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GAFAM株は明らかに買われすぎている…エミン・ユルマズ氏が「米国株の実力は半額程度」と見る理由

プレジデントオンライン / 2023年6月7日 9時15分

GAFAM株は明らかに買われすぎている(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/pressureUA

GAFAMをはじめとする米国株は今後どうなるのか。エコノミストのエミン・ユルマズさんは「米国株には買われすぎの兆候がある。特にGAFAMは決算もさえず、対話型AIの登場がどう影響するかも未知数」という――。(前編/全2回)

※情報は5月22日時点のもの。

■パッとしないGAFAMの決算内容

GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の決算(2023年1~3月期)はパッとしない内容でした。盤石と言えるのはマイクロソフトだけではないでしょうか。

グーグル(アルファベット)は、売り上げが前年同期比+2.6%、営業利益が同じく-13.3%。クラウド事業が黒字化し、事前のエコノミスト予想は上回ったものの、前年同期比では減益に終わっています。

アップルは売り上げが前年同期比-2.5%、営業利益が-5.5%と減収減益。iPhoneは予想より好調でしたが、PC「Mac」販売は前年同期比-31%と大きく減少しています。

フェイスブック(メタ)は売り上げが前年同期比+2.6%、営業利益が-15.2%と、営業利益の大幅減少が目立っています。メタバース関連事業の赤字が収益性の足を引っ張っています。

アマゾンは売り上げが前年同期比で+9.4%、営業利益は+30.1%。大幅に増収増益となりましたが、昨年は通期で最終利益が赤字に転落しており、その反動で大幅に増益しているとも考えられます。

■決算が悪くても株価が上がるカラクリ

このようにGAFAMの決算はあまり良くありませんでしたが、株価は上昇しています。

GAFAMなどハイテク銘柄が集まるナスダック100指数は、23年年初より約25%も上昇しています。アメリカがインフレ対策として利上げを行っている中、驚異的な上げ幅と言えるでしょう。

決算がさえないのに、なぜ株価が上がるのでしょうか。

実は、これにはウォール街の「カラクリ」があるのです。

■GAFAMの決算は株価に正しく反映されていない

特に大企業の決算については、事前にアナリスト予想が公表されます。この「事前予想」が低すぎる場合、仮に減収減益でも、「事前に予想された数字よりは良い」と評価されやすくなります。

また各種メディアの見出しには「決算が事前予想を上回った」という表現がならびます。

そのため、実際には悪い決算でも、良かったように見える場合があるのです。

決算にはこうした「カラクリ」があります。それを踏まえると、GAFAMの決算は株価に正しく反映されていないと見たほうがいいと思います。

財務グラフ
写真=iStock.com/Ca-ssis
決算にはカラクリがある(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Ca-ssis

■GAFAMは本当に成長株なのか

そもそもGAFAMはグロース株(成長株)なのか、それともバリュー株(割安株)、ディフェンシブ銘柄なのか。市場は判断に困っているのではないでしょうか。

もともとGAFAMはグロース株の代名詞でした。配当はゼロに近いのですが、株価の値上がりを期待されて資金が集まっていたわけです。

しかし、昨年からFRBがインフレ対策で利上げを始め、アメリカ株は下がり始めます。S&P500は約20%下落。ナスダック100は約29%下落しました。

一方、今年に入ってGAFAMを含むナスダック100はむしろ買われる動きが目立っています。

なぜでしょうか。

GAFAMはキャッシュリッチ、つまりお金をたくさん持っている企業です。インフレ率が高止まりし利上げが長期化する中、GAFAMは倒産の心配が比較的少ない企業、つまりバリュー株、ディフェンシブ銘柄と見られているのです。

しかし、GAFAMの株価はすでに高値水準にあります。今後の急成長が期待できないなら、株は買われ過ぎでしょう。

もしGAFAMをバリュー株と見るなら、改めてバリュー株としてのバリュエーションがなされるべきです。

■アップルの株価はべらぼうに高い

アップルの時価総額は2.7兆ドルもあります。

アメリカ全体の株式時価総額が40兆ドルで世界1位、日本全体の株式時価総額が4兆ドルで世界2位なので、アップルは世界第3位の「国」ということになります。

また、アップルのPSR(Price to sales ratio 株価売上高倍率)は約7倍です。

PSRは時価総額を年間売上高で割った数字です。つまり、あくまで目安ではありますが、アップルの売上高が今後7倍にならなければ、現在の時価総額とは釣り合わないと見ることもできるのです。

いま世界では中国と欧米諸国のデカップリングが進んでいます。

中国とアメリカの関係がさらに悪化すれば、対抗措置としてアップル製品が中国から締め出されることもあり得るでしょう。

西側諸国はファーウェイ製品を締め出しているから、あながち無理な予想ではないと思います。

人口14億の中国市場を失えば、アップルの成長性にも大きく影響するでしょう。

それを踏まえると、アップルの株価はべらぼうに高いと言わざるを得ないのです。

アップルをはじめ、GAFAM株やハイテク銘柄は、今後大きく値下げする可能性を見ておいたほうがいいと思います。

アップルストア
写真=iStock.com/fazon1
アップルの株価はべらぼうに高い(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/fazon1

■アメリカ株の真の実力は半額程度

そもそもアメリカ株の時価総額40兆ドルも買われすぎだと思います。

これは世界の時価総額の約6割にあたりますが、アメリカのGDPが世界の6割を占めているわけではありません。

世界経済に占めるアメリカのGDPの割合はだいたい25%。それから考えると、アメリカ株全体が本来の価格の倍くらいに値上がりしている、と思っておいたほうがいいと思います。

もちろん、GAFAM株やアメリカ株が今すぐ半額に下がるということではありません。ファンダメンタルズで見れば、買われすぎの可能性があるため、長期的に見ればどこかで大きく調整する可能性がある、ということです。

■「オプション取引」で過剰な資金が流入している

GAFAM株、アメリカ株が買われすぎているのは、「オプション取引」の影響も大きいと思います。

オプション取引とは、あらかじめ定められた期日に、定められた価格で株を買う権利(コールオプション)、あるいは売る権利(プットオプション)を売買する取引です。

株取引にはもともと信用取引というものがあります。要するに自己資本がなくても、自分の信用力の枠内でお金を借りて株を買える仕組みです。

信用取引の場合、日本では預けた担保の約3倍まで取引ができます。

しかし、オプション取引なら、もっと少ない資金で売買できます。そのため急速に人気が高まっています。

スマートフォンで金融市場を見るビジネスマン
写真=iStock.com/ArtistGNDphotography
「オプション取引」で過剰な資金が流入している(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/ArtistGNDphotography

■流動性が低下する時が危ない

しかもアメリカでは昨年から「0DTE(0 Day to expiry、ゼロデイオプション)」という、24時間以内に満期を迎える超短期のオプション取引が流行っています。

ただ、オプション取引とは、ある意味証券会社と顧客がそれぞれレバレッジをかけているようなものです。いわばレバレッジが2乗でかかっているのです。

少ない資金で取引できますが、実際に売買される現物株は巨額です。つまり、オプション取引によって、アメリカの株式市場には実態以上の過剰な資金が流入することになります。

資金に余裕があり、アメリカ株が上昇しているうちはいいのですが、流動性が低下し、株式市場に流入する資金が減少しはじめた時が問題です。

その場合、アメリカ株全体が大きく下落する可能性があります。S&P500やナスダック100などの指数も暴落するかもしれません。

■ChatGPTは懐疑的に見たほうがいい

一方で、GAFAMはまだまだ成長するという見方もあります。

特にChatGPTなど対話型AIが、GAFAMを中心としたハイテク株を押し上げると見る人も多いでしょう。

ただ、私はある程度懐疑的に見たほうがいいと思っています。

AIという言葉が定義されたのは1950年代です。それから70年あまり経過し、ようやくある程度形になってきました。

ただ、現状のAIが本当に社会を一変するのかは、まだまだ未知数です。そうなるかも知れませんし、ならないかも知れません。

株式市場にはこういう新技術の話がよく流されます。もちろん株価を吊り上げる材料に使われるのです。

一例が一時話題になったNFTです。かつてはあれだけ話題になりましたが、いま活発に取引されているとは言えません。こうした話題は他にもたくさんあります。

もちろん、対話型AIが検索エンジンの性能を飛躍的に向上させるとか、かなり現実的な話題もたくさんあります。

しかし、それが株価や企業業績にどういう影響を与えるのか、それこそが重要なのですが、現時点ではまだわかりません。

■「AIでGAFAM株が上がる」と決めてかからないほうがいい

私は近刊『大インフレ時代!日本株が高い』(ビジネス社)で、今後の注目分野として「無人化・省人化」をあげています。

AIの発展は、無人化・省人化につながるため、今後の有力な成長分野ではあると思います。

レジ打ちや簡単な事務作業などがAIで無人化・自動化された場合、企業はコストダウンによって儲かるかもしれません。

しかし、これはAIが人々の仕事を奪う社会の到来に他なりません。

失業率は高くなりますし、社会が不安定化することも考えられます。

そういう社会になった時に、経済全体が成長できるのか、株価にいい影響が本当にあるのか、長期的な視点では未知数な部分も多いのです。

それも踏まえて、AIの登場でGAFAMが成長すると決めてかからないほうがいいと私は思います。(後編に続く)

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エミン・ユルマズ(えみん・ゆるまず)
エコノミスト
トルコ・イスタンブール出身。2004年に東京大学工学部を卒業。2006年に同大学新領域創成科学研究科修士課程を修了し、生命科学修士を取得。2006年野村證券に入社。2016年から2024年まで複眼経済塾の取締役・塾頭を務めた。2024年にレディーバードキャピタルを設立。著書に『夢をお金で諦めたくないと思ったら 一生使える投資脳のつくり方』(扶桑社)、『世界インフレ時代の経済指標』(かんき出版)、『大インフレ時代! 日本株が強い』(ビジネス社)、『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)『米中新冷戦のはざまで日本経済は必ず浮上する 令和時代に日経平均は30万円になる!』(かや書房)などがある。

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(エコノミスト エミン・ユルマズ)

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