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これから儲けたいなら日本株がいい…企業分析の達人が注目する「ニッポンの隠れた優良企業」とは

プレジデントオンライン / 2023年5月26日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AzmanL

これから伸びる日本企業はどこか。東洋経済新報社・編集委員の田宮寛之さんは「世界では人口が増え続け、水や食料不足は深刻化する。日本には、こうした分野に強みを持つ『隠れた優良企業』がたくさんある」という――。

※本稿は、田宮寛之『ビジネスエリートが実践している教養としての企業分析』(自由国民社)の一部を再編集したものです。

■世界の人口は28年間で17億人増える

世界全体では人口が急増しています。国連の統計によれば、2022年に80億人だった人口は2050年には97億人となります(国際連合:World Population Prospects 2022)。28年間で17億人も増加すれば、様々な問題が生じます。

しかし、問題が生じるからといって、地球の将来が真っ暗というわけではありません。問題に対応するところにビジネスチャンスがあります。人口増加を悲観することはありません。ピンチはチャンスです。

人口が増加すれば、世界的に水不足が深刻化するでしょう。地球は水の惑星と言われていますが、地球の水のほとんどは海水で、真水は全体のわずか0.01%にすぎません。水の豊かな日本では気付きにくいのですが、水は希少資源そのものです。

人口がどんどん増加しているので、この希少資源を大勢の人々が奪い合うという構造が出来上がりつつあります。

人口増加だけでなく、新興国の経済発展が水不足に拍車をかけます。新興国が工業化すれば大量の工業用水を使用します。工業活動を行なえば、どうしても工業廃水が出ます。新興国では排水を浄化する技術レベルが低いので、川や湖を汚してしまいます。ただでさえ、真水が不足しているのに、真水の供給元を汚して水不足をさらに深刻化させてしまうのです。

国際連合人口基金の試算によれば、2050年には世界総人口97億人のうち、約半数が水不足に直面します。世界中で水が足りないならば作るしかありません。

きれいな真水を作り出すのが水ビジネスであり、海外には真水製造工場が多数あります。特に中東エリア(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、オマーンなど)には多くの工場があります。水ビジネスは既に巨大なグローバルビジネスであり、さらにこれからも成長していくのです。

■日本には水ビジネスに強い優良企業がたくさんある

真水を作り出すと述べましたが、実際は海水から塩分を抜いて真水を作ります。海水をフィルターに通し、塩分を除去します。家庭にある浄水器と仕組みは同じです。

フィルター製造会社、海水をくみ上げるポンプを作る会社、真水製造工場そのものを作るプラントメーカー等、日本には水ビジネスに関連した優良企業がたくさんあります。

【図表1】水ビジネス
出典=『ビジネスエリートが実践している教養としての企業分析』

■食糧増産に貢献する企業は伸びる

人口増加で食料不足になる懸念があります。食糧が不足するならば食料を増産するしかありません。そこで、農業機械、農薬、化学肥料等を製造する企業に注目です。

農薬というと耕作地周辺を汚染する、農薬のついた野菜や果物を食べると健康に悪い、といったネガティブなイメージがあるかもしれません。

また、化学肥料を使わない方が環境に優しいし、美味しい作物が収穫できるという意見もあります。そこで、日本国内には農薬や化学肥料を使用しないで作物を栽培する農家があります。

しかし、そんなことができるのは、日本の農家の農業技術が高いからであって、後進国や新興国の農家にはできません。食料増産に農薬と化学肥料は必要です。要は使用方法を間違えなければ良いのだと思います。

そのほか、「種」を作る会社も重要です。農業機械、農薬、化学肥料が優れていても、肝心の種の品質が低ければ、良い作物はできません。

【図表2】食糧ビジネス
出典=『ビジネスエリートが実践している教養としての企業分析』

種を生産する企業にサカタのタネがあります。種の業界トップで東証プライム上場企業です。世界約170カ国で野菜などの種を販売するグローバル企業です。

■安全で、効率的に増産できる「植物工場」

農産物の増産を妨げるのが、天候不順と環境汚染です。冷夏、暖冬、想定外の台風などが農産物の育成を妨げます。また、新興国や後進国では経済成長に伴って、大気汚染や水質汚濁が深刻化しており、農業にはマイナスです。天候不順と環境汚染を避けて食料を増産するためには、「植物工場」での作物栽培が有効です。

植物工場
写真=iStock.com/ASMR
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ASMR

植物工場とは、農産物を生産する工場のことです。屋外で行なわれる露地栽培とは異なり、工場内の温度、湿度、光、二酸化炭素濃度などを自動制御装置で最適な状態に保ち、種まきから収穫までを計画的に一貫して行ないます。

植物工場のメリットは2つあります。1つ目は安全性が高いこと。外部と遮断されているため病原菌や害虫が侵入できません。そこで、それらを予防・駆除するための農薬が不要です。

2つ目はどこでも栽培ができるということ。農地関連の規制が緩和されつつありますが、それでも農地を購入して農業を始めるには様々な制約があります。

しかし、植物工場ならばどこに作ろうが事業者の自由です。また、敷地が狭くても作物を栽培するトレーを棚状に積み上げれば、多くの野菜を収穫できます。露地栽培に比べて土地の利用効率はきわめて高いのです。

【図表3】植物工場
出典=『ビジネスエリートが実践している教養としての企業分析』

■期待が高まる「陸上養殖」

FAO(国連食糧農業機関)の「世界漁業・養殖白書2022」によると、世界では1人当たりの魚介類の消費量が過去60年間で倍増しており、さらに伸び続ける傾向にあります。魚介類の需要が増加しても、海から獲るのは限界があります。それならば養殖すればいいということになりますが、海を利用した養殖で生産量を増やすのは簡単ではありません。

そこで、期待されるのが「陸上養殖」。海に生息する魚介類の養殖を海ではなく陸上で行ないます。屋内の水槽で水質や水温、エサなどを完全にコントロールした状況で魚介類を育てるので、養殖場というよりも「魚製造工場」と呼んだ方が適切かもしれません。

陸上養殖のメリットは3つあります。

1つ目は、外部からの影響を受けずに安定的に魚介類を育てられること。通常の養殖は、海の中に設置されたイケスで魚を育てますが、赤潮の発生などで環境が悪化すれば魚は全滅してしまいます。自然環境の変化だけでなく、タンカーの座礁で重油が流れ込んで、養殖魚に大きな被害が出ることもあります。

2つ目は水温やエサの調整で、魚の品質と生育期間をコントロールできること。閉鎖された環境なので海上養殖よりも品質のコントロールが容易です。生育期間短縮はコスト削減につながります。さらに、出荷時期を魚価の相場が高いときに合わせることも可能です。

3つ目はどこでも養殖ビジネスができること。養殖のために海を使用するには地元の漁業協同組合の許可が必要ですが、許可を取るのは簡単ではありません。陸上養殖ならば許可を得る必要はなく、自由に始められます。また海の近くである必要もありません。企業が内陸部にある遊休地を活用して、養殖ビジネスに参入することも可能です。

【図表4】魚の陸上養殖
出典=『ビジネスエリートが実践している教養としての企業分析』

■人口減少・高齢化でもビジネスチャンスはある

日本の人口減少と高齢化が止まりません。2023年1月1日現在で、国内人口は1億2477万人ですが、2053年には9924万人となります。なんと1億人を割ってしまうのです。高齢化率を表す65歳以上の割合は、2023年1月1日で29%ですが、2053年には38%まで上昇します(総務省統計局、国立社会保障・人口問題研究所)。

人口減少と高齢化が進めば、様々な問題が生じますが、その問題に対応する中にビジネスチャンスがあります。

日本国内の人口が減少すると、国内でモノやサービスが売れなくなってしまいます。人口が減るということは、お客さんが減るということです。そして、高齢者はお金を持っていても、あまり買い物をしません。これから日本企業が成長していくためには、モノやサービスを海外に売るしかないのです。

販売相手国として、すぐに思い浮かぶのは米国と中国でしょう。もちろんこの2国は重要な相手国ですが、私はアフリカに着目しています。

【図表5】アフリカ関連企業
出典=『ビジネスエリートが実践している教養としての企業分析』

■アフリカでビジネスを展開する日本企業は強い

アフリカと言えば、貧困、飢餓、伝染病、内戦などを思い浮かべる人が多いと思います。しかし、こうした現象はアフリカの一面にすぎません。

アフリカは地下資源が豊富なうえ、経済が成長しているだけでなく、若くて巨大な人口があります。ビジネスの対象として最高のエリアです。

アフリカ北部では天然ガスや原油が、南部では金、銅、ダイヤモンドなどの資源が豊富です。さらにコバルトやプラチナといったレアメタルにも恵まれています。

田宮寛之『ビジネスエリートが実践している教養としての企業分析』(自由国民社)
田宮寛之『ビジネスエリートが実践している教養としての企業分析』(自由国民社)

2000年以降、アフリカ経済は毎年プラス成長が続いてきましたが、2020年はコロナ禍でマイナス成長となりました。しかし、2021年から回復に転じており、世界銀行は2023年の経済成長率は3%を超えると予測しています。

アフリカ54カ国の総人口は、2022年の14億820万人から2030年に16億9009万人、2050年に24億6312万人に増加すると見込まれています(世界人口推計2022年版、国際連合)。2050年の世界人口は97億人強ですから、その頃には世界の4分の1がアフリカ人ということです(現在は約18%)。

人口が多いだけでなく、圧倒的に若いのが特徴です。0歳児から最高齢者までを順に並べて、ちょうど中間になる人の年齢(中位年齢)は日本が48.4歳ですが、アフリカ全土では19.7歳です。

■コンビニ弁当・総菜を製造する会社は「隠れた有望成長企業」

高齢になると、食事を作るのがしんどくなるし、火を使って調理することは、危険でもあります。だからといって外食だけでは費用もかかるし、栄養バランス面でも問題があります。

また、人口減少とともに単身世帯が増加します。単身者は仕事などで忙しく、調理をする時間があまりありません。時間があったとしても1人分の食事を作るのは、複数人用の食事を作るよりも、費用がかさむことがあります。

今後は高齢者世帯や単身世帯が、総菜や弁当を買って自宅で食べるケースが増えるでしょう。弁当や総菜はいろいろなところで販売されていますが、徒歩圏内のコンビニで購入するのが簡単です。

コンビニに並ぶ総菜や弁当を製造する企業は地味ながら有望成長企業です。

【図表6】コンビニ
出典=『ビジネスエリートが実践している教養としての企業分析』

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田宮 寛之(たみや・ひろゆき)
東洋経済新報社 編集委員
東洋経済新報社編集局編集委員、明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日本経済新聞グループのラジオたんぱ(現・ラジオ日経)、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクとなる。2007年、株式雑誌の『オール投資』編集長に就任。2009年、就職・採用・人事などの情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げて編集長となる。これまで取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。『週刊東洋経済』デスク時代は特集面を担当し、マクロ経済からミクロ経済まで様々な題材を取り上げた。2014年に「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職。

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(東洋経済新報社 編集委員 田宮 寛之)

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