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「楽そうな仕事でいいね」他人の仕事への見下し感が漏れ出てしまう人ににっこり笑って切り返す会心の一言

プレジデントオンライン / 2023年6月2日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

「会社でパソコン打っていれば給料もらえるんだから、いいよね」。社会人にとって仕事は「自分とは何者か」を構成する重要な要素。それぞれにプライドがあるが、他人から直接的・間接的に見下されることもある。ちまたにあふれる「失礼な一言」を収集したコラムニストの石原壮一郎さんが考える、全力でサラッと受け流し、にっこり笑って切り返す方法とは――。

※本稿は、石原壮一郎『失礼な一言』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

■他人の仕事を見下してくる

当たり前ですが、職業に貴賤はありません。抽象的な理念としては、それは誰もがわかっているはず。しかし実際には、職業や仕事にまつわる失礼は山ほどあるし、他人の仕事を見下してくる人は後を絶ちません。すべての社会人は、自分の仕事に関する失礼に遭遇した経験があると言っていいでしょう。

「そんな仕事してるなんて、恥ずかしくないの?」
「別の仕事したほうがいいよ」

相手が詐欺師やコソ泥ならさておき、面と向かってこんなことを言う人はいませ……いや、そうでもないのが、失礼の魔の手の恐ろしさ。ストレートにこうは言わなくても、同じ意味のセリフが、ふとした拍子に飛び出します。

自分のケースだと、出版社勤務から30歳でフリーライターになった最初の頃は、親戚や友達から、

「芸能人の浮気の張り込みとかあるんでしょ。たいへんだね」
「ライターって食べていけるの?」
「5年後はどうするの?」

そんなことを心配そうに言われました。つまりは、先のセリフと同じ意味ですよね。分野が違うのでやることはありませんでしたが、「芸能人の張り込みだって、読者の期待に応える記事を作るための大事な仕事なのに、失礼な言い方するな!」と内心ではムカついていました。

収入や将来については、自分自身がいちばん不安だったし、見通しも立たないので答えようがありません。ヘラヘラしながら「まあ、考えてもしょうがないしね」と返すことで、自分をなだめていました。それから約30年、おかげさまで運よく何とかなっています。

あとから気がつきましたが、聞いてくる人のおもな目的は、自分の選んだ道(サラリーマンとか親の仕事を継いだとか)を「自分は間違っていない」と肯定すること。「こいつみたいに不安定な道を進まなくてよかった」と安心することが目的なので、どんなに丁寧に説明しても納得することはなかったでしょう。

ただ自分も、若かったというか肩に力が入っていたというか、何気ない世間話をナイーブに受け止め過ぎていた気がします。繰り返し書いていますが、失礼は相手と自分の共同作業ですね。

■悪意を隠しているつもりでも

なんだかんだ言って、社会人にとって「仕事」は、自分のアイデンティティを構成する重要な要素です。人によっては「会社」が同じ役割を果たすこともあります。

自分の中で自分の価値を上げるために、隙あらば他人の仕事を見下したくなるのは、残念ながら一種の本能と言っていいでしょう。しかし、本能のおもむくままに発言したら、周囲から顰蹙(ひんしゅく)を買って自分の株を下げてしまうのは確実。「他人の仕事を見下すなんて恥ずかしいし」という理性も歯止めになって、私たちは日頃、その邪悪な欲求から必死で目をそらしています。

頭の後ろで手を組んでモニタに向かって笑顔を見せる男性
写真=iStock.com/shironosov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shironosov

気を付けたいのは、自覚がないまま“見下し感”が漏れ出てしまう事態。言う側は悪意を隠しているつもりだけど、それが透けて見えているケースもあります。当研究所が独自のノウハウで収集した「見下されたと受け取られそうなセリフ」の例をご紹介しましょう。

・「ニュースでやってたけど、コロナの影響で○○業界はたいへんなんでしょ。おたくは大丈夫?」
→心配しているように見せつつ、心の奥底では「悲惨な話」を聞いて安心したがっている。エッセンシャルワーカーの人に、一時期よくかけられた「コロナに気を付けてね」というセリフも、危険な存在扱いしているように聞こえかねない。


・「会社でパソコン打っていれば給料もらえるんだから、いいよね。俺は体を動かすしかないからな」
→要は「楽な仕事しやがって」という意味。「体を動かすしか云々」も謙遜ではなく、「お前もやってみろ」の意味が込められている。
・「そんなたいへんな仕事、よくやってるね。自分には無理だな」
→単に「たいへんな仕事だね」だとやさしいねぎらいの言葉だが、この言い方は明らかに見下している。「いい給料がもらえるわけじゃないんでしょ」と続く場合も。
・「専業主婦って、今やある意味セレブだもんね。うらやましいな」
→働く女性から専業主婦に。素直に受け取るのは難しい。「仕事してないとつまんなくない?」と、気遣う形を取りつつ見下すパターンも。
・「お前は自由でいいな。サラリーマンなんてつまんないよ」
→フリーランスに対する誤解に基づいた定番の失礼。個人的な経験では、いわゆる大企業に所属する会社員ほど、こう言いたがる傾向がある。もしかして遠回しな自慢?
・「自分みたいなのは、組織の中で生きられそうにないからさあ」
→フリーランスが会社員に向けて言いがち。強がりと対抗意識が複雑に渦巻く。優位に立つセリフのつもりだが、相手は心の中で「たしかに無理だな」と逆に見下す。

■「気の毒な人」にして対抗しよう

ほかにも「公務員は楽でいいよね」「○○みたいな仕事はストレスがなくていいよね」など誤解を丸出しにしつつ、「恵まれてると思われがちな仕事」を見下す手法もあります。自分で会社を興した人が、家業を継いだ友人を「お前はいいな」とうらやましがるパターンも。

どちらも、その立場にある人の苦労を知らない(知ろうとしない)からこそできる恥ずかしい見下し方です。「仕事を見下す」という行為は、その仕事の表面しか見ていないことの証明とも言えるでしょう。

石原壮一郎『失礼な一言』(新潮新書)
石原壮一郎『失礼な一言』(新潮新書)

そもそも、自分の仕事に満足していて、本当の意味で誇りを持っている人は、他人の仕事を見下して小さな満足感を得ようなんて思いません。うっかり他人の仕事を見下す愚を犯さないように気を付けることは、とても大切です。それ以上に大切なのが、仕事を見下されるという避けようのない災難のダメージを最小限に抑えること。

他人の仕事を見下してくるのは、「物事の表面しか見ていなくて、自分はそれに気づいていない」「プライドに不自由している」という点で、気の毒な人です。心の中で「かわいそうに」と同情してしまえば、たちまち優位に立てます。「何か嫌なことでもあったの?」と聞くのも一興。きっと相手は、さぞ複雑な表情を浮かべるでしょう。

「楽そうな仕事でいいね」と言われたときは、ニッコリ笑って「そう見えたとしたら嬉しいです」と返すのがオススメ。誤解をまともに受け止めてあげる義理はありません。「見下された……」と気にすること自体、自分の仕事に失礼です。全力でサラッと受け流しましょう。

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石原 壮一郎(いしはら・そういちろう)
大人系&検定系コラムニスト
1963年三重県生まれ。1993年に『大人養成講座』でデビューして以来、大人の素晴らしさと奥深さを世に訴え続けている。『大人力検定』『父親力検定』『大人の言葉の選び方』など著書多数。最新刊は、会社の理不尽と戦うための知恵と勇気を授ける『9割の会社はバカ』(飛鳥新社、共著)。郷土の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」を務める。

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(大人系&検定系コラムニスト 石原 壮一郎)

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