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「ジャニーズ」の名称変更で済む問題なのか…未成年の性的虐待を「知らなかった」とする事務所社長の不誠実

プレジデントオンライン / 2023年5月28日 12時15分

立憲民主党の性被害などに関するヒアリングに臨むジャニーズ事務所元所属タレントのカウアン・オカモトさん(手前)。奥は橋田康さん=2023年5月16日、国会内 - 写真=時事通信フォト

■キンプリも脱退で「退所ラッシュ」は続く

King & Princeの平野紫耀(26)と神宮寺勇太(25)が5月22日に脱退し、ジャニーズ事務所も退所した。岸優太(27)も9月に退所する。

高橋海人(24)と永瀬廉(24)は残り、2人でグループを継続する。

「23日に日付が変わった0時には、ジャニーズ公式サイトから平野と神宮寺の存在はブログもろとも消え去り、キンプリは永瀬と高橋2人の新たなツーショットに、岸は個人の宣材画像に変わった。ファンからは『こういう時だけ仕事早い』と悲痛な声があがっている」(『週刊女性PRIME』5/23 17:46配信)

「ありがとうKing & Prince その輝きずっと」(スポーツニッポン5月23日付)

脳天気な見出しがスポーツ紙に踊ったが、彼らに続いて事務所を去るタレントたちがこれからも次々に出てくることは間違いない。

ついに60年以上続いてきた「ジャニーズ事務所」の名前が消えるかもしれないといわれている。

■社長の謝罪動画が、かえって自分の首を絞める結果に

ジャニーズ事務所側の動きが慌ただしい。ジャニー喜多川氏の少年たちに対する性的虐待問題の真相を究明する第三者委員会の設置、事務所名変更、ジュリー社長の引責辞任までいくかもしれないとさまざまなメディアが報じ始めた。

5月14日にジャニーズの公式サイトで藤島ジュリー景子社長(56)が謝罪動画を配信したことが、かえって自分の首を絞める結果になりそうである。

なぜなら藤島ジュリー景子社長(56)は嘘をついていたからだ。

BBCを含めたメディアに対しては取材にも応じなかったのに、最大の「金づる」であるファンから「第三者による検証・調査を求める署名(1万6125筆)」が届いたことであわてたのであろう。

このままいけばファンクラブからの脱退者が相次ぎ、ひいては自社のタレントをCMに起用しているスポンサーが離れていくのは間違いない。

事務所の存続が危うくなる。相当な危機感を感じ、事務所開設以降初めて、社長が出演する動画を公式サイトに公開したのである。

ジュリー社長は殊勝な顔をして何度も頭を下げた。だが、創業者で叔父のジャニー喜多川氏による少年たちへの性的虐待問題については、「知りませんでした」と発言し、「当事者であるジャニー喜多川(が亡くなっているため=筆者注)に確認できない中で、私どものほうから個別の告発内容について『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではない」といったのである。

■ジャニーズ周辺の芸能人も慌ただしく動き始めた

しかし、喜多川氏の性的虐待問題を週刊文春が報道し、同誌の記事が名誉毀損(きそん)に当たるとして事務所側が損害賠償を求めた訴訟で、2004年に記事の主要部分を「真実」と認める判決が最高裁で確定している。

当時ジュリー氏は30代半ばで事務所の取締役だった。喜多川氏の姉でジュリーの母親のメリー氏は、ジャニー氏の性癖について「弟は病気なんだから」といっていたという報道が過去にあった。彼女が何も知らなかったはずはない。

ジャニーズ事務所が存亡の危機に立たされているのを何とかしようという、芸能人たちの動きもあった。

4月30日に松本人志と中居正広がMCを務めるトーク番組『まつもtoなかい』(フジテレビ系)の初回ゲストとして香取慎吾が出演した。中居と香取が揃ってテレビに出演するのは、SMAP解散以来6年ぶりだという。4月21日には、稲垣吾郎が別の松本の番組に出演している。香取は番組中にこんな爆弾発言をした。

「SMAPが解散して(中略)、テレビって場所でのお仕事が減ってしまうかもしれない中でも、新しいことをやってみたいっていう方向が近かったのが3人(自身と稲垣と草彅剛=編集部注)で。中居くんはもうテレビの中でやっていきたいっていうようなお話もあったから。もうその時点でちょっとこう、あの、進む道が違うっていうか」

■「うやむやになるかもしれない」という思惑が透けて見える

朝日新聞(5月10日付)は「記者レビュー」で、「フジテレビが放送したことも含め、前進だと思う」と評価しているが、私は違った見方をしている。

香取や稲垣をテレビに出そうと画策したのは松本人志だそうだ。今や「芸能界のドン」気取りの松本は、中居を抱き込み、フジテレビと話をつけ、ジャニーズ事務所に恩を売ろうとしたのではないか。または事務所側が松本に泣きついたのか。

中居と香取が一緒にテレビに出れば、スポーツ紙だけでなく、他のテレビや新聞、週刊誌も大きく取り上げるはずだ。うまくすると喜多川問題がうやむやになるかもしれない。そんな姑息な意図が透けて見えた。だが、ファンクラブの女性たちが立ち上がったことで、目論見は水泡に帰したのである。

SNS上では「#ジャニーズスポンサー不買宣言」が展開されている。櫻井翔を起用している三井不動産は週刊文春(5月4・11日号)に対して、「報道が事実だとすれば誠に遺憾。差別やハラスメントの禁止といった法令順守は非常に重要である」と回答していた。

一社でも打ち切れば雪崩を打つ。そうなれば帝国の命運は尽きる。

動きが鈍かったジャニーズ事務所の現役タレントたちだったが、ここへきて声が上がってきたと文春(5月25日号)が報じた。性虐待問題の解明に第三者委員会を設置することに消極的なジュリー社長に対して、内部から「設置すべきだ」と声をあげた者たちがいるというのだ。

■ついに「最大の功労者」が重い口を開いた

その一人が嵐の櫻井翔だという。慶応義塾大学経済学部卒で父親は元総務省の官僚である。報道番組『news zero』(日テレ系)でキャスターを務めているから当然だろう。だが、カウアン・オカモト氏が出演した5月15日は有働由美子アナに任せっぱなしで、自分は沈黙を続けたのだから、本気なのかどうか分からない。

今一人はKAT-TUNの中丸雄一だという。中丸はデビューした後、24歳から早稲田大学の人間科学部人間環境科学科eスクールで学びなおした勉強家で、ニュース・情報番組の『シューイチ』(日テレ系)のレギュラーを務めている。

だが、中丸も文春の取材には無言を貫いている。

では、ジャニーズ事務所最大の功労者といわれる大物のこの発言はどうか。

大分県日田市で5月20日から開かれるフォーミュラカーのレースをPRするため、歌手の近藤真彦が佐藤知事を表敬した際、かつて自身が所属していたジャニーズ事務所の“性加害”問題について苦言を呈したと、OBS大分放送が報じたのである。

スタジオ収録中のテレビカメラ
写真=iStock.com/Pawel Gaul
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pawel Gaul

「本当に言いにくいんだけど、嘘はダメだなって。こうなったら正直に全てをしっかり話さないと、世の中の人が許さないんじゃないかと思うんで。隠しごとなしに、知ってた、知らないじゃなくて、「もう知ってるでしょ」と。隠しごとなしに嘘なしにしっかりと正面をきって正々堂々と話しをしてもらえればなと。じゃないとみなさん納得しない人多いんじゃない」(OBS大分放送 5/19 18:16配信)

■社名を変更する可能性も取り沙汰されているが…

近藤がはっきり、「ジュリー社長は知っている。嘘はダメ」といったことの意味は極めて大きい。

では、メリー喜多川社長(当時)が娘のジュリーと結婚させ、将来は事務所の社長にしたいと考えていたといわれる東山紀之(56)のこの発言はどうか。

東山は21日、メインキャスターを務める『サンデーLIVE‼』(テレビ朝日系)に生出演し、喜多川問題について言及した。

「所属タレントが問題について話すのは初めて。スーツ姿で眼鏡をかけた沈痛な表情で『心を痛めた全ての方々、本当に申し訳ありませんでした』などと謝罪した。

さらに『このままジャニーズという名前を存続させるべきなのか』と社名についても言及。『外部の方とともに全てを新しくし、透明性を持ってこの問題に取り組んでいかなければならないと思います』と、事務所改革のため創業以来60年以上続く社名を変更する可能性を示唆した。

なぜ、社名変更なのか。芸能関係者は『加害者とされるジャニーさんの名を冠した社名では、スポンサー契約や所属タレントの海外進出に大きな影響がある。性加害問題は、海外では日本国内とは比較にならないくらい厳しい目で見られますから』と指摘する。国民に浸透し一大ブランドになっている社名を変更すれば、そのインパクトは大きく、イメージも刷新できるという狙いがある」(スポニチアネックス 5月22日 5:30配信)

しかし、同紙の「記者の目」の見方は厳しい。

■メディアも事務所と“昵懇”だったではないか

「神妙な表情で口にした言葉は、ジュリー社長の声明の流れをくんだような内容に終始。キャスターとしての見解を示すこともなかった。性加害問題を知っていたのか、長年見過ごされてきたことをどう思うのか。40年以上所属している東山だからこそ言えることもあるはずだが、そこへの言及はなし」

スポニチを含めて、ほとんどのスポーツ紙はこの問題に口を閉ざし、触れてこなかったのに、「長男だから言えることがあるはず」とは、どの口でいえるのか。

「あんたたちもジャニーズ事務所と“昵懇”だったのだから、いえることがあるはず」といいたくなる。

朝日新聞も、カウアン・オカモト氏が外国特派員協会で会見してからというもの、洪水のようにこの問題を報じ始めた。

ジュリー社長が動画を公開した次の日には2回目の社説で、この対応を激しく糾弾した。

「多くの未成年が長期にわたって重大な人権侵害にさらされていた可能性のある深刻な事態である。広く大衆を相手に影響力の大きい事業を手がけてきたジャニーズ事務所には、ひときわ重い社会的責任が課せられていることを改めて自覚すべきだ」

■黙っていたメディアが真相を明らかにすべきだ

「藤島社長は公開した文章で、エンタメ業界は特殊であるという甘えを捨て、コンプライアンス強化を進めていると述べた。だが、今回の事務所の対応は、まさに『甘え』そのものだ。内向きな体質は変わっていないと言わざるをえない。そのような体質こそが、長年にわたって疑惑が見過ごされる土壌となっていたのではないのか。

記者会見を開き、調査は独立した第三者委に委ねる。経営刷新を強調するなら、具体的な行動で示す必要がある。これで幕引きを図ることは許されない」(朝日新聞5月16日付)

長年にわたって疑惑を見過ごしてきたのは朝日新聞も同罪だと思うが、スポニチ同様、自らの責任については触れない。

芸能・音楽業界に対する圧倒的なパワーを背景に、テレビ業界をジャニーズ事務所のパシリのようにアゴでこき使い、芸能マスコミ、出版社を操り、大新聞を黙らせてきた。

その力の源泉だったジャニー喜多川氏の「少年愛」の実態が、被害を受けた当人たちから次々に語られ始めた。改めて、喜多川の異常ともいえる少年への“性的虐待”に、長年この問題に関心を持ってきた私でさえも、怒りで心が震えた。

このような「悲劇」を二度と起こしてはならないこというまでもない。そのためには、この事件の真相を徹底的に追及し、明らかにする必要がある。

必要な法整備も早急になされるべきだ。亡くなったからといって、その罪が許されるわけでは決してない。

編集部註:初出時、「King & Princeの平野紫耀さんが書き込んだ」とした文章は、平野さんが書いたものではありませんでした。事実関係の取り違えがありました。当該部分を削除し、訂正します。(5月28日22:00追記)

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

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(ジャーナリスト 元木 昌彦)

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