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「落ち込んでいるから約束はキャンセル」で深みにハマる…メンタル不調のときに絶対やってはいけないこと

プレジデントオンライン / 2023年5月25日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyanKing999

気分が落ち込んでしまったとき、どうすればいいか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「何をするにも億劫なときほど、少し無理をしてでも人と会う約束をするといい。人と話をすると自然と交感神経が上がり、活動的になれる」という――。

※本稿は小林弘幸『自律神経が整えば、仕事も人間関係もうまくいく』(KADOKAWA)を再編集したものです。

■ストレス要因と出合ったとき、体の中では何が起きているか

仕事、通勤、人づき合い……日常生活のなかでストレスになる要因はたくさんあり、そのすべてをなくすことは不可能です。かといって、ストレスをすべて受け入れ、我慢ばかりしていたら、それこそ体がもたないでしょう。

そんなとき、自律神経を整える意識を持つことが大切です。

たとえば、上司に怒られたとき、あなたは落ち込んだり、腹を立てたり、緊張して体がこわばるかもしれません。ストレス要因に出合ったとき、体のなかでは過剰に交感神経が高まり、副交感神経が低下します。すると、血管が収縮し、脳に十分なブドウ糖や酸素が運ばれなくなり、その結果、感情がうまく抑えられなかったり、冷静に思考できなかったりします。胃が痛くなったり、肌が荒れることもあるでしょう。

医師の立場から言えば、「上司に怒られた」というストレス要因に出合ったのなら、思考やメンタルをどうこう言う前に、まずやるべきは「体の状態を整えること」です。そうでなければ、ストレス要因をポジティブにとらえることなどできません。ストレスをメンタルで処理するのではなく、フィジカルにアプローチすることが肝心。具体的な方法を説明しましょう。

■ストレスになっているのは「怒られた」という事実ではない

では、ストレス要因に出合ったとき、過度に交感神経がアップして、副交感神経が下がってしまう状態にならないようにするには、どうしたらいいのか。そのキーワードのひとつが「流れを変える」です。

ストレス要因に出合い、マイナスの反応をしてしまうと、その流れからなかなか抜け出すことができません。たとえば、上司に怒られた場合、当然ながら落ち込んだり、怒りの感情が芽生えるでしょう。でも、医学的に言うなら、ストレスになっているのは「上司に怒られた」という事実より、「落ち込む」「怒る」というあなた自身の感情のほうです。

この感情によって交感神経が跳ね上がり、人によっては副交感神経が極端に落ちて血流が悪くなります。脳に酸素やブドウ糖が十分に運ばれないため思考力は低下し、感情の抑制が利かずにイライラして、さらに仕事のパフォーマンスを落としてしまいます。

不安や怒りがあるため、夜になっても副交感神経が十分に上がらず、快適な睡眠がとれないまま翌朝を迎えることになります。今度は交感神経優位に切り替わって、さらに副交感神経の低さが際立ってしまい、その翌日もイライラした感情になりやすく、怒られた上司の顔を見るだけで感情が乱れ、仕事の効率はさらに悪くなって気力も失われていき……。

このように果てしなく「負の連鎖」が続いて、悪循環から抜け出せなくなるのです。

■負の連鎖を断ち切るために、デスク周りを一箇所だけ片付ける

じつは、人間はもともと「流れに乗る」のは得意。調子がいいときは、ドンドン前に進んでいくことができます。つまり、「プラスの流れ」が続いているときは何の問題もありませんが、ひとたび「マイナスの流れ」が始まってしまうと、どんどん負の連鎖にはまって抜け出せなくなるわけです。

そこで、大事になるのが「流れを変える」というアプローチ。具体的な方法のひとつが「片づけ」です。

私が推奨するのは「調子が悪いときに、1カ所だけ片づける」という方法です。嫌なことがあったり、やる気を失っていたり、憂鬱な予定が控えているときこそ、仕事をする場所の1カ所だけでいいので片づけてみてください。

■心と体の状態は、仕事場の整い具合と反比例する

心身ともに調子がよく、仕事もプライベートも順調なときは、デスク周りが散らかっていても問題なく過ごしていけます。そんな元気なときに、わざわざ周囲を片づける必要はありません。いい流れに乗って、仕事をバリバリやればいいのです。

私も調子がいいときほど、部屋もデスク周りも散らかっていますが、そんなことはまったく気になりません。しかし、憂鬱なスケジュールが続いたり、心身ともに疲れてきたら、ちょっとずつ片づけをするようにしています。「今日は引き出しの一番上、明日は二番目……来週は本棚の整理」といった具合です。

自律神経が乱れて心身がパワーダウンしているとき、仕事前や外から帰ってきて「ああ、片づいてるな」「きれいになってるな」と感じられれば、少し気持ちが落ち着き、それだけで副交感神経は上がってきます。だから、私は調子が悪いときほど、その流れを断ち切るために、ちょっとずつ片づけるのです。

ただし「せっかくならあそこも、ここもきれいにしよう」などと気合いを入れ過ぎては、交感神経が過度に上がり、かえって自律神経のバランスを乱す原因にもなりかねません。「最近、調子がイマイチだから、1カ所だけ片づけて帰ろう」。そんな気軽にやれる些細な習慣が、自律神経を整えてくれるのです。

この「1カ所だけ片づけ」は、引き出しや棚など、体を動かして整理整頓するのが理想ですが、パソコン内の不要なデータやファイルを整理するだけでも効果はあります。要は「自分自身の心と体の状態」と仕事場など「周囲の片づけ度合い」が反比例することが肝心。医学的には、正しいストレスとの向き合い方と言えます。

窓辺でノートパソコンの作業環境
写真=iStock.com/HAKINMHAN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/HAKINMHAN

■調子が悪いときほど人と会うアポを入れておく

ストレスへの具体的な対処法をもうひとつ紹介しましょう。私は「ちょっと調子が悪いな」「自律神経が乱れ気味だな」と感じるときほど、「人と会う予定」を入れるようにしています。人と会うには、どうしたって動かなければなりません。つまり、強制的に動くために、人と会うアポを入れてしまうわけです。

とはいえ、多くの人は調子が悪いときに人と会うのは、さらにストレスを増やすのではないかと考えるでしょう。実際に「面倒だな」「こんなアポ、入れなければよかった」と感じる人が少なくないかもしれません。

■無気力さに身を委ねていると負の連鎖から抜け出せない

しかし、そこで思い出して欲しいのが「流れを変える」という意識です。気力を失い、何をするにも面倒と感じるとき、その感情に流されていてはいつまでも「負の連鎖」から抜け出すことができません。だから、少し無理矢理にでも「人と会う」ことが大事になるのです。

そもそも、人と会うと交感神経が上がります。一人きりでいるときより、外部からの刺激を受けて活動的になるからです。交感神経が下がって無気力になっている人には、特にいい方法です。人と話をしていれば自然に交感神経は上がり、親しい間柄であればいっそうリラックスした時間を過ごせます。副交感神経にいい影響を及ぼすわけです。

■「面倒だから誰とも会わない」は引きこもりの始まり

やや荒療治な側面もあるので、絶対にオススメとは言いませんが「人と会う」のは、会うまでは面倒でも、実際に会ってみると「話せてよかった」「気分転換になった」と感じることがとても多いのです。

小林弘幸『自律神経が整えば、仕事も人間関係もうまくいく』(KADOKAWA)

また、自律神経の状態は人に伝染するものです。職場で上司がピリピリしていると、その空気は部下に伝染していくでしょう。自律神経の乱れが、周りに影響している証拠です。反対に、あなたの自律神経が乱れて心身がパワーダウンしていると感じたら、元気で前向きな人と話をすればいいのです。よい影響を受けて、あなた自身の自律神経も整っていきます。

「誰と会うか」は若干、吟味したほうがいいでしょうが「面倒だから、誰とも会わない」と思うのは、引きこもりの始まりです。マイナスの流れをプラスに変えるために、積極的に人と会って意識して動くことが大切です。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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