なぜ、ルールの多い組織では仕事の質が低くなるのか

プレジデントオンライン / 2012年8月22日 9時0分

マニュアル依存の危険性は危機のときに現れる

■ルールとモラルの違いを知る

ルールとモラルの違いをご存知でしょうか。

モラルは、私たちが目指すべき中心点です。中心に近ければモラルが高く、同心円状に離れていくほどモラルは低くなります。

ルールは、モラルからこれ以上離れてはいけないという限界を示す境界線です。ルールは、守るか守らないか。一線を越えたらアウトです。

コンプライアンスが叫ばれる昨今、国や企業は以前に増して多くのルールを導入するようになりました。これはあまり望ましい状況ではありません。ルールが強調されると、境界線上の内側ぎりぎりのところに立つ人が増えます。モラルの中心から離れているのに、「ルールは守っているから問題ない」といって平気な顔をする人が増えるのです。

ルールは、モラルから離れないように自分たちを律するための手段の一つに過ぎません。私たちが目指すべきは、より高いレベルのモラルを身につけることです。ところがルールを強調しすぎると、ルールを守ることが目的化して、モラルが軽視される逆転現象が起きる。過剰なルールが、かえってモラルの低下を引き起こすのです。

弊害はそれだけではありません。ルールが増えれば、手続きも増えます。手続きが増えれば組織の効率も落ちます。

組織がルールでがんじがらめになると、物事への柔軟な対応も難しくなります。現実社会は複雑で、ルールの向こう側だがモラルとして正しいことがいろいろあります。

優先すべきは、ルールよりモラルです。

ところが「ルールを守れ」と言われ続けるうちに、多くの人は形式主義に陥り、「ルールで決まっているからダメ」と硬直的な対応をしてしまいます。これは、組織を停滞させる原因の一つになります。

■マニュアルでなくガイドラインで考える

ルール依存の危険性が顕著に現れるのは、不測の事態に直面した場合でしょう。

ルールとモラルを文書化すると、ルールはマニュアルに、モラルはガイドラインになります。マニュアルは、内容が具体的です。歩行についてのマニュアルがあるとしたら、右足を出して、次の左足を出す動作がノウハウとして示されます。

ある意味では親切ですが、不測の事態に直面すると役に立ちません。たとえば歩く先に障害物があったとします。マニュアルがその事態を想定していなければ、マニュアル頼りの人はお手あげになる。次の一歩をどこに踏み出せばいいのか、自分で考える訓練を積んでいないからです。

一方、ガイドラインは抽象的で、目指すべき行き先が示されています。具体的な手段については読んだ人に委ねられていて、とくに縛りはありません。方法を自分で考える苦労はありますが、それゆえ不測の事態には強い。障害物を迂回するなり飛び越えるなり、いつもと同じように自分の頭で解決策を導き出せばいいのです。

会社から見て頼もしいのは、ガイドラインで動ける社員です。

とくにマネジャーがマニュアル頼りでは困ります。不測の事態に直面したときに決断を下さなくてはいけない役目を担った人が、「マネジメントのマニュアルに書いてないのでわかりません」では話になりません。そうならないためには、普段からガイドラインをもとに自分で判断する訓練を積んでおく必要があります。

ガイドラインは、社員の自発性を育てます。自発性は、自由な発想を呼び込む起爆剤になって仕事の「質」を高めてくれます。

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自分の顔で考えられる社員をどう増やしていくか

それに対してマニュアルは、社員の制御性を育てます。制御性が高い社員は、仕事の「量」を追求するときに能力を最大限に発揮してくれます。

どちらも一長一短ですが、市場がシュリンクして「量」より「質」が求められる時代においては、自発性の高い社員が多い会社ほど競争で優位に立てます。厳しい市場環境をサバイブするために、マネジャーは自らの自発性を高めるだけでなく、社員が自発性を発揮できる環境を整えていく必要があるでしょう。

そのとき頼りになるのは、ルールよりモラル、マニュアルよりガイドラインです。目指すべき方向を明確に示す一方で、余計な縛りを省いて、社員が自分の頭で考えて動く裁量を与えていく。それがこれから求められる組織のマネジメントなのです。

※『ビジネススキル・イノベーション』第3章 チームをマネジメントする(プレジデント社刊)より

(ファンクショナル・アプローチ研究所代表取締役社長 横田 尚哉)

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