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「住民税が安い場所に引っ越す」は大間違い…毎月5~6項目も天引きされる会社員が賢く節税するための基礎知識

プレジデントオンライン / 2023年5月25日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

所得税、厚生年金保険料、健康保険料……会社員の給与から5、6つの項目が天引きされている。元国税専門官の小林義崇さんは「給与明細をきちんと見ることが大事です。給与明細で引かれている所得税や住民税がどのようにして計算されているのかを知ることで、節税のしくみを理解できます」という――。

※本稿は、小林義崇『会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

■給料から引かれている所得税に注目

サラリーマンが節税に取り組むための第一歩が、給与明細をきちんと見ることです。給与明細で引かれている所得税や住民税がどのようにして計算されているのかを知ることで、節税のしくみを理解できます。

給与明細に目を向ける

給与明細に書かれている情報を大きく分けると、「支給額」「勤怠(きんたい)実績」「控除(天引き)」の3つです。このうち、節税と関係するのが控除です。

〈給料から差し引かれる控除の例〉

• 所得税
• 住民税
• 厚生年金保険料
• 健康保険料
• 介護保険料(40歳以降にかかる)
• 雇用保険料

これらの控除のうち、所得税は源泉徴収というルールにより差し引かれています。給料を支払う企業は、社員から所得税を天引きし、税務署に納めることが義務付けられています。

残る住民税、厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料については源泉徴収という言葉は使わないのですが、所得税と同様に勤務先が給与から天引きして、それぞれの納付先に納めるしくみになっています。

節税に取り組むときは、まず給与明細から差し引かれている税金や社会保険料にきちんと目を向けることが大切です。そこで「税金が高すぎる」と感じたら、「年末調整で漏もれなく申請しよう」「節税できる方法を考えよう」といった意欲が生まれます。

なお、給与明細に書かれている所得税は仮計算であり、年末調整によって最終的な税額が決まります。そこで、1年間の最終的な所得税を調べるために、勤務先から交付される源泉徴収票も確認しておきましょう。源泉徴収票は勤務先から1年に一度交付されるもので、1年間の給料や賞与の総額の他、年末調整を経た後の所得税額や、所得控除に関係する情報などが記載されています。

給与明細や源泉徴収票には節税につながるさまざまな情報が書かれています。最終的な手取り額しか見ないという方が少なくないと思いますが、一つひとつの控除にも目を向けることが、節税の知識を身につけるための最初の一歩になります。

■所得税が税金の基本

税金と一口に言っても、日本には約50もの種類があります。これらの税金のうち、最初に節税に取り組むべきは「所得税」です。

【図表】税金の種類
出所=財務省ホームページ /『会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて』より

所得税を簡単に説明すると、「個人の稼ぎに対する税金」ということになります。会社員であれ、自営業であれ、投資家であれ、何らかの形でお金を稼いでいる人には、必ず所得税の問題が出てきます。

退職して年金生活になったとしても、年金に対して所得税がかかりますから、生涯にわたって関わる所得税の節税に取り組むことが合理的です。

なお、今は所得税に「復興特別所得税」という税金が加算されています。復興特別所得税は、東日本大震災からの復興のために設けられた税金で、2037年までの間、所得税の2.1%に相当する金額が加算されるしくみになっています。たとえば、ある年の所得税が10万円なら、復興特別所得税として2100円税金が増えるという形です。

所得税の節税方法については、復興特別所得税にも影響することを頭に置いてください。

復興特別所得税については、防衛費にあてるために新たに所得税に1%の付加税を課す一方、復興特別所得税を1%引き下げる方向で現在議論が進められています。これにともない、現在2037年までとされている課税期間が延長される可能性があります。引き続き動向を注視しておきましょう。

■所得税を節税すると、住民税も減る

所得税と同様、住民税も私たちの生活と切っても切れない税金です。所得税の節税に取り組めば、住民税の節税にもつながります。

住民税はどうやって計算される?

所得税と同じく、「住民税」も個人の稼ぎに対する身近な税金です。所得税と住民税は、税金を納める先が国か地方自治体かという違いだけで、基本的なしくみは共通しています。

所得税がたくさんかかる人には、住民税もたくさんかかります。そして所得税を節税すれば、住民税も節税できます。

ただ、所得税と住民税には、いくつか押さえておきたい違いがあります。

まずは、「税率」です。所得税の場合、所得金額に応じて税率が変わる超過累進税率というしくみが採用されています。つまり、「たくさん稼いだ人のほうが、税率が高くなる」というしくみです。

【図表】所得税の税率
出所=国税庁ホームページ /『会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて』より

一方の住民税は、所得金額に10%を掛けた「所得割」と、年間5000円程度の固定金額の「均等割」から構成されています。

お住まいの場所によって、所得割と均等割の設定が若干(じゃっかん)変わることはありますが、税額が年間で何千円も変わるようなことは通常ありません。

時々、「住民税が安いところに引っ越したい」という方がいますが、引っ越しても住民税はほとんど変わりません。引っ越しを考えるなら、住民税よりも住み心地や行政サービスを優先したほうがいいでしょう。

所得税と住民税は連動しているので、所得税の節税が住民税にも反映されます。たとえば節税のために医療費控除を30万円申告したとしたら、30万円に所得税と住民税の税率を掛けた金額が節税できます。

■所得税と住民税の納税タイミングの違い

所得税と住民税の計算の流れはほぼ同じなのですが、納税のタイミングに差があることに注意が必要です。とくにサラリーマンの場合、所得税と住民税が天引きされるタイミングに大きなズレが出ます。

繰り返しになりますが、所得税は毎月の給料や賞与の金額に基づき、仮計算した税額が源泉徴収されます。そして、年末調整によって所得税の過不足を精算する形です。

一方、給与から天引きされる住民税については、仮計算ではなく確定した課税所得に応じて計算されます。そして、収入が発生した翌年6月以降の12カ月にわたって住民税の天引きが行われる形になります。

たとえば2022年分の給与所得にかかる税金を考えてみましょう。所得税については、2022年に支払われる給料や賞与から源泉徴収が行われます。そして、2022年分の所得にかかる住民税は、2023年6月から2024年5月に天引きされます。

このような所得税と住民税の納税時期の差は普段は気にならないと思いますが、就職したときと、退職したときには少し気をつけておいたほうがいいです。

就職した年は、所得税の源泉徴収は行われますが、住民税の天引きはありません。住民税が差し引かれるのは原則として就職した翌年の6月以降になりますから、1年目は住民税の天引きが行われないのです。そのため、場合によっては就職2年目の6月から手取り収入が少なくなるおそれがあります。

退職するときも、住民税の問題が出てきます。たとえば、2023年3月末に退職したとしましょう。この場合、2021年分の住民税の一部(2023年4~5月に天引きされるはずだった分)が未納状態なので、退職時に納める必要があります。

小林義崇『会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて』(PHPビジネス新書)
小林義崇『会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて』(PHPビジネス新書)

また、2022年分の住民税は、本来であれば2023年6月~2024年5月に天引きされるはずでしたが、退職をすると天引きできないので、自ら納めることになります。

転職や独立などで、一時的に収入が減ったとしても、前職の収入に対する住民税を支払う必要があるので、気をつける必要があります。退職後の生活費や独立資金として使うつもりだったお金が、住民税でなくなってしまうこともあり得るからです。

退職を考えるときは、住民税の支払いがどれくらい必要なのかを確認しておくと安心です。毎年6月頃に届く住民税の通知書を保管しておいて、退職した後にどれくらいの住民税を納めることになるのかを把握しておきましょう。

※本稿は2023年2月時点の情報をもとにしています。

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小林 義崇(こばやし・よしたか)
フリーライター
国税局の国税専門官、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所に勤務。2017年、金融関係のフリーライターに転身。著書に『すみません、金利ってなんですか?』(サンマーク出版)、『あんな経費まで! 領収書のズルい落とし方がわかる本』(宝島社)などがある。

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(フリーライター 小林 義崇)

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