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旧統一教会「分派」が府中に教会を建設か…「霊連世協会」からの勧誘・布教に戦々恐々の隣接・難関国立大

プレジデントオンライン / 2023年5月26日 11時15分

「霊連世協会」なる団体の教会建設現場の張り紙 - 筆者撮影

国が解散命令請求を出すかどうか注目が集まっている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)。かつて旧統一教会信者だったジャーナリストの多田文明さんは「旧統一教会の分派と見られる団体が東京・府中に教会を建設中(現在中断)であることがわかりました」という。新たな布教・勧誘の拠点となるのか、建設予定地周辺の住民や大学を取材すると――。

■旧統一教会の分派「霊連世協会」が教会を建設

東京都府中市に「霊連世協会」なる団体が教会を建設しています。現在は、コンクリートの基礎部分で工事が中断していますが、同協会は旧統一教会の分派とみられており、周辺住民の不安は大きくなっています。

そこで教会の近くにある、霊連世協会のホーム(泊まり込み施設)に出向き、信者と思われる女性に教会建設に関して聞くと次のような返答だった。

「住民が(教会建設に)反対している? 聞いたことがないですね」

本当に住民の反対を知らないのか。それとも素知らぬフリをしているのかはわかりませんが、住民らの不安がまったく信者には伝わっていないことがわかります。

「霊連世協会」は、旧統一教会の文鮮明教祖が2009年に「文教祖夫妻(真の父母)のもと、霊肉界(霊界と地上世界)を自由に交流して、通じ合いながら暮らすことのできる『霊連世協会』時代が宣布された」と話したことが由来になって、そのまま団体の名称になったようです。

府中労働組合総連合からの公開質問状の回答のなかで、霊連世協会の会長は、文鮮明教祖の教えの根本に戻ろうと教団の改革を訴えたが10年前に「旧統一教会から異端者として除名された」と答えています。そして当団体、信徒らは「旧統一教会とは一切関わりがない」としています。

しかしながら、前述の女性信者は筆者の直撃取材に対して「原理講論と文鮮明教祖のみ言葉に忠実に従って信仰をしていく」とも話しており、旧統一教会の教えをしっかりと継承している団体であることは間違いありません。

教会の建設においても、過去に旧統一教会で使われた「正体隠し」の手法がしっかりと受け継がれています。

住民らの話によると、2022年夏に建築が始まった当初、現場の看板には「霊連世協会」とあったそうですが、しばらくしてその上に「RSS教会」という紙かシールが貼られたそうです。

「霊連世協会」と記すと、旧統一教会の流れをくむ団体であることがわかる恐れのあることから、その名を隠し、「霊(R)連(R)世(S)協会」の頭文字をとったものと考えられます。この行為は、過去に旧統一教会が教団名(正体)を隠して人々に近づき、こっそり教義を教え込んで信者にしていき、霊感商法などの被害を多く生み出した「手口」に共通するものです。

前述したように教会の建設工事は現在中断しています。ストップしたのは、2022年7月、安倍晋三元首相の銃撃事件が起こった頃で、その後はコンクリートの基礎部分のみが放置された状態になっています。

取材を進めると、工事を始めた業者も、最初は「教会」としか聞かされておらず「一般の教会の建設だと思っていた」ということです。後に、ここが旧統一教会の流れを組む分派団体であることを知って、とても驚いたといいます。「もし知っていれば、工事はしないはず」との話もあり、工事が行われずにいる理由もここにあるようです。

今は工事をいったん取りやめている形ですが、今後、同協会が教団の分派であると正体を明かさずに別会社に依頼して、新たに建設を進めることも考えられます。実際、近くにある同協会のホームを集会所にしようしているとの情報もあり、住民の不安は高まっています。

■隣接する東京農工大「どうすることもできなかった」

今回、建設される予定の教会のすぐ横には、東京農工大学があります。大学側は教会建設に対してどのような対応をとっているのでしょうか。霊連世協会から「事前に建築に関する説明はあったのか」と確認すると、次のような回答がありました。

「(同協会から)工事のスケジュールについて説明がありました。(中略)ネットで調べて旧統一教会の流れをくむ、関連団体ではないかという認識はありました」

つまり、同協会からは、当初、大学側に自分たちの組織が霊感商法などの社会問題を引き起こした旧統一教会の教えをもとにした団体であることを告げていなかったということです。

大学関係者からも、府中市がすでに土地購入および、建築確認の許可を出していたため、「(旧統一教会系団体と知っても大学としては)どうすることもできなかったようだ」という声も聞こえています。では今後、教会が建設された際の対応はどうするのでしょうか。

【図表】東京農工大学府中キャンパス、小金井キャンパスアクセスマップ
地図=東京農工大学「大学案内 2024」より

「当該協会に限らず、本学敷地内での勧誘・布教活動については禁止をしており、キャンパス入口にその旨を記載した看板を設置しています。また、学生に対しては大学HPや学内Web掲示板において、カルト団体などによる勧誘に注意するよう、注意喚起を行っています」

どのような注意喚起か。例えば、キャンパス入口の「警告」の看板には「本学敷地内において、学外団体・学外者が勧誘・署名・物品販売等を行うことを禁止します。学生の皆さんは、サークル等を装った反社会的団体による勧誘活動に十分にご注意ください」とあります。

HPではさらにつっこんだ形での注意を行っています。

「大学生である皆さんは、キャンパス内や街なかで、ボランティアやサークル活動・研究会又はパーティなどの勧誘を受けることが多々あるかと思います。こういった勧誘の中には暴力的、反社会的、又はいわゆる『カルト』的団体によるものが多々あり、全国で学生が精神的・金銭的・身体的な被害を受ける事例が多々発生しています」

そして、声をかけられても「個人情報は絶対に教えない」「結構です」「関心がありません」などはっきりと断るように促しています。

画像=国立大学法人 東京農工大学オフィシャルサイト「カルト団体などによる勧誘にご注意ください」(在学生向けニュース)より
画像=国立大学法人 東京農工大学オフィシャルサイト「カルト団体などによる勧誘にご注意ください」(在学生向けニュース)より

また、勧誘手法として、「ゴミ拾いなどのボランティア活動」「SDGsなどのテーマによる勉強会や研究会ゴスペルや合唱などのコンサート」「生き方を考えるなどの自己啓発セミナー」といった偽りのテーマを具体的に挙げて、注意喚起をしていました。

ただし門の前に出されている看板に関していえば、駅頭や学外での勧誘も十分にありえますので、学生らを守るためにも、もう少し大きな表示にするのがベストであると考えます。

同大学は今回の筆者の取材に対しても、「学業・研究等に悪影響を及ぼす可能性があるなどの懸念があったことから、当該協会がカルト団体に該当するか否かは不明ですが、協会に対しては、本学敷地内での勧誘・布教活動や悪影響を及ぼす行為など等について行わないよう申し入れを行い」「学生に対して、今後、被害を受けた際には速やかに大学の窓口に相談するとともに、ためらわずに警察に相談するよう、注意喚起をしています」と警戒心を抱いているようです。

なお、カルト思想を持つような宗教団体の勧誘から被害を受けた場合、警察に直接に電話をかけたとしても、門前払いされる可能性があります。その時には、消費者ホットライン(188)や、法テラスに設置された、霊感商法等対応ダイヤル(0120-005931)への相談も必要ということも付け加えておきたいと思います。

■昨年、統一教会が多摩に購入した土地近くには国士舘大

旧統一教会は2022年4月、東京都多摩市に6300平米もの大規模な土地購入をしていたことが明らかになりましたが、霊連世協会の動きもそれに連動したもののように見えます。

府中市の同協会の教会建設現場にあった掲示板を確認すると、建築基準法による確認を受けた日は「令和4(2022)年5月24日」。多摩市に旧統一教会が土地を購入したとされる1カ月後です。多摩市に購入した土地の近くには、国士舘大学や高校がありましたが、今回の霊連世協会の教会建設予定地周辺も東京農工大だけでなく、明星中学校・高校があり、少し離れたところには都立府中高校もあります。ちなみに、教団のホーム前には公立の中学校もあり、たくさんの教育施設が立ち並ぶところです。

多田文明『信じる者は、ダマされる。 元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)
多田文明『信じる者は、ダマされる。 元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

筆者が心配しているのは、教会などの建物が建てられることでその周りに多くの信者らが移り住んでくると想定されること。「成人年齢」は2022年に18歳に引き下げられました。つまり18歳の高校生や大学1年生も大人として扱われます。社会経験の少ない人たちを狙って正体を隠した形で大規模な勧誘戦略を遂行するおそれもあります。近隣の学校同士でしっかり連携しながら、被害が広がらないように目を配っていく必要があります。

冒頭で直撃した女性信者から聞いた一言が、今も耳に残ります。

「私たちは(除名されただけで)分派とは思っていません」

要するに、旧統一教会本部と同協会はほぼ一心同体といっていいでしょう。国が旧統一教会に対して解散命令を出すかどうかに注目が集まっていますが、この分派の動向にも目を光らせていく必要があるのです。

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多田 文明(ただ・ふみあき)
ルポライター
1965年生まれ。北海道旭川生まれ、仙台市出身。日本大学法学部卒業。雑誌『ダ・カーポ』にて「誘われてフラフラ」の連載を担当。2週間に一度は勧誘されるという経験を生かしてキャッチセールス評論家になる。これまでに街頭からのキャッチセールス、アポイントメントセールスなどへの潜入は100カ所以上。キャッチセールスのみならず、詐欺・悪質商法、ネットを通じたサイドビジネスに精通する。著書に『サギ師が使う交渉に絶対負けない悪魔のロジック術』、『迷惑メール、返事をしたらこうなった。』、『マンガ ついていったらこうなった』(いずれもイースト・プレス)などがある。

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(ルポライター 多田 文明)

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