習近平はIQが低い「裸の皇帝」…中国の超金持ちとZ世代の若者が国外脱出を急ぐワケ
プレジデントオンライン / 2023年6月8日 15時15分
※本稿は、宮崎正弘『ステルス・ドラゴンの正体 習近平、世界制覇の野望』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
■直属の部下が「習近平は裸の皇帝である」
2022年10月の「フォーリン・アフェアーズ」に蔡霞(さいか)の論文「習近平の弱点 狂妄とパラノイアはいかに中国の未来を脅かすか」が掲載された。
これは各界に衝撃を運んだ。世界の指導者、外交官、国際政治学者、メディアの外報部などが必ず読む、権威ある雑誌に露骨な習近平批判が発表されたからだ。なにしろ蔡霞はかつて習近平直属の部下だった。その彼女が目撃し体験した事実をもとに習近平がいかにつまらない人物かを書いた。
「習近平は『裸の皇帝』である」(周囲の佞臣らは習が気に入る情報しか伝えない)。
「この指導者は虚栄心に満ち、頑固で独裁的だ」(知識人への極度のコンプレックスがあり、先端企業を虐め、ビジネスの英雄らを辱める性向が強い。このため中国は悪性のスパイラルに陥る)。
「中国共産党はマフィア組織」(反腐敗といって閣僚級400名近くと官吏63万人を更迭した。だが腐敗の権化と言われた賈慶林(かけいりん)だけは外されるという依怙贔屓が目立った。彼は厦門密輸事件の黒幕だった)。
■総書記就任に絶句、「彼はIQが低い」
蔡霞・元教授は人民解放軍の幹部の子女(紅二代)。体制内の政治理論学者として江沢民政権時代には「三つの代表」の情宣に協力した。習近平が校長だった党の高級幹部養成機関・中央党校の教授として習近平の直属の部下だった(2012年に定年退職)。
米国へ亡命しても中国共産党の迫害が絶えず、それでもこのままでは中国は没落する危険が高いとして筆を執った。習が総書記になったとき「えっ、あんなのが!」と絶句し、「彼はIQが低い」と呻いた。
■独裁ぶりは北朝鮮の金正恩とまったく同じ
なかでも習近平の独裁は「北朝鮮化」しており、頻度はげしく開く会議は習の独演会であり、誰の発言にも耳を貸さず、王岐山がひとこと発言しただけで彼を遠ざけた。
この話を裏付けるのは、王岐山は習政権2期目からトップセブンを外されても、重要式典には「八番目はわたし」と金魚の糞のように必ずついてきた光景を何回も見たからだ。
中国共産党政治局会議や幹部会では、全員がメモをとるだけだと女史は指摘した。北朝鮮の独裁者の金正恩と同じではないか。
同じ風景を筆者はトルクメニスタンで見たことがある。現地のテレビ放送でやっていた閣議は、参加者が必死の形相でメモをとりつつ、なるべく独裁者とは目を合わせないようにしている珍奇な場面(それを放送する神経もどうかしているが)に出くわしてぞっとしたことがある。
■資本主義原理からは考えられない金融システム
中国の国有銀行の融資枠は63兆円。日本の予算(2023年度)の55%!
この通貨供給の異様さこそ、ステルス・ドラゴン(潜龍=中国共産党中枢)が世界制覇という野望実現の前に障害となる経済のアキレス腱だ。
![白い背景にある中国の100元の多く](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/4/1200wm/img_047f748cebecedd7fe9587a94b55e53e762903.jpg)
国有銀行は共産党の命令とあれば、将来の破産、焦げ付き予測なぞ不問として融資する。西側の資本主義原理からは考えられない金融システムである。だからジャック・マーは「中国にはシステムがない」とつい本当のことを喋ったら習近平の怒りを買った。会計監査があまりにも出鱈目なのでアーンスト&ヤングなど米国四大監査法人は中国から退出する。
中国では銀行融資には賄賂が必要なのが常識。中国工商銀行は碧桂園と万科集団など12社に6550億円(邦貨13兆円。以下同じ)を融資する。ちょうど孫正義が抱える有利子債務の合計額に匹敵する天文学的な数字である。以下邦貨換算で中国銀行が万科など10社に12兆円、浦東発展銀行は碧桂園、緑城中国など16社に8兆8000億円、中国郵貯(郵儲)が5兆6000億円。これだけでも日本の防衛費予算より多い。
中国建設銀行と中国農業銀行は融資枠を発表していない。合計融資枠は63兆円からさらに上積みされる。また融資対象に問題の恒大集団が含まれていないのも妙である。
■ついに崩壊した中国不動産バブル
中国の不動産価格の値崩れは激甚で、2022年11月期速報で、2020年同月比の半分。つまりマンション価格は半値となっている。バブル崩壊でかつて日本経済はペシャンコになった。中国はこの再来を防ぐためにデベロッパー大手に資金をぶち込み、人為的に救済し、緊急融資でその場しのぎの生命維持装置をつけるわけである。
この巨額資金をどうやって捻出するのか?
打ち出の小槌は裏付けもなく輪転機を回すことだが、近年の中国の資金調達方法は債権起債である。つまり借金を新たに投資家からかき集め、前の借金を返済する。なんだかネズミ講に似ている。悪性スパイラルで債務は雪だるま式に累積されていく。
2022年12月12日に中国財政部は「追加」の特別国債を12兆円発行した。この追加分だけでも日本の防衛費の2倍だ!
2022年度中に中国が起債した「インフラ債」の発行額は78兆円で、2019年比で2倍強。主に地方政府のインフラ整備が目的だが、金利が3.7%平均だ(ちなみに2022年度の中国GDP成長率は2.7%に下方修正された。金利のほうが1%高い)。将来の返済はケセラセラになるのか、当面は利払いに追われるから、こうした借金体質はもはやパキスタン、スリランカ、ウクライナと同列になった。
■中国人富裕層はどこへ逃げていくのか
イギリスに「ヘンリー&パートナーズ」という合法的にパスポートを売る企業がある。同社の発表によると2021年の世界一強力なパスポートは日本とシンガポール。日本は4年連続の1位である。2位はドイツと韓国。判定基準はビザなしで世界の幾つの国へ行けるかであり、日本は192カ国が対象となる。
だからといって中国人が日本のパスポートを取得することは、日本人配偶者を見つけるか長期滞在以外は無理だ。なぜなら日本は二重国籍を原則として認めないからである。
したがって、ヘンリー&パートナーズに依頼して中国人富裕層が取得するパスポートは豪や英国、米国のように人気があっても手続きが難しい国々と、当該国の不動産購入、あるいは一定金額を超える投資と付帯する雇用の保障などによって取得が比較的容易な国々とがある。
■抜け道はバヌアツ、超金持ちはシンガポールへ
抜け道がバヌアツ、アンティグア・バアブダ、セント・ルシア、モンテネグロ、グレナダ、マルタなどである。たとえばバヌアツは3000万円以上の不動産投資でパスポートが取得できる。現地で聞くと巧妙な手口があって、1500万円でも取得可能という。だからバヌアツの首都ポート・ビラの目抜き通りの商店街の80%以上が華人経営、中華レストランとホテルは中国人だらけだ。4年ほど前に私がジャーナリストの高山正之、福島香織らと滞在したときに見聞したことである。
こうした方法で外国籍を取得した中国人は2022年に1万800人。これらを含む対外投資による外貨流出は1500億ドルだった。
資産5000万ドル以上と推定される大金持ちが中国には3.2万人いる(クレディ・スイス、2022年8月調査)。加えてゼロコロナからフルコロナに政策変更の中国では2023年中に海外旅行外貨として2000億ドルが流れ出ると予測されている。表向き海外旅行は1人1年間で5万ドルに制限されているが、地下銀行の動きが活発になっている。
超金持ち中国人はシンガポールに住むのである。
![シンガポールのスカイラインの空中写真](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/5/1200wm/img_5526f2ff9018040cd5cf57ef8e7cc7d51261407.jpg)
■ゼロコロナ政策に絶望した中国のZ世代
他方、ロックダウンで2カ月以上も閉じ込められていた中国の若者たちには、メンタルの落ち込みが顕著となった。
若い兵士を含む中国人のZ世代(1990年代半~2000年代生まれ)の海外移住願望は強く、日本に移住した数は一説に78万人とも言われている。
これは深刻な問題である。
雨後の筍のように中国各地に大学ができた。日本も大学が多いが、中国の即席大学はキャンパス整地が遅れ、泥道で、バスはこない。いや、そもそも簡単につくりすぎたのでまともな教授がいない。図書館には蔵書がない。実験室には器具が揃っていない。キャンパスの芝生は泥濘のまま。
雇用側にとって人気があるのは理工系である。文化系、とくに思想とか哲学専攻の学生などは敬遠される。そうした中国企業が景気後退、不況の荒波で新規雇用のゆとりをなくした。新卒者が欲しい企業は不動産販売だが、訪ねてくる学生はいない。中国の2023年の大学新卒は1158万人で、予測される新規雇用は600万人。
■留学生はふにゃふにゃのお坊ちゃんばかり
それでは、就労にあぶれた学生は何をしているか。
家庭教師も予備校講師もインテリが嫌いな習近平の命令で禁止され、およそ1000万人の教育関連の失業者がでた。「ウーバー・イーツ」(出前)でも客の取り合いを演じている。肉体労働現場も不動産の不況でクレーンが止まっている。
![宮崎正弘『ステルス・ドラゴンの正体 習近平、世界制覇の野望』(ワニブックス)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/f/1200wm/img_6f7a8856503fee16fe08af35f60d5a3f468974.jpg)
そこで雇用されるより、もう少しモラトリアムがほしい学生は大学院に進学。あるいは海外留学となる。2022年度、大学院へ300万人の志願があった。
半世紀前、中国からの留学生には凄まじいハングリー精神があった。目が血走り、あらゆることに好奇心があり貪欲で、かつ真剣だった。
それがいまやふにゃふにゃのお坊ちゃん、ファッションにしか興味のないお嬢様たちと様変わりした。もし国防動員法が発令されても、この遊学生諸君らは日本国内でスパイ活動や破壊活動をまともにできるとは思えない。
そこで海外留学生、研修生や移民の動向を見張るために世界各地に秘密の中国の「駐在警官オフィス」が設置されたのだ。米国司法省は「中国の監視機関は世界102カ国にあり、中国企業、とりわけソフトウエア開発や通信企業、ビデオゲーム企業などが秘密監視機関と連携し監視行動をしている」と警告した。
巨大な矛盾の噴出である。もともと矛盾だらけの国だから驚くことでもないが……。
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評論家
1946年金沢生まれ。早稲田大学中退。「日本学生新聞」編集長、雑誌『浪曼』企画室長を経て、貿易会社を経営。1982年『もうひとつの資源戦争』(講談社)で論壇へ。国際政治、経済などをテーマに独自の取材で情報を解析する評論を展開。中国ウオッチャーとして知られ、全省にわたり取材活動を続けている。中国、台湾に関する著作は5冊が中国語に翻訳されている。代表作に『中国大分裂』(ネスコ)、『出身地でわかる中国人』(PHP新書)など著作は300冊近い。最新作は『誰も書けなかったディープ・ステートのシン・真実』(宝島社)、『ステルス・ドラゴンの正体 習近平、世界制覇の野望』(ワニブックス)。
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(評論家 宮崎 正弘)
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