ペットより自分が先に死んだらどうするか…子のいない「おひとりさま」が老後準備でやるべき3つの作業
プレジデントオンライン / 2023年5月28日 10時15分
■終活作業①:プラス財産とマイナス財産の整理
終活作業で早めにすませておきたいのが財産の整理です。自分の所有する財産が、どこにどれだけあるのか把握し、パートナーや親族と共有しておくことで、相続など亡くなったあとの手続きにかかる手間を大幅に軽減できます。
財産とは、現金や預貯金、有価証券、不動産のほかに、美術品や自動車、家電などの耐久消費財も対象となってきます。借入金やクレジットカードの未払い金、未納の光熱費・税金などはマイナスの財産となり、相続された財産から差し引くことで精算できます。
こういった財産を整理・集約するうえで、まず取りかかるのがリストアップ作業。最近ではインターネットやガイド本で目録のフォーマットを手軽に入手ができるので、プラスの財産とマイナスの財産を思いつくままに記入して内容を洗い出していきましょう。
■重要な情報は身辺整理を頼む人に伝えておく
これらの財産は有事の際にすぐ使える状態にしておくことが重要です。そのためにも預貯金通帳や届出印、生命保険証書などは所在を明らかにし、金庫に入れているなら鍵の保管場所や解錠方法も身辺整理を頼む人を決めて伝えておきましょう。
キャッシュカードの暗証番号、ネット銀行やネット証券のログインID、パスワードも同様に知らせておきます。銀行口座は用途に応じて複数作ることがよくありますが、このタイミングで不要なものは解約しておくことが望まれます。不動産の売買契約書は売却時の税金の金額に大きく影響するので、必ず見つけておきましょう。
![【図表1】確認すべき財産と対策方法](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/9/1200wm/img_b9742639f4ecbafb463b5ea3467b7ecd250850.jpg)
■分類作業で見極める不用品と思い出の境目
財産の相続や管理について説明しましたが、金銭的な価値だけでは測れない遺品についても、当事者が事前に整理しておくことが終活の大事なルールとなっています。遺品の整理は、自分の普段の生活や趣味嗜好(しこう)に関するものまで、あらゆる分野に及ぶため、整理作業には多大な労力を要します。そのため、手元にあるものを用途に応じて分類し、効率よく進めることが必須となってきます。
本書では、遺品の分類を、
① 死後の手続きで必要なもの
② 思い出として残したいもの
③ 不用品・リサイクル品
という3種類に分けて考えます。
①はさきほど紹介した財産関連のものがメインとなるため割愛しますが、遺言書やエンディングノートも遺品に含まれることを念頭に置いておきましょう。
②は写真や衣類、コレクションなどプライベートな要素が強いものになります。親族で形見分けし、贈与税の対象となるような高価なものは先に売却するか、残すものの内容を事前に伝えておきましょう。
③は日常生活に関するものが多く、分類作業の中では最も労力を要します。不用品の買い取り業者やリサイクルショップなどと連絡を取り、換金や処分を進めます。
遺品の整理は長期間に及ぶ可能性もあるため、おおまかなスケジュールや日ごとのノルマを決め、体力的に無理のない状態で行いましょう。①の分類を最優先とし、親族への分配も随時進めながら不用品は回収日に都度処分というルーティーンが理想的です。
■終活作業②:スマホやPCの「デジタル遺品」
急速なデジタル化の進展により、日常生活から仕事のことまで、多くのものがデジタル化されています。スマートフォンやパソコンを1人1台持つ時代となり、デジタルデータで保管する場面も多くなっています。死後、スマートフォンやパソコン内に保管されているデータのことをデジタル遺品といいます。
デジタル遺品とひとくくりにいっても、種類はさまざまです。遺品としてとらえた場合に重要となるのが、ネット銀行やネット証券の口座と、FXや仮想通貨などの金融商品、電子マネーです。そのほか、書類や画像などのデータ、各種SNSやサービスのアカウント情報などがあります。
たとえばiPhoneの場合、ロック解除のパスコードを10回間違えると、データが初期化されてしまいます(※)。ロック解除を専門業者に頼むと、数十万円の費用がかかるうえ時間もかかります。
※スマートフォンの機種やアップデートなどにより設定は常に変わるため、注意が必要です。
![【図表2】整理しておきたいデジタルデータ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/9/1200wm/img_79a0250b7646ca182d536f840ecae083299736.jpg)
■IDやパスワードをエンディングノートに記す
こうしたデジタル遺品の多くは、IDやパスワードを入力しないとアクセスできないため、本人が亡くなると、残された人は困ります。法定相続人が手続きするにも、金融資産の全貌がわからないと、相続できないこともあります。また、有料のサービスで定額制や月額制などの場合、解約手続きをしないと死後もお金が引き落とされていきます。
こうした事態を避けるためにも、生前にデジタル遺品の種類と、それぞれのIDやパスワードを遺族がわかるように準備しておく必要があります。エンディングノートなどに書き留めて、利用していないサービスがあれば、生前に整理しておくようにしましょう。
デジタルデータの中には、誰にも見られたくないものもあるでしょう。見つかりにくい場所にフォルダを移動させたり、自動でデータを消去してくれるアプリを導入するなど、対策をとっておきましょう。
![【図表3】データの種類で保存場所を変える](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/1200wm/img_2dcdcff4034872d7e64c9ab0f375376a188411.jpg)
■終活作業③:家族の一員、ペットをどうするか
家族の一員であるペットも一緒に年を重ねていきます。ペットのほうが人間より寿命は短いとはいえ、自分の老後にきちんと世話ができるかどうか、また万が一ペットを残して自分が先に死んでしまうことに不安を持っている方も多いのではないでしょうか。
ペットは一人では生きていけません。ペットを飼うなら、ペットの人生にも責任を持たなければならず、自分に万が一のことがあったときのことを考えて、生前にペットのための準備をしておくことも大切なことです。
考えられる最善の方法は、自分の死後に信頼できる親族や友人などに引き取ってもらうことです。タダで引き取ってもらえればそれに越したことはありませんが、ペットの飼育料を渡しておけばより安心です。
そこで利用したいのが「ペット信託」というサービスです。これは、ペットを引き取ってもらう人(受託者)と生前に契約し、ペットの飼育料金を信託財産として預けるしくみです。そして、ペットの面倒をみられなくなったり、自分が亡くなったときに受託者に信託財産とペットを引き渡すことになります。
■「ペット信託」などで引き取り先を決めておく
ペット信託を提供しているのは信託銀行や行政書士法人などなので、受託者が契約を履行しているかを信託監督人が監督するしくみもあり安心できます。
ペットは相続財産ではありませんが、何の準備もせずに亡くなってしまうと、ペットの世話をする人が誰もいないという状況に陥る可能性もあります。自分の老後の生活を癒してくれた大切なペットのためにも、ペットの引き取り先は元気なうちに決めておきましょう。
![【図表4】ペット信託のしくみ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/9/1200wm/img_69b9842fee28994154b9da53da101a03178222.jpg)
■信頼できる人と「死後事務委任契約」
自分でできることはすべて自分でやるという責任感の強い人でも、死んだあとのことはさすがに自分ではできません。おふたりさまの場合も、最終的にはどちらかがおひとりさまとなります。死後のさまざまな事務を元気なうちに誰かに頼んでおくことが大切となります。
![曽根恵子監修『子のいない人の終活準備』(扶桑社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/2/1200wm/img_52c27adc8953cc44b6079d609c68d306141063.jpg)
そのために利用したいのが「死後事務委任契約」です。死後事務委任契約とは、死後の葬儀の手配や家の後片づけ、年金や健康保険の脱退手続きや医療費等の精算など、死後に発生する諸手続きや故人の身辺整理を、第三者に代行してもらう契約です。
誰に頼むかは自由です。親族でも友人でもかまいませんが、死後は契約相手の行動を監督することはできません。信頼できる人に頼みましょう。ただし、遺産の分配や銀行口座の解約など、死後の手続きには専門的な知識が必要なものもあるので、弁護士や司法書士などの専門家に頼むのがベターでしょう。専門家に頼む際には、十分に打ち合わせをし、委任できるかなど見極めて進めるようにしましょう。
![【図表5】死後事務委任契約の流れ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/0/1200wm/img_20858ac8a0ae0caab031cc9741b17272304740.jpg)
この契約は当事者の合意のみで成立し、契約書の取り交わしは必要条件ではありません。しかし、死後に何をしてもらいたいかを契約内容に逐一記し、代行してもらう対価も決めておかなければならないため、契約書を作成したうえで公正証書にしておくべきでしょう。
認知症になってしまうと契約を交わすことができなくなるので、必要な方は、元気なうちに検討しておきましょう。
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相続実務士
夢相続代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士。出版社勤務を経て、1987年に独立。これまで1万4600件以上の相続相談に対処してきた。著書に『いちばんわかりやすい 相続・贈与の本 '19~'20年版』(成美堂出版)など。
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(相続実務士 曽根 恵子)
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