東京のマンションはまだ安すぎる…23区内の「億超えタワマン」を買い漁る中国人富裕層たちの本音
プレジデントオンライン / 2023年6月6日 14時15分
■首都圏新築マンション平均価格が初の1億円超え
「新築マンションが高すぎる」
「庶民には手が届かない」
そういった声をよく聞くようになりました。
不動産経済研究所が4月18日に公表した「3月の首都圏新築分譲マンション市場動向」によると、首都圏の新築マンション平均価格は前年比2.2倍の1億4360万円と、単月で初めて1億円を突破しました。
ちなみに、3月の価格高騰は、港区の旧逓信省跡地に作られた「三田ガーデンヒルズ」など、高額物件の販売開始が大きく影響しました。
そのため、4月の新築マンション価格は前月比で大きく下落しましたが、それでも1億1773万円と、1億円超えが続いています。
■投資マネーの流入は悪なのか
2月20日に放送された「ABEMA Prime」では、「庶民には手が届かない? 高騰し続ける都内マンションの実態 いま家は買うべき?」と題して、マンション価格高騰問題を扱いました。
筆者も出演していたのですが、番組全体としては、不動産価格の高騰はあまり喜ばしいことではない、という受け止め方が強かった印象です。
また、外国人投資家、特に中国人投資家の投資マネー流入によって、東京のマンション価格が吊り上げられることを警戒する声もありました。
■東京に流入する「チャイナマネー」
バブル期の1980年代には、欧米系マネーが日本に流れこんだこともあります。
しかし、当時の日本の不動産市場には、反社勢力との関係や、地上げの問題など、さまざまな問題がありました。そのため「日本の不動産はややこしい世界」と見られてしまい、欧米のマネーが逃げてしまったのです。
その後も欧米のマネーは戻ってきていません。日本の不動産市場はデジタル対応で遅れています。アメリカではスマホで不動産の契約まで可能なので、そういう意味でも日本の不動産に魅力を感じないのかもしれません。
東京の不動産に投資しているのは、アジア系、特に中国系の富裕層がほとんどです。
前述の「ABEMA Prime」でも、中国人向け不動産会社の方が証言していましたが、中国では不動産を所有しても、数十年で返却しなければなりません。なので、本当の意味で所有できるのは外国の土地だけです。
中でも日本は金利が低く、不動産の価格が比較的安いので、不動産投資で利益を上げやすい環境です。
■東京の不動産はまだまだ安い
冒頭でご紹介したように、東京23区の新築マンション価格は上がっています。
しかし世界の都市と比べると、東京の不動産にはまだ上昇の余地があります。
スイスの金融グループであるUBSが、「グローバル不動産バブル指数(UBS Global Real Estate Bubble Index 2022)」という指標を発表しています。
2022年の同指標によると、東京のバブル指数は第9位。前年度より上がっていますが、まだまだ低い位置につけています。
第1位はトロント。以下、フランクフルト、チューリヒと欧米の都市が続き、アジアからは第5位に香港がランクインしています。
また、ハイエンドクラスのマンション価格だと、東京は香港や上海、台北より下にランクされています。
これを見る限り、東京の不動産価格にはまだ上昇余地がありそうです。
■東京に拠点を持ちたい中国人富裕層は多い
一方、イギリスや香港だと不動産の価格がかなり高いので、中国人富裕層にとってはリスクが高くなっています。
日本は安全で、人種差別も比較的少なく、街は清潔で、何より食べ物がおいしい。
ビジネスの拠点は香港やシンガポールに置くとしても、東京にも拠点を持ちたいという中国人富裕層はたくさんいます。
我々にとって日本は「30年もデフレが続く衰退国家」みたいなイメージが強いですが、海外からの評価は意外と高いのです。
■外国人投資家の割合は1割に満たない程度
では、「外国人投資家によって不動産価格が吊り上がっている」は本当でしょうか。
具体的なデータはありませんが、日本の不動産市場で外国人投資家が占める割合は、おおよそ数%程度ではないかと思います。
かつて大手ディベロッパーは、「紳士協定」として、外国人向け販売比率をおおむね数%に抑えていました。
大手ディベロッパーだけが外国人に販売するわけではありませんし、今でも「紳士協定」が守られているかどうかも不明です。
この数字から類推して、日本の不動産市場に占める外国人の割合は、おおよそ1割に満たないくらいだと考えられます。
他の先進国でも、外国人投資家が占める割合は1割程度が一般的という事実もあります。
そもそも、外国人向け販売に取り組んでいる不動産会社は一部に過ぎません。
外国語対応も必要だし、富裕層向けの投資アドバイスも必要なので、対応できる人材が限られるのです。
■新興国は制限するが、先進国は「チャイナマネー」歓迎
もちろん「外国人投資家が東京のマンション価格を吊り上げている」面も否定はできませんが、上記の数字を見れば、危険視するほどの規模ではないように思います。
一方、ニュージーランドでは「チャイナマネー」流入による不動産高騰を警戒して、外国人による不動産購入に制限を設けました。
またフィリピンのように、外国人の場合は土地自体は買えないとか、マンション全個数の半分までしか買えないなど、制限を設けている新興国もあります。
新興国の場合、経済の規模が相対的にまだ小さいため、外国から大きな投資マネーが流入すると、デメリットが大きくなってしまうのです。
しかし、先進国では一般的に外国人の不動産購入に制限を設けていません。
むしろ、「チャイナマネー」を呼び込み、自国経済の活性化につなげようとしています。
■「中国人富裕層」は日本人投資家とあまり変わらない
一口に「中国人富裕層」と言ってもいろいろな人がいます。
ジャック・マーのような世界的に有名な「超富裕層」もいますが、日本の不動産を買う中国人の大多数は、中国国内である程度成功した人とか、高所得の職業についている人がほとんどです。資産規模では普通の日本人投資家とあまり変わらないと思います。
そういう意味でも、彼らによって極端に価格が吊り上げられると警戒する必要はそれほどない気がします。
■「チャイナマネー」流入を恐れる必要はない
以前、『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)という本を書いたのですが、その中で、割安な日本の資産を海外マネーが買い、日本の株価や不動産がバブル化する可能性を指摘しました。
現在でも日本は金融緩和を続けており、圧倒的な円安水準ですので、その動きが加速する可能性は高くなったと思います。
アメリカの著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が来日して話題になりましたが、まさに予測通りの動きだと思います。
海外のマネーが日本の不動産を買えば、不動産の所有者にキャッシュが入るほか、不動産価格全体が押し上げられます。
不動産価格が右肩上がりに上昇していれば、不動産投資を始める人も増え、市場全体により多くのマネーが入ってきて、活性化します。
その結果、不動産会社をはじめ、さまざまな企業の収益も上に引っ張られるわけです。
日本の株や不動産に、海外投資家のマネーが流入することは、日本経済全体の活性化にとってプラスに働きます。
「チャイナマネー」流入で不動産価格が上昇することは、悪いことばかりではないのです。
そのことも踏まえると、外国人投資家の動きをそれほど警戒する必要はないように思います。
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不動産コンサルタント
さくら事務所会長。1967年生まれ。業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」を設立し、現在に至る。著書・メディア出演多数。YouTubeでも情報発信中。
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(不動産コンサルタント 長嶋 修)
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