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なぜ映画スターは「体調不良で撮影中止」にならないのか…彼らがやっている英国特殊部隊式のトレーニング

プレジデントオンライン / 2023年5月30日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/artisteer

ハリウッドのトップ俳優たちは、過酷な撮影を続けても、体調不良に陥ることはない。なぜなのか。フィットネストレーナーのサイモン・ウォーターソン氏は「私は多くのトップ俳優に筋力をつけコンディションを整えられるようなトレーニングを指導している。だからこそ、彼らは過酷な撮影をやり通せるのだ」という――。

※本稿は、サイモン・ウォーターソン『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■生活ルーティンに組み込みやすい場所でトレーニングする

『蜘蛛の巣を払う女』に出演するクレア・フォイは、トレーニングを外でやりたがった。自然のなかにいると幸福感が得られるからだが、実際のところ、本当の理由はそのほうが都合がよかったからだろう──玄関から歩いて出てくれば、すぐにトレーニングを始められる。

できるだけ単純明快な計画を立てることだ。車で45分かかるジムに行くような、継続するのが難しい、現実的ではないスケジュールを組まないように。そんなに遠いとすぐにうんざりしてしまい、さぼる言いわけを考え出すだろう。

何事も大事なのは便利なことだ。家の中でトレーニングできる方法か近所のジムを探したほうがずっといい。トレーニングが身近なものだと、毎日のルーティンの一部になり、やがてそうするのが自然になる。車に乗ってどこかに運動しに行く場合、あまり頻繁にならないようにする。

たとえば、お気に入りの先生のヨガ教室まで車で1時間くらいかかるなら、その機会は週末までとっておいたほうがいい。ジムに通うつもりなら、できれば移動も日常に組み込むようにして、車や電車やバスに乗らず、自転車に乗ったり走ったりして行こう。

■ジムへ行く予定をいちいち立てなくていいくらい生活に馴染ませる

私はニューヨーク滞在中に時差ぼけがあると、かなり早起きして、走ってブルックリン橋をわたり、マンハッタンで朝5時のエクササイズのクラスに参加してから、走ってホテルに戻ってくるのが好きだ。

大事なのは、自分にとってうまくいくもの、それから便利で効果的なものを見つけることだ。というのも、それを実践すると、すぐに生活がずっと楽になるからだ。フィットネスの予定を立てていると、毎日それで頭がいっぱいになってしまう。しかし、日常の一部として組み込むことが重要だ。予定について考える必要もなくなるほど、トレーニングが生活のなかに深く入り込むようにしたい。

また、トレーニングに何時間もかけなくてもいい。『タイタンの逆襲』に出るサム・ワーシントンのトレーニングをしているとき、私は彼に20分でいいと言った(彼が私に「腕だけでいい。見せるのは腕だけだから」と手短に説明したからだ)。2時間のトレーニングを予想していたサムにはうれしい驚きだったと思う。時間を短くして、強度を上げることで、計画はずっとやりやすくなる。

■トレーニングルームに恐竜のフィギュアを飾ったワケ

ベニチオ・デル・トロは効率が服を着て歩いているような人で、たいてい20〜30分しかトレーニングしなかった。だが、「今日は短めにしよう」と私に告げる朝があった。それでも何もやらないよりかはやったほうがいい。

私は作品を思わせるものをつくってジムに飾るのも好きだ。『ジュラシック・ワールド』だったら、恐竜のフィギュアをいくつか置いておき、『アラジン』なら、壁に魔法のランプの大きなステンシルシートを貼った。

恐竜のおもちゃ
写真=iStock.com/pepifoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pepifoto

そんなものは必要なさそうに思えるだろうが、そうしたものがあると、俳優は自分がそこにいて、懸命に取り組んでいる理由を絶えず思い出す。

あなたも同じようなことをしてみるといいだろう。出演する大作長編映画の準備ではないかもしれないが、印象に残る写真や前向きなメッセージなど、モチベーションが高まるものをトレーニングする場所に飾ることはできる。自分の目標をいつも心にとどめておくのだ。目標を見失ってはいけない。

■全力でトレーニングを楽しんだ『ジュラシック・ワールド』女優

『ジュラシック・ワールド』に向けてブライス・ダラス・ハワードのトレーニングをしたときのこと。ブライスの最大の目標は安定性とバランス感覚を向上させることだった。トレーニングを始めた当初、彼女には地面に片足で立つのがとても難しかった。

だが、『ジュラシック・ワールド』のためのトレーニング後、彼女は目をつぶっていても、バランストレーナーの上に支えなしで片足で立つことが楽々できるようになった。ブライスは興奮を隠せなかった。これこそ大きな成長の証だ。

トレーニングの最初でも最後でも、ブライスはいつでも笑顔で、笑いを絶やさなかった。いくつかのトレーニングがとても楽しいといつも私に伝えてくれた。その前向きな姿勢のおかげで、彼女はトレーニングから最大限の効果を引き出せたのだろう。

■撮影現場で体調を維持できないと演技に悪影響が出る

ブライスはハイヒールを履き、白いスーツを着て、何カ月も恐竜に追いかけられて走っているようだった。シナリオに入りこむには、まずコンディションを整え、準備しなくてはならない。

サイモン・ウォーターソン『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)
サイモン・ウォーターソン『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)

『ジュラシック・ワールド』のようなアクション映画の撮影では、1日かけても1分くらいしか使える尺がないという。俳優は1日12〜14時間も撮影に臨み、ジャングルのなかを走り抜けたり、トラックに飛び乗ったり飛び降りたり、車の下に飛びこんだり、Tレックスを撃退してまわったりする。それだけやっても、日によっては、撮れ高が60秒もないこともある。

『ジュラシック・ワールド』の制作準備段階と撮影期間中、ブライスはかなりの運動能力を求められた。恐ろしく長く、過酷な撮影が半年近く続き、彼女は来る日も来る日も午前6時から午後6時までは撮影現場にいたようだ。

こうしたスケジュールでは、体調管理の方法を知っておかなくてはならない。そうしないと、とてもやり通せない。私の主な目標は、俳優たちが負うかもしれない痛みやケガを最小限に抑え、体調不良にならないようにすることだ。スケジュールには体調を崩しているような余裕はない。

映画の撮影中は健康であるほど、撮影が楽しくなる。こうした大作の撮影時に一番避けたいことは毎日毎日、疲労困憊(こんぱい)することだ。というのも、自分にはできると感じなくなると、途端に自信がなくなってくるからだ。自信がない状態で現場に現れると、それがスクリーンにも映りかねない。

■重視したのは足に重点を置いたトレーニング

ブライスの制作準備中の計画では、かなりの時間、私はイギリスに、彼女はアメリカにいたので、オンラインでトレーニングを行った。私は彼女のジムに行ったことがあり、その場所も使える器具もよく知っていたので、このやり方はうまくいった。ブライスがスマートフォンを台にセットしたので、私は彼女のトレーニングをしっかり確認できた。見本を示すときには、私も同じようにセッティングした。

オンラインでも、彼女は熱心に取り組み、まるで実際に私がジムでそばにいるかのようなやる気を見せた。トレーナーとしては、相手がこれほど熱心だと、全体のプロセスがずっと楽になる。

今回は、ブライスが筋力をつけコンディションを整えられるよう私が考案した、足に重点を置くトレーニングを紹介する。これは、上半身の筋力をつけるトレーニング、動的ヨガの動き、いくつかのピラティスを含む総合的な身体づくりの一部だ。

■見た目のためではなく、コンディションを整えるために鍛える

人はいつも見た目について話すが、ブライスとのトレーニングではそれについてまったく考えなかった。私たちの目標ではなかったからだ。私は、ブライスが本作で演技をできるようにしたかっただけで、彼女の脚の見た目がどのように変わろうと、それは彼女が筋肉をつけコンディションを整えた副産物でしかなかった。私は撮影前の約半年間ずっとブライスのトレーニングを受けもった。そして、彼女はスタントルームや現場で求められることをすべてできるようになった。

『ジュラシック・ワールド』のためのアクティベーションは動物のようにするのがぴったりだと思った。ブライスは、ベアクロール、サイドクラブウォーク、コブラやダウンドッグといったヨガの動きを行った。ブライスのアクティベーションは、身体がなめらかに動くようにと、動的なものにした。メニューとして、ローイング、ランニング、エアロバイク、プライオメトリクスを行った。

■ブライス・ダラス・ハワードの5-2トレーニング

チューブを2本使ったトレーニング

このトレーニングから始めたのはほかのものより少し簡単だからだ。そのため、ブライスがこれを行っている最中に雑談ができ、その日の彼女の気分を推し量るのに役立った。チューブを使うと、筋群に対して一定の負荷を均一にかけることができるので、私は気に入っている。

・1本のチューブは足首あたりに、もう1本のチューブは膝の少し上につける
・膝を少しやわらかくするか曲げるかして、まずは横方向に動く。どちらかに10歩進み、10歩戻る
・そのままボックスステップをする。足を肩幅に開いたまま、まず左足を前に出し、次に右足を前に出す
・腰を落としスクワットの姿勢をとる。膝はやわらかくするか軽く曲げておく。片足を30センチくらい横に出して、軽くスクワットをし、最初の姿勢に戻る。一方向に10回やったら、反対方向も10回行う
【図表1】チューブを2本使ったトレーニング
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より
バランストレーナーを使ったゴブレットスクワット

Tレックスから走って逃げるあいだ、ブライスがハイヒールを履いているとしたら、かなりの安定性が必要となるが、彼女はそれをこのトレーニングで身につけた。

・平らな面を上にしたバランストレーナーの上に乗り、足を肩幅に開いて、ケトルベルやダンベルを胸の前で持つ
・通常のスクワットを行う。膝が90度になるまでしゃがむ
・関連する筋群すべてに力を入れる
・膝をやわらかくしたままスタートポジションに戻る
【図表2】バランストレーナーを使ったゴブレットスクワット
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

■あえて不安定な面を使って効果を高める

バランストレーナーを使ったスプリンターランジ

このトレーニングでは、バランストレーナーを平らな面を上にして使い、不安定な状態にする。これは従来の床で行うトレーニングよりもかなり進化している。

・平らな面を上に向けたバランストレーナーの真ん中に片足を乗せる。もう片方の足は、両足が平行になるようにして、後方に下げる。両手の指をバランストレーナーの端に置き、クラウチングスタートのような姿勢をとる
・うしろの脚を勢いよく前に出して立ちあがり、膝を持ち上げる。すると、片足で立つことになる
・スタートポジションに戻る。そのとき、足は真うしろにあり、指はバランストレーナーに触れた状態になる
・足を入れかえ、同じことを行う
【図表3】バランストレーナーを使ったスプリンターランジ
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より
バランストレーナーを使ったステップオーバー

バランストレーナーのやわらかい面を上にして使うこのトレーニングは、横方向の動きと弾みをつけた動きに最適だ。心拍数も上がるため、有酸素運動の効果もある。身体を左右に動かせるので、さまざまな動きをするのにも適している。

・バランストレーナーのやわらかい面を上にして置く。その横に立ち、片足を真ん中に乗せる
・バランストレーナーの反対側に跳び越えて、置いていた足を入れかえる
・反対側に足が着地したと同時に、軽くスクワットをする
・また最初にいたほうに跳ぶ
・手を身体の前で握り、しっかりと胸を張り、この動作をリズミカルに行う
【図表4】バランストレーナーを使ったステップオーバー
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

■映画の撮影でもそのまま役に立つ軍隊式トレーニング

バーピージャンプ

私はこのトレーニングには軍隊にいたころから馴染みがあり、これがどれほどきつくなるかは身に染みている。かなりダイナミックなトレーニングなのだ。すぐに地面から起き上がって立つ動作を求められることは、映画の撮影ではたくさんあるのでとても役立つ。

最後に、ブライスには頭上で手を叩き、何かおもしろいことを叫ぶよう頼んだ。手を叩いて叫ぶのは、トレーニングにユーモアの要素を加えるために採用した。おまけに、私も回数を数えるのが簡単になった。

・足を肩幅に開き、手の平が床につくまでしゃがむ
・両脚を同時に後方にさっと伸ばす
・すぐに両脚を戻して、膝を胸に近づけ、立ちあがってジャンプする
・頭上で手を叩く
・スクワットの姿勢に戻る
【図表5】バーピージャンプ
『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)より

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サイモン・ウォーターソン フィットネストレーナー
16歳で英国海軍コマンドスに入隊し、7年間特殊部隊に所属した後、フィットネストレーナーとしてのキャリアをスタート。映画業界で最も需要の高いヘルス・アンド・フィットネスコーチとして25年以上活躍している。英国を拠点に、世界中を飛び回り、大役を演じる俳優の準備をするだけでなく、撮影現場に同行して撮影中の健康管理を行っている。

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(フィットネストレーナー サイモン・ウォーターソン)

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