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「筋トレのセット数」はまったく重要ではない…ハリウッドスターがやっている「魅せる上半身」の鍛え方

プレジデントオンライン / 2023年5月28日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/OlegUsmanov

いつまでも元気に動く体をつくるにはどうすればいいのか。フィットネストレーナーのサイモン・ウォーターソン氏は「重要なのは、筋力と持久力を向上させる上半身のトレーニングをすることだ。たとえばダニエル・クレイグは50歳で5度目のジェームズ・ボンドを演じるとき、適切なトレーニングによって過去最高の肉体を手に入れていた」という――。

※本稿は、サイモン・ウォーターソン『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■2人のジェームズ・ボンドと数多のボンドガールを鍛えた

ジェームズ・ボンドは私の仕事の大きな部分を占める。私は、『ワールド・イズ・ノット・イナフ』から『ノー・タイム・トゥ・ダイ』までの7作品で、20年以上にわたりジェームズ・ボンドのパーソナルトレーナーを務めている。

007のファンであり、ヘルス・アンド・フィットネスコーチとして、私は007の2作品のためにピアース・ブロスナンをトレーニングする栄誉にあずかった。そのあとは、ダニエル・クレイグが5作品で007を演じるのに必要な肉体づくりができるよう、一緒に仕事をしている。たくさんのボンドガールのトレーニングも含めて、こうした時間を過ごすことで、私もボンドファミリーの一員になれた気がする。

2005年10月、クレイグが新しいジェームズ・ボンドだと発表された数日後に、私は彼と初めて会った。そのときクレイグは片手にベーコンのサンドイッチ、片手に手巻きタバコを持っていた。彼は別の作品の撮影でワシントンD.C.にいたので、007シリーズのプロデューサー、バーバラ・ブロッコリから電話があったあと、私はそこに飛んだ。

ブロッコリは電話で、会ってほしい人がいると言った(もしバーバラから電話があったら出たほうがいい)。クレイグがサンドイッチと手巻きタバコを持っている姿に私はすっかり魅せられてしまった。「トレーナーの方ですか?」とクレイグが言い、私が「そうです。さあ、いまから始めましょう」と答えた。

■ジェームズ・ボンドになるとは、アスリートになることと同義

ジェームズ・ボンドに変身するには、作品ごとに約1年かかり、俳優にはほかの役には見られない要求が課される。ジェームズ・ボンドは映画界を代表するキャラクターであり、秘密情報部のエージェントを演じるのは、おそらくどんな俳優も引き受けたことがないほど、心身共にとても難しい。ジェームズ・ボンドになるとは、スクリーン上でもプライベートでもアスリートになることだ。

初めて会った日の夜、クレイグと私はステーキを食べに行き、ビールを飲んだ。彼は、ボンドがどのような外見で、どのように動くようにしたいかについて語り、「印象的で、堂々としている」というキーワードを使った。そのとき、私は計画を思いついた。夕食のあいだ私はメモを取り、クレイグのトレーニングメニューをつくるためにその場をあとにした。

初めて一緒に食事をしてから、クレイグがボンドになるために何をしようとしているのかがはっきりとわかった。まさにボンドのように容赦なく、彼は毎日毎日、文句も言わず、言いわけもせず、必ずやってきた。

■「銃を長年扱ってきた腕に見えるように」とクレイグは望んだ

クレイグは私の計画を信じ、自分の健康状態とスクリーン上に表現したい肉体の実現を私の手にゆだねてくれた。

私たちは初めから細心の注意を払った。クレイグの運動能力が1%でも上がりそうなことがあれば、それを行った。彼のこだわりは並外れていた。たとえば、銃を所持しているとき、その武器をずっと扱ってきた前腕に見えるように望んだ。特に制作準備段階の短期集中トレーニング中、最後の数週間は大きな試合の前のボクサーのように激しく鍛え、レベルを一段階上げた。

映画の公開後、何年かたっても、いまだに『カジノ・ロワイヤル』の印象的な浜辺のシーンについて話してくる人がいる。クレイグが真のアクションヒーローらしく海から現れる場面だ。ボンドがそれほど力強い存在感を見せることはそれまでなかった。

私にとっては、同作品内で、ボンドが座面を切りとられたイスに縛りつけられ、マッツ・ミケルセン演じるル・シッフルに先端を固く結んだロープを使った拷問を受けるシーンのほうがインパクトがあった。そのシーンを強烈で生々しく、真に迫ったシーンにするために私たちは準備をした。

そのような状況ですら、スクリーン上のクレイグにはどこか印象的な、さらにいえば衝撃的といってもいいところがあった。これこそまさに、クレイグがワシントンD.C.での夕食のときに話していたことだ。

アストンマーティン
写真=iStock.com/simonbradfield
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simonbradfield

■50歳のダニエル・クレイグの肉体を仕上げた最高のトレーニング

クレイグと私は1週間ずっと厳しいトレーニングに励んで、ようやく打ち上げをした。そのため、本稿に副題をつけるとしたら「血と汗とビールの結晶」になる。このおかげで、クレイグはスクリーンから飛び立ち、目的地に到達できたからだ。とはいえ、どうか怖気づかないでほしい。このあと詳しく述べるが、たとえあなたがソファに座ってばかりいるフィットネス初心者であっても、いますぐボンドのようにトレーニングすることができるのだから。

サイモン・ウォーターソン『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)
サイモン・ウォーターソン『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)

身体づくりを始めたばかりでも、ジェームズ・ボンドのようにトレーニングすることは可能だ。以下で紹介するトレーニングは、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に向けてダニエル・クレイグがコンディションを整えるための代表的なものだ。

私はこの上半身のトレーニング(胸筋、背筋、腹筋、上腕筋、腹斜筋を使う懸垂の動きを優先させた)を考案し、クレイグが撮影シーンに備えられるようにした。強度が高いため、撮影所で昼夜を問わず長時間続く、過酷な撮影スケジュールをくぐり抜けられる身体をつくりあげるのに役立った。

メインの撮影が始まるころには、50歳のクレイグの身体はこれまでにないほど仕上がっていた。そのコンディションを保つために、私たちは撮影中もこのトレーニングを続けた。

■その日の気分や都合でセット数も回数も調整していい

今度はあなたの番だ。この一連のトレーニングは最大限の結果を引き出し、筋力と持久力を飛躍的に向上させる。これは、上半身の重要な筋群に狙いを定めた動的トレーニングで、身体づくりに必要なすべての要素を備えている。このトレーニングはスーパーセット(ひと組の筋肉の運動を行ったあと、それに対立する別のひと組の筋肉の運動をするトレーニング)を採用している。

平均的なフィットネスレベルの人なら、この『ノー・タイム・トゥ・ダイ』のトレーニングをじゅうぶんこなせるだろう。重さや回数やセット数を変えるなど、調整してかまわない。私が考え出したほかのトレーニングの計画と同じように、その日、その時間の都合や気分に合わせて微調整してほしい。

クレイグと私はこの上半身のトレーニングを1週間に2回行った。これは全体の計画の一環だった。有酸素運動と動きを重視したメニューと、脚だけと有酸素運動のメニューも、同じく週に2回行った。あなたも自分の計画にほかの活動を組み込むといい。ヨガ、水泳、自転車、球技など、心拍数が上がって楽しければなんでもかまわない。クレイグはできるだけ屋外でやるのを好んだ。そうすると、いい気分転換になるし、健康にもいい。

■ダニエル・クレイグの上半身のトレーニング

5種類のスーパーセットはそれぞれエクササイズAとBで構成されている。友人とトレーニングをする場合、2人とも同じスーパーセットのうちのどちらか1つを行い、終わったらすぐに取り替えよう。クレイグと私はどのトレーニングも通常、15〜25回行ったが、始めたばかりの人は自分の能力に合わせて調整してほしい。また、私たちは各スーパーセットのあいだにストレッチと水分補給をするようにした。

スーパーセット1

A:引き上げる動作のケーブルフライ

さまざまな筋群を使うので、どんな胸筋のトレーニングを始めるときにもお勧めだ。腹筋と背筋など、安定筋群を多く使い、腕もよく動かす。このトレーニングにはケーブルマシーンが必要だが、ほとんどのジムに置いてあるだろう。

・ケーブルマシーンの真ん中に背中を向けて立つ。両手で1本ずつケーブルをつかみ、腕を外側に伸ばして、スプリットスクワットの姿勢(片脚をもう片脚の前に出す)になるよう2歩前に出る
・肘を軽く曲げて、ケーブルを額の前まで引っぱり上げる
・2秒ほど胸筋に力を入れてから、スタートポジションに戻す
【図表1】引き上げる動作のケーブルフライ
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

B:腹筋を鍛えるロールアウト

これも私のお気に入りだ。というのも、腹筋、腹斜筋、背筋など、体幹のほぼあらゆる要素を、等尺性収縮(アイソメトリック/筋肉に一定の負荷がかかっている状態)でも短縮性収縮(コンセントリック/姿勢を保ち、力を込め、力を抜く動作)でも使えるからだ。このトレーニングでは、アブローラーか両端にプレートを付けたバーベルを床に置いて使う。

・膝立ちになり、ローラーを身体の前に置いて両手で握る。安定させるために足首を交差する
・身体を前に出し、体幹を使う姿勢をとり、2秒キープしてからスタートポジションに戻る
・筋力が向上すると、身体を遠くまで伸ばせ、長い時間キープできるようになる。そのうちに、床とほぼ水平になるくらい身体を倒せるようになる
・さまざまな角度、体勢にすると、バリエーションが豊富になる
【図表2】腹筋を鍛えるロールアウト
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

■上半身の筋肉がついたか確認するには懸垂がいい

スーパーセット2

A:BOSUのバランストレーナーを使った、マウンテンクライマーと腕立て伏せ

これは身体のさまざまな要素を使えるので、私のトレーニングのメインの1つだ。腕立て伏せで筋力がつき、安定性を保つため体幹が鍛えられ、膝を前に出すのでダイナミックな動作もある。これらすべてによって、完璧なダイナミックエクササイズになり、身体の安定感が養える。

・バランストレーナーの両端をつかんで、腕立て伏せの姿勢をとる。足は肩幅の広さにする。体幹と臀筋(でんきん)を使い、身体を床と水平にする
・胸のほうまで膝を交互に出して、スタートポジションに戻る
・肘を曲げてバランストレーナーに胸がつくまで3秒数えながら身体を下げ、3秒かけてスタートポジションに戻る
【図表3】マウンテンクライマーと腕立て伏せ
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

B:懸垂

自重を使ったトレーニングはマスターするのが最も難しく、トレーナーが指導するのも一番大変だろう。しかし、こうしたトレーニングは上半身の筋肉がついたかどうかをはかる一番いい目安になる。

・順手で懸垂バーを握る。両手の間隔は肩幅より少し広めにとる
・足首を交差させ、踵が床と垂直の角度になるよう踵を上げる。こうすることで、身体がグラつくのを防ぎ、正しい筋肉を使える
・顎がバーの少し上にくるまで身体を持ち上げる。スタートポジションに戻る
・このトレーニングが難しい場合、懸垂バーの下にベンチかイスを置いてもいい。そうすると、跳び上がってからゆっくりと身体を下ろしていくトレーニングができる
【図表4】懸垂
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

■腹斜筋を鍛えて美しい見た目をつくる

スーパーセット3

A:ロシアンツイスト

回転とひねりを加えたトレーニングは、組み合わせとしてすばらしい。ロシアンツイストをすると、左右にかなり動くことになる。負荷を上げ、回転を大きくすると、腹筋の下部に効く。一度にたくさんの部位に効果がある。

・メディシンボール(身体を鍛えるために使用される、重量のある丸いボトル)、ケトルベル、ダンベル、プレートなど負荷のかかる器具を持って、マットの上に座る。膝は45度に曲げて前に出し、足首は交差させる
・足を床から15センチほど浮かせる。身体を左にひねり、器具が床につくまで下げてからスタートポジションに戻る
・身体を右にひねり、器具が床につくまで下げる
【図表5】ロシアンツイスト
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

B:腹斜筋に効くサイドベンド

腹筋の横についている腹斜筋は見すごされやすい筋群だが、ほかの部位と同じように鍛えたほうがいい。きちんと筋肉をつけると、脂肪が落ちたときに美しい見た目になる。

・ケトルベル、プレート、ダンベルなど負荷のかかる器具を選ぶ。足を肩幅に開き、腕を伸ばして片手で器具をつかむ。もう片方の手は後頭部に置く
・器具を持ったまま、体幹、腹筋、腹斜筋に効いているのがわかるくらい、器具が膝の下までくるよう身体を横に傾ける
・スタートポジションに戻る。身体ができてきたら、負荷を上げる。負荷のかかる器具のかわりにチューブなどを使うとバリエーションが増える
【図表6】腹斜筋に効くサイドベンド
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

■持ち運びできて活用シーンも多いストラップ

スーパーセット4

A:TRXを使ったロウアンドカール

TRXは持ち運びできて、さまざまなトレーニングができる優れものの器具だ。基本的にはドアや天井にひっかけて使うストラップで、両端に手足をかけるループがついている。私はTRXを基本姿勢で使うようにして、バックロウを1回やったあと、すぐに自重を使ったバイセップカールに移る。これにより、2つの筋群に強度と負荷がしっかり加わる。

・TRXの前に立ち、腕を伸ばして、親指が上を向くように握る。傾度と自重による負荷がちょうどいい場所まで上体をうしろに傾ける
・肘を引く、ローイングの動作を行う。肩甲骨を寄せるように、肘が身体の脇にくるまで腕を引いてから、スタートポジションに戻る
・バイセップカールで上腕二頭筋を鍛えるため、手の平が顔に向くよう手を回し、両腕を額まで上げる
・元の体勢に戻り、手も回して元に戻す
・筋力が向上すると、床に対してほぼ水平になるまで身体を傾けられるようになる
【図表7】TRXを使ったロウアンドカール
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

B:自重を使ったディップス

懸垂のように、このトレーニングも筋力をはかるいい目安になる。自重を使ったディップスを何回もできるのは最高の気分だ。

・肘を身体のうしろで固定し、ディップバーに跳びのる。足首は交差させ、膝を90度に曲げ、胸を張る
・前傾姿勢になって、肘の角度が90度になるまで身体を下ろす
・スタートポジションに戻る
・足のあいだにダンベルやプレートを挟むと、負荷を上げられる
【図表8】自重を使ったディップス
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

■複雑なアクションに挑む俳優御用達のトレーニング

スーパーセット5

A:ぶら下がった状態でのレッグレイズとハンギングワイパー

これまでに紹介した体幹トレーニングに変化をつけ、補完するものとしてこれは最適だ。ハンギングワイパーは、腹筋、腹斜筋、肋間筋(ろっかんきん)(肋骨のあいだにある筋肉)といった体幹のアイソメトリックトレーニングになり、そうした筋群のすみずみまで効く。

・順手で懸垂バーにぶら下がる。腕を伸ばして固定し、少しずつ足を床から上げる
・膝を胸の高さまで上げ、スタートポジションに戻す
・足は床に軽く触れるだけにして、トレーニングの強度を上げていく
・ハンギングワイパーでは、膝を胸の高さに上げたまま、左に45度回し、スタートポジションに戻す。今度は膝を右に45度回転させ、スタートポジションに戻す。自分の筋力に合わせて調整することができ、足のあいだにダンベルを挟んだり、脚をまっすぐ伸ばしたりすると負荷が上がる
【図表9】ぶら下がった状態でのレッグレイズとハンギングワイパー
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

B:バランストレーナーを使ったリバースケーブルフライ

バランストレーナーは、ケーブルトレーニングで負荷をかけながら、身体の安定性を向上させるのに役立つ。これをすると、かなり姿勢がよくなる。複雑な演出のスタントシーンの撮影に臨む俳優のためによく行うトレーニングだ。

・平らな面を上に向けてバランストレーナーの上に立ち、ケーブルマシーンのほうを向く
・ケーブルを真ん中の位置に設定し、右手を身体の前で交差させ、左側のケーブルをつかむ。左手は右側のケーブルをつかむ。腕が交差した状態になる
・膝をやわらかくしておき、視線は前方の壁に焦点を合わせる
・身体を安定させたまま、両腕をうしろに引き、力を入れ、肩甲骨を寄せる。十字架にはりつけにされたような態勢のまま4秒数えて、スタートポジションに戻る
【図表10】バランストレーナーを使ったリバースケーブルフライ
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

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サイモン・ウォーターソン フィットネストレーナー
16歳で英国海軍コマンドスに入隊し、7年間特殊部隊に所属した後、フィットネストレーナーとしてのキャリアをスタート。映画業界で最も需要の高いヘルス・アンド・フィットネスコーチとして25年以上活躍している。英国を拠点に、世界中を飛び回り、大役を演じる俳優の準備をするだけでなく、撮影現場に同行して撮影中の健康管理を行っている。

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(フィットネストレーナー サイモン・ウォーターソン)

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