきます。また、信頼関係が築かれたチームでは、他のメンバーからのサポートも得やすくなります。

20代の頃は「できない社員」と見られていた彼らが「信頼」に重きを置くようになったのは、単に人間関係を良くしようとしたのではなく、協力者を得るための戦略の1つでもありました。

30代に入ってから一躍活躍するようになることができたのは、個々のスキルや才能だけではなく、仕組みを構築し、それを活用することに成功したからです。

■マイクロマネジメントの罠

次に、組織マネジメントの視点からも分析してみたいと思います。

私たちが、日本全国の617社を対象に調査を行ったところ、「マイクロマネジメントではなく、組織全体で業務の進捗(しんちょく)を“見せる化”」することが重要であることが明らかになりました。具体的には、成果を出し続けるためには、「しっかり管理する」マイクロマネジメントは逆効果なのです。

報告作業を徹底し、報告頻度と報告量を増やすことは、一般的には組織の業績を向上させることのように思われています。しかし、われわれの調査結果は、事実はその逆であることを示しています。

報告の量を増やしたところで、チーム目標が達成しやすくなるわけではありません。20年前のように「しっかり管理すれば、しっかり成果が上がる」という考え方は、現代の組織運営には適していないのです。

今、優秀な社員たちは「業務の見える化」ではなく、「業務の“見せる化”」を徹底しています。彼らは、自分の年間目標や今月の行動目標を上司や周囲に宣言し、その進捗をチャットなどで公開していきます。

彼らの行動は特徴的で、「うまくいっていないこと」も正直に報告するのです。

■組織からの信頼を失う人、高める人の根本的な違い

一方、一般的な社員の約7割は、評価を下げられないように、業務がうまくいっていなくても良く見せようとします。しかし、結果として締め切り間近でうまくいっていないことが明らかになり、上司やチームを困らせてしまうのです。

期待を高めたあとに落とす行為は、落差がそのまま大きな失望へと変わり、組織からの信頼を失います。

しかし、30代で優秀社員と評される人たちは違います。一人で複雑な課題が解決できないと理解している彼らは、うまくいってない状況すら意図的に見せることで、周囲を巻き込む力を発揮します。

「最終的にゴールに到達すれば良い」という信念の下、積極的に他者の力を借りることを躊躇(ためら)いません。そんな彼らにとって、「巻き込み力」は成果を出すための重要なツールなのです。

チームのみんなでハイタッチ
写真=iStock.com/Cecilie_Arcurs
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Cecilie_Arcurs

■スキルを求める95%社員、人を動かす力を磨く5%社員

私たちの調査で明らかになったもう1つの興味深い事実は、5%社員と95%社員が求めるスキルの違いです。

一般の95%社員が求めるスキルは、ITやファイナンシャルプランナーといった資格取得に関する内容が7割以上でした。

一方、5%社員は、企画書の作成術や相手の巻き込み方など、周囲を味方につけるコミュニケーション術を身につけようとする傾向にありました。これは、彼らが組織全体の力を引き出す力を重視している証拠といえるでしょう。

成果を出し続けるためには、しっかり管理することを目的にするのではなく、目的を達成するべく、手段としての「管理」をよりスマートに行うことが求められます。変化の激しいビジネス環境下で、固定的なマネジメントスタイルに固執せず、柔軟なアプローチを取るのです。

とくに、今の時代は情報が飛び交い、新しいビジネスモデルやテクノロジーが日々生まれています。このような状況に対応するためには、マネジメントのスタイルもまた変化し続けるべきです。

マイクロマネジメントの限界を理解し、チーム全体で問題を共有し、解決策を探すことで、より強固な組織を形成することが可能となります。

■業績を上げ続けるための3つのポイント

これまで見てきたことまとめると、マイクロマネジメントの罠を避け、業績を上げ続けるために、以下のポイントが重要となるといえます。

1.「業務の“見せる化”」を徹底する
2.状況が悪いときこそ、他者を巻き込む
3.成果を出すための手段としてスマートな管理を実践する

これらのポイントは、組織の成果を向上させるだけでなく、個々の社員が持つ能力を最大限に引き出し、自己成長を遂げるためのアクションでもあります。

■「自律型人材」へとアップグレードしよう

本稿で見たような、30代で「できる社員」となった人々が持つ「業務の“見せる化”」や「巻き込み力」を周囲の社員も身につけることで、組織全体の成長につながります。これらのスキルの習得により、言われたことだけやる「従順社員」から自分で考えて動く「自律型人材」へとアップグレードされます。

越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)
越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)

「頑張っているのに成果が出ない」という20代のみなさんは、「頑張り方」を変えるだけで大化けする可能性があることを知ってください。そして、20代・30代の後輩や部下の悩む姿が気になる先輩社員のみなさんは、若手社員が腹を割って話せる環境を用意して、「業務の“見せる化”」を浸透させてみてください。

「何をしたらよいかわからない」と悩める20代30代のビジネスパーソンに向けて、今回『29歳の教科書』を著わしました。

若手社員の指導法に悩む方にも役立つ実践的なテクニックを載せています。本書も参考にしながら、小さな行動実験を続け、成果を出し続ける仕組みをご自身で作っていただけるとうれしいです。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。

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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)

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