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「48時間返事がなければ自動的にYESで」孫正義に学ぶダラダラ時間が消え去る"天才的なデフォルト設定法"

プレジデントオンライン / 2023年5月29日 19時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/winhorse

行動を変えたいとき、何をすればいいのか。心理学者の内藤誼人さんは「どんな心の初期設定をするかで、人の行動は大きく変わる。ソフトバンク創業者の孫正義さんは、たくさんの稟議書に対して、48時間以内に『イエス』『ノー』の意思表示をしなかったら、自動的に『イエス』となるシステムで仕事をしている」という――。

※本稿は、内藤誼人『「ダラダラ時間」をリセットする最新心理学BEST60』(春陽堂書店)の一部を再編集したものです。

■自分が悪いのではなく、会社のポリシーが悪い

ダラダラしてしまうのは、自分が悪いのではなく、会社が悪い、という可能性があります。

私は、あまり他人に責任をなすりつけることが好きではなく、自助努力でどんな現状をも切り開いていく姿勢を重視しているのですが、そうはいっても会社が悪い、ということも可能性として十分に考えられます。

特に関係しているのが、会社のポリシー。

会社の基本的な理念というか、ポリシーがあまりに抽象的なものですと、そこで働く従業員はいまいち気分が乗らなくなってしまうことが知られているのですよね。仕事をすることに意味が見いだせないと、モチベーションも上がらないのです。

アメリカ・ペンシルベニア大学のアンドリュー・カートン氏は、151の病院について、その病院が掲げているポリシー(ビジョン)と、スタッフの仕事ぶりについての調査を行いました。

会社のポリシーは、大きく2つの群にわけました。抽象的なポリシーと、具体的なポリシーです。それぞれの例は、次のような感じです。

抽象的なポリシー
「すべての患者に最高の医療を!」
具体的なポリシー
「『あの病院は最高だった!』とすべての患者が友人に話したくなるような医療」

さて、それぞれの病院で働くスタッフについて調べたところ、具体的なポリシーを掲げている病院で勤務するスタッフのほうが、張りきって仕事をしてくれることがわかりました。また、そういう病院のほうが、患者からのウケもよく、満足度も高かったそうです。

みなさんが勤めている会社では、どんなポリシーが掲げられているでしょうか。あまりに漠然としているというか、抽象的すぎるポリシーですと、ひょっとしたら、それが原因で、ダラダラしてしまっている可能性がありますよ。

私たちは、具体的な目標を掲げてもらえないと、やる気も出ないのです。抽象的な目標には人を動かす力はありませんから。

とはいえ、「私が悪いんじゃない、会社のポリシーが悪いんだ」と責任を転嫁するのも、あまり感心できません。

実際、会社が悪いということがかりに正しかったとしても、それでもやはりダラダラしていてよい、ということにはなりません。本書を読んで、いろいろと自分なりにダラダラしない工夫をこらしてみてください。

■ダラダラの原因が職場の人たちにある可能性

私は責任転嫁があまり好きではありませんが、もう1つだけ指摘させてください。

それは「職場の雰囲気」です。もし職場の人たちが、そろってダラダラしているようなら、自分一人だけテキパキと行動するのは難しいでしょう。というのも、私たちは、一緒に働く人によって影響を受けてしまうからです。

職場にダラダラしている人がいると、周囲の人たちも同じようにダラダラしはじめます。

心理学では、この現象を「感染効果」と呼んでいます。自分でも気がつかないうちに、私たちは周囲の人と同じ感情、同じ行動をとるようになってしまうのです。

もしみなさんがダラダラしているのなら、その原因は、上司、先輩、あるいは同僚がダラダラしているからかもしれません。

私たちの気分が他人によって影響されてしまうことを示す研究を紹介しましょう。

アメリカ・カリフォルニア州立大学ロングビーチ校のトーマス・サイ氏は、3人から5人で1つのグループをつくらせ、力を合わせてテントを組み立てるという実験をしてみたことがあります。

ただし、何人かのグループのリーダーには、事前にテレビのユーモア番組を見てもらい、楽しい気分にさせました。別のリーダーには、何の変哲もないドキュメンタリー番組を見てもらいました。こちらは比較のための条件(コントロール条件)ですね。

さて、テントの組み立て作業をしている場面を観察してみると、とても興味深いことがわかりました。

事前にユーモア番組を見て、楽しい気分になったリーダーに率いられるグループのメンバーは、リーダーのムードが感染したのか、お互いに笑いながら協力しあって作業をしたのです。

楽しい気分は、メンバーにも感染したのです。

■転職後にキビキビと行動できる理由

この研究でわかる通り、私たちの心理というものは他者の影響を受けます。自分がダラダラしてしまうのは、「そういう人たちばかりの職場だから」ということも大いに考えられるのです。

転職をした経験がある人なら、この現象を体験しているかもしれません。

元の職場ではみんながダラダラしていたのに、新しい職場に移り、みんながキビキビ作業をしているとキビキビと行動できる自分になっているのに気づかされます。

日本人男性ビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

逆のパターンとして、それまでキビキビと働いていた人が、転職したことによって職場の雰囲気が変わり、ダラダラしはじめてしまうこともあるでしょうね。

もしダラダラ人間から、キビキビ人間に生まれ変わりたいのなら、キビキビと働く人と友達になるといいですよ。一秒も時間をムダにせず、毎日充実した生活を送っているような人と付き合うようにするのです。

そうすれば、その人からの好ましい感染効果が働いて、みなさんもキビキビした人間になっていくでしょう。

■孫正義が採用した「48時間デフォルト制」の中身

あらかじめ設定されている標準の設定のことを「デフォルト」といいます。パソコンの初期設定、初期値などがデフォルト。

ダラダラしている人は、自分が行動するときの「心のデフォルト」の設定が間違えています。

たとえば、ビジネスメールが来たとき、「あとで時間があるときに返信すればいいや」というデフォルト設定をしているから、大切なメールに対して返信を忘れてしまったりするのです。

もし自分の心のデフォルトを変えて、「メールは、内容を確認したら、すぐに、その場で返信する」という設定にしておけば、返信し忘れることはありません。

ダラダラしている人は、いろいろな心のデフォルトの設定を間違えているのです。一度、自分がどんなデフォルト設定をしているのか、総点検してみることをおすすめします。

ちなみに、ソフトバンク創業者の孫正義さんは、「48時間デフォルト制」を採用しているそうです。

孫さんは、毎日たくさんの稟議(りんぎ)書に目を通さなくてはなりませんが、48時間以内に「イエス」か「ノー」かを判断して答えなければならず、かりに48時間以内に意思表示しなかった場合には、自動的に「イエス」となるシステムで仕事をしているといいます。これはうまいやり方ですね。

■「夕方の4時までにはその日の仕事を終える」

デフォルトを変えると、私たちの行動は大きく変わります。

どんな初期設定をするかは、ものすごく重要なのです。

アメリカでは、「臓器提供はよいことだ」と考える人が85%もいるのに、実際に臓器提供のサインをしてくれる人は、かなり少数です。日本もそうです。

ところが他の国に目を向けてみると、フランスでは99.91%の国民がドナー登録していますし、ハンガリーでは99.97%、ポーランドでは99.50%。ほぼ100%ですよ。いったい、これはどうしてなのでしょうか。

答えを言うと、デフォルトの違い。

アメリカや日本では、自分から「臓器提供に関する意思」を積極的に示さないと、ドナー登録がなされないのですが、フランスやハンガリーでは、「臓器提供はしません」というサインをしないと、無条件で「臓器提供の意思あり」と見なされるのです。

内藤誼人『「ダラダラ時間」をリセットする最新心理学BEST60』(春陽堂書店)
内藤誼人『「ダラダラ時間」をリセットする最新心理学BEST60』(春陽堂書店)

もしデフォルトの設定を変えれば、ドナーの数はあっという間に増えるはずだ、とアメリカ・コロンビア大学のエリック・ジョンソン氏は指摘しています。どんな初期設定をするかによって、人の行動は大きく変わるからです。

デフォルトがゆるくなっていると、どうしてもダラダラしてしまいます。

したがって、あらゆる行動のデフォルトを総点検し、デフォルトを変えてみてください。

「夕方の5時までに仕事を終える」というデフォルトでなく、「夕方の4時までにはその日の仕事を終え、その後の時間は翌日の準備にあてる」といったデフォルト設定にすれば、仕事の能率もあがりますし、ダラダラしないようになりますよ。

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者
立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は手品、昆虫採集、ガーデニング。『すごい! モテ方』『すごい! ホメ方』『もっとすごい! ホメ方』(以上、廣済堂出版)、『ビビらない技法』『「人たらし」のブラック心理術』(以上、大和書房)、『裏社会の危険な心理交渉術』『世界最先端の研究が教える すごい心理学』(以上、総合法令出版)など著書は200冊を超え、、近著に『めんどくさい人の取扱説明書』(きずな出版)がある。

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(心理学者 内藤 誼人)

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