部下のミスに「ダメじゃないか」は三流、「○○したよね」は二流、では相手を目覚めさせる一流のフレーズは
プレジデントオンライン / 2023年5月27日 9時15分
※本稿は、嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版)の一部を再編集したものです。
■ほめるのが苦手なら、事実を描写して「認める」
三流は、説教し、
二流は、無理してほめ、
一流は、どう向き合う?
日本人は、ほめるのが苦手・下手な人が多いといわれています。心の中では思っていても、口に出すのが恥ずかしいという気持ちがあるのかもしれません。
じつを言うと私は、ほめるのが苦手な人は、無理にほめなくてもいいと思っています。いつもほめない人が無理にほめるとお互いに居心地が悪くなりそうです。無理にほめるよりも簡単に、ポジティブな言葉をかけることは可能です。
それが、「認める」ということです。
「ほめる」ことと「認める」ことの違いとは何でしょうか。
例えば、子供がピアノの発表会に向けてずっと練習をしていました。発表会を見て
「すごいね! 上手だったね!」と言う。これが「ほめる」です。
「最後まで間違えずに弾けたね!」と言う。これが「認める」です。
例えば、今月のノルマ600万円を部下が達成しました。
「すごいね!」これがほめる。
「達成したね!」これが認める。
認めるというのは、事実の描写なんです。ですから、ほめるのが苦手な人も、無理なく言うことができます。言われたほうは、認められたことをうれしく感じます。
ほめるというのは、ほめた人の価値基準に達したという描写です。主観的なんです。だから、同じことで、ほめられるときもあれば、ほめられないこともあります。同じことをしてほめられないと、「ちゃんとやったのに、ほめてもらえない」という不満になります。
認めるというのは、事実の描写です。
■無意識の粗探しとバランスをとる必要性
例えば、「電話は3回鳴ったら取りなさい」と指示して、その通りにできたら、「3回で取ったね」と言う。これは事実を認めているので、どんなときでもぶれません。そして「見ていてもらえた」という喜びになります。だから、事実を伝えるのは、重要なのです。
「ほめて伸ばす」なんて言葉があります。その一方で、本当に、ほめているだけの教育で伸びるのか、という反論もあります。
私も、ほめることも叱ることも両方大切だと思っています。
でも、あえて「ほめて伸ばす」というのは、人間は相手の欠点やダメなところをみつける天才で、バランスをとるためには、意識してほめることが必要だと思うからです。
人は、探そうと思わなくても、人の粗探しをしてしまうものです。特に、上司・部下、親子、年上・年下などの上下関係があると、そういう傾向が強くなります。
だから、ほめることや認めることを意識していないと、欠点やダメなところを無意識に見つけてしまい、ダメ出ししてばかりになってしまいます。
そこで、とにかくほめて伸ばすつもりで、意識してほめて、認めて、それで初めて叱ることとほめることのバランスがとれるものなんです。
無理にほめようとせず、認める
■自分で過ちに気づくように誘導できるか
三流は、叱って直させ、
二流は、ミスを指摘し、
一流は、どうダメ出しする?
叱る場合やダメ出しする場合は、「これまでの努力が台無しになるよ」という伝え方をします。まず努力やいいところを認めてから、自分で過ちに気づくように誘導するのです。
すると、「非難された」というネガティブな気持ちにとらわれずに、素直に過ちを受け入れて、修正することができます。
人間は感情の動物です。だから、同じことを言うにも、言い方を一つ間違えるだけで、感情はこじれてしまうのです。
三流の話し方だと、部下がミスをした時には
「君がチェックしないとダメじゃないか」
という言い方をしてしまうかもしれません。これだと、ネガティブな言葉だけなので、注意をされた部下は、自分を否定された気持ちになってしまいます。
また、
「今、○○をしたよね、これって○○の理由でよくないよね」
「この間、○○という話をしたばかりなのに、同じことをしたのは残念だな」
と、過ちの理由やあなたの感情を伝えるだけでは、まだ二流の話し方です。
一流を目指すのであれば、
「最近、君はがんばって仕事しているね。だからといって、ミスがあってはよくない。きちんとチェックしないと、今までの君のがんばりが台無しになるぞ」
とまず努力を認めた上で、その努力を無にしないために何をすればよいのかを伝えます。そうすれば、部下は自分のチェックが足りなかったから、ミスが発生したのだなと気づくことができます。
残念だというのは、期待をしていた、相手を認めていたということです。理由とともに相手を認めているというポジティブな事実を加えることで、受け取り方は変わります。
■事実、影響、感情、尊重の4ステップで伝える
事実、影響、感情、相手の尊重という4つのステップを踏んで伝えるようにしてもよいでしょう。例えば子供がレストランで水をこぼしてしまったとします。
「気をつけてって何度も言ったのに!」
「この前もやったじゃない!」
といきなり怒鳴らずに、このように話してみましょう。
事実:「今、君は水をこぼしたよね」(どの行動に問題があったのか具体的事実で)
影響:「床が濡れてしまって、滑って危ないし、そうじをするのも大変でしょう」(どんな影響があるのか具体的に)
感情:「さっきパパが、水を左側に置いたらって言ったのに、しなかったからこぼしちゃった。それがとても残念だよ。」(あなたにどんな感情が芽生えたのかを率直に)
尊重:「こうなったことに対して、君はどう思う?」(相手への尊重を示す)
どんなに小さな子供にも、人格も意思もあります。相手を尊重して、自分で過ちに気づけるように誘導するのは、年長者や経験豊かな者の務めだと私は思います。
「残念だ」という感情と一緒に相手が気づけるように話す
■叱るときは「したこと」が悪いと伝える
三流は、「感情」で攻撃し、
二流は、「人」を否定し、
一流は、「何」で伝える?
一流は、「人」と「こと」を分けて、「こと」に焦点を当てて伝えます。
叱るときに大切なのは、「あなた」が悪いのではなく、「あなたのしたこと」が悪いと伝えることです。
叱り下手な人は、「人」にダメ出しをします。もっと下手な人は、「感情」で相手を非難してしまいます。
これでは、自分を否定されたような気持ちになってしまいます。
私にも経験があります。チームの一員がミスをした時、
「あなたが悪いのではない、あなたのやったことが悪いんだ。たまたまそのときあなたが担当していたから、あなたがミスしてしまった。でも、他の人が担当している時に起きたことだったかもしれない」
というような伝え方をします。そして、「誰」がではなく、「何」が悪かったから、ミスが発生してしまったのかを考えてもらいます。
部下のスタッフがミスした時、何が悪かったのかを考えてもらったところ、仕組みがよくなかったのではないか、という答えが返ってきたことがありました。
「それなら、いいチャンスなので再発防止策を考えて提案してほしい」
とスタッフに伝えたところ、同じミスは起こらないようになりました。
叱るのは、同じ過ちを繰り返させないためです。そして、過ちの原因は、仕組みが悪いなど、まったく本人のせいではないことも多いのです。それなのにミスをした本人の人格を否定しては、「やってられないよ!」という気持ちになってしまうでしょう。
■相手の現状を聴き、自分ができる限りの補足を加える
叱らなければいけないときには、決して相手の人格や人間性を否定しない。そのためには、起きてしまった「こと」に目を向けて話す。上手に叱るための大切なポイントの一つです。
今、Z世代の若い人たちにアンケートをとると、「悪い時には叱ってほしい」という回答がすごく多いのです。パワハラになることを恐れて叱ろうとしない年長者が多いからかもしれません。
パワハラになるのは、怒りという感情の暴力を使うからです。自分軸の怒りで何かを伝えようとするときです。怒るのは自己満足なのです。
一方、叱るのは相手軸での教育です。自分の怒りの感情は排除しなければいけません。
「今の自己評価を聴かせてくれる?」「今月、目標達成できなかったよね、何が足りないんだろう? どうしたらいいと思う?」
まず、相手の現状を聴く。そして事実を指摘して、本人がどうしたら予算を達成できると考えているのかを引き出します。それに対して、自分ができる限りの補足を加えていきます。
「今、あなたが言ったやり方でもうまくいくかもしれないけれど、ここのところで、こういうチャレンジをすると、もっとよくなると思う」
これが、一流の叱り方なのです。
「誰が」ではなく「何が」で叱る
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人材育成コンサルタント
日本リーダーズ学会代表理事。リーダーズアカデミー学長。1965年、東京都生まれ。日本唯一の上司学コンサルタントとして、講演・企業研修・コンサルティングを行う。著書に『怒らない技術』(フォレスト新書)や『だから、部下がついてこない!』(日本実業出版社)、『』(明日香出版社)などがある。
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(人材育成コンサルタント 嶋津 良智)
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