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「もう削れない、投資で一発逆転しかない」手取り月収27万、赤字4万でも長男は学費100万私立進学の"親不孝"

プレジデントオンライン / 2023年5月30日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AND-ONE

「これ以上削るところがないんです」。そう相談してきたのは、手取り世帯年収400万円未満で2人の子を抱えるアラフィフ夫婦。月4万円の赤字が続き、貯金も150万円と多くない中、夫はコロナのあおりを受けて失業し、その最中に長男は年間の学費が100万円近い私立高校に進学した。ジリ貧夫婦はいかにして這い上がったのか。家計再生コンサルタントのFP・横山光昭さんが提案したのは、人生観を見つめ直さざるを得ない、ある大きな決断だった――。

■「これ以上削れない」「投資で一発逆転したい」と言うが…

今回ご紹介する相談事例は、居酒屋の調理場で働く相田和夫さん(相談当時52歳)と、妻でパート勤務をしている理恵子さん(相談当時46歳)のご夫婦。お子さんは、当時高校進学を控える中学3年生の長男、小学5年生の長女の2人で、4人家族とのこと。

「50代の割に、夫婦で手取りが月27万円と低く、毎月約4万円の赤字が続いています。貯金は150万円程度。来春、長男が私立高校に進学しますが、年間100万円近い学費を授業料の補助が一部あるとしても捻出していけるのか非常に不安です。結構切り詰めているとは思うんですが、他にやりようがあるのではないかと思いまして……」

そして和夫さんは、こう続けました。

「住宅ローンは月約7万円、食費は4人で約6万円、僕の小遣いは1万円……家計はもう削るところはありません。老後も心配ですし、投資で増やすことを考えた方が現実的なのでしょうか?」

50代の方からこうした相談を受けることは多々あります。要は、「支出を削るのは限界だから、投資で一発逆転できないか?」という発想ですね。ただ、お金に関してはそんなドラマチックの逆転劇を期待するのはよくありません。やはり一見遠回りですが、地道に切り詰めて貯金を増やしてから、10年、20年と時間をかけて投資を行うのが正攻法です。

和夫さんが相談にやってきたのはコロナ禍直前のこと。3年かけてフォローしていく形で、家計改善と資産運用のプログラムを始めました。

■コロナ禍で失業するもプライドとこだわりを捨てられず

ところが、その矢先にコロナが蔓延し、和夫さんが勤務していた飲食店は休業に追い込まれました。折しも、長男は私立高校に進学したばかり。休業は4月、5月と続き、勤務先からの手当も入らなくなり、日中は警備員、夜は知り合いのつてで飲食店のアルバイトをして数カ月間食いつなぎ、一部貯金も切り崩しながら長男の学費も払っています。

居酒屋で串焼き調理をする従業員
写真=iStock.com/ablokhin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ablokhin

就職活動をせず臨時バイトでつないでいたのは、コロナが落ち着いたらまた店に戻って、以前と同じ暮らしができると考えていたから。しかし現実は厳しく、夏の終わりに、ついに勤務先は廃業。和夫さんは解雇されてしまいました。

失業保険をもらっている間に和夫さんは就職活動をしましたが、思うようにいきませんでした。和夫さんは、仕事を選んでいたのです。条件の一つは、前職と同等のポジション。長年かけて主任というポジションまで上り詰めていた和夫さんは、また下っ端からやり直すことに抵抗があった。また、子どもと過ごす時間も大切にしたいからと、飲食店ながら土日と夜の勤務時間が極力少ない仕事を探していました。当然、前職と同じポジションで柔軟な働き方ができる正社員の仕事は、そうそう見つかりません。

「100歩譲ってポジションのこだわりを捨てたとしても、自分の時間は死守したい。収入の高い仕事でプライベートを犠牲にするくらいなら、低くても構わない。生きていければいいんだから」

こう話す和夫さんのように、収入に重きを置かない働き方、生き方を選ぶ人は意外と少なくありません。ぜいたくはしなくていい。金銭的な豊かさを追い求めるより、家族と過ごす時間や、趣味の時間など、「今の幸せ」を大事にしたい。今の生活が維持できればいい――という考え方ですね。

もちろん、その考え方自体否定はしません。ただ、和夫さんの場合、そうすることで、赤字状態が続いていました。貯蓄も、進学を控える子が2人いながら、150万円程度。いざというときの備えとしては心もとない状況です。失業保険が切れたら、生活費や学費はどうするのでしょうか。

そこで、「生きていければいいのは間違いないのですが、これをいい機会にして、収入を増やすことにももう少し注力してもいいのでは」と提案しました。学校で通っているお子さん2人を抱え、4人家族で生きていく場合、低収入のままでは節約にも限界があります。将来の不安も消えません。

お金を増やすためには、3つの柱があります。①「収入を上げる」、②「支出を抑える」、③「すぐに使わないお金を運用する」です。普段われわれは②と③をメインに話すことが多いのですが、①の収入増も非常に大事な要素です。健康な体と時間があり、働ける環境に恵まれているなら、ぜひとも稼いでいただきたい。ましてや、教育費のように数年以内に必ず支払うべき費用があるなら、なおさらです。

■細かい費目を千円単位で削れば万単位の削減に

「自身のプライドやこだわりと、子どもの進学費用、どちらを取るか?」。究極の選択を突き付けられ和夫さんは、子どもの将来を取りました。

再就職のハードルとなっていたこだわりを捨てたおかげで、1カ月後に内定をゲット。前職と同じ飲食店の調理場で、ポジションは下っ端からのスタート、かつ、土日や夜の勤務時間も増えましたが、正社員で手取りは5万円アップ、奥さんもパートの日数を増やしたため2万円アップし、合計7万円の収入増です。これで長男の学費もなんとかなりそうです。

家計においては、細かいところを少しずつ削っていきました。食費と光熱費を3000円ずつ、被服費を2000円、日用品は5000円、教育費は8000円のカットです。これ以上削るところがないと思っていても、コツコツと千円単位減らすことで塵も積もれば山となり、合計2万円弱もの削減になるのです。

【図表】相田さん家のメタボ家計BEFORE⇒AFTER

人はつい極端に、「この費目を半分に減らしたい」などと思ってしまいがちですが、費目ごとに1割2割削減していけば、もう削れないというご家庭でも2万円の削除がかなうものです。

収入が変わらなければ、2万円弱削減できてもなお赤字でしたが、収入が7万円増えたおかげで、約5万円もの黒字に転化しました。やはり、収入が足りない状況で切り詰めるより、収入が増えた状況で支出を削るほうが、圧倒的に効率がいい。預金通帳の残高が順調に増えていくのを見て、ご夫婦は収入UPの効果を強く実感したようです。

■労働時間が増えても貯金が増える喜びには代えがたい

さて、和夫さんが再就職してから3年後。

長男は無事私立高校を卒業し、働き始め、学費に充てていた分をためられるようになりました。貯蓄は現在300万円と、当初の2倍の額に。いよいよ老後に向けて投資のスタートです。もちろん、初心者ですので、ハイリスク商品には手を出さず、iDeCoやつみたてNISAなど非課税の制度を使いながら、時間を味方につけて長期分散投資を進めていく方針です。

和夫さんは現在55歳。住宅ローンはあと5年で完済予定です。これから20年かけてコツコツと運用していけば、老後、公的年金の補助として生活を支えてくれるでしょう。

和夫さんは再就職後、ポジションは下っ端からのスタートで、「収入優先、夜や土日も働く生活」。奥さんも労働時間を増やしています。二人とも本来目指していた働き方とは違いますが、貯金が増えている現状に満足しているようです。特に奥さんは、「やっぱり貯めていけるのは安心感がありますね」と幸せそう。

「あの時こだわりを捨てられていなかったら、ずっとジリ貧だったと思います」。そう話す和夫さんの表情も、3年前に比べて明るくイキイキとしているように見えます。

このご家庭が起死回生できた最大の勝因は、なんといっても収入UP。一見単純なことですが、人はなかなか生活における優先順位を変えられない。そこを思い切って変えたことが、今の幸せにつながっているようです。

家庭は二の次で稼ぎを優先したい。稼ぎは二の次で家庭やプライベートを大事にしたい。和夫さんは後者のタイプでした。これまで十数年間、家族との思い出を貯めてこられたからこそ、潔く方向転換できたのかもしれません。“思い出貯金”がピンチをチャンスに変える原動力となったのであれば、これからの人生後半戦はより活気づくのではないでしょうか。

経済面で低空飛行が続いていても、人生の折り返し地点で上向きになることは、決して不可能ではないのです。

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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