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帰宅が遅い子供に「何時だと思ってるんだ」は三流、「黙る」は二流、では一流の伝え方とは?

プレジデントオンライン / 2023年5月25日 19時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ImagineGolf

親が子に心配していることを伝えるとき、どう声かけすればいいか。人材育成コンサルタントの嶋津良智さんは「娘の帰りが遅いときに『今何時だと思ってるんだ』と怒鳴りつけるのは三流の対応だ。その怒りの感情はわが娘を思う気持ちから来ている。『大切だ』『不安だ』という第一感情をそのまま伝えるといい」という――。

※本稿は、嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版)の一部を再編集したものです。

■「その怒りがどこから来ている感情か」を考える

・感情の把握
三流は、第二感情で話し、
二流は、黙り、
一流は、何を伝える?

高校生のお嬢さんとの折り合いが悪いという男性が、セミナーにいらしたことがあります。

彼の話をよく聞いてみると、お嬢さんの帰りが遅いと、つい、

「お前、今何時だと思ってるんだ!!」

と、怒鳴りつけてしまうんだそうです。

「その怒りは第二感情ですよね。その怒りは、どこから来ている感情ですか?」

と私が聞くと、

「大切な娘だからこそ、帰りが遅くて何かあったんじゃないかという心配からきているんじゃないでしょうか」

との答え。それなら、「大切だ」「不安だ」という第一感情で話したらどうでしょうか、とお話ししました。

数日後、いつものように娘の帰りが遅くてイライラしていたお父さん。やっと帰ってきた時に怒りそうになりましたが、私との会話を思い出して

「何かあったのかと心配したぞ。何もなくてよかった。遅くなる時は一本連絡してくれると安心するから、連絡してくれるかな」

と、心配する気持ちを素直に伝えました。いつもは「娘の帰宅が遅くて、父が怒鳴る」の繰り返し。それが突然、そう言われてお嬢さんはとても驚いたようでした。

お父さん自身は、自分の素直な感情を伝えられて、気持ちよかったそうです。いつもはふてくされて自分の部屋へ行くお嬢さんも、その時はさすがにバツの悪そうな顔をしていたそうです。

■「正直残念」と素直に伝えられるか

怒りの感情は、多くの場合、第二感情です。不安、ストレス、痛み、悲しみ、苦痛、絶望、悲観、期待、願望……といった第一感情が奥にあって、それが第二感情の怒りになって現れるんです。

「この怒りの第一感情は何か?」と考えると、怒りという第二感情を発散する三流のコミュニケーションでもなく、その場で感情を飲み込んで怒りも心配も伝えないという二流のコミュニケーションでもなく、まったく違う本当の感情に気づいて伝えられるはずです。

「今、玄関のドアを乱暴に閉めたよね。大きな音がしてびっくりしちゃったし、ご近所にも迷惑だよね。この前もドアは静かに閉めてねって言ったばかりなのに、また同じことをしたのは残念だな。次は気をつけてね」
「先週の打ち合わせでこの仕事は事前に各セクションの合意をとっておいてってお願いしたけど、その通りにしてくれなかったことが、正直残念。スムーズに進めば、部長からもあなたの調整能力が評価されると思ってお願いしたんだけど」

そんな、第一感情を素直に伝えられることが一流のコミュニケーションです。

一流は、第一感情を伝える
本音の感情を大切にして、伝える

■感情にも「タイムアウト」が必要

・アンガーマネージメント
三流は、感情を爆発させ、
二流は、感情を抑えこみ、
一流は、どうする?

人間には感情があります。喜怒哀楽の表現は、人間らしさともいえます。

ですから、感情を表現することは、悪いことではありません。

ですが、使い方を間違えてしまうと、人間関係を壊してしまったり、仕事を失ったり、お金を失ったりと、まるで事故のような不運な出来事を招いてしまうことがあります。

特に使い方の難しい感情が、怒りです。ちょっとイライラして言った、

「バカ! なんでそんなことするの!」
「何やってんだよ! それじゃダメだろ!」
「いっつもそうじゃん!」
「何度言わせるんだよ!」

なんて言葉が、大きな事故を引き起こしてしまうことがあります。

そこで、一流のコミュニケーションのためにおすすめするのが、熱くなってきそうだなと感じたら、回路を切り替えることです。

怒りを声に出してしまうと、その勢いで、感情は一気に爆発してしまいます。ですから、とにかく一旦、黙ってみましょう。心の中で10数えたり、怒りがうずまいているその場を離れるのも良い方法。

私は、ママ向けのセミナーで話す時、

「子供に怒りをぶつけそうになったら、何の理由がなくてもいいですから、一回、キッチンへ行くようにしてみてください。何の理由がなくてもいいですから、冷蔵庫を開けてみてください。

何の理由がなくてもいいですから、頭を冷蔵庫へ突っ込んでみてください。その後、子供のことに戻ってみてください。すると、『私は今から、怒ろうとしているんだな』と、自分の心と客観的に向き合えるようになります。

文字通り頭を冷やすわけです。これくらい意識してやってみるといいですよ」と話しています。

スポーツを観ていると、勝負の流れが相手に有利になってきたら、タイムアウトを取りますよね。「間」は、流れを変える上で、とても有効だからです。感情も同じです。

夫婦で大切な話し合いをしているときや、会社の会議で、白熱してきたら、

「熱くなってきているから、ちょっとコーヒーいれるよ。休憩しようよ」

なんて声をかけるのもいいですよね。タイムアウトを入れれば、感情の激しい流れを変えられます。

ジャングルの上のベッドで若い女性。自然との親密さ。
写真=iStock.com/galitskaya
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/galitskaya

感情はコントロールできないと思い込まずに、感情コントロールとはスキルなのだと知りましょう。そして、一度二度試してうまくいかなくても、諦めずに訓練していきましょう。

スポーツや楽器演奏で一流になるためには、トレーニングが必要ですよね。

コミュニケーションで一流になるためにも、トレーニングが必要です。うまくなるには、教わって終わりでなく、トレーニングをして、トライアンドエラーを繰り返しながら、自分のやり方になじませていかなければ、使えるようにはなりません。

どんなに素晴らしいコーチから指導を受けたとしても、話を聞いただけでは、すぐにうまくならないのは、コミュニケーションでも一緒なのです。

一流は、感情をコントロールする
イライラに「待った」をかける

■怒りよりも前に「何があったのか」を知ろうとすること

・相手の立場になる
三流は、感情の暴力を使い、
二流は、自分都合で話し、
一流は、どんなふうに話す?

感情は、使い方を間違えると暴力になってしまいます。

暴力とは、力によるものだけではありません。言葉によるものや怒りという感情をぶつけるものも暴力です。

自分がミスをしたとき、

「この前○○しろって言っただろ! できてないじゃないか!」

と頭ごなしに怒られたら、パワハラですよね。ストレスを感じるし、場合によっては恐怖を感じるかもしれません。

人間は感情を選んでいる生き物です。常に感情的に動いているように見える人でも、じつは相手によって感情を使い分けています。

例えば、部下に対してすぐに怒りを爆発させる上司が、社長に対しても同じように怒りをぶつけているでしょうか。そうした人は、社会ではあまり見かけませんよね。

「この人には怒っていいんだ」「この状況は怒っていいんだ」と自分に怒ることを許可した結果として、人は怒っているのです。

ですから、自分は怒りっぽい性格だと自覚している人でも、感情のコントロールは必ずできるようになります。

夫婦や恋人、親子きょうだい、親友など、関係性が近ければ近いほど、相手ならわかってくれるだろうという甘えがうまれることもあるでしょう。でも、「親しき仲にも礼儀あり」というのは、基本的な人間関係円満のコツではないでしょうか。

その時どんな理由で相手がそうした言動をしたのかをまず第一に考えて、

「今○○していたけど、何か理由があったの?」
「あなたが○○したのはなんで?」
「○○した理由を教えて」

と尋ねるのが、一流のコミュニケーションです。

理由がわかれば、

「そうなんだ、それじゃ次回から○○のところを気をつけてね」

嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版)
嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版)

で終わる話かもしれません。逆に、大きな問題が潜んでいたのだったら、再発防止を考えなければ、いずれもっと大きな困ったことが起きてしまうでしょう。

感情の暴力が繰り返されると、次第に相手とは、頭の中の共有ができなくなってしまいます。

「何かあった時は、話してくれるだろう」

と思っていても、一方的に叱り飛ばしたり自分の考えや思いを伝えてくる相手と、自分の言い分をちゃんと聴こうとしてくれる人とでは、どちらを信頼して、いざというときに相談をするでしょうか?

怒りよりも前に、「何があったのか?」を自分から進んで知ろうとしないのは、コミュニケーションの職務怠慢です。

一流は、相手の言い分を聴いてから話す
相手にも理由があると考える

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嶋津 良智(しまづ・よしのり)
人材育成コンサルタント
日本リーダーズ学会代表理事。リーダーズアカデミー学長。1965年、東京都生まれ。日本唯一の上司学コンサルタントとして、講演・企業研修・コンサルティングを行う。著書に『怒らない技術』(フォレスト新書)や『だから、部下がついてこない!』(日本実業出版社)、『』(明日香出版社)などがある。

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(人材育成コンサルタント 嶋津 良智)

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