「ラクをした分、体力は落ちる」週6日勤務の91歳心療内科医が毎日続ける"筋力トレーニング"の中身
プレジデントオンライン / 2023年6月15日 11時15分
※本稿は、藤井 英子『ほどよく忘れて生きていく』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■「同じリズム」をつくる
朝と夜、私は「同じリズム」を意識しています。「1日はこれではじまり、これで終わる」という決まりごとで、生活のリズムが整います。
私の朝は、6時に起きてカーテンを開けて、太陽の光をしっかり浴びることからはじまります。それから洗顔、歯磨き、着替えをして、仏前へ。般若心経を唱えます。昔、母が唱えるのを横で聴くうちに覚えてからの習慣で、わずか5分ほど。この一連の流れが私の朝の日課です。般若心経を唱える声でその日の調子もわかります。
そして、一緒に暮らす次女が用意してくれた朝ごはんを食べます。最初に100%の野菜のジュースを飲み、ヨーグルトを食べ、次に牛乳、そしてトーストを食べます。
最後には果物。日替わりでリンゴやキウイ、バナナをいただきます。いつも、だいたいこの順番に食べることで、少しずつからだの機能が活発になるのがわかります。
お昼のお弁当のあと、午後は診察の合間に「お三時」で糖分補給です。おやつのことを「お三時」とも言いますが、疲れた脳への糖分補給にちょうどよく、私は甘いものをちょこちょこと買い置きし、受付をしている次男と、お三時を楽しみます。
夜、診療から帰ると、夕食はだいたい夜8時。魚などのタンパク質は欠かさず、らっきょう、納豆は必ず食べています。
こう書くと、変わり映えしない毎日に見えますが、整えるとは「決まりをつくる」ことからはじまります。おかげでこの年まで日々健康に過ごさせてもらい、ありがたいルーティンです。
■週6日勤務の91歳
ありがたいことに、現在週に6日はお仕事をさせていただいていて、うち2日は京都府の施設で嘱託医として働き、残りの4日は自分のクリニックへ通っています。
健康や体力維持のために特別なことはしていませんが、日々の生活を利用した筋力トレーニングは、長く健康でいるための秘訣です。
■何はともあれ「歩く」
鞄を抱え、同居している次女が作ってくれるお弁当を持って、ひとりで家を出て、最寄りのバス停までの300メートル弱の道のりを歩いてバスに乗り、クリニックの近くのバス停で降ります。そして、またクリニックのあるビルまで歩きます。
タクシーを使ったり、迎えにきてもらったりはしません。ラクをしたぶん、自分の体力が落ちるのですから、あたりまえのこととして毎日歩くのです。
![91歳の現役医師、藤井英子さん。健康の秘訣は「とっておきの靴で歩くこと」。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/f/1200wm/img_4fdcd91aaa816ed086cb49a3184a9432493203.jpg)
年齢を重ねるごとに「体力が落ちた」と感じる人は多いと思いますが、実際に、人の筋肉というのは、20代が最大で、30歳を過ぎると徐々に減少していき、10歳年をとるごとに5〜10%筋力が低下すると言われています。
普通の生活を送っていても、筋肉が減りやすくなりますから、注意が必要です。もしも、つまずきやすいとか、立っているのがつらい、疲れやすい、猫背のほうがラクというような状態であるなら、1日のうち少しでも歩くようにしてみてください。
若返る歩き方というのがあります。早歩きを3分、ゆっくり歩きを3分、それを毎日30分程度続けること。自分にできる範囲で続けてみてください。歩くことがあたりまえになるように生活のリズムを整えることも大切です。
■とっておきの「靴」を選ぶ
よい靴は、履いている人を快活にし、行動的にしてくれる魔法のようなものです。
ビジネスをしている人の間では、靴がその人を語ると言われることもあるようですが、年齢を重ねてからの靴選びこそ、大切にしたいものです。履きやすい、歩きやすい靴を履くということは、転倒しないお守りを持っているようなものですね。
私は普段履いている靴はBÄR(べアー)のものです。ドイツのメーカーだそうですが、同じものを何度も買い換えて、ずっとこの靴を履いています。
外に出れば必ずお世話になる靴ですから、自分の足に合った靴を選ぶことはとても大切です。とくに高齢になると、長年の歩き方や使っていた靴によって、扁平足(へんぺいそく)や外反母趾(がいはんぼし)などの変形があることが少なくありません。
また、糖尿病の人は靴ずれでの小さな傷でも治癒しづらかったり、人工透析の人はむくみやすかったり、病気によっても、足のトラブルが多くなります。
これまで靴に関心を持ってこなかった人も、健康寿命を延ばしたいという人も、靴の選び方に真剣になりましょう。履きやすいからといって大きめのサイズを選んだり、かかと部分がやわらかいものを選ぶと歩行にとっては悪影響です。
人生を通じて健康に歩くための靴は、命綱のような大切な存在です。かかとが安定していて、靴底はある程度の硬さがあるもの。つまずきを防ぐために、少し爪先が上がっているもの。滑りにくい素材のものを選ぶようにしましょう。
■自分の「健康法」をつくる
日常生活でできる自分なりの健康法を続けることは、とても大切なことです。
私の場合は、通勤時の早歩きと振動タイプの筋力増強機器の他、ついでにできる健康法を求めて、さまざまな文献に目を通し、インターネットで検索する毎日です。
なかでも、私が日々実践していて、自信を持って患者さんにもおすすめしているのが「爪もみ」。免疫学者の安保徹(あぼとおる)先生の本で知ったものですが、簡単にできて、自律神経が整うので、1日に1、2回、私はバス待ちの時間に必ず行うようにしています。
![診療後は一人ひとりに「自分を大事にしてください」と声をかける。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/1/1200wm/img_71903b8502d80ed61769e25a8ed06af8388056.jpg)
やり方は簡単で、手指の爪のつけ根を左右両側から、押すようにもむだけ。強さは「痛気持ちいい」くらいを目安にして、1本の指につき10秒ずつ押します。
ここには「井穴(せいけつ)」というツボがあって、東洋医学では、自律神経を調整するツボとされています。指によってさまざまな効果が期待できます。
親指はアトピー性皮膚炎や喘息(ぜんそく)、人差し指は胃潰瘍などの消化器系、中指は耳鳴りなどの耳の機能、薬指は交感神経を刺激し、小指はうつ症状やアレルギー症状、物忘れや不眠、高血圧、肩こり、頭痛、頻尿などに効果があります。
指先には毛細血管も密集していますから、爪もみで、血管の血流が促されます。
これは、自分で見つけて「これをやると調子がいい」と実感している、自分なりの健康法である、ということもポイントです。自分で見つけ、自分でやってみて効果を感じ、続けていること。それは、自分の心をポジティブにしてくれます。実際に気の流れもよくなり、効果は倍増です。
■お金より「筋肉」をためる
高齢になるに伴って筋肉量が減少していくことを「サルコペニア」と言います。筋力の低下は健康寿命を損なう原因のひとつです。
![藤井 英子『ほどよく忘れて生きていく』(サンマーク出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/9/1200wm/img_c9436239307bfc570e8e0cdd5943a7a9221050.jpg)
筋力低下により、歩く、立ち上がるなどの基本的な動作がしにくくなると、外に出るのが億劫になり、ますます筋力低下に拍車をかけます。動かなくなると脳への血流も減りますし、人と関わらなくなると、会話が減り、会話が減ると認知機能の低下につながります。筋力は健康に長生きするためには不可欠と言えるでしょう。
筋肉量の減少は、70歳を超えてから自覚症状が出るという人が多いのですが、65歳以上の高齢者の15%ほどはサルコペニアに該当するという研究結果もあります。
でも、筋肉は、年齢を重ねてからも鍛えることが可能です。
私は、通勤時の他、時間に余裕があれば、いつもより多めに歩きます。加えて、クリニックで仕事をはじめる前に、次男がくれたエクサビートという振動運動を行うフィットネス器具に足を乗せて10分程度エクササイズをしています。気軽にできるので、文明の利器をうまく活用するのは便利だし、効率的でいいなあと思っているところです。新しいものも、毛嫌いせずに上手に活用したいですね。
年齢を重ねてからの激しい運動はおすすめしませんが、軽いストレッチをしたり、座ったままできる、太ももや腹筋を鍛えたりするトレーニングもあります。食事では、タンパク質をしっかりとるようにしましょう。
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心療内科医、藤井医院院長
医学博士。1931年京都市生まれ。京都府立医科大学卒業、同大学院4年修了。産婦人科医として勤めはじめる。結婚後、5人目の出産を機に医師を辞め専業主婦に。育児に専念する傍ら、通信課程で女子栄養大学の栄養学、また慶應義塾大学文学部の心理学を学ぶ。計7人の子どもを育てながら、83年51歳のときにふたたび医師の道へ。脳神経学への興味から母校の精神医学教室に入局。その後、医療法人三幸会第二北山病院で精神科医として勤務後、医療法人三幸会うずまさクリニックの院長に。漢方薬に関心を持ち、漢方専門医としても現場に立ってきた。89歳でクリニックを退職後、「漢方心療内科藤井医院」を開院。精神保健指定医。日本精神神経学会専門医。日本東洋医学会漢方専門医。
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(心療内科医、藤井医院院長 藤井 英子)
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