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「お電話をください」ではダメ…アメリカの研究者が証明「顧客の無断キャンセルを激減させた驚きの伝え方」

プレジデントオンライン / 2023年5月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AntonioGuillem

人を動かすには、どんな伝え方をすればいいか。人材育成コンサルタントの嶋津良智さんは「アメリカの研究者の実験によると、『キャンセルされるときはお電話をください』から『お電話をいただけますか?』と相手が『はい』と答える伝え方に変えたところ、キャンセルが激減したという。人は自分の意思と行動の間に一貫性をもたせようとする」という――。

※本稿は、嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版)の一部を再編集したものです。

■感情に働きかけるには、たとえ話や比喩が有効

・比喩
三流は、説明せず、
二流は、説明し、
一流は、何を使って考えさせる?

「例えば……」

すでにあなたも感じていらっしゃる通り、これは、私の口癖です。たとえ話は、コミュニケーションにとても役立つ方法なので、たとえ話をふんだんに盛り込みながら話しているうちに、口癖になってしまいました。

話し手としても、「例えば……」と言ってしまうことによって、頭をフル回転させてわかりやすいたとえ話を頭の中へ探しに行きます。

もっとも私の場合、ちょうどよいうまいたとえ話が見つからなかったときには、「うまいたとえ話が見つかりませんが、要するに……」と言って、言いたいことをほかの表現に言い換えてごまかすこともあります。

人は感情で動いて、理論で正当化する生き物。そこで、人に動いてもらうには、感情に働きかけることが重要です。それには、相手に身近なたとえ話を通じて、話の内容を自分ごととしてとらえてもらう必要があるのです。だから、たとえ話や比喩が効果を発揮するのです。

「こういうことあるでしょう?」
「あなただって自分がやられていやなことを人にやられたらどう? それをあなたはしたんだよ」

と、相手が体験しそうな例を使って、自分のこととして受け止めてもらう。そうすることで、それが課題であること、どこが問題であるかが、明確になります。

■自分ごと化するために、感情を擬似体験させる

理論だけを語ってもそれだけだと、頭で理解するだけでひとごとだったり、遠いことのようにとらえてしまい、自分の感情にはなかなか引き寄せられないのが人というもの。

例えば、「トイレはきれいに使いましょう」というのは、理論なんです。それよりも、

「あなたがトイレに行って、汚れていたらどう思う? 自分だったら嫌ですよね」

と言うほうが、ずっと自分のこととして近づいてきますよね。

トイレットボウル、セラミック洗面器
写真=iStock.com/BongkarnThanyakij
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BongkarnThanyakij

じつは私自身、小さい時から母に

「自分がされていやなことはしないで、されてうれしいことをするのはどうかな?」

と言われて育ちました。

たとえを使うのは、感情を擬似体験させることで、自分ごとにすることなんです。

「例えば、~~~~」
「もし、~~~~」

という言葉を使って、比喩を通じて相手の感情に働きかけ、自分のこととして考えてもらうような話し方を、ぜひ、取り入れてみてください。

一流は、比喩を使う
身近なたとえ話を通じて自分ごととして考えさせる

■言葉が現実をつくるから、相手目線で伝える

・目線
三流は、やってほしいことを伝え、
二流は、自分都合で頼み、
一流は、どんな目線で話す?

相手に何かをやってほしいときには、どういうふうに伝えたら相手が受け取りやすいかを考えると、相手から必要な行動を引き出しやすくなります。

タクシーに乗ったときのことを思い出してください。「シートベルトをお締めください」というメッセージは、どんな言葉で語られていると思いますか?

正解があるわけではないのですが、次のようなメッセージが考えられます。

「後部座席にお座りのお客様もシートベルトをお締めください」
「万一の事故の際、当社は責任を負いかねますので、後部座席にお座りのお客様もシートベルトをお締めください」
「お客様の安全を守るために後部座席にお座りのお客様もシートベルトをお締めください」

ずいぶん、印象が違いますよね。

三流のコミュニケーションでは、やってほしいことだけを伝えます。二流なら、お客様が納得できるように理由を付け加えますが、自分都合の視点からの理由です。一流のコミュニケーションならば、その理由は相手目線に立ったうえで、してほしいことを伝えます。

なぜ相手目線で伝えるのか。それは、言葉が現実を作るからです。

自分都合だと、「自分がそうなっては困る理由」=「責任を負えない」などのネガティブワードで理由を語りがちですが、相手目線ならば「相手がそうなったらいいなと思う理由」=「お客様の安全を守る」などのポジティブワードで理由を語りやすくなるからです。

■一流の野球監督は「低めは打つな」と伝えない

人というのは、ほしい成果に対して必要な言葉を使う必要があります。

例えば、頭の中ではラーメンを食べたいと思っていても、「カツ丼をください」と言ったら、カツ丼が運ばれてきます。だから、ラーメンが食べたいならば、「ラーメンをください」と言わなければなりません。言葉で言ったことが実現するという、一番シンプルな例です。

逆にいえば、求める成果に対して、不必要な言葉をいかに使わないかが重要になるのです。なぜなら、本書の別の章でお伝えしている「言語的相対論」の通り、人は自分の発した言葉とイメージに支配されている生き物だからです。

つまり、野球で

「低めを打つな」(してほしくないことを伝えている)

と言うダメ監督か、

「高めを打っていけ」(してほしいことを伝えている)

と言うデキル監督かの違いです。

サイドラインから選手を指導するコーチ。
写真=iStock.com/BeauSnyder
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BeauSnyder

つまり、悪いイメージは思い浮かべるだけ、無駄なんです。ましてや、口に出して言う、言葉で聞いてしまうなんていうのは、不必要この上ないんです。それよりも、成し遂げたいことを話して、成功する確率を上げていくほうがよくないですか?

一流は、相手都合で話をする
相手目線で考えて話し、相手のメリットで動いてもらう

■「お電話をいただけますか?」で無断キャンセルが激減

・有言実行
三流は、説得し、
二流は、納得させ、
一流は、相手に何と言わせる?

あるデータによると、人から言われて仕方なくやった仕事の生産性を1とすると、人に言われたことだけど、納得してやった仕事は1.6倍の生産性があり、自分で考えて決めた仕事の生産性は、1.6の二乗、つまり2.56倍にもなるそうです。

その理由は、人は何事も合理化する傾向があり、つまり自分の意思と行動の間に一貫性をもたせようとするからなのだそうです。

この一貫性の原理を利用して、無断キャンセルを減らすために、キャンセルについての伝え方を変えてみるとどうなるでしょう?

「キャンセルされるときはお電話をください」

が元の伝え方だとしたら、

「キャンセル待ちのお客様がいらっしゃるので、キャンセルのお電話を必ずください」

は、納得してもらう伝え方。

「キャンセルされるときはお電話をいただけますか?」

は、相手がつい「はい」と答えてしまう伝え方です。

じつは、アメリカの研究者が、実際に実験しています。

「キャンセルされるときはお電話をください」

から、

「キャンセルされるときはお電話をいただけますか?」

に変えてみたところ、言い方を変えただけで、無断キャンセルが激減したというのです。

つまりは、「はい」と答えると、「請け負った」という無意識の約束が生まれ、約束をしたから守らなければいけないという一貫性の原理に基づく意識が生じます。それで、キャンセルをするときには電話をするという行動を引き出せたのです。

■疑問系を使うと、相手からの発言を引き出せる

そこで、この一貫性の原理を利用して、何かを依頼するときには、相手に決めて言ってもらうということが驚くほど効果を発揮するのです。

嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版)
嶋津良智『話し方の一流、二流、三流』(明日香出版)

例えば、作業の納期は、上司が決めるのではなく、作業をする本人に「いつまでにできますか?」と聞いて

「○月○日の○時にできます」

と言ってもらいます。すると、自分で言った納期なので、守らなければと一貫性の原理が働くのです。もっと納期を早めてほしいのであれば、

「申し訳ないんだけど、もしトラブルが起きても余裕をもって対応できるようにするため、もう少し早めてほしいんだけど、いつできる?」

と、いう言い方をしてみる。それだけで、納期を守ってくれる確率が上がります。疑問系を使うと、相手からの発言を引き出せる効果もありますね。

子供に対してもよく使う方法です。子供の場合には、選択肢を挙げて、そこから選ばせて、自分で決めさせるのです。子供といえども自分で決めたことなので、「約束をしたから守ろう」という意識が強く働きますよ。

一流は、相手に「はい」と言わせる
一貫性の「はい」を上手に活用する

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嶋津 良智(しまづ・よしのり)
人材育成コンサルタント
日本リーダーズ学会代表理事。リーダーズアカデミー学長。1965年、東京都生まれ。日本唯一の上司学コンサルタントとして、講演・企業研修・コンサルティングを行う。著書に『怒らない技術』(フォレスト新書)や『だから、部下がついてこない!』(日本実業出版社)、『』(明日香出版社)などがある。

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(人材育成コンサルタント 嶋津 良智)

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