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米国では定番商品ですらない…サーティワン14年連続1位「ポッピングシャワー」なぜ日本だけで人気なのか

プレジデントオンライン / 2023年5月26日 11時15分

画像=B-R サーティワン アイスクリーム提供

サーティワン アイスクリームで最も人気のフレーバーは「ポッピングシャワー」だ。日本では2000年に発売を開始し、2008年から現在まで14年連続で売り上げ1位だという。本国アメリカでは定番商品から外されてしまったフレーバーが、なぜ日本では圧倒的人気なのか。ライターの古田島大介さんがリポートする――。

■口の中でパチパチとはじける食感

今年で日本上陸50周年を迎える「サーティワン アイスクリーム」(以下、サーティワン)。

国内最大級のアイスクリーム専門店として、全国に1200カ所以上の販売拠点を有している。

なかでもサーティワンの代名詞が不動の人気を誇る「ポッピングシャワー」だ。

口の中でポップロックキャンディがパチパチとはじける食感と、ミントとホワイトチョコの絶妙な味わいが支持されている。

本国アメリカではポッピングシャワーは定番商品ですらないという。なぜ日本だけで人気なのか。今回、B-R サーティワン アイスクリームの若林翌・マーケティング本部長に話を聞くことができた。

■もともとは3カ月限定の商品だった

「ポッピングシャワー」は1999年12月1日、アメリカで生まれた。

当時の名称は「POP Goes The Century」で、ミレニアムを記念したフレーバーだった。日本では2000年1月1日から「Pop Rock in the Millennium ~ミレニアム~」という商品名で発売されている。

3カ月の期間限定で販売予定だったが、予想を大きく上回る反響で、わずか2週間で完売。その売れ行きは今でも社内で語り継がれている。

「ブログもSNSもない時代に、お客さまの口コミだけで商品の魅力が自然に広まったんですよ。当初3カ月限定で発売予定でしたが、わずか2週間で瞬く間に完売したのは衝撃的でした。一度は終売したんですが、お客さまから『あのフレーバーはどこで食べられるのか?』、『もう一度食べたい』といった問合せが相次ぎ、お客さまの強いご要望があって、再びシーズンフレーバーとして復活するくらい、ものすごい勢いがありました」(若林さん)

■アメリカと日本の「人気フレーバー」の違い

その後も人気は収まらず、2002年9月には今の名称である「ポッピングシャワー」に変更され、念願のスタンダードフレーバーに。2008年から現在まで14年連続で人気No.1フレーバーとなっている。

最大の特徴はパチパチとした食感だ。キャンディはまわりを油脂コーティングしているため、アイスクリームの中に入っても食感が失われず、口の中でパチパチとはじける。

「アイスクリームのおいしさだけではなく、ポップロックキャンディを使い、驚きと楽しさを提供するという遊び心が、お客さまの支持を得ることにつながったのではと考えています。これこそ、サーティワンならではのアイデンティティーであり、他社にはない強みになっています」(若林さん)

「ポッピングシャワーび発売当初の売れ行きは伝説として語られている」と話す若林翌マーケティング本部長
筆者撮影
「ポッピングシャワーの発売当初の売れ行きは伝説的でした」と話す若林さん - 筆者撮影

「ポッピングシャワーは現在、アメリカでは販売されておらず、レギュラー商品に入っていないのに対し、日本では多種多様なサーティワンの商品の中で、常に人気フレーバーの一角を占めているんです。味に関しても、1999年にアメリカで最初に発売されたものと同じレシピを使用していますが、それでも根強い人気を誇っていますね」

そう語る若林さんは、ポッピングシャワーが日本だけロングセラーを続けている理由について、こう話す。

「アメリカのお客さまは濃厚な味を好む傾向があります。そのため、ポッピングシャワーのようなさっぱりとした味わいよりも、アメリカの定番商品のひとつである『キャラメルプレリンクリーム』のような濃厚なキャラメル味を堪能できる味の方が親しまれていると感じています。また、フレーバーのネーミングについても、アメリカのお客さまはアイスクリームの味を想像できる商品を選びやすいんです」

■「フレーバー総選挙」では別格扱い

他方、日本では「ポッピングシャワー」というネーミングの妙が支持される要因になっているという。

「聞き慣れないフレーバーだからこそ、逆に興味をかき立てられ、『思わず食べてみたい』と考えるお客さまが日本には多い印象があります。さらに、店頭で販売するキャンペーン商品やプロモーションで使う販促物にも、ポッピングシャワーのデザインを落とし込むことが多く、それがお客さまの頭に残り、想起購買につながっていると考えています」

今年で日本上陸50周年を果たしたサーティワンは、50周年のロゴにもポッピングシャワーをアイコンとして使用しているが、これは全世界の中でも日本だけだという。

2021年に実施した「フレーバー総選挙」では2位の「ラブポーションサーティワン」に2万票の差をつけて1位を獲得。ポッピングシャワーの圧倒的な人気を見せつけた。

2021年の総選挙の年代別ランキング結果。「ポッピングシャワー」は50代、60代でも圧倒的人気を誇る
画像=B-R サーティワン アイスクリーム提供
2021年の総選挙の年代別ランキング結果。「ポッピングシャワー」は50代、60代でも圧倒的人気を誇る。「2021年フレーバ総選挙結果」プレスリリースより - 画像=B-R サーティワン アイスクリーム提供

この結果を受け、ポッピングシャワーは“殿堂入り”を果たし、以降は投票対象にならないほどの別格扱いのフレーバーになっている。

それだけ、ポッピングシャワーがサーティワンの看板商品として支持されており、日本人が愛してやまないフレーバーだと言えるのではないだろうか。

■過去最高益を達成できた理由

コロナ禍においてもサーティワンの業績は好調であり、2022年12月期の連結決算では過去最高の売上高220億3800万円を達成した。加えて、20カ月連続で前年同月比の売上高を上回る(2023年4月時点)など、堅調な事業成長を見せているのだ。

「コロナ禍による生活様式の変化を好機と捉えた」と語る若林さんは、売り上げが伸びている要因をこう説明する。

「『2031年に税引き前利益31億円を達成する』という長期経営計画(LRP)に沿って、これまでビジネスに取り組んできました。その中では、デマンド(需要)戦略を基にした新たな市場拡大を図る『ブランドパワーの強化』、お客さまの体験や店舗オペレーションの『デジタル化』、サプライチェーンや本部組織を最適化する『スマート31』、そしてお客さまとの接点を増やすための『販売拠点拡大』という4つの柱を主軸に据えており、これらが相乗効果をもたらしたことで、過去最高の収益に結びついたと考えています」

■前年比268%のヒットになった商品

コロナ禍で巣ごもり消費が高まったことで、フードのテイクアウトやデリバリー市場が拡大したわけだが、サーティワンも「コロナ前からテイクアウト商品の強化を考えていた」と若林さんは振り返る。

「コロナ前と比べて、テイクアウト商品の『バラエティボックス』は268%の売り上げ増となりました。これは2021年4月に『バラエティパック』からリニューアルしたことが大きく影響しています。商品の個数のバリエーションが増えたほか、今まで専用のパックに詰めていたのを、1個ずつカップに小分けしたボックスタイプに変更したことで、お皿に取り分ける手間を省くことができました。こうすることで、お客さまは個別のカップでアイスクリームを食べられるようになり、冷凍庫で保存しやすくなったんです」

2021年4月に「バラエティパック」から「バラエティボックス」へリニューアルを行った。
画像=B-R サーティワン アイスクリーム提供
2021年4月に「バラエティパック」(上)から「バラエティボックス」(下)へリニューアルを行った。 - 画像=B-R サーティワン アイスクリーム提供

こうしたパッケージングのイノベーションはもとより、ポケモンやサンリオといった人気キャラクターとコラボした「アイスクリームケーキ」も、ハレの日需要を捉えて販売数が伸びているという。

「ファミリー層を中心にしたテイクアウトニーズを「バラエティボックス』や『アイスクリームケーキ』によって取り組めたことが、既存店1店舗当たりの年間平均売上高においても、過去最高を達成できたと考えています」

■テイクアウト専門店に現れた新たな客層

サーティワンは出店戦略も加速させている。

ビルイン型店舗やフリースタンディング店舗、商業施設内のコーナー型店舗など、立地に合わせた出店のほか、テイクアウト専門店の新業態「サーティワン To Go」も出店を強化している。

さらにユニークなのは、オフィスビルの中や水族館、大学、野球場、サービスエリアなど、出店の余地があれば、積極的に店舗を出しているところだ。

サーティワン アイスクリーム To Go アトレヴィ三鷹店
画像=B-R サーティワン アイスクリーム提供
サーティワン アイスクリーム To Go アトレヴィ三鷹店 - 画像=B-R サーティワン アイスクリーム提供

「『サーティワン To Go』に関しては、既存店よりも提供スピードの速さにこだわっていて、商品数を絞り、オペレーションを省力化しています。そのため、従前に比べて出店面積を抑えることができ、好立地への出店も可能になったんです」

さらに意外な客層が増えたという。

「テイクアウト専門店ができたことで、コロナ前よりも男性のお客さまが増え、新規層の開拓にもつながっています。テイクアウト商品を強化し、並行して販売拠点の拡大を行ったことで、コロナ前はイートイン比率が高かったのが、今ではテイクアウト比率が全体の40~45%ほどを占めるようになりました」

■スイーツ専門店市場への拡大

今後はアイスクリーム市場のみならず、スイーツ専門店市場への拡大を見据えながら、さらなるビジネスの発展を目指していくという。

成長の鍵になるのは「デマンド戦略」だと若林さんは説明する。

「単に値引きや増量などの施策ではなく、豊富な品揃えや季節を感じるフレーバーの開発、商品の魅力や品質の向上、喫食オケージョンの拡大など、お客さまがサーティワンを利用したいデマンド(欲求)を理解し、マーケティング活動するのが大切だと考えています。

お客さまが抱く『あの味が食べたい』や『子供を喜ばせたい』、『誰かと一緒に楽しみたい』といった消費マインドは、スイーツ専門店とアイスクリーム専門店で共通している部分であり、これからもお客さまの体験価値を向上させられるような取り組みをしていきたいですね」

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古田島 大介(こたじま・だいすけ)
フリーライター
1986年生まれ。ビジネス、ライフスタイル、エンタメ、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。

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(フリーライター 古田島 大介)

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